第1話 非日常へ
初投稿で物語を書くのも初めてです。いろいろと突っ込みどころがあると思いますがご容赦下さい。
「うーん...ん?...あっ!」
目が覚めた瞬間に寝坊したことを直感的に理解した。どうやら目覚まし時計をセットし忘れてしまったようだ。
俺はベットから飛び降りて早速制服に着替え始める。洗面所に行って寝癖を直し急いで歯を磨く。俺は家に鍵をしてから飛び出した。用は学校のトイレで足すので我慢。
俺ぐらいの遅刻のプロになると起きてから三分以内に朝の支度を済ませることができるのだ。ねっとりとまとわりつく眠気に後ろ髪を引かれつつも自転車に跨りペダルを踏んだ。
「これなら3時限目にギリギリ間に合うか.....」
スマホを起動する、ホーム画面に映し出された時刻は10時32分だった。3時限目は10時50分からで家から学校までにかかる時間は約20分、この辺りは住宅街なのでスピードを出してかなり頑張ればまだ間に合う!
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しばらく見慣れた大通りを走っていると左に曲がっている小道がふと目に入った。
「学校の方角的に考えてこの道を使えば...」
1秒2秒を争う今の現状近道を使わない手はなかった。ハンドルを勢いよく左に切り重心を左に傾ける。道先を見るとちゃんと学校の方向に延びている。俺は今日からこの道で学校へ行こうと心の中で決めた。だが一つだけ忘れていたことがあった。
「うげぇ!まじかよ!」
そこには大きな森があったのだ。確か障害者とか昔に戦争で負傷した人とかを養うための施設で、彼らの精神衛生上の問題で周りには広大な森があり、その森を囲むように高いフェンスが立っていた。だが、幸か不幸かその施設は一般開放されており、誰でも中に入れるように一部のフェンスが扉のように開け閉めできるようになっていた。俺はフェンスの扉を過ぎて森の中の小道を爆走する。
「おっと!次は右カーブか」
高速で流れる景色に気持ちよさを覚えながらスピードを落とさないように注意して走る。
その時、俺の運命を変える出来事が起きた。
がしゃーーーん!っずしゃーーーー!!!!!
一瞬景色が反転したと思ったら次の瞬間には俺は地面と情熱的なキスをしていた。
「がぁ!......っっっってーーーー!」
おそらくタイヤが滑ったのだろう。体の右側から稲妻のように全身に痛みが広がり、俺はしばらく起き上がれなかった。
「うぇ!ぺっぺっ!はぁあ。やっちまった...今日は遅刻か」
口に入った土や石を吐き出しつつ周りを見渡してみる。周りには人影や人工物はなく大きな木、小さな木ぐらいしか見分けられるものはなかった。しかし小道から少し離れたところに岩場がありそこに小さな穴のようなものを見つけた。
「洞穴かな?」
穴に近づいて穴の中を覗いてみるとそこには奥えと続く道があった。
「なんだここ?洞穴?ではなさそうな...とりあえず入ってみるか」
中に入ると目では見えないが、何やら言い表せないモノが道の奥からあふれ出してきているのをいやでも感じ取れる。頭では危険と分かっているのだが体が勝手に吸い寄せられる。好奇心が本能に勝ったのだ。
少し進んだところに下に降りる階段があった。階段を一分程で下りきるとそこは床、壁、天井がレンガのようなもので作られていて一定間隔で薄暗く光る鉱石のようなものがあり、いわゆるダンジョンのような構造になっていた。
「.........。」
一本道なのだが慎重にゆっくり進む。少し進んだところに何やら小さな影があった。目を凝らしてみると、きれいな青色をしている粘着質な物体がうごめいているのがわかる。
「あいつはもしかして」
ゲームや小説とかでよく似たのを見たことあるぞ....あいつはスライムか?とりあえず近づいてみる。
「ふうむ。やっぱりスライムだよなぁこいつ?」
大きな独り言をこぼしつつ見つめる。するとスライム(?)はそれなりの速さでこちらに迫ってきた。
「ぎゃああああああああ!きも!」
俺は大声を上げながらスライムを思い切り踏みつけた。
べちゃ!
「PIKIIIIII!」
閉じていた瞼を片方だけ開けて自分の足元を見ると、スライムは冗談のように粘性がなくなり水をこぼした時のようにぺちゃりと地面に広がっていた。
「はあ、ははは...驚かせやがって.........」
俺は腰が抜けてしまった。たかがスライムとはいえ急に化け物に襲われたのだ、笑われる謂れはないだろう。しばらくここで座ってよう...。
ぺちゃ!.....ぺちゃ!
ん?なんか変な音がするぞ....
ぺちゃぺちゃ!.....ぺちゃ!
まさか!と思い俺は一本道の先を見ると、そこには3匹のスライムがこちらに向かってきていた。
「きゃああああああああ!」
女性のような悲鳴を上げながら俺は上へ伸びている階段に向かって全力疾走した。
「はあ...はあ...はあ..............なんかもう.......なんなんだよ」
俺は自転車の近くで大の字になって倒れた。しばらく動けそうにない、スライムと出会った場所からここまではあまり遠くないのだが、なぜか体がだるい。少し休もう...
あれから10分ぐらいしてから立ち上がると倒れている自転車を立たせる。精神的にも身体的にも疲れているが、とりあえず眠りたい。ここから家に帰るよりかは、学校に行ったほうが近い、保健室にでも行って眠らせてもらおう.......。
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俺は異常な眠気に襲われながらも校舎内の廊下を歩いていた。他の生徒は授業中なのでやけに静かだ。
「ふうぅ....」
保健室のドアの上のガラスから蛍光灯の光が漏れていて、中に誰かいることを証明している。これなら眠れそうだ。
「失礼しまーす」
「おはよう、どうかし....て!あなた大丈夫!?」
保健室の松田先生だ。
彼女は25歳程の小柄な女性で、茶色い髪を短いポニーテイルでまとめていて、いつも白衣を着ている。生徒の健康を管理するのが彼女の仕事だ。しかし彼女は目つきが悪く目の下にいつもクマができている、生徒の健康よりもまずは自分の健康を管理しろよ、と誰もが言いたくなる特徴的な先生だ。
松田先生は部屋の奥からひょこと顔を出し、俺の姿を見て驚いている。たまに授業をサボる時、よくお世話になっているので、顔は覚えられているだろう。
改めて自分の格好を見てみる、白いワイシャツの右側に血のシミができていた。異常な眠気に襲われていて気づけなかったがかなりこの格好は目立っただろう。ちなみに足はズボンで守られていたのか目立ったキズはなかった。
「取り敢えず上脱いでからそこの椅子に座って!」
「はあ」
彼女の気迫に押されつつワイシャツを脱いで、椅子に座った。なにやら色々な物を棚から引っ張り出しながら松田先生が聞いてきた。
「はぁぁ、何があったの?転んだ?」
「はい、遅刻しそうで急いでチャリ漕いでたらタイヤが滑って....」
「はぁぁ...」
松田先生の2度目のため息が聞こえた。
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応急措置が終わると松田先生が赤い色のファイルを俺の顔に近づけた。
「はいこれ、自分のクラスと名前、今日の日付と時刻、何で保健室に来たのか、書いて。」
「あざす」
保健室に来ると毎回このセリフを言われる、最初のうちはもっと丁寧な態度で接してくれていたのだが、俺が いつもサボっているうちに素っ気ない態度になっていた。
取り敢えず俺は言われたことをファイルの中のプリントに書き込んだ。
1年4組 山宮大和 登校中に怪我をしました。
っと、言い遅れたが俺は山宮大和だ。南村山北高等学校の一年生。俺の外見的特徴は見ての通りわかるように身長が187センチととても高いことぐらいかな。
顔は正直わからない。自分のことは自分が一番知っているが、自分がみんなからどう思われているのかは自分が一番知らないことだろう。
本格的に眠気がやばくなってきたので、先生に保健室のベットを使う旨を話してから、ベットに倒れこんだ。意識は一瞬にして姿を眩ませた。
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「....宮君!...山宮君!」
「う~ん..あと五分」
「うぉりゃ!」
俺の抵抗むなしく掛布団は没収された。外界の冷たい空気が肌を刺激して頭が回転を始める。
「そっか俺は学校で寝てたのか」
少しづつ寝る前の記憶が蘇る。
「たしかダンジョンを見つけて....」
「何言ってんの?」
「ファッ!先生いつの間に!?」
「だからさっきから何言ってんの君...」
寝ぼけていて働かない頭でも松田先生がドン引きしていることが理解できた。
「すみません寝ぼけてました」
「はぁあ..君今何時だと思う?」
「え?なんで?」
「質問を質問で返さないで....はぁぁ、今は3時よ」
「マジですか!?」
6時限目は3時15分に終わる、今から授業に参加しても出席扱いはされないだろう。ふと一つ疑問が浮かび上がった。
「上から目線で済みませんなんですけど起こしてくれても良かったんですよ?」
「はぁ..君寝てる間ずっとうーうー唸ってたわよ、そんな状態で起こせるわけないじゃない、一応氷枕と冷えポタを張って安静になるまで放置してたってわけ」
「あっ!ありがとうございます」
自分の額を触ってみると確かに冷えポタがあり、枕はいつの間にか氷枕になっていた。
「君が寝てるときに体温を測ったわ、少し熱があるみたいね、とっとと帰りなさい」
「ぶふぁ!」
松田先生が衝撃的なことを口走った、なんと彼女は意識のない俺の体をまさぐり、あまつさえ体温を測ったのだ。
「やだぁ先生ったらぁ////」
俺は胸と股間を手で覆い瞼をパチパチと瞬かせた。
「死ね」
「うわっひっで!」
思ったより辛辣だな。
「.....。」
先生の顔が真っ赤だ。この人はからかいがいがあって面白い、普段は冷静沈着でクールキューティーな人だが怒った途端に一気に子供っぽくなる。体格も小柄なので怒るときは俺よりも子供してると思う。
ちょっとふざけすぎたと反省しつつ先生に御礼の言葉を送り保健室から出た。
二度と来るなと激励の言葉を受けながら帰路についた。
小説を書くと言うことがこれほど難しいとは.....。