22.改革をしよう⑥【農業生産編その3】
さてなんとかここまで色々とやって来ましたけど、ちょっと振り返りをしてみましょう。こういうのは大事な事だよね。公衆衛生改革の方は、煮沸消毒と生水禁止が完全に生活習慣に定着してきたみたいで、乳幼児死亡率がほぼ半減しました。それでも死亡率2割だけどね……。下痢による子供の死亡率も随分と下がってます。前は5歳以下だと下痢=死亡みたいな感じだったけど、それもかなりの改善を見せてきてるね。統計をきちんと取ってないから数字的には良く判らないけど、お葬式の数が確実に減っているのは実感として感じられます。
農業生産改革の方も順調だ、肥料導入、クローバー導入そして救荒作物のホームラン王こと、じゃがいもさんの導入と……。最近では千歯扱きの導入ですね。麦の生産についてはエリシュキタスで結果が確認できたから、集落の全体で益々改革が進んでいくはずだ。今後はもっともっと生産性が向上するでしょう~。この分なら多分公衆衛生改革の影響で人口が増えても対応可能だろう。このまま行くと、どちらかと云うと食料問題じゃなくて住宅問題の方が大きくなるかも知れないな。なんと云っても、サラキトア集落は、ソンの壁に囲まれた閉鎖集落だから、居宅地面積には限りがあるからね。
この点についてちょっと親父殿に聞いてみた処、そんな場合一般的には、2つの対策があるらしい。まずは家屋を建て直す方法で、これは小さな2階建ての家を数軒潰して、大きな3階建ての家に建て替えるらしい。つまり土地の有効利用って事だね。親父殿によると、サラキトア集落なら今の倍位まではこれでいけるらしい。なるほど、それなら当面は心配ないな。もうひとつの方法は、集落に隣接させてもうひとつ集落を作る事らしい、つまり新たなソンの壁を作るって事だな。こっちのが根本的な解決だけど、新しくソンの壁を作るには数年は掛かるから、早めに着手しないと間に合わなくなるね。まぁ、当面は家の建て替えで凌いで、その間に新しいソンの壁を育てるんだな。
そうそう千歯扱きを開発した事で思ったのがその他の農具の改善だね。鉄製の鍬とか鋤なんかの農具を導入したいんだけど、そもそも鉄製品がやけに高価なんだよね。どうも鉄の生産量が少なすぎる感じなんだ。これは鉄の原料が少ないのか、製鉄の生産性が低いのか……。多分両方なんだろうな、鉄=Feは宇宙において豊富に存在する元素なんだ。前世の地球では地殻の約5%を占めていたからね。こっちでも希少元素って事はないだろう。多分砂鉄やら岩鉄がある程度地表に存在するんで、逆に地中の鉄鉱石を探す技術が発達してないんだろう。大規模な鉄鉱床は過去海であった処に多いんだよね……。それに製鉄には溶鉱炉に多量の酸素を供給する為に人力以外の動力源が欲しい処だ。もしかして火系の魔術で……、いや多分魔術は継続的な大量生産には向かないだろうな……。
まぁ、鉄の大量生産には、大規模な鉄鋼床の開発と、鉄鉱石の輸送路と輸送方法の確立、それに人力以外の動力を持つ大規模鉄工所が必要になる。これってのはもう産業革命レベルの話しになってしまうんで、どう考えても今は無理だな……。
そうそう人力以外の動力と云えば、こういう世界で考えられる決定版が水車だね。水車は製鉄所での利用以外にも様々な利用法があるんだ。例えば製粉、これも人力でやると結構大変な仕事なんです。例えば王定売価で売られる小麦は未製粉なんですね、それが製粉されて小売されると売価は、ほぼ4割高になる訳です。つまりこれが製粉の手間賃って訳ね。あとは灌漑用の揚水動力ですね、これができると溜池のキトアサラレクの位置(高さ)から決定されてる灌漑可能域=耕作可能域が、グッと広がる事は間違いない。これはマジ相当にでかい。それに脱穀や製糸の動力源にもなるからね。ほんと水車は優れもんなんだけど、でもねキトア郡というか、セキニア王国には基本河がないからね~。確かに灌漑用水路はあるけど、ちょっと水量不足だし常時水が流れてる訳じゃなからね。うん、ちょっとこれじゃ水車は無理っぽいってのが現実でした。これはほんとにマジ残念でした。でも必ずいつか水車は導入してみせるぞ~。
水車は諦めました。しか~し、良く考えて見たらまだやる事が残っていたぞ! そうそう、アレを忘れちゃ駄目だろう~。なんと云ってもアレは大好物だしね。さぁどんどん行きましょう。と云う訳で農業生産改革第4の策に着手する事にしました。
「さぁ、みんなこれから宿題を出すからね。きちんとやってきてね」
「しゅ、しゅくだい?」
「すくだい? なんだべ」
「「「なんだべ」」」
お、初の宿題にみんな戸惑っているな。大丈夫そんなに難しいことじゃないからね。
「ギル様さぁ、宿題ってのはなんだべ?」
「えっ?」
「だからよぉ、宿題の意味がわからんだべ」
「ああ、宿題ってのはね……」
そうか、まずはそこから説明しなくてはいけないのか……。今は公童塾の修道の時間です。テンション上げ上げで農業生産改革第4の策を初めようとしたんですが、“宿題”と云う単語にポカンとした顔つきのヴァリ達の顔を見ていたら、ちょいテンションが下がってしまった……。いかんいかん、こんな事じゃいかん。気を取り直して、まず“宿題”の意味を説明してから、なんとか宿題の内容を伝えました。そしてめいめいひとりづつに何本かの木の切れ端を手渡しました。みんな~、頼んだよ。正確な情報こそが全てだからね……。
~ナハトマ・イジュマーからの視点~
ここ最近の村の変化には目を見張るものがあるのぉ。正直こんな風景をこの歳になってから見るとはおもわなんじゃ。世の中とは条件さえ揃えば、こうも様変りするものなのじゃな。きっと創始王セキニア・アグヴェントの御世もこの様な風景であったのじゃろう……。こんな風景を見ていると、何故かふと懐かしい様な気がするのぉ……。はて? ほんに不思議な事じゃ。
しかし下所の件は、確かにサロンの王都の話を参考にしたのうじゃろうが、下のものを、肥料にするなどテゥス・オマジクのどこにも書いておらんわ。なんやら護民官
腹下しへの対策は、たしかにコスラの応用じゃな。コスラの症状は確かに腹下しじゃから、同じ手を使うのはなんとか理解できるのじゃ。しかしあの沸騰での……、“消毒”? じゃったか? あんな事はテゥス・オマジク
あのクローバーにしてもそうじゃ。“カドゥ
そしてあの千歯扱きじゃ。一体アレはなんじゃ。確かに簡単な構造じゃが、あの様な物は今まで聞いた事もない。猫人の里に伝わる物じゃと? そんな馬鹿な事はありゃせんじゃろ。そもそも猫人の里では麦など作りはせんのじゃ。あの千歯扱きも坊主
なんでもエリシュキタス
それに最近公童塾の小僧共になにやら調べさせておるようじゃが、坊主
だが不思議な事にわしのどこかに、これは当然な事だと感じてる部分もあるんじゃ。あの小僧なら当然……、そしてもっと、もっと、と思っているわしが、確かに存在するようじゃ。ほんに不思議な感覚じゃな。まるでわしの中に、もうひとりのわしがいるかのようじゃ……。
わしは今年で86歳じゃ、まだまだ坊主と共に行けるじゃろう。そしてなぜだかわしは、あの小僧の行き末をこの目で直接見なくてはならんと強く感じるのじゃ。その上いまのわしはなぜだか、この歳に成ったのに死ぬ事が全く怖くないんじゃ。と云うか若い時の様に、死への恐怖が完全に消えておる……。ほんに不思議な事じゃな。じゃがあの小僧の行末を見たいと思うならば。ここはあの健康馬鹿サロン
~ギルナス・ヴェルウントからの視点~
公童塾のみんなに宿題を出してから早1カ月が経ちました。なんと宿題の提出率は100%でした。そして集落の世帯網羅率は88%近いです。子供の居ないお隣さんの家も調べて呉れた子も多かったからね。みんな頑張ったね~。今宿題の提出物として戻って来た木の切れ端を1枚1枚丹念に見ながら仕分けをしています。その木の切れ端にはナイフとかで付けた傷、いえいえマークが幾つも刻まれているんです。えっと、これは8個、こっちは6個、また8個、これは7個……、おお12個だ。こっちは5個か……。また9個、8個、7個、8個、6個……、11個に15個!、これは凄いな。実はこの数字は、切れ端に刻まれたマークの数なんです。つまり各家で飼っているジキン
そして1カ月の継続調査結果を加えて再度整理した結果、ジキン
集落でジキン
そこで公童塾でみんなに出した次の宿題は、こう成る訳ですよ。“明日から家でジキン
集落では雄のジキン
ジキン
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