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2.サラキトア集落

 

 

<集落地図参照>挿絵(By みてみん)

 さてヴェルウント家がある集落は、キトア郡キグトア地区に幾つかある普通の農村のひとつでサラキトア(南キトア)と呼ばれている集落なんです。サラキトア(南キトア)は集落全体で40数戸程の家しかなく、人口300人ちょい程の小さな農村なんですね。


 そしてサラキトア(南キトア)は閉鎖集落って云うタイプの集落形式なんです。この閉鎖集落と云うのは、集落の周りにソン()の灌木が幾重にも重なるように植樹されているタイプの集落ですね。この鋭い刺のあるソン()の枝々がびっしり重なる様に生い茂って、高さ5m、厚さ2m程の自然の城壁が集落を外界から完全に遮断しているって訳です。えっ、なんでかって? それは集落の外界に、何種類もの危険な野生動物がゴロゴロしてるからですよ。うん、定番な話しでしょう?


 さてサラキトア(南キトア)集落には、外から3本の道が入り込んでいるんで、当然この3本の道の部分は、ソン()の城壁が途切れていますよ。この道上には自然の城壁の代わりとして大きな分厚い門が設置されていて、昼間は開けっ放しで行き来自由ですけど、日が落ちる頃になるとこの門はぴったりと閉ざされる事になってます。うんうん、そりゃ~当たり前だよね。ちなみに門番さんとかは居ないよ。


 この集落の外から入り込んでいる、3本の道ですけど、集落のほぼ中央部分で交差していて、その交差している部分がちょっとした広場になっています。そしてこの広場を囲むように、20数戸程の家が立ち並んでいるんだ。更に広場には、サラキトア(南キトア)集落で唯一の公共の建物である、白化粧した煉瓦で作られている伝馬車駅があるんだね。ただしサラキトア(南キトア)の伝馬車駅は、田舎駅のご多分にもれず無人駅なんですけどね。それとこの伝馬車駅の脇には、集落で唯一の井戸と給水塔が、設置されているんだ。


 さて広場で交差してる3本の道なんですけど、この内2本は、王都のあるセキア州とリシュール州を直結する“リシュール王道”ですね。“リシュール王道”ってのは、イラ()にある王都セキトから始まって、州都リシュトへと繋がっているんですね。そして州都リシュトから、その先にあるモーベス集落を通って、ここサラキトア(南キトア)集落をぶち抜いて、ウラ(西)に向かって行きます。サラキトア(南キトア)集落の先にはキグナス集落があって、終にはノラ()の国境まで延びている道なんですよ。


 そしてサラキトア(南キトア)集落で“リシュール王道”から枝別れしている、もう1本の道が、サラキトア(南キトア)ノラ()方向、ウルガム集落へと向かう“ウルガム支道”ですね。この“ウルガム支道”はウルガム集落に向かう途中で、更にいくつも枝分してキトア郡のノラ()方面のいろいろな集落に通じているそうなんです。キトア郡にとってはこの“リシュール王道”と“ウルガム支道”こそが幹線道路の様ですね。でもそんな重要な道が交差している、サラキトア(南キトア)集落って、もっともっと発展していてもいんじゃないか? ちょい疑問だな……。






 自分もなんとか5歳になって結構身体もできてきたんで、活動範囲が家の外に広がってきました~。所謂やんちゃ盛りってやつだよね。でも御両親様から、“絶対に家の周りから離れてはいけない”と厳しく云われているので、集落の中での探索を繰り返しております。ええ、確かに最初の頃は家の周りだけの探索でも充分に楽しかったですよ……。


 まず最初の探索は、家の前に広がる駅広場の探索でした。この駅広場ってのは、茶赤色の土と礫が混ざった土砂を押し固めた感じな地面が、だ~っと広がっている感じです。でも、これって簡易舗装ですか? どう見ても雨にはかなり弱そうなんだけど、まぁ、それなりに“舗装”って感じはしますね。親父殿の話から察するに、この簡易舗装はセキニア王国の公共事業のひとつらしいんだ! やるなっセキニア王国! ただしあちこちに窪みやら、轍の跡ができてて、集落の人々が親父殿に対して、度々補修の陳情に訪れているみたいですね。こんなん見てるとどうも親父殿の権限は思ったよりも広そ~だぞ。


 まぁ、そんな簡易舗装された駅広場を走り回ったり、駅広場中央にある伝馬車駅や井戸やら給水塔を見て回ったのが、サラキトア(南キトア)集落探索の初めてでした。




 では、そのサラキトア(南キトア)集落初探索の結果報告をしますね。まず駅広場にある白化粧した煉瓦で作られている伝馬車駅なんですけど……。まぁ、駅って云っても3畳位の広さの単なる小屋ですよ。前面は全て開放されていて、中に古ぼけた木の長椅子がポツンと置かれただけの、所謂日除け雨除け用の小屋ですよ。それに煉瓦に施されていた白化粧もかなり禿げたり薄汚れてるし、煉瓦自体にも所々に罅割(ひびわ)れやら欠けやらが目立ってまして、ええ、正に田舎のバス停って感じですかね?


 その伝馬車駅(古小屋)の前には、こっちもかなり使い古された馬留の柵と飼い葉桶に水桶が、ひとつずつ設置されていました。そうそう、これだけが、ここが伝“馬車”駅である事を主張してるって感じだね。そして伝馬車駅(古小屋)に据え付けられている15m位の高さがある、ごつごつした一本物の木のポール。このポールの先には、常に2枚の旗がパタパタと風にはためいているんだ。


 その2枚の旗の形は、ホームベースを横置きにした感じ……、えっとこんな□▷感じだね。そして2枚の旗の上にある旗には、3本の長剣が“*”の形に交わっていて、その両脇に馬が棹立ちしてる感じの絵が描かれています。これってのが、セキニア王国の紋章らしいです。そんでその下の旗は無地なんですね。この2枚目の無地の旗ですが、大抵は白い無地旗なんですよ。実はこの白ってのには意味があって、白旗は、ここ2日以内に伝馬車は到着しないって事で、伝馬車到着の前日に青旗が、そして到着当日には赤旗が上がります。つまり……、まぁそーいう事です。




 その伝馬車駅(古小屋)の脇にあるのが、サラキトア(南キトア)集落で唯一の井戸ですね。でも、唯石を積んだだけの古臭いなんの変哲もない井戸です。一度足場を持ってきて、その上で更に背伸びをして、井戸の中を覗いたんだけど、相当深い井戸なのか、真っ暗な井戸の底の水面は見えなかったですね。まぁ井戸の底に魔物とかがいない事だけは確認できたけどね。


 さてこの井戸から水を汲み上げる方法は、木の桶を井戸の中に落として、その桶に繋がったロープを木の横棒で巻き付けるって感じになってます。横棒の先には大きな十字のハンドルを付いるんで、この十字ハンドル回す事で、桶を巻き上げる事ができます。滑車は付いていません。うん、でもこれでも充分に便利ですね。でも実はこの便利な桶の引上機を使う人は、ほぼ0なんですよ。なぜか? それは更に便利な機構が存在してるからなんですね。


 それがこの井戸の上にそびえ立つ給水塔なんですね。頭上6m位の所に巨大な木製の桶(見たまんま巨大な木製バケツ)が、設置されているんだよ。そしてその桶の底から、竹製の管が生えて来ているんだ。この竹管はいくつかの節を経て地上付近まで延びると、地上1m位の所にある四角い木の箱に吸い込まれていってます。この竹製の管が繋がった木の箱の正面には、竹を斜めに切った注ぎ口が付いるんだ。そうそう、それってまるで下を向いた時の鹿威しの感じですよ。そしてその鹿威しの下に、横半分にした丸太を繰り抜いた感じの水桶があるんです。ええ、そうです、それは正にハ○ジの山小屋にあったあの水桶ですよ。


 この鹿威しが生えてる木の箱の上部には大きな十字ハンドルが付いていて、このハンドルを回すと、なんと下向きの鹿威しから水が勢い良く流れ出て来るんです。この下向きの鹿威しから流れ出した水が、下にあるハ○ジの水桶に貯まるって仕組みになっているんですよ。うん、これはほんとに便利便利。でもあまりに便利なもんだから、毎日の水汲みは子供の仕事になってるらしい。まぁ我が家では、水汲みはカリファさんのお仕事なんだけどね。でもねカリファさんは、この便利な方法を使わずに、なぜか直接桶を井戸に落として、水を引上げてるらしいんだけどね。桶を使って水を引き上げる少数派って事です。なぜ? って聞いた所。


「すべからく、口に入れるもんは新鮮ながいいんだよ」

カリファさんからの一言でした。


 このちょ~便利な仕組みなんだけど、動作原理は、まぁちょっと考えれば簡単に理解できるんだけど。問題はどうやって頭上より遥か上にある、あの巨大な木製のバケツに、井戸の水を入れてるんだろうってことだね。この点がどうしても理解不能なんだよ。う~~ん。マジわからん。


 よしっ、この問題の原因追求は、一旦保留だ! そこで頭上に聳える巨大な木製バケツを睨んでいた視線を、目の前のハ○ジの水桶に移すと、ちょっと背伸びをしながら水桶の中の水を、そこに置かれている木のコップで掬って一気に飲み干しました。水で濡れた口許をグイっと袖で拭う。美味い! 正直元の世界のペットボトルの水より美味い感じがするな。うん。エ〇アンより間違いなく美味いぞ。もしかして軟水なんかな? 




 そしてこの伝馬車駅(古小屋)を挟んで井戸とは反対方向には、もうひとつの建造物があるんですよ。それは伝馬車駅(古小屋)と同じ様な白い化粧煉瓦で作られていて、直径3m程、高さ50cm程のほぼ円形をした台座ですね。こっちの白い化粧煉瓦は、伝馬車駅(古小屋)よりも綺麗なのが印象的だな。さてこの円形台座の中心には、1m程の先の尖った削り出しと思われる黒い石柱が建っているんですね。ええ、黒い剣を剣先を空に向けて突き上げてるって感じなんですね。


 黒い剣(黒石柱)が空に向かって聳え立っている円形台座の表面には、その黒い剣(黒石柱)を中点にして同心円状の6本の円線が刻まれています。更にこの6本の各円線上には間隔が違う8つの刻みが、しるされているんだ。それに円形台座の一番外側の円周状には、小さな窪みが連続で連らなっていて、その連なった窪みのひとつには赤い石が捩じ込まれている。実はこの連なった窪みの数は全部で360個、そしてこの窪み30個毎に数字が刻まれている。最初はなんなのか、まったく見当も付かなかったんだけど……。


 ええ、そうなんです。これは精巧に作られた日時計+カレンダーなんですよ。これって一般には“エスタ暦台”とか呼ばれている代物だそうですよ。捩じ込まれた赤石の位置で、今日が何月何日なのかが判って、6本ある円線の中の、今月に該当する円線上に落ちる黒い剣(黒石柱)の影で、だいたいの時刻が判るって仕組みなんですね。


 これはマジで凄いぞ、ほんとマジよく考えられてるなぁ。お母様に聞いた所、この“エスタ暦台”ってのは、エスタリオン教の布教活動の一貫として、各地の伝馬車駅やら教会やら、人の集まる所あちこちに無料で設置されているらしいんだけど。よく考えて見ればさ、まずは地軸の傾きやら、公転周期なんかを正しく把握した上で、かなりの高等数学を用いて計算をしないと、こんな正確な日時計を作る事はできないはずだよね。更には、その設置地点の正確な緯度・経度がわからんと日時計としては駄目なはずだ……。むむむ~~、エスタリオン教マジ恐るべし。さすがに世界で最大かつ最強の宗教と云われてるだけの事はあるな! まぁ、実はここで云う世界って概念はなかなか微妙なんだけどね……。




 まぁ、そんなこんなで、サラキトア(南キトア)集落探索の初めて、“駅広場の探索”は初日で終了してしまったんだよ。ところで後で知ったんだけど、なんでもあの井戸の上の巨大木製バケツは“上水桶”と云うらしいです。これもお母様に教えて貰いました。






 さて駅広場の探索を終えたんで、次の探索のターゲットを集落にある他の家々としましょう。そこでサラキトア(南キトア)集落のあちこちに出っ没っしたんですけど、え~っと、昼間の農村って云うのはですね。結構寂しいもんなんですね。住人の多くは子供も含めて畑仕事に出ているし、残った住民も家事とか、脱穀とか、糸を紡いだりとか、布を織ったりとか、タペストリーを作ったりとか、刺繍をしたりとか、色々な雑仕事に追われてますからね。そんで普段、昼間の屋外ってのはほぼ無人な感じです。ほんと寂しい……。まぁ、一言で云えば暇なのは自分だけってことですね。




 それでは気を取り直してサラキトア(南キトア)集落探索の結果報告の第2弾行きますよ。まずサラキトア(南キトア)集落の多くの家は、2階建ての薄赤茶色の煉瓦作りの家がほとんどです。敷地、建物は、大抵我が家よりは小さい感じかな? でも東京のマッチ箱建売住宅の3~4倍の敷地は軽くあるね。そんな家の周りの敷地には花とかちょっとした香草、野菜なんかが植わっている畑とがあるんだ。まぁ、そんな似たり寄ったりの家々が並んでいるだけだから、外観調査の方はあっという間に終了してしまった。そこで仕方ないから、ほとんどの家の軒先にある小さな小屋の中を覗いたりする訳だ。いいですか? これは決して覗きじゃありませんよ、あくまで世界の探索、調査行動なんですからね。


 覗きこんだ小屋の中には、元の世界とほぼ同じ様な姿形をした鶏が“ココココ”と鳴き、あの独特な頭をカクカクさせる動作をしながら、小屋の中を歩いていました。実は鶏が居るだろうって事は、ある程度予測はしていましたよ。そうです、朝方になるとアチコチから、“ギャァァ”とか“アギャギャ”とか云う鳥の鳴き声が聞こえて来るのと、卵料理や鳥肉料理を家で食べていたので、なんとなく居るんだろうな~って事は予想してました。でも百聞は一見にしかずでしたね。


 なんとこの鶏、元の世界の鶏のほぼ2倍位のでっかさなんです。それに(くちばし)もかなり長くてちょい怖い感じ。でもそれを除くと、鶏にほとんどそっくりで、これには逆にちょっと驚いたくらい。ちなみに鶏は、“ジキン”と呼ばれています。マジですか……。なんでもこの“ジキン()”は結構飛ぶそうで、定期的に羽を切っているそうです。元気だなオイ。




 ところでサラキトア(南キトア)集落には専業の酪農家はいないって事でした。これは親父殿情報です。でも集落には牛さんと豚さんが共同で飼育されてるいるんだって。その数はだいたい数10頭って事でした。ちなみに牛はカドゥ(家牛)で、豚はピグゥ(家豚)って呼ばれているようです。こちらについては食卓にミルクが登場した時に、お母様との会話で、カドゥ(家牛)ピグゥ(家豚)を共同飼育しているって話を聞いてました。で、カドゥ(家牛)を牛だと断定したのは、そのミルクの味と、1年に数回食卓に上ったカドゥ肉の味から判断したんだね。ピグゥ(家豚)が豚だってのは、その名前とこれもその肉の味から簡単に予想が着きましたね。


 だがこんな風に事前に予想していたんだけど、実際に集落の外れにある共同家畜小屋に忍び込んで、このカドゥ(家牛)ピグゥ(家豚)を初めて見た時は正直かなり衝撃だった。なんとなんと両者共に6本脚だったんだよ! えっ、こいつら一体どういう進化の系統を辿ったんだ? 哺乳類の基本形状のひとつが4足形態だったはずだぞ?


 実はこれにはかなりのショックを受けてね。カドゥ(家牛)ピグゥ(家豚)を初めて見たその日は、夜になってシャワー(ヴェルウント家には風呂は存在しません。と云うかサラキトア(南キトア)の集落そのものに風呂は存在していないらしいです。とっても残念です……)を浴びながら、自分の体中をまさぐって、あと2本の足(手?)の痕跡がないかを確認しましたよ。なお、どこにもなんらの痕跡もなかった事を、ここに謹んでご報告致しますです、ええ、心から良かったです。


 なおシャワーなんですけど、溜めてある水、もしくはお湯を底に小さな穴が空いてる木製バケツに掬って壁にある取手にぶら下げて使います。なんとバケツの底が2重底になっていて、水流を止めたり流したりが自由にできようになっています。工夫だよね。流れた水はまた別の所に溜まる様になっていて、再利用します。水は基本貴重品なんだよ。節水、節水。ちなみに石鹸もあります、なんでも牛脂から作ると臭いがキツイらしい、そこで集落の回りのソン()に居るファスキュ(脂栗鼠)の脂から石鹸を作っているらしい、これはそんなに臭いがしないんだよ。でもファスキュ(脂栗鼠)は小さいですから、そんなに大量には出来ません。まぁ貴重品だね。


 さて、その牛さん事、カドゥ(家牛)ですけど、まるでドラム缶に太く逞しい6本脚をつけたような巨大な生き物でした。体高は2m近く、体長も2mを軽く超えています。体毛は短毛で黒に近くて所々に明るい茶毛が混ざっていますね。そのもの凄く太い胴回りから伸びた、同じく太い首の先には、意外にも縦に細長い頭があるんですよ。そしてその細長い頭の頂点からは、立派な1本のねじねじで先が鋭く尖った白い角が生えているんですね。鋭い眼つきの真っ黒な巨大な瞳、同じく切れ長の黒い鼻からは激しく“ヴォッヴォッ”と云う鼻息が漏れだしています。そんでね、口が肉食獣並にデカイんだ……。あんまり鳴かないらしいけど、絶対鳴き声は“ウモォォ”ではないと思われますが、ええ、全く聞きたいとは思いませんね。こんなにも獰猛な感じを与えるカドゥ(家牛)、正直外で出会ったら速攻で逃げ出しますよ。間違っても“牛さん”とか“も~も~さん”とか呼べませんよ……。カドゥ(家牛)、マジ家畜のレベルを簡単に超えちゃってますよぉ。


 もう一方の豚さん、つまりピグゥ(家豚)ですが、こっちはかなり豚に近いです。体高は1m弱で、体長は1.5mくらいですね。体毛は薄い茶色の短毛で、当然胴回りは太いです。脚は当然の様に6本だけど、前の4本が近いことから、4本が前脚で、2本が後ろ脚であることがハッキリと分かります。カドゥ(家牛)ではそこは良くわかりませんでした。うん、これは発見だぞ。


 顔の形状は豚と同様に、鼻先が尖った形状をしています。ええ、鼻はしっかり豚鼻でした。でも結構鋭い牙が2本、その口から覗いているんです。えっと、どっちか云うと豚というよりはイノシシに近い印象ですね。でも丸々と太っているんで、そこはやはり家畜な感じはしました。カドゥ(家牛)と違ってかなり騒々しいですね。“ブゥモー”って感じのかなり低い声で鳴きます。まぁカドゥ(家牛)に比べると獰猛な感じは低いんだけど、そんでも正直ひとりで道で出くわしたいとは思えないです……。


 あとで判って来た事ですけど、6本脚=有蹄類みたいなんですね。したがって馬とか羊とか山羊とかも全部6本脚でしたよ。う~~ん、進化ってのは不思議だね。この世界の進化の系統樹を是非見たいな~。






 サラキトア(南キトア)集落の戸数は、全部で40数戸程度、当然だけど集落にある家々の探索もまた数日程で完了してしまうよね。そこで次には家々の背後に生えている、ソン()の城壁についての探索を開始したんだ。この緑の城壁は、幾重にも濃密に植樹されたソン()の木で出来ていて、鋭い刺を生やした細い枝が、互いに複雑に絡まっているんだ。なんと内側から外側を伺い見ることが、ほぼ不可能な程密な状態、ええ、正にびっしりと密集しているって感じですね。


 でもね。これってのはマジ本当に良くできた自然の城壁ですよ。ソン()の城壁高さは、ほぼ5m、正に聳え立つって感じです。しかもこのソン()の木は7~8本位は重なって生えてるから、きっと壁の厚さは2m以上ありそうだ。つまりこれを跳び越えるってのは、どう見ても不可能な感じだよね。


 更にこのソン()の木はかなりしっかりと土中に根を生やしてるみたいなんで、この木の城壁を押し倒そうとすると、それは相当な力が必要だって事は簡単に想像できる、まぁ動物の類じゃ、この木の城壁を無理やり通過するって事は不可能って事だろう。


 つまりこの壁を無事に通り抜けられる生き物と云ったら、ソン()の木の根本近くの僅かな空隙を通るしかないから、今の自分の拳よりも小さい生き物に限られるんだろうな。イメージとしては、ネズミ、猫、フェレット、亀の類って感じだよね。ウサギは耳がギリ駄目かな? しかもこの木の城壁の建造費用は、そんなに掛かってないだろうから、費用対効果バツグンだな。でもここまで成るには、数年は必要だろうけどね。それが唯一の欠陥かな……。それでも、人の智慧ってのは、すごいなぁ~。


 こんな感じで集落の周りを探索したんだけど、まぁ、これだって1日あれば終わってしまうのは当然な訳だよね。そう、こうして自分のサラキトア(南キトア)集落内の探索は、あっさりと終わりを告げてしまったんだ。





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