異界に落ちた力士 プロローグ
寒い・・・
痛い・・・・・
苦しい・・・・・・
呼吸が出来ない。
目の前が赤く染まっていく。
血だ・・・自分の血・・・・。
目線を動かす。
あぁ・・・そうだ、子供を庇って・・・・・・・・・・・
そこで俺の意識は途切れた。
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気が付けば真っ暗な場所に居た。
自分が立ってるのか、横になっているのか、それすら判らない。
慌てて動こうとするも体が動いてくれない、というよりも体の感覚が無い。
『確か・・・・、興行で九州に来て・・・ついでに実家に戻る途中で・・・・・そうだ、田舎の実家に戻る最中に、交差点で子供が事故に・・・・。』
そうだ、子供を庇った・・・じゃぁココは何処だ?病院?今は夜か?判らない・・・ナースコール・・・ダメだ・・・体が動かないんじゃナースコールすら押せやしない。
体が動かない・・・まさか・・・不随――――――――――
そう思ったら居ても立っても居られない。
『誰か!誰か居ないのか!?』
叫んだ、自分の出せる精一杯で叫んだ・・・どれ位叫び続けただろう・・・・けれど誰も答えてはくれない。
『誰か・・・・・・・・・・・・神様・・・。』
「呼んだかね?」
『え・・・。』
「おや?君は・・・・・・日乃山関かね?」
『あ・・えと・・・・はい、日乃山関は私・・・・です・・・けど。』
声を掛けられたと思ったら既に自分の直ぐ近くに人の気配がした、暗くて見えないがどうも近くに居るようだ。
いきなり話しかけられ戸惑うしかない俺を他所に、嬉しそうな声で彼(?)は話を続ける。
「おー、やはりか。
君の試合は何時も見ていたよ、君は何時も神棚を拝んで感謝の念を忘れなかったからねぇ。
何時も神連盟の皆で観戦して盛り上がってたよ。」
『え、えっと・・神様・・・で宜しいんでしょうか?』
「うむ、と言っても新参者でねぇ・・・。
いやそれよりだ、何で君がこんな所に居るんだ?」
『えっと・・・興行で・・・アー違う、実家に・・・えーっと。』
「んー?大分混乱しとるな、ちょっと頭の中覗かせて貰うぞ。」
彼(?)がそう言った次の瞬間、何かが自分の中を通り抜けたのを感じる。
「え・・・あれ?死んだんか??」
『え?』
「あっれー?可笑しいな、ちょっと待っとれ。」
そう言うと彼(?)は懐から光の塊の様なモノを取り出した。
その光でやっと周りの様子が見える、
周りは鬱蒼とした木々に囲まれていて日の光が当らない場所のようだ。
「あ、もしもし?フツヌシ様ですか?はい、九十九のグンギですー、いえいえ何時もお世話になりっ放しで。
それでですね、ちょっとお聞きしたい事ありまして、お時間宜しいですかね?本当ですか?ありがとうございます。
それが今、目の前に日乃山関が居まして・・・えぇ、そうです彼です。ええ、このまま行けば横綱も狙えると言ってた彼です。
何故かその彼が黄泉の国近くに居まして・・・ですよねぇ、少しそちらで調べて頂けますか?宜しくお願いします。」
「良し、これで少なくともこの状況の説明が付くな、日乃山関、もう暫くここで待ってて貰えるかな?」
『あの、俺は・・・・その、死んだんでしょうか?』
「んー、ちょっとその辺がまだあやふやでな?フツヌシ様に調べて貰っとるから結果が出るまでここで待ってくれ。」
『はぁ・・・・。』
「いやーしかし君にこうして会えるとは夢にも思わなんだわ。
神連盟でも君は人気故、抜け駆け禁止になっとるから。」
『えっと・・?』
「くはは、まぁ直ぐには結果も出らんだろうし少し話しでもしようか?」
『は、はい。』
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「でな、軍神様達の間で相撲ブームでの?中でもお前さんは人気という訳なのよ。」
『そうなんですねぇ、でもまさか神様が見てるとは思いませんでしたわ。』
「いやいや、相撲は神に捧げる神事だからの?しかも数ある神事の中でも遥か昔から今でも続く由緒ある神事ぞ?」
『それでも普通は神様が見てるとは思いませんよ?』
「まぁの?でもお前さんはその中でも断トツ人気での。
死後の扱いをどうするかで色々議題に上がる程人気になっとるぞ?」
『死後・・・ですか?』
「うむ、中でもアメノウズメ様やクロノス様、アヌビス様辺りがかなりご執心でのー、
他の世界の神々もお前さんに興味津々じゃぞ?」
『え?他の世界・・ですか?』
「うむ、世界はここだけじゃない。様々な世界があり、そこには―――――pipipipipipi―――――っと」
グンギが再度光の塊を取り出し他の神と連絡を取る。
(彼曰く、神専用の携帯らしい)
「もしもし?フツヌシ様ですか?
はい、はい。えぇ今目の前に。はい。
え?はい、えぇ!?・・・そうですか・・・・判りました。
えぇ、では今から連れていきますね・・・はい。」
『あの?どうでした?』
「あー、それがちょっと厄介な事になってねぇ?うーん取りあえず移動しながら教えるよ。」
『でも俺、動けないんですが・・・。』
「あぁ、大丈夫、こっちで君の魂は動かすから。」
『魂?』
「そっか、君は今魂だけになってるんだよ。そこに肉体は無い。
だから生前の感覚で動こうとしても動けないんだよ。」
そう言うとグンギは俺を――――――――持ち上げた。
―――――――関取である俺を。
『えぇえぇぇええ!?!?!?』
「ほらね、魂だから片手で持ち上げられる。
さ、兎も角行こうか。」
『え、あの・・何処へ?』
「閻魔様の所さ〜。」
『は???』
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どうしてこうなった!!!!
嫌、確かに道中に大まかな事は聞いた、聞いたけどもさ!
それでもコレはあんまりじゃないか!?
今、目の前で自分の死後の過ごし方が決定してしまった、
しかも自分の意思とは関係なくである。
目の前では閻魔大王の判決が高々と言い渡されていた。
「では日乃山関は今後1000年程地球の神々の元、下積みの後、
異界にて徳を積んだ後、神への転生とする!!」
『あはは、最終的に神様って・・・なんじゃそりゃぁ!!!!』
「いやー、日乃山関おめでとう!中々無いですよ?人から神への転生って。
しかも他の神の元修行!エリートコースじゃないですか!!」
『グンギさん・・・いや、意味が判らんのですが・・・・。』
「まぁ人生色々って事で!」
『いや、そうじゃないでしょ!?ねえ?俺の意思は!?』
「さ、行きますよー。始めはアメノウズメ様ですね!」
『待って!もうちょい心の準備とか色々あるでしょ!!』
「そんなモノは時間が解決してくれますよ。さー行きますよ。」
『Nooooooooo!!!!!!』
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あの後色々説明されたがどうやら俺は死んだらしい、
事故のせいで死んだのは間違い無いがどうも詳細を聞くと違うらしい、
本来であれば半年程の入院で済んでいたのだが、
とある神が事故にかこつけて俺を死者の国へ呼び寄せたかったらしい。
その神様は神連盟でOSIOKIされたものの一度死んだ人間は元には戻せないとの事。
侘びとして神様に土下座されて正直ドン引きしたが・・・言わぬが花という奴だろう。
それから何故こんなにも話がポンポンと進んだのかと言うと、どうもグンギ様と話している間に神様同士で話し合いを行った結果として、
俺、日乃山関は複数の神様に弟子入りする事が決定していたらしい。
それでももう少し説明あっても・・・と思うがもう終った事だ、やたらと悩んでても仕方ない。
兎も角今後しっかりと修行を行えば別世界とは言え来世があるのだ、頑張れる。
でも・・・・横綱なりたかったなぁ・・・・。
初めて小説というモノを書いております。
拙い文章では御座いますが、誰かの暇つぶしになればコレ幸いです。
又、この作品は所謂最強モノとなります。
色々突っ込み所満載とは思いますが、指摘頂ければ嬉しいです。