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第2話 俺の事情と武器の選択

時刻は3時52分。今俺は自室のベットの上で横になり物思いにふけっている。さっき学校から帰ってきたばっかなので全然眠くならない。


 俺には普通の人には持っていないものがある。それは異能や才能と言った格好の良いものではない。俺の人生がかなりやばい方向に傾くレベルの大量な借金だ。締めて2千500万円。


 なぜこんなにも借金があるのかというと、親父が起業するときに金を使いまくり、いざ金を稼ごうとした直後に病床に伏してしまい、自己破産もせずに死んでしまったと言う訳だ。しかもその数か月後、母親はトラックに轢かれて父親の後を追ってしまった。両親は俺にとても優しかったが、神様は俺に優しくなかったのだ。


 そして俺に残されたのは母親の保険金と父親の借金だけだった。それが去年の夏のことだ。当時は相当泣きわめいたが、時間とともに俺は現実を受け止めた。


 高校生になるまでは何とか保険金だけでやってきたがもう保険金はほとんど残っていない、これからどうするか。バイトでもするか?


 答えはこの体の違和感にあった。今朝の疲れや眠さが嘘だったかのように体が軽い、それに一番気になることがある。今朝出来たはずの右半身を擦りむいたケガが見つからないのだ。いったいどういうことか。


 俺には一つだけ心当たりがあった、件のダンジョンだ。


 おそらく俺があのダンジョンでスライムを倒したことが原因ではないだろうか。スライムを倒した後、俺は異常なまでの眠気に襲われた、その後眠りにつき起きたら体が軽くなり、傷がなくなっていた。つまるところ俺はレベルアップをしたのだろうと推測したのだ。


「もしもこの推測が正しければ.....」


 まるでゲームのようにレベルを上げられるのではないだろうか。実際現段階でも体調がすこぶるよくなっていることが何よりの証拠だ。そしてダンジョンの奥深くにはファンタジーなモンスターやお宝が....。じゅるり、おっと失礼。


 とりあえず俺が何を言いたいのかというと、ダンジョンには現代に無い珍しいアイテムなどがあるだろう、そのアイテムなどを売ればお金になるのでは?と考えたわけだ。


 しかしここで問題が出てくる、今の俺にはダンジョン攻略に必要な魔物を倒すための武器や身を守るための防具がない。このまま何も考えずにダンジョンに行くのはさすがにまずいだろう。せめて武器さえあればなぁ。俺んちにあるもので武器になりそうなもの...うーん包丁ぐらいしか思いつかない。もっとリーチのあるものでできれば刃物は避けたい、スライムに斬撃では意味がないだろう。なのでそうなると打撃武器か遠距離武器だな、遠距離武器はあったとしてもすぐに使いこなせないからボツ。よって俺の扱う武器は消去法で打撃系武器になった。


「打撃系武器かぁ」


 金属バット、ゴルフクラブ、ハンマー、うーんほかに何か扱い易そうなものはない..か....。


 となるとこの3つのうちのどれかだな。だいぶ絞れてきたぞ!ゴルフクラブは叩きつけて物を壊す道具ではない、ものを遠くに打ち出すための道具だ、ゴルフクラブはナシだな。では、ハンマーはどうだ、ハンマーはたたきつけて物を壊すために使われることが多い、かなりよさそうだ。しかしどうもハンマーを自由自在に操って魔物を倒す自分の姿が浮かばない、ハンマーの重さに翻弄されて魔物に倒される姿が浮かんだ。


「ハンマーは重そうだしなぁ」


 となると残るは金属バットだ。金属バットもボールを遠くに打ち出すための道具だ。だがへこみはすれどそう簡単に折れることもないだろう。ハンマーのように重すぎるわけでもないし....。


 よし、一回金属バットを見てくるか!


 決心すると俺はすこぶる快調な体に引っ張られてスポーツ用品店へと向かった。



~~~~~~~~~~



 俺は今、スポーツ用品店に来ている。ダンジョンを攻略するための武器、金属バットを買いに来たのだ。いろいろな長さのバットが並んでいる。


「思ったより安いな」


 予算は1万円程だったのだが、金属バットの中でも高くて5千円代だ。さて、どうするか。俺は野球にあまり詳しくないからよくわからないが、この80㎝の長さの金属バットなんてどうだ?


 値段を見てみる。



バイザー(baizer) 80㎝金属バット 5980円のところを今なら4000円!



 おお、ええやん。これにしよっかなぁ。でもこの金属バット色が白色なんだよなあぁ。できれば汚れが目立たない暗い色が好ましい。しかしほかのバットを見てみるも80㎝のバットはほかには売っていなかった。


「まあ傷は見えにくそうだしこれでいっかな?」


 周りに人がいないことを確認してから素振りをしてみる。


ぶんっ!ぶんっ!ぶんっ!ぶんっ!っカーーーン!!!!


「いってええええええ!」


 素振りをしていたらなんと近くの柱にぶつけてしまった!幸いなことに柱にもバットにも目立った傷はついていなかった、目立った傷はね。しかし店員やほかの客がこっちをガン見している。あれ?こうゆうのって靴の試着みたいにバットの素振りってしちゃいけないのか?あっやばい店員さんがこっちに来てる!とりあえず考えるのは後だ。逃げろ!



~~~~~~~~~~



 はあ、「ちょっとお客さんバットからすごい音しましたよね!?」とか言いながら肩をつかまれたときはほんとに怖かった。店から強引に出たが、店員さんはあきらめてくれたみたいだ。


 どうも最近の俺は考えてから行動することができないようだ....少し自重しよう。まあそれは置いといて、また新たに大きな問題が俺の頭の中を占領している。


「手、まだ痛い...」


 そう、問題とはこの手のしびれである、手のしびれ自体が問題なのではなく、なぜ手がしびれたのか、が問題だ。


 俺は金属バットを振り回していたわけだが、もしもそこがダンジョンの中でスライム数匹と戦っていた状況だとしたら。スライムどもは意外と素早く動いていた、そいつに思い切り金属バットをたたきつけるわけだ。もしもその攻撃が外れて床に金属バットが激突したら.....。たぶん今の手のしびれ具合では済まないだろう。たぶんバットが持てなくなる。そう考えると金属バットはやはり没か....。


 さてどうするか。スマホを起動して時刻を確認する、ホーム画面に映し出された時刻は17時06分だった。今は日がどんどん伸びている時期なのでまだかろうじて明るい。


「はぁ。これじゃいつまでたってもダンジョンにいけないぞ.........あッ!」


その場で俺は大声を出しそうになったが必死に抑える。


「あっそうだ!あれあんじゃん!」


俺は家へ急いで帰った。




~~~~~~~~~~




 家のドアを開ける。


「ただいま~」


 返事はない。


 俺は靴を脱いで階段を上がり、自室に入った。


「押入れにあったっけなー」


 俺の記憶の中では確かここにしまった記憶がある.........。押入れを開けてみる。ハンガーにかかった洋服がずらりと並んでいる。俺の部屋の押し入れはとても大きいので、山宮家全員の一年分の服が収納されていた。まあ今は俺しか使わないが。


 ぱっと見渡すがそれらしきものは見当たらないな。む、奥のほうに大きな段ボール箱があるぞ。段ボールの大きさ的に入っている可能性が高い。早速段ボール箱を開けてみた。中には何やらいろいろなものが雑然と詰め込まれている。その中には目的のものがあった。


「あった、これこれ」


 俺は木でできた刀、木刀を手にもって見る。持ち心地はかなり良い。金属バットと違って木刀は木製なのでもし攻撃を外したとしても金属バットよりかはいくらか衝撃は吸収されるだろう、ならば木製のバットは?と思ったが力自慢をしたい外国人が木製バットを軽々と折ってしまう動画が頭によぎった。


「さすがに人の力で折れちゃう武器はないな...」


 ということで俺の武器は長い道のりを経て木刀になったのであった。はあ、スポーツ用品店に行かずに帰ったらすぐ木刀を持っていけば、今頃ダンジョンだったのに...。


「さて、さっそくダンジョンに行きたい!.......ところだが」


 恥ずかしながらおなかがすいてきた。腹が減っては戦はできぬとも言うしね。まあカップラーメンでも食ってダンジョンに行きますかね!

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