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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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13.改革をしよう④【農業生産編その1】

 

 

 次の改革に備えて親父殿から色々と話しを聞いてみました。それによるとセキニア王国における農産の収穫量は、ここ数百年大きな変化は無い様です。ってか最近は若干悪化してるみたいですね。むむ、なんでかな? なんか気候変動とかあったのかな? 結局どうも良く判りませんでした。そこで現地調査に切り替えました。さて集落の農作業をよくよく眺めた結果、セキニア王国の農業は、前世のヨーロッパの中世初期的な感じでした。若干は家畜を使った農作業もあるけど、家畜が少ない事と農機具が未発達な為、農作業のほとんどはほぼ手作業です。それに肥料も使ってないし、これはかなり能率の悪い農業ですね。ただし灌漑施設だけはかなり立派です。ってか、これがないと、雨がほとんどないから農産そのものが成り立たないって訳だよね。さてこれを見た結果から結論を云うならばやるべき事は一杯あるって事だね。




 こんな風に農業の効率があまり良くないので、収穫量もそれほど多くはないです。だから現時点での集落の食料事情はあまり良くはないんですね。例えば、集落の家で食べるパンは、そのほとんどが黒パンです。この黒パンって奴は、ライ麦の粉から作られています。まぁほんとに黒いし、歯応え抜群(硬いんだよ。マジ硬い)なパンです。小麦から作る白パンなんてのは、滅多にお目に掛かれませんよ。それって云うのも、小麦は奉納(税金)の中心品だから、優先的に持っていかれるし、残った小麦からは種籾を確保しないといけない訳だからね。つまりは小麦を材料とする白パンなんかは贅沢品って事です。でもピザはライ麦粉と小麦粉を2:1にしても美味しく頂ける所が、秀一だよね。まぁ小麦100%のが絶対に美味しいんだけどね。


 そして小麦の1.5倍の収穫が見込まれる大麦、こっちはオートミールの材料になります。これが集落にとっては大きな食料源となっています。黒パンとオートーミール、これが集落の主食と云っても間違いないです。家畜もいるけどそんなに肥えてる訳でもないし、ギリギリ冬場の緊急食料って感じです。正直一番食料として期待できる家畜はジキンですね。ただ貴重なタンパク源となる卵は、ほとんど街へ出荷されてます。これが集落のお寒い食料事情なんです。う~ん、そりゃ栄養失調でお腹が大きく膨れている子供がゴロゴロって感じじゃないけど、一般にみんなスマートな感じです。オバル兄弟だって太ってるんじゃなくて、逞しいって感じだね。ええ、子供の栄養事情は正直云って不安一杯な感じですね。つまり、こんな集落の食料事情を改善する為にも、農業生産力の改善は急務だって事だ。






「ね? ほとんど臭いはしないでしょう?」

「おお、おんとだなぁ。ここがあのうんこ貯場なんだべか?」

「おんとだ、おんとだ臭くねぇだべよぉ」

ここはサラキトア集落近郊に広がっている広大な休耕地の一角です。ヴァリとゼェタのふたりが驚いた表情を浮かべて顔を見合わせている。そうそうここは休耕地の一角で、半年前からし尿廃棄場として利用されている場所なんだよね。


 さてサラキトアって云うか、このセラワルド世界での農業は主に三圃式さんぼしき農業です。つまり農耕に適した土地を三つの圃場に分割して、その圃場を冬作物(冬小麦)、夏作物(大麦・エン麦(夏穀)・ソバ・ヒエ・アワ・各種野菜類)、休耕地の3種のどれかとして利用する方法だね。これって農地の地力回復が目的なんだよね。なんといっても“肥料”って概念がないからね……。しかももともと、地力の弱い草原に建国したセキニア王国では、冬作物→休耕地→夏作物→休耕地というローテションを採用しているらしい、う~んマジ効率わるっ! もし休耕地にするのを一回減らすことできれば、それだけで1.5倍の生産性向上かな?


 ところがよくよく聞くとそこまで土地を休ませても、地力が落ちてしまう土地がでてる始末なんだってさ……。なんだよそれ? そしてもう3年程休耕地になっている場所が(実は荒廃地って云われてますけど)、し尿廃棄場に指定されているんだね。まぁ特に使い道が無いんだから当然って云えば当然だよね。


 し尿廃棄は、この休耕地(荒廃地?)の所々に直径5m、深さ1m弱程の窪みを作ってそこに貯めるって感じです。これは元々将来の事を考えて自分が提案した方法ですね。まぁ、それにいくら荒廃地といっても、ただし尿をそこら辺に撒き散らすって訳には行かない訳なんで、結構すんなりと受け入れられました。ひとつのし尿貯めが一杯になるのには、だいたい2カ月位掛かるかな?


 実はですねそのし尿貯めを、時々キャスに頼んで自警団の修行の一貫として撹拌させて来たんですよ。まぁ、さすがにこれはすっごく評判が悪かったですけどね。

「修行の時間でよぉ、こんなかを混ざしたん時には、きっちり臭かっただなぁ」

「んだんだ。あんときはえれぇ臭かっただよ」

オバル兄弟はきょとんとした表情を浮かべている。そりゃそうだよね。まさかし尿が撹拌された事で醗酵分解されて堆肥化してるなんて思わないよね。うん、ここはもう臭いがほとんどしてないから堆肥化完了だな。思わずニヤっとしちゃった。


「そこでね。ヴァリとゼェタにちょっと相談なんだけどさ……」

では、いよいよ農業生産改革第1の策に着手しますか……。




「ギルっ! お前一体なにをしたんだ?」

親父殿がなんとも云えない表情を浮かべながら、塾所の2階の部屋でテゥス・オマジク(ことわりの書)をパラパラとめくっていた自分の所に飛び込んで来ました。


「ガダスシアプ、お父さま、なんですか?」

「ああ、ガダスシアプ。なんでもヴァリとゼェタが荒廃地で小麦を栽培してるらしいんだが、それってお前の指示らしいじゃないか?」

はて? 特に問題行動をした覚えはないけど? なんだろう? ああ、その件ですか。


「はい。そうですよ」

「しかも、うんこ貯場のアレを畑に撒いてるらしいじゃないか? それもお前の指示なのか?」

「ええ、“元アレ”ですけどね」

どうもその“うんこ貯場”という云い方はなんとかしたいな……。


「畑にアレを撒くなんてとんでもないと騒いでる奴が何人もいるんだ。だがな不思議な事に小麦が結構育って来てるんだ。あそこは、もうなんにも育たない荒廃地だったはずなのに……。それでますます騒ぎが大きくなっているんだ。しかもヴァリとゼェタは、みんなお前の指示だって云ってるから、連中が俺の処に詰めかけてきてるんだよ」

「ええそうみたいですね。ヴァリとゼェタから話しは聞いています。きっと荒廃地の地力が回復したんですよ。でも騒ぎの事は知りませんでした……」

「荒廃地の地力が回復? なんでそんな事が?」

よしっ、ここが肝心だ。ここで納得して貰わないと、せっかくのヴァリとゼェタの苦労がパァ~になっちゃうからね。


「父さま、今の三圃式ですけど、休耕地の時の畑はどうしていますか?」

「ん? 休耕地だからなんにもしてないだろう?」

「そんなことありませんよ。生えた雑草を牧草代わりにして、カドゥ(家牛)ピグゥ(家豚)を放牧しているんですよ」

「ああ……、そうみたいだな」

親父殿は突然の話題変更に戸惑ってるみたいだけど、なんとかちょっと難しい顔をしながらも、いろいろと思い出している様だ。


「三圃式農産を初めに唱えたのが、テゥス・オマジク(ことわりの書)だってのは、知っていますよね?」

「ああ、それくらいは知ってるぞ」

「そこにも、休耕地では家畜を放牧する事が重要だって書いてあるんですよ」

「そ、そうなのか?」

親父殿は、元々が戦士だからあんまり農業については詳しくないんだよね。だからかな、なんかフワフワした表情を浮かべてるぞ。


「はい。そうなんです。でも、なんでそうすべきなのかは書いていないんですよ」

「……」

まぁ、それが書いてない理由は、きっと当たり前過ぎて書くのを忘れたって処じゃないかな。ではあとひと押ししてみるかな。


「そこで考えてみたんです。放牧する事でなにが土地に影響するんだろうかって」

「……」

駄目かっ。気が付かないですか……。


「それで僕は、1日中ず~っと休耕地で放牧してるカドゥ(家牛)を見ていた事があるんですよ」

「むむ……」

「まぁ、カドゥ(家牛)はずっと草を食べてるだけでした。草を食べて食べて食べて、そして“ふん”をするんですね。延々と唯その繰り返しですね」

親父殿ぉ~、ここまでヒント出したんだから気がついてぇ~。


「ああ、そうなんだろうな……」

「ええ、そうなんですよ……」

あああ、まだそのフワフワ表情のままですか……。う~~ん。どうしよう、さすがに気がついて呉れるとおもったんだけどな。仕方ないか……。


「父さま、カドゥ(家牛)が土地に与えていたのは、“ふん”なんですよ! カドゥ(家牛)のふんが地力を回復させているんだと思うんです。そしてテゥス・オマジク(ことわりの書)もきっとそれが重要だって云ってるんだと思うんです」

「むぅ……」

ここまでは確かに、テゥス・オマジク(ことわりの書)に書いてありました。まぁ結構超訳してるけどね。うんうん、親父殿の眉間に皺が寄ってきてます。よしっ、あとひと押しだね。さて、ここからは全くテゥス・オマジク(ことわりの書)には、書いてない事なんだけどいってみよう~。


カドゥ(家牛)が食べてるのは草ですよね? それに比べるとヒトはもっといい物を食べてるじゃないですか? だからきっとカドゥ(家牛)のふんに地力回復の力があるなら、ヒトのアレはもっと効果あるんじゃないですか?」

しばらく眉間に皺を寄せていた親父殿の表情が、パッと明るくなった。やった! やった! 来ましたか?


「そうかっ。だからヴァリとゼェタはアレを畑に撒いているのか! もしそれがほんとに効くなら荒廃地の復活ができるぞ。これは凄い事だぞギル」

ですです。そうです。理解してくれましたね。いや~良かったぁ~。ええ、結構あるんですよね。この荒廃地ってのが、それも割合と集落近辺の条件のいい土地に多いんですよね。まぁ条件がいい土地なんで休耕地にするのがもったいなくて、頻繁に耕作してしまったんだろうね。悲しい人間の性だよね。だからもしその荒廃地を再利用できるならどれくらい効果があるかは、さすがの親父殿にも一発で判ったみたいだ。


「父さま、でも単にアレを撒けば良いって訳じゃないんですよ……」

ここからは完全に前世知識なんだけど、まぁいいだろう仕方ない……。そこで親父殿にし尿の堆肥化の方法について説明した内容はと云うと……、あまり多量にし尿を貯め無い事。そしてし尿貯場を定期的に撹拌する事。この撹拌作業を最低2カ月は継続する事。そして畑に肥料として撒く場合は、水で2~3倍に希釈して撒く事。みたいな感じです。そんな自分の話しを必死な形相で聴き続ける親父殿、多分どこまでがテゥス・オマジク(ことわりの書)の記述なのかとか既に解ってないよね。もの凄くちょ~有名な割には、実際に読んだ事がある人はほとんどいないって云う、このテゥス・オマジク(ことわりの書)は、ほんと使い勝手がいいな。う~ん、それにしてもほんとに“うんこ貯場”って呼び名は、ど~しても嫌な云い方だな。


 さてこの農業生産改革第1の策で、荒廃地の復活と基礎的な地力強化が出来るハズです。では農業生産改革第2の策に手を付けますか。




「ギル様さぁ、今度の休耕地はここだべ」

「んだんだ、そんでここは“肥貯ひため”になんねぇだよ」

今回も改革策の協力者は、ヴァリとゼェタのオバル兄弟です。もう間違ってもジャ○アンなんて呼ばないからな。そして自分達の目の前には小麦の刈り込みが終わりその後の耕しが完了した、黒々とした畑が延々と広がっています。ここがこれから休耕地になる予定の畑なんです。つまり放牧地になるって事ですね。


「よし。それじゃはじめようか」

「「おう」」

「はい」

自分の掛け声で、自分にヴァリとゼェタそして今回はセシルも加えた4人は、ゆっくりとその休耕地になる予定の畑の中に足を踏み入れます。丁寧に耕された畑の表土は結構柔らかいので、足がちょっと土の中に沈み込みます。すると鼻にはあの土の臭いがプンプンとしてくる。まぁ、そんなに嫌な臭いじゃないけどね。さて始めるとするか。ズボンの腰紐からぶら下げた麻の袋の中に手をいれると、その中に入っている種をちょっと握って辺りに振り蒔きます。ええ、残りの3人も自分の周りでそれぞれ同じ事をしています。セシルだけはローブの中に右手を入れては種を蒔いている。そうそうセシルはローブ姿なんで、腰紐がなんいで麻袋を吊り下げる事ができないみたいです。多分ローブの下の……。いかんっ、これ以上の想像はいけない。いけない。


 そうです今自分達が蒔いてる種は、クローバの種なんです。クローバ自体は草原に一杯自生しているので、種集めは全然簡単でした。さてこのクローバーってのは豆科の植物ですが、この豆科の植物ってのはね、土中の根粒菌さえあれば、空気中の窒素を吸収して自身の根粒の中に固定化して蛋白質を合成するんだ。つまりは地中の養分をあまり使わないってことだよね。更にクローバーはあまり根を深く張らず水分をあまり吸い上げません。そうですクローバーは地力を低下させない植物なんです。その上クローバーには良質な蛋白質が豊富に含まれているので、クローバーを食べた家畜はよく育つんですよ。そしてそのクローバーを食べた家畜の“ふん”には良質の窒素が含まれているので、とても良い肥料になるんですね。つまり休耕地にクローバーを植えると云う事は、地力と水分を奪わずに家畜の育成を増長して、かつ家畜のだす肥料の質を向上させて、地力の回復をより進めると云う正に1石3鳥の効果が望めるんですよ。実際クローバーの牧草としての利用ってのは、農業革命とさえ云われてるんだ。


 たださすがにこれの説明はかなりムズいんで、実力行使を先行しました。3人にはいつもカドゥ(家牛)が、クローバーを好んで食べてるからと説明したんだけど……。まぁ、これは正直かなり厳しい言い訳なのは判っているけどね。でもこの3人は、自分に対してあんまり説明を求めてこないんでほんと助かります……。う~ん、でもそれはそれで問題な気もするんだけど……。さてこの後、4人で1カ月かけて休耕地になる予定の畑全てに、クローバーの種を蒔きました。はい。結構疲れましたよ。でもでも効果は絶対あるはずです。そしてその効果をオバル兄弟から集落の大人達に説明してもらえれば、きっとこれも定着するはずですよね。ちなみに“うんこ貯場”は、自分の地道な活動の甲斐もあって、いつの間にやら“肥貯ひため”と云う呼び名が定着してきました。うん、これも一種の改革だな。




 

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