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  作者: 樋渡 幸
2/5

†2†

茜の隣は、宏隆という男の子の席だった

高2になって初めて同じクラス

席が隣になるのも初めてだ


宏隆はやせ気味なのに背が高い

そのため細長いという印象を受ける


さらさら音をたてそうな、細い、色の抜けた髪

やや面長で、色白の顔

色素の薄い目は、長い睫毛まつげに縁取られている


わりかし整ってるほう

茜はそう判断した


宏隆はよく授業を休む

今は夏休みで課外授業の期間だったが、宏隆の休み癖は相変わらずだった

それなら学校を休んではどうかと一度言ったことがある

返ってきた答えは

「学校好きだから、休みたくない」

だった

「茜、具合悪いから保健室で休むって言っといて」

涼しげな、具合が悪そうなどとは微塵も思わせない表情で、そう言い残し教室を去る

学校が好きなら授業、出ればいいのに

茜は常々思っていた

そして爽やかに去った宏隆が、その後本当に保健室に行っているかどうかは怪しかった


宏隆は茜のことを初対面からそう呼んだ

馴れ馴れしさはない

その呼び方は、茜の胸に違和感を残すことなくすとんと落ち着いた



放課後、茜は図書室へ行った

最近はまった小説家がいて、その著作を読み漁ろうというつもりなのだ

購入したいとは思うのだが、高校生に本を大量に買い続ける金銭の余裕などあるはずも無く、こうして図書室のお世話になっていた


大人になったら、天井まで届く本棚に囲まれた書斎を造って、本を集めたい

茜はひそかに考えている


文庫本のコーナーに行く途中、閲覧席に見慣れた横顔を発見した


宏隆だ

何見てるんだろう


B4版の大きな本のページをめくっている


写真集かな


肩越しに覗き込むと、そこに写されていたのは絵画だった


宏隆が気配に気付き、茜を振り向く

視線がぶつかると、宏隆の目は微かに笑んだように細くなった

「茜。図書室にはよく来るの?」

周囲に人はほとんどいなかったが、声のトーンは落とし気味だ

「読みたい本がある時はね。宏隆は?」

「ほぼ毎日いるよ」

「へぇ、そうなんだ。気付かなかった」

「まぁ、だいたい授業中だから」

いたずらめいた輝きが目に宿る

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