終わらない夏
翳らない空 走り抜けた小さな背中
人工的なつむじ風が落ちた青葉を巻き上げていく
響くクラクション 喚く低い怒号
全てを無視した足音が笑い声と共に遠ざかっていく
知らぬ間に過ぎた夏が繰り返し 今年もやってきて
なのに僕は今 ポケットの着信音に溜息ひとつ
“貴重品”なんて存在せずに 拾ったビー玉を押し込んだ
純粋な夏の姿はもう とうに陽炎の向こうで揺れて
置いてきたものは数多く 忘れてきたものも或いはあって
必要なものの選別もできずに走らされた結果はこれで
要らない荷物は増えてきて 預かり物も或いはあって
抱えた肩の重みと痛みは“成功”なんかとイコールじゃない
変わっていく街並みと変われないままの僕が居て
同じように刻んだはずの時の流れに追いつけない
与えられた任務をこなして こなしてこなした今日があって
同じように刻むはずの時計の針が回らない
画用紙いっぱいに塗りたくった ミライって何だっけ?
あの頃のミライは訪れてみれば 平凡なイマでしかなくて
今日や明日を積み重ねたら ミライに繋がるって?
何の変哲もないイマがまた こうしてやってくるだけ
信号が赤で足を止めて 車が一台通り過ぎて
見送ってしまえば何故か ここには僕が一人きりで
木々が騒めく 鳥が羽ばたく 見上げた空に雲がひとつ
突き抜けるような青空を映す ビルの窓が煌めいた
特別だった日々は過ぎた 無限に思えた夏も終わった
それでも疲れを残す今日も案外悪くはなかったりして
あの頃と同じ単純さで 小さなことに笑みを零しながら
とうに止んだ着信音を耳元で鳴らし始めたりして




