第4話 兄
目の前では父のダグラスが尺取虫の様になりながら唸っていた。
畑仕事を手伝う為に早くに起きて朝食を取ろうとしたら母のピイナが何時までも起きてこないダグラスを呼んで来てくれと頼まれ起こしに来たのだが・・・。
「父さん何やってんの?」
「グゥゥ・・・・・ヒルドか。それが・・・起きたら腰が・・・。」
「また腰をやったの?」
農家をやっている以上、腰痛は職業病の様なモノだが父はここ最近やたらと腰を悪くする。年はピイナの4つ上で30歳なのだがこの年でそこまで腰が悪くなるのは珍しい。
「すまんがヒルド、アレ頼む。あたた。」
「この間のイビルボア以来毎朝じゃない?【JIHIの心】。」
今ダグラスに使ったのはスキル:JIHIの心。効果はある程度の怪我からの回復と精力活性。イビルボアに襲われた後、父の怪我を治すのに使ったのだがそれ以降毎朝コレである。
「やっぱ一度、医療組合で診てもらったら?俺のスキルで治らないって厄介過ぎるんだけど。」
「ありがとう、そうだな。一度見てもらうよ。」
すっかり良くなった様で2人で下に降りていく。
「母さん、父さん連れてきたよー。」
「あら、やっと起きてきたわねー。(もう腰大丈夫なの?)」ボソボソ
「いやー、すまんすまん。(あぁ、ヒルドのお陰でな)」ボソボソ
「(じゃぁ、今夜も///)」ボソボソ
「(うーん、ヒルドもちょっと心配してるし・・・)」ボソボソ
「ヒルド、さっさと飯食っちまえよ。」
「兄貴も今日畑に行くの?」
「応、但し親父の畑じゃないけどな。」
「? どういうこと?」
「何、直ぐわかるさ。」
家族4人で朝食を終えて、男3人で畑に向かっていると。普段の畑への道から逸れて少し離れた場所へ到着した。
「よし、じゃぁ今からここを新しく畑にするぞ。」
父は思いっきりドヤ顔で俺達に向かって宣言してきた。
「え? 父さん、新しい畑にするって苗とか無いでしょ?」
「ヒルド、お前イビルボア倒したの忘れてんのか?」
「イビルボアがどうかしたの?」
「・・・親父やっぱヒルドはどっか抜けてるなぁ・・・。」
「何だよソレ。」
エルダのあきれ顔に俺が悪態をついていると、ダグラスが俺に説明してくれた。
「ヒルド、お前がこの間倒した『イビルボア』な。実は最近農家の間で被害が相次いでた畑荒らしの正体だったみたいなんだよ。」
「え? 畑荒らし・・・もしかして足跡が無かった奴?」
最近、農家達の間で畑荒らしの被害が上がっていたが足跡一つ見当たらなく鳥に荒らされたにしては被害が大きかった為、実は人が荒らしてるのではと噂が流れて懸賞金まで出されていた。
だがまさか自分が倒したイビルボアがその正体とは予想もしていなかった。
「どうもあのイビルボアは背中の触手を伸ばして畑を荒らしてたみたいなんだ。」
イビルボアの触手は非常に長い、木の上に生っている果実を取る事すら可能な程伸ばせるのだから。
「ま、そのお陰でな、懸賞金で新しい苗や種も買えたし。ここらの日当たりのいい所にも優先して農地を譲ってもらったって訳さ。」
「へぇ、そりゃ得したね。」
「ふふん、しかもココは俺の畑になるんだぜ?」
「え?兄貴の??」
「あぁ、エルダも今年12で成人だろ?そうなれば都の神殿に行って【職】に就けるからな。ちょっと早いが前祝って奴さ。」
「ふえー、そっか。兄貴は前から農家になるって言ってたもんね。」
「応!【農夫】のレベルを30まで上げれば上位の【百姓】になれるからな!そうなれば農家としては大成功だぜ!」
因みに【農夫】は自分の持つ畑、最大3つに【豊穣の加護(小)】を付与が可能(広さ制限有り)で、上位職の【百姓】になると自分の持つ畑全てに【豊穣の加護(大)】が付与出来る。
この【豊穣の加護】が付与されていると、殆ど農作物が枯れる心配が無いというスキルでこれが大になると収穫量の増大は勿論、その味が格段に上がるので農家としては是が日でも取得したいスキルである。
「そっか、ここが兄貴の畑になるのか。」
「そうさ、見てろよ?今にここを野菜一杯の畑にしてみせるから。」
「じゃぁ、まずは制限ギリギリまでの畑にしないとね!」
「応!!つっても【豊穣の加護】とって直ぐは畑1つ分までだけどな。」
そんな事を兄弟で話してたらダグラスが農具を俺達に渡してくる。
「そういう訳でな!今から3人でエルダの畑を耕すぞ!」
「「応!!!!」」
気合を入れて畑を耕した結果、立派は畑が10面程出来てしまった。
今日の教訓「調子に乗ってはいけない。」
無双モノに見えて実は違う!
まぁRIKISHI的展開は大分後になってしまいます。
無双モノを期待した方は申し訳ない;;