1.10歳に成りましたっ! 近況報告します①
“コーン、コーン”
集落の人が振るう木槌の乾いた音が耳に響いて来ます。只今の季節はオルアド(終夏)、突き抜ける様に晴れ渡った夏空です。見上げる様な屋根の上でそんな厳しい陽射しを浴びながら、幾人もの人が忙しそうに額に汗し働いています。そう今目の前では、首長の家を超える様な大きな家の建築が大詰めを向かえているんです。この大きな家ってのはオバル家とそのお隣りのクレスタ家の家を取り壊して、その代わりとなる集合住宅なんですね。それもこの集落初の四階建て住宅なんですよ。集落の家ってのは今までは、首長の家と最近新築された数軒が三階建で、あとはほとんど二階建てなんだ。(我が家は平屋だ!)だからこの四階建てはほんとに大きく感じるよ。
えっと、最近何度が家の建て替えをを見たので、こっちの建築工法がなんとなく理解できて来ました。前にも云ったけどキトアでは木材は採れないから、建物は基本レンガ製です。ただし屋根と梁は木材で作るけどね。そんな訳で集落での建築工法を一言で云うと竹筋レンガ工法って感じですね。主建築材のレンガは周辺のあちこちにある赤土を焼いて出来るんで非常に安価なんですよ。しかもこの素焼きレンガはなかなか硬度もあって優れもんなんです。でも単なるレンガの積上げ方式じゃ、平屋がいい処だから補強材として竹を使ってるんだね。竹もかなり安価に買える建築材だからね。このふたつで家の大部分が出来るんだから助かるよね。だから竹筋レンガ工法ね。それに人件費は基本集落の人のボランティアだから住宅の建築費用は非常に安いらしいですよ。ただし農産の繁忙期には無理なんで家の建築は、大抵オルニア(真夏)とオルアド(終夏)か、ウズアド(初冬)からアラニア(終春)の間に行われるんだね。
さて具体的な建築工法はこんな感じです。まず基礎の溝が掘られます。この溝に土台となる石材が置かれます。この石はなんでもセキア石と云ってセキア州の名産らしいんだ。このセキア石が採れるから、王都がセキア州に置かれたって話しもあるらしいよ。どうやらこのセキア石が建築費の大部分を占めているらしいね。でも家の土台だから手抜きはできないよね。さてこの土台の石材には、30センチ間隔位で直径15センチ位の穴が貫通して空いているんだよ。そしてこの穴に竹を突き立てる訳なんだね。竹の先端は斜めに切られていて、地中深くまで確りと突き刺すんだね。この土台の全部の穴に竹が刺されて竹林みたいな状態となったら、基礎の溝と竹の刺さってる穴にコンクリートを流し込むんだ。このコンクリートが乾燥すると基礎工事が完了となります。ちなみにこのコンクリートは牡蠣殻を焼いた石灰と、レンガを砕いた物に砂を混ぜて出来ています。内陸部では石灰石を焼いて石灰を作ってるらしいけど、キトア郡なら海岸の街リシュイー市からこの牡蠣殻コンクリートを買って来るのがお得らしい。まぁなんと云っても廃物利用だからね。
次にレンガを積み上げる訳ですが、実はレンガにはコンクリートブロックみたく両脇に穴が空いてるんでこの穴に竹を通しながら、レンガを半分づつ互い違いに積んで行く訳です。そのレンガ同士はコンクリートで接着されて行くんだね。レンガが3段程積まれると、竹の通ってる穴にコンクリートが流されるって感じですね。そして階の境目になると何本か丸太の梁が通されます。その梁を土台に各階の天井と床が造られて行く訳ですよ。この作業の繰り返しで家の構造が完成します。最後に屋根は竹で骨組みを作ってその上に材木の板を張って行くんですね。屋根板にはなんか赤茶色した樹脂か油(ニス?)を塗ってあります。雨対策かな? でも雨はほとんど無いんだけどね……。今は正にこの最後の屋根作りの工程な訳なんですね。屋根の骨組みとして組み上げた竹の上に屋根板を貼り付けてる処です。
だいたい普通家の建築は1カ月半もあれば大丈夫なんですが、今回は4階建てなんで3カ月も掛かりました。前もってアラニア(終春)に基礎工事までを終わらせて置いて、オルニア(真夏)とオルアド(終夏)に残りを一気に作ったって感じですね。集落初の四階建て住宅なんで注目度は抜群、みんながこぞって建築ボランティアに参加した事も工事が進んだ事の要因みたいだね。元々のオバル家とクレスタ家の家の広さに加えて、両家の間にあった敷地も建物に取り込んでいるから、床面積は元々のふたつの家の床面積の合計の1.5倍はあるらしい。その上に二階建てだったのが、四階建てになったんだから、延べ床面積は3倍になるって事だね。
内部構造的には、まずオバル家とクレスタ家は一階、二階、三階は完全に独立していて交互に行き来はできない造りになってる。勿論玄関は2つあるよ。ただし四階の作業場所には壁がなくて両家で共有して使う造りになってます。各家の中の間取りは一階が家族の共有スペースで居間に食堂、台所にシャワー室に物置部屋なんかに成っていますね。これはさすがに上階に水回りを作るのはあまりに手間が係るからなんだよね。そして二階、三階が居住スペースって事なんだね。歯欠けのヴァリによるとオバルの家では、二階に“だいかかさん”と“ちゅうかかさん”、“ちいかかさん”2組の4夫婦が住んで、三階に乳児を除く子供達が住む事になるらしい。まぁ、兄弟に従兄弟やら伯父さん、叔父さんが混然一体となってるって感じだね。ヴァリがマジ嬉しそうに話してくれた。ちなみに今のオバル家の総人口は19人です……。なんちゅう大家族だよ。
ところで建築費は安い安いと云いましたが、それなりには掛かります。そこで集落として建築費の積立をしてて、住民からの要望を聞いて首長と大人達の協議で誰かの家の建築が決定されるって訳だ。ただし個人負担が0って話しじゃないから、各家でもそれなりに貯蓄はしてるって事です。当たり前だけど集落の収入が増えれば建築費の積立も増えるから家が建て易くなります。でも集落の収入が増えるって事は、集落の食料事情も良い訳だから人口も増えるんで建築需要も増えるんだね。だから今集落の人達の最大の感心事は、“おらさの家っこいつ建てれるべ”って事みたいです。
でもこれってなかなか上手い方法だよね。集落からの家の建築費補助を受けるには、首長と大人達からの支持がいるんだから、当然みんな率先して集落の為に働くよね。こういう共同経済体ってのは、下手すると個人のやる気を削いじゃうんだけど、この住宅建築費補助制度とか、家単位での収穫量に応じた報酬制とかがあって、適度に競争原理が導入されてるんだよね。ほんと良く練られてるよ。
そうそう、この頃やっと判ったきたんだけど、どうやら首長ってのは世襲制じゃなくて指名制なんだよ。今の首長が辞める時に次の首長を指名するんだって、自分の子供を指名する事もあるらしいけど、そうじゃない事も普通にあるらしいね。そして“大人”なんだけど、これってはっきりとした制度ではないみたい。一応家長である程度の年齢になると、自然と“大人”とみなされるされるらしい。“あいつもそろそろよかんべか?”、“んだんだ”って感じかな……、ああ、それに当たり前だけど“大人”は男子だけね。まぁ基本集落の決め事は首長の決断で決まるんだって、ただしその決断の前には“大人”達の意見を良く聞く事が肝要らしいよ。じゃないと実行が伴わないからね。多数決とか選挙に相当する制度は一切存在しませんね。まぁ、なんとも曖昧で緩い感じだよね。でもだからこそ意外に上手くいってるのかな?
そんなオバル家の建築をボーッと眺めている自分ですが、今年ついに10歳になりました。今年はエスタ暦3020年です。はい。サラキトアに塾所ができて5年、セシルに会って公童塾を開所してからもう4年ですね。そこでちょっと最近の近況報告をしましょうね。まず一言で云うならこの5歳から10歳までの5年間は、色々と初めた改革が功を奏したのか穏やかで、自分自身とまわりのみんな、そして集落そのものも順調に成長をしています。まさに順風満帆、日々平穏、前世を含めた今までの人生の中でも最高に輝いてる黄金の日々なんだと思います。
10歳になって自分は公童塾を無事卒業しました。ええ、そうですよ、教師助手をしてましたけど自分は公童塾の塾生のひとりですよ。実際に習うことも多かったです。特に剣術やら剣術やら剣術やらとかですね。公童塾を卒業はしましたが自警団には入らずに、正式に公童塾の助手と云う事になりました。府員補とか云うらしいです。所属は王府の護民府らしいですけど所詮現地雇いのアルバイターみたいな感じなんであんまりそこら辺は判りませんね。ええ、そうですキャスと同じ身分って事なんですね。老師さんは無縛人ギルドを、古武士さんは教導ギルドを通して雇われている訳で、ここらへんとは立場的にはちょっと違いますね、でもまぁ、当たり前ですが現場では特に差別とかはないです。それで今年からは、ついに僅かですが奉給が頂ける様になりました。ええ、今まではなぜか無給奉仕でしたから……。そんな訳で実際の実生活的には大きな変化はありませんね。
そうそう身体の方もちゃんと成長していますよ。ちょっとまだ小柄ですけどね……。身長は135センチで体重は31キロです。ええ、これってほぼ正確ですよ。なんと行商人さんの中に、たまに体重と身長を測る人がいるんですよ。そりゃ有料ですよ。たしか両方で2トルだったかな。ええ、大人気商売ですよ。そんな訳で体重と身長が判ってるんですね。まぁ、ちょい小さな小学5年生って奴だね。
さて自分の近況報告を続けると、この5年間レイジナ流カイト派の剣術修行を、本当にまじめにまじめに続けました。もう1回云いますがまじめに遣りました。そしてついについに修技(初段かな?)を賜授されました。でも5年で修技って、やっぱり筋がないのかな?
「ご子息殿は大器晩成型である……と思うである。剣術は階位ではないである、鍛錬を続ける事に意味があるのである」
うっ、うう、古武士さん、あんまりフォローになってないですよ……。
さてそんな剣術修行と並行して内功術の修行もしているんだけども、ずっと続けて来た精神集中の修行=イメージトレーニングの結果、まぁ、なんとか自分も最近内功術の発功には成功しました。その発功の手順ってのはこんな感じですね。まず意識をある部分に集中します。ほら、目を瞑って指先とか足先とかに意識を集中する感じね。そしてそのままの状態で練習したイメージを頭の中に展開する訳だよ。最初は何も起きなかったよ。でもある時からちょっとした発熱みたいな手応えを感じたんだ。それが徐々に確実な反応を感じる様になった、そしてある時、自分のイメージと体感が一致したと思えたんだ。その時老師さんが、“坊主、それが発功じゃ”と云ったんだよ。
いや~、あの時はマジ感激しました。でも、やはり発功の効率はまだまだ悪いらしいです。もっともっとしっかりイメージを固めてもっと術として練り上げる必要が有るようですね。だけど古武士さんに云わせると、一度発功できたなら後は早いらしいです。そりゃ、こうイメージするとこうなるってのが、具体的に体感できるからね。ええ、なんと云っても発功できるまでが最大の関門なんだらしいよ。確かに自分もイメージトレーニングを始めて発功できるまで5年掛かった訳だからね。
そんな訳で自分は、今内功術の練り上げ中です。さて、その内功術ですけどまず操系術で行う筋力強化、敏捷力強化、あとは五感強化があるんです。まぁ、効果は違うけどみんな同じ操系の術だから、理論的にはどれかが出来ればみんな出来るらしい。そこで自分は筋力強化から取り組んでいます。まぁ、なんとなく判り易かったからね。
筋力強化ってのは簡単に云えば筋肉の収縮運動の強化の事だよね。ではその筋肉の収縮運動なんだけど、仕組みはこんな感じだよ。まず筋繊維を構成するのが筋原繊維で、その最小構成単位がサルコメア(筋節)なんだね。このサルコメア(筋節)は、アクチンフィラメント(以下アクチン)とミオシンフィラメント(以下ミオシン)から出来ているんだ。構造としてはアクチンが2本あってその2本のアクチンの間には隙間がある。その隙間を繋ぐ形でミオシンが上に重なってる感じ(_-_な感じ)だね。そしてこのアクチンが、カルシウムイオンの刺激でミオシンの下に滑り込んで行って、アクチン2本の間の隙間が小さくなるんだ。つまりこれでサルコメア(筋節)全体の長さが短くなる=収縮する訳だね。普通筋力を上げるって云えばこのサルコメア(筋節)の全体数を増やして(つまり筋肉を増やす)、収縮力を上げる事になる。でも内功術の筋力強化ではサルコメア(筋節)を増殖させるのは、さすがに無理なんでそれ以外の2種類の方法を行う事になるんだ。ほら、筋力強化の魔法とか云って、グングン腕が太くなるとか実際有り得ないからね。そんな短時間でどうやって生体組織を増殖させるんだよね。
では、その内功術による筋力強化ひとつ目の方法が、収縮するサルコメア(筋節)の数を増やす事なんだ。つまり普通意識して筋力を発生させても、筋肉の中で収縮するサルコメア(筋節)の数は全体の2割程度なんです。色々なトレーニングでこのリミッターを外しても、精々3割が限度ですね。これを内功術で身体のリミッターとは無関係に、筋原繊維内の筋小胞体から無理矢理カルシウムイオンを発生させて、サルコメア(筋節)の収縮を行うって訳ですね。つまり理論的には通常の5倍までは筋力を強化できるって事だ。
そしてふたつ目の方法が、筋原繊維内の筋小胞体から発生するカルシウムイオンの濃度を高めにする方法だね。これでアクチンのミオシンへの滑り込み量を増やすんだ。つまりひとつひとつの、サルコメア(筋節)の収縮量を増やすって事だ。こちらで増加できる収縮量も通常の約5倍なんで、2つの方法を合わせると最大で25倍の筋力強化が可能って事になるね。でもこれって正に凄まじい数字なんだよ。前世で鍛えてない男性のベンチプレスは平均で40kg程度、ある程度の訓練をすると80kg程度らしいから、それを25倍すると……? まぁ、そもそも骨が持たないよね。それに筋肉に過度の負荷を掛けると筋繊維が切れて、筋肉痛になるでしょう? 自分も始めて内功術で筋力強化に成功した翌日は正に地獄でした……。
だから内功術の筋力強化の修行と云うと、2つの筋力増加の方法のイメージトレーニングに加えて、筋力増加の上限感覚の習得に骨格の強化って話しになるんだ。まぁ、骨格強化の方はカルシウム分とビタミンDの多そうな食材を食べて、毎夜毎夜血液から骨繊維がカルシウムを吸収するイメージをするだけなんだけどね。
ちなみに古武士さんと親父殿に、筋力強化の内功術を発功する時のイメージを聞いてみたら、なんと収縮するサルコメア(筋節)の量を増やす方のイメージをしてるみたいでした。そりゃ、当然サルコメア(筋節)とかは知らないみたいだけど、なんかそれにかなり近いイメージを持ってたよ。凄いよね。
一度親父殿に筋力強化の内功術の発功を見せてもらったんだけどね。筋力強化“闘力”って奴なんだけどさ、見た目だけでもなんか馬鹿みたいにビンビン力が伝わって来たよ。マジスーパーサ○ヤ人みたいだったな。アレは一体なんだろう。体温は間違いなく上がってるぞ。あとはオーラとかか? ええ、それ見て思ったけど自分が発功できた筋力強化は、まだまだしょっぱい事夥しいですね。
まぁ、古武士さんに云わせると、“内功術は、身体で覚えるのである。ただただ集中と繰り返しの訓練、これが全てである。才能よりも努力! ご子息殿でもできるである”だそうです。つまりやっぱ自分には才能ないって事だね。
「坊主はどうも、なにかが伝魔力を阻害しているようじゃな。それが発功を弱くしておるんじゃ」
老師さん、そ~云われましても……。
ちなみに親父殿の筋力強化“闘力”ってのは、なんかの技の名前とか、発功のレベルとかじゃないです。これは所謂スイッチですね。つまり内功術ってのは、身体で覚えるもんなんで、その練習する時から、発功するイメージに対して具体的な名前を付けるのは当然らしいんです。これをみなさんは“言霊”って呼んでるみたいです。まぁ、一種自己暗示的なキーワードなのかな? まぁ、誰かの内功術を見てその“言霊”の影響を受ける事が一番多いらしいね。親父殿もなんでも初めて筋力強化の発功を見た時の“言霊”が“闘力”だったらしい。その時の“闘力”って叫び声がイメージとして刷り込まれたらしいよ。だから筋力強化の“言霊”には色々な種類があるんです。例えば“爆力”、“超力”、“鬼力”、“神力”とかだね。でも呼び名は違いますが、中身はみんな一緒の“言霊”ですからね。ダマされないように~。当然ですけど、自分が心の中で叫ぶ“言霊”も“闘力”っです。
今は、筋力強化の修行してますが、その内には敏捷力強化と五感強化にも挑戦するつもりです。でも、同じ操系の内功術と云ってもやっぱ得手・不得手はどうしてもあるらしいです。う~んちょっと心配だ。
まぁ、なんだかんだ云っても一応順調に育っておりますです。はい……。
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