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クチビルヲ テノヒラヲ
使い古された言葉の中で 埋もれるような言葉一つ
囁いて 空気震わせて どうか届いてって願ってる
善と悪が共棲する世界で 偽物みたいな掌一つ
伸ばして 指先探して どうか届いてって願ってる
力の有無を問われたら 情けない程何もないけど
豪雨の中 ずぶ濡れの捨て犬に
それでも傘を差し出す事は愚かですか
堕ちていく寸前 ぐらつく足元で
それでも未来を望む事は罪ですか
使い古された言葉の中で 埋もれるような言葉一つ
囁いて 空気震わせて 届く前に砕け散る
善と悪が共棲する世界で 偽物みたいな掌一つ
伸ばして 指先探して 触れる前に痛みが走る
動機を求められても 満点の答えは出せないけど
誰かが決めた見えない境界線
「何もしない」が定義なら 一体誰が救われますか
耳に届かない嗄れた悲鳴
「何も知らない」が常套句なら 一体誰が笑えますか
見下ろした番人に嘲笑われても
望みの濃度に窒息しそうでも
告げた言葉が散り散りに落ちても
伸ばした掌が打ち払われても
差し出す事を諦めたりしたくない
微かな光がこの胸に灯っている限り