第0話 転生
どうも皆様、日乃山関です。
神様に弟子入りしてもうすぐ1000年、現在太陽神のテントウ様の下、
神々の庭『天ノ宮』《アマノミヤ》で最終試験の真っ最中だったりします。
「ほらほら、次行くぞー。」
「ちょっ!『白斑』《はくはん》はイヤァァ!!」
「おー、良く耐えますなー。」
因みに上の会話、上から太陽神のテントウ様、俺、九十九神のグンギ様。
「ほれほれ、そんなんじゃ折角溜めたKI《気》が散るぞ。
根性出して耐えてみせんか。」
「だったらもう少し手加減をぉぉおお!?」
「加減したら試験の意味が無いじゃないか。
ほらきっちり返して見せろよ、天極。」
そうテントウ様が呟いた途端、掌の先にはコブシ程の黒い火の玉が浮かび上がり、ソレをこちらへ投げる。
一瞬の内に黒い炎が辺り一帯を覆いつくし俺を焼こうと意思を持って向かってくる。
それを俺はHARITE《張り手》で凌ぐ。
が、明らかに手数が足りない。
「オォォォオオオオ!YOKODUNA《横綱》!!!!!!!!!」
その瞬間、俺の中のKI《気》が膨れ上がり体からあふれ出る。
意識の加速、一発一発が鋭く、重く、音の壁すら越えて黒い炎を叩き落としていく。
炎を叩き落し始めて1時間、やがて黒い炎の幕が消え、天ノ宮が見えはじめる。
「ふむ」
「はぁはぁ・・・これで・・・、・・・終わりですか・・ね?」
肩で息を整えながらテントウ様に質問をする。
「まぁギリギリ合格だな。」
「ヤッターーーーーーーーーーー!」
「おつかれさまー。」
グンギ様が水筒を持ってこちらへやってくる。
「グンギ様、俺・・・やったよ。」
そう言いながらグンギ様から水筒を受け取り喉を潤す。
「いやー、通算何回目だっけ?この試験。」
「プハッわかんないです、正直3桁いってから数えてないっす。」
この1000年は正直苦労の連続だった、様々の神様の下、修行の連続さらに試験と託けてあらゆる事をやらされた。
武術全般に始まり、芸能、算術、果ては農業や工業、中には性の神様まで居る。
ぶっちゃけこの最終試験まで来れた事自体、奇跡のような気がする。
あ、涙出そうだ。
「まぁ、魂が磨り減る度に神水で無理矢理回復させてましたしねぇ。」
「へ?」
ちょっと待て、今さらっとグンギ様問題発言じゃないですかね??
「なんだ、グンギ。日乃山関に教えて無かったのか?」
「教えていたら無駄に色々消耗しますからね。」
「それもそうか、でもこれで試験も終わりだから問題なかろ。」
「ちょっと待てーーーーーー!」
「どないしたん?日乃山関?」
「いやいや、『どないしたん?』じゃないですよ!何なんですか神水って!
何か副作用とかあるんなら前もって説明しておいて下さいよ!!」
「えーっとですね、一言で言えば『エリクサー』的な?でも下手するとSAN値ゴリっと削れるみたいな?」
「おいぃ!ぶっちゃけたよこの九十九神!」
「でもソノお陰で修行も乗り越えられたでしょ?」
「む”ぅ”・・・・。」
それを言われると正直言い返せない、何せこの1000年でグンギ様にはかなり助けられてきた。
中には正直思い返したくない事も多々あるが・・・・。
「おーい、日乃山関にグンギよぅ、漫才やるのも良いがソレは宴会の席でやってくれや。
どうせ暫くはドンチャン騒ぎだろうしよ。」
「修行が全工程終了しましたからねぇ、ついに彼も来世に転生ですね。」
そうだ、最終試験が終ったのだからついに転生だ、
もう一度、人としての生を享受出来るのだ。
「長かったなぁ・・・、神の世界で修行積んで、神様の悪乗りで途中からRIKISHIになっちゃうし・・・。」
そう、今の俺は力士改め、RIKISHIになってしまった。
神様の中にも日本のサブカルチャーが好きな神ってのは居るらしくそのノリで鍛えられ、今では立派(?)なRIKISHIのYOKODUNAである。
まぁ、横綱になれた事自体は嬉しいのだが・・・前世での夢だったのだし。
「よし、何はともあれ、神連盟で連絡網廻して今夜から宴だな。」
「であれば私は宴会の準備に取り掛かりますかね。」
「あ、俺は何したら?」
「阿呆、お前さんは宴の主役だろうが、さっさと寝て英気でも養っとけ。暫くは寝れんぞ?」
テントウ様はそう言うと陽炎の様にこの場を去ってしまわれた。
残ったのはグンギ様と俺だけ。
「それじゃ私は宴会の準備にかかりますかねぇ。」
「本当に俺手伝わなくていいのかな。」
そう言うと、グンギ様は苦笑を浮かべながら俺の背中を軽く叩いてくる。
「貴方はこれからが忙しいですからね、
宴で今までの師の対応をするだけでも一苦労ですし、
それが終れば転生の為の準備ですからねぇ。」
「確か転生先は地球以外の世界でしたっけ?」
「えぇ、流石にどこの世界かは知らされてませんけどねぇ。」
「そっかー、でもまた人として過ごせるのは楽しみですね。」
「何はともあれ、先ずは目の前の宴ですよ!飲んで騒いで、楽しみますよー!」
「グンギ様は相変わらず宴会好きですね。」
「普段食べれないモノも出ますからね!ここで食いだめしておかないと!後タッパーも必需品ですね!」
「オバハンか!」
「日本人としてはご飯を残すなんて勿体無い事出来ませんし?」
「いや、あんた九十九神やん?」
「日本発祥ですからね、中身は日本人ですよ。」
「さよですか、あー、じゃぁ自分ちょっと寝させて貰いますね。
流石にYOKODUNAを使って疲れました。」
「はいはい、じゃぁ後で呼びに行きますんで。」
「うぃー。」
何だかんだでこの1000年グンギ様と居る時間は長かったし、楽しかった。
俺を初めに見つけてもらった恩もあるし、その後の修行でも色々助言を貰ったりもした。
因みに彼の本体は『軍配団扇』《ぐんぱいうちわ》らしい。
相撲の行司が持つアレである。
「ふぁ・・・。風呂入って夜まで寝るか・・・。」
その日の夜から宴は始まり、結局10日間ぶっ続けで宴が続いた。
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10日も休み無く宴が続いた結果、俺は猛烈な二日酔い(?)を味わう羽目になった。神様ってスケールでかすぎて訳判らなくなる時が多々あるわ・・・。
「頭が痛い・・・・。」
「10日も飲み続ければそうなりますわ。」
「なんで他の方はケロっとしてるんですか・・・・。」
「神だし?」
「ずっけぇ・・・いつっ・・・・。」
グンギ様に文句を漏らしつつ、馬に揺られながら転生の為の場所へと向かう。
「ほら、しっかりしなさい、もう直ぐつきますよ」
「うっす・・・。」
結局目的地にたどり着くまでに、3回ほどリバースした俺であった。
たどり着いた場所はギリシャの神殿を連想させる白い神殿。
ここから俺は異界に転生するらしい。
「着いた・・・。」
「まだスッキリせんのかい?」
「あい・・・。」
「いっそ神水飲む?」
「貰えますか・・オエッ。」
グンギ様に渡された神水を一気にあおる。
今までの頭痛や吐き気が嘘の様に引いていく。
「しょっちゅうお世話になってたけど・・・改めてぶっ飛んだ性能ですよね、コレって。」
「読んで字の如く、神の水やからね、酔い位即効治るさ。」
そう、俺の修行中何度もお世話になったこの『神水』、めちゃくちゃ万能の霊薬と言って良い程の性能で腕や足が消し飛ぼうが一口飲めば元通り。
例えバラバラでも体に掛ければ元に戻るというトンデモ性能。
但し元に戻る時の痛みがしんどいので人の身では相当辛いものがあり、下手すると廃人コースである。
因みに俺はそんな『神水』を日常的に摂取させられていたらしい。
グンギ様曰く、「人の身を神に変えるならコレくらいはしないとあかんよ~。」との事、それでも説明くらい欲しかったぜ・・・。
何だかんだで何時もの軽口を叩きつつ神殿の入り口近くまで辿り着く。
ドア等は無いのだが向こうから光が漏れていて中を見渡す事は出来なさそうだ。
「さ、ここから先は君一人で進み。」
「え?ここでお別れなんですか?」
「ここの中はもう異界の担当区域になるからね、ココまでが精一杯なんよ。」
「そうなんですか、じゃあ、また死んだらって事になるんですかね?」
「次は神になったときじゃないかな?向こうで何やらされるかは聞いてないけどさ。」
「む、そうなんですか。まぁ行けば判りますかね。」
「気楽に行ったらええよ。なるようになるさね、」
「それじゃぁグンギ様、長い間お世話になりました。」
改めてグンギ様に頭を下げる、何かと世話を焼いてくれたこの神には頭が上がらない。
「うん、次は神になってからだね。皆、楽しみに待ってるよ?」
「はい、それでは、いってきます。」
そう言って俺は入り口を潜った。
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気が付けば暗闇の中、体は・・・多少は動かせるが身動きは取れない・・・けど何故か心地いい。
あー、ダメだ・・・頭がはっきりとしない・・・確か異界の神様達に色々説明受けて・・・・それから?・・・・・・・・大人になったら判るとか・・・・あ、ダメ・・・眠・・・・・・ぐぅ・・・。
はい、話は進みません。
転生先での最強になる為の準備でございました。
ここまで主人公の日乃山関の描写を殆どしておりません。
これはあえてどんな人物かは描写を避けました、次からの話で彼がどんな人かが出てきます。
1話から読めばとりあえず話しが判る様にとの考えでしたが余計わかり難くなっていたら申し訳ないです。
又この作品の感想、意見、ネタ提供などありましたらお気軽にどうぞ。