第2話 採取
「やっぱり入り口付近のは規定数ギリギリまで数減ってるなぁ・・・。もうちょい奥に行くか。」
『ん?複数の足音??』
しかもかなり森をあるく事に慣れたモノ、「・・・確認しておくか 」そう呟きつつ音のする方向へ近づいていく。
「ゴブリンか・・・・。」
そこに居たのは青黒い肌をしたハイゴブリンと取り巻きのゴブリン5匹。明らかに藪の向こうに居る幼女2人に男子1人の3人組の子供達を狙ってやがる。
恐らく俺と同じように薬草採取に来たが入り口付近で取れずに奥に入ってきたのだろう。ゴブリン達には気づいて無い様で暢気にクエストの指定薬草を採取している。
「子供のしかも俺の知り合いを狙うとは許せん、OSHIOKIが必要だな。」
お前も6歳児じゃねーかというツッコミがあるかもしれないが、こちとら神の元修行を済ませた神様候補である。3歳の時点でそこらの大人のスペックを悠々超えてしまうステータスなので問題無しだ。
因みにどの程度のステータスかというと現在のニュートラルはMAKUSHITA《幕下》辺りだ。勿論RIKISHIのMAKUSHITAなので、判りやすい言えばド○ゴ○ボールZラストの鼻が無い人の戦闘力と言えばお分かり頂けるだろうか?RIKISHIとは明らかに一般人とは一線を解した戦闘力の持ち主なのである。
「今回は無難に投石にしちゃろう。」
そう言いながら俺は足元にある小石をいくつか両手に持つ。
音を立てない様にゴブリン共に石を投げつけられる位置まで移動する。位置取りが完了したら直ぐ様石を投げ始める。石は狙い通りに人の肝臓の辺りに吸い込まれるように飛来していく。
「グギャッ!!!??」「ギィィ!!!?」「ブギョ?!!?」
投げた石はゴブリンの体を貫通し、地面に当る事でようやく動きを止める。そんな威力の石を手持ちの石が無くなるまでゴブリン共に投げつける。其の為ゴブリン5匹は既に虫の息、ハイゴブリンも石を食らって動けそうに無いので俺はゴブリン達にゆっくり近づいていく。
「グゲゲッゲッゲ・・・ゲ・・。」
「よう、ハイゴブリン。1ヶ月振りか?」
「グギィ!」
最後の抵抗かハイゴブリンは手持ちの(木と石で出来た)短槍や、配下のゴブリンが持っていた石のナイフを此方に投げてくる。俺はそれを避けつつハイゴブリンまで後1メートルの所までやってきた。
「すまんな、前回JIHIの心でお前さんを見逃したけども、人を再度襲おうとしたな?もう許してはやらんぞ?せめてこれ以上痛みを知らずに逝くが良い。」
そう言って俺はハイゴブリンとゴブリン達にHARITEを打ち込む。HARITEを食らった順に彼らの頭部は叩きつけられた豆腐の様になっていく。
「死体を残しておいたらまずいな・・・・」
死体を片付ける為に自身のKIを高め、両の手にそれを集め光になったKIをゴブリン達の死体に当てると、光が当った端からゴブリンの死体が光に変わり天に向かって光が上っていく。
全ての死体が光となって天に昇っていくのを見ていると後ろの藪から男の子を先頭に子供達3人が此方に近づいてくる。
「あれ?ヒルド?」
「よう、マク兄。それにシルビア姉にミーティア姉。」
キョトンとした顔でこちらを見ているのが『マルクス』今年10になる子で将来は探検家を目指すと豪語している少年でご近所の商店の3男、そしてその後ろにおどおどしながら此方を覗いて居るのが『シルビア』と『ミーティア』。先月9歳になった二卵性双生児でぱっと見るとフランス人形かと思うような可愛らしい顔をしていて医療組合の組長の長女、次女らしい。
2人は此方を確認すると亜麻色のポニーテルとサイドテールを揺らしながら此方に駆け寄ってくる。ポニーテールがシルビアでサイドテールがミーティアだ。その後ろでマルクスが若干疎めしそうにしながらこっちを睨んでいるのだが、俺のせいか?コレは・・・。
「ヒルちゃん、今日薬草取りに来るんなら言ってくれれば良かったのに。そしたら一緒に来れたのに。」
「そうだよヒル君、ソロは危ないんだからね?」
「あー、そだね。次はちゃんと一緒に来るからさ。」
あぁ、纏わり付くな!こっちは子供と戯れる趣味は無いんだよ!
「それで、ヒル君さっきの光なに?」
と、ミーティアが首を傾げながら聞いてくる・・・出来ればこのままスルーしてくれたら良かったんだが。
「さぁ?俺も光を見てここに来たからよく判んねぇ。」
「ヒルド、こっちに落ちてるのってお前が作ったの?」
マルクスがゴブリン達の武器をワクワクした目で見ている、男だからやっぱ石製でも武器はワクワクするんだろうか。
「いや、俺が来たときにはもうソコに転がってたよ。欲しいなら持って帰ったら?」
「本当か!? やった、前から自分のナイフ欲しかったんだ・・・。」
今の彼らの装備は長袖長ズボンにローブと腰に組合貸し出しの「採取セット」(お値段50ルク)である、まぁ子供に武器持たせる方が危ないので子供の武器携帯は基本タブー、かといって武器屋でナイフを買うなら最低でも1万ルク程するので子供では中々手が出ない。尚、今受注している「薬草採取」の成功報酬は薬草10株で700ルクである。
「そうだヒルちゃん、私この間lv上がったのよ!見て見て!!」
「あ、シルビアずるい!ヒル君私のも見てー!」
そういって2人は俺に自分の『身体板』《ステータスカード》を見せてくる。
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《シルビア》Lv 6
人族女性9歳
体力39/39
魔力23/23
技力31/31
筋力13
頑強10
知性18
器用11
敏捷16
職業【なし】
特技【なし】
称号【魂の片割れ】
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《ミーティア》Lv 6
人族女性9歳
体力36/36
魔力27/27
技力30/30
筋力12
頑強9
知性22
器用11
敏捷14
職業【なし】
特技【なし】
称号【魂の片割れ】
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「2人ともlv6になったんだ、おめでとう。」
「へー、やっぱ2人とも魔力の伸びが良いな・・・俺全然知力伸びないんだよな。lvもまだ5だし・・。」
「でもマク兄は体力高いじゃん。」
「でも探検家なるならやっぱ魔力上げて罠破り覚えたいんだよー。ほらコレ見てみろよ。」
そう言いながらマルクスは自分の身体板を渡してくる。
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《マルクス》Lv 5
人族男10歳
体力56/56
魔力16/16
技力29/29
筋力20
頑強13
知性10
器用13
敏捷10
職業【なし】
特技【なし】
称号【なし】
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「マク兄のステータスって探検家よりも戦士向きなんじゃないの?」
「えー。戦士なんてやだよ!男は浪漫に生きないと!」
「マルクスちゃんって商人にならないの?」
「商人は考えた事あるけど、知性伸びないとなれないし・・・。」
「マル君も勉強すればいいよー。そしたらlv上がったとき普段よりちょっと伸びが良いよ?」
「うーん、勉強はなぁ・・・。」
「マク兄、嫌でもやらないと強くなれないよ?」
がっくりと肩を落としながら「勉強かぁ」と呟くマルクス、その肩を叩いて励ましているシルビアを見て微笑ましい顔になる。マルクスは間違いなくシルビアに惚れてるな。
「マク兄は荒事向きのステータスだよね、町の警備隊でもやっていけそうだし。」
「それも考えたけどさ、それは探検家で色々見て回った後でも良いかなって思ってさ。」
「マク兄って結構考えてるんだね・・・・・。」
「結構ってなんだ結構って。」
「マルちゃんって意外と将来の事考えてるよね。」
「シルビアまで・・。」
「マル君・・・その・・・ご愁傷様?」
『ミーティアえげつねぇ・・・。』
結局その日はそんな風に世間話(?)をしながら4人で薬草採取を終らせてからゴルバの町まで戻っていった。
近い年の子のステータスが出てきました、今回出てきた3人は特色が多少あるものの特に突出したステータスではないので子供としては平均的です。
取りあえず主人公が成人として認められるまではサクサクと進めたいorz