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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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9.平穏な日々、黄金の思い出①

 

 

「このセラワルドで使われている言葉には主に4種類の言葉があります。まずは今みんなが勉強しているエスタ語ですね。そういっつもみんなが使ってる言葉だね。このエスタ語はセラワルドで一番広く通じます。なんといってもセラワルドの10カ国中の9カ国の公用語ですからね。だからエスタ語さえできれば、セラワルドではほとんど困る事はないんだよ。次にフェルキア族長国の公用語のフェルム語ですね。そしてアニウラワルドに隣接してるロキシア民国が、第2公用語として定めているアニウラワルドのゲルビム語があります。4番目の言葉がヒト以外の諸族が広く使っている古獣語の4種類ですね。


 もしも別の言葉を覚えたいなら、まずはゲルビム語がいいですよ。ゲルビム語はエスタ語の源流なので、ゲルビム語での会話を覚えるのは僕らにすると結構楽です。次は古獣語かな? 古獣語は非常に構造が単純だから覚え易いです。古獣語ってのは基本単語を並べるだけな感じだからね。でも逆に単純なんでアナワルド(全世界)共通らしいです。もし将来セラワルドの外に出たいって思ってるなら、古獣語はお奨めだよ。


 フェルム語を覚えたい場合にも、まずは古獣語から始めるといいよ。フェルム語の単語の多くは古獣語から来てるみたいなんだ。だから…………」

はい、今日も公童塾の修学の代理先生をしています。あの思い出深い怒涛の公童塾の初日から。もう半年が過ぎています。ええ、あれ以来非常に平和で望ましい形での修学の時間を過ごしています。えっと今日は、老師(イジュマー)さんからテゥス・オマジク(ことわりの書)を借りて来てちょっと講義っぽい事をしています。でもさすがテゥス・オマジク(ことわりの書)ですね。内容が充実してる事は勿論だし、みんなが目を丸くして注目するんだよね。ほんとさすがテゥス・オマジク(ことわりの書)って感じです。


 そうそう補足事項として……、このエスタ語ってのは表音文字です。そして文字数は48文字もあってアルファベットより12も文字が多いんですね。このエスタ語の文字はどっちか云うと発音記号に近い感じです。この48文字を組み合わせる事で、ほぼ全ての単語の発音を表現出来ます。英語みたく綴りと発音が違うって事はまずありません。つまり文字の組み合わせによる発音法を覚えると、ほとんどの単語の読み書きが可能となるんです。実はここがゲルビム語との大きな違いで口語においてはエスタ語とゲルビム語は非常に親しいんですが、文語は、文字そのものが大きく違うんで、ゲルビム語の読み書きを覚えるのは結構大変です。ええ、経験者は語るですね、自分かなり苦労してますので……。ちなみにテゥス・オマジク(ことわりの書)によると、このエスタ文字はロキシア・エスタ・ヴォツェックの指導によってゲルビム語から創作されたらしいです。ロキシアさんあんた“世宗”か?




 さてエスタ語の修学が終わると、男子は修行の時間です。この時間の代理先生役は、当然キャスです。キャスはなんと今やレイジナ流カイト派の練技(士)を賜授(しじゅ)されているんです。古武士(アドバン)さん曰く、“筋が良いである”らしい。ちなみにこちらは相変わらず白技(士)のままです。古武士(アドバン)さん曰く、“努力はいつか報われるである”らしい……。




「いやっぁぁ」

“カンッ”

そんな白技(士)の自分が正眼に構えた木剣を、鋭い気合と共に素早く体を飛び込ませながら、鋭く打ち込む。だけど乾いた音と共にいともアッサリとその剣筋は払われる。剣先が流れたと同時に相手がこちらに飛び込んで来て……、グッ、脇腹に鋭い衝撃。一応胴回りには木製の防具を巻き付けているけど、今のは割りと痛いんですけど……。


「ギル様さぁ、そげなまっ正直ではいかんだね。もぅちぃとキュッっと変化ばつけんといけんだよぉ」

ジャ○アン1号、もとい歯欠けのオバル事、ヴァリビル・オバルが身体をひねりながら偉そうに、横腹を抑えながら道場の床に膝を着いてる自分に講釈をたれる。クソ歯欠けのクセに……。あの公童塾の初日に根本付近から折れた前歯は抜いてしまえば、また次が生えて(こっちの人の歯はサメ並に何度も生える)来るんだけど、なぜかヴァリは欠けた歯をそのままにしてる。なんでも本人が“おらっちは、このままでいいんじゃ”と頑なに抜くのを拒んでいるらしい。まったく変な奴だ。


「んだんだ、ギル様ヴァリの言うとおりだべ、こうシュッとできんかね? シュッだべ」

キャスが歯欠けのオバル事、ヴァリのそんな言葉に頷きながら、ありがたい助言アドバイスをしてくれる。だが、しかしキャスにしろヴァリにしろ、その“キュッ”ととか“シュッ”とかじゃなくて、もうちょっときちんと具体的に教えてくんない?


「こうじゃ、こうじゃ。こげんな風にチャッとできんがね?」

お前もか、ジャ○アン2号……、いやヴァリビル・オバルの双子の弟、ゼェタビル・オバルよ……。なんでもオバル兄弟は、近々倣技(士)を賜授(しじゅ)されるらしい。古武士(アドバン)さん曰く、“将来が楽しみである”らしい。古武士(アドバン)さん、こ、こちらの将来はどうなっておりますか……。


「んではぁ、相手を変えてもう一本だべ」

キャスの号令が道場に響く。そして自分の前には、ヴァリに変わってゼェタが上段の構えを取る。冗談じゃないよ、相手が変わってねぇ……。


「いやっぁぁ」

正眼に構えた木剣を鋭い気合と共に鋭く打ち込む……。そして結果にも変わりはなかった……。






 自分がキュッ”とか“シュッ”とかって修行をしているその頃、一方の女子はと云うと塾所の2階の大広間に集っています。そこでお母様と集落のおばあさん達(無給奉仕です)から機織りと刺繍を習っております。


 実はサラキトア集落の多くの家では、2階の天井裏部屋でかいこを飼育しているんですよ。まぁそれって当然絹を生産する為だよね。蚕の繭を茹でその糸をよることで絹糸ができるんですね。今まではこの絹糸を農業ギルドを通じて裁縫ギルドにただ売っていた訳だけど、まぁどこの集落でも似た様な事はしてるんで、そんなには儲からないんだって。まぁ養蚕が主産業じゃないんでそんなに量が採れないからね。


 お母様は公童塾が始まる直前に、なぜか私財で3台の中古の機織り機を買ったんだよ。その買った機織り機を授業で使って絹糸の方形の小さな布(ハンカチーフ)を織っるって訳だね。その上で出来上がったハンカチーフに刺繍を施す事で付加価値を一気に付けようって算段だね。実習の事業で実利を狙うか……、う~ん、マジ商売? 経営? のセンスあるな~。既に2~3回集落に来た雑小商人に、お母様が刺繍をしたハンカチーフを売った所、大評判で単なる絹糸の数十倍のお金になったらしい。その後も追加注文の依頼も来ているみたいなんだ。


 でもね実は公童塾の女子で売り物にできる品を作れる子はまだいないんだって……。したがって現段階では塾所の2階では、多量の失敗作が連日生産されると云う有様です。つまり大赤字経営ですね……。機織り機を買ったお金、集落の家から絹糸を買うお金、刺繍用の糸を買うお金……、親父殿に聞いた処、この授業には公童塾のお金は一切使われてないらしいです。親父殿はこの話しを聞いた時には大反対だったそうです。しかしお母様は迷惑は絶対に掛けないと強行したらしい。つまり本来こんな授業は継続できるハズがないんです。ええ、普通なら一二度の体験授業ですよこんな事は……。でもでもなんとこの授業は連日の様に行われていて、その費用は全てお母様が穴埋めしているんだって……。どうなってるんだ?


 お母様が凄いお金持ちで一杯貯えがあるなら、金持ちの道楽って事になるけど、当たり前だけどお母様はお金持ちなんかじゃない。そこでお母様は、この公童塾で刺繍の授業を教えだしてから、数日に1回カリ姐ぇさんと共にサラッド(家馬)に乗って半日程外出をする様になりました。そして周辺の集落を回って、井戸の水を井戸の上方に設置されてるあの巨大な木製バケツ、そうそう上水桶って奴に、動系術で水を入れているんだ。この仕事は“水揚げ”って云うらしい。元々お母様はサラキトアでだけで水揚げをやっていたんだけど、今では周辺の集落を全て回って水揚げをやってるんだ。当然この水揚げには各集落から相応の謝礼金が出ています。そしてこの謝礼金の全てが、公童塾での刺繍の授業の費用に注ぎ込まれているんだ。お母様曰く“刺繍の名工を雇う事を考えたら、これはとっても安い先行投資なのよ”だそうです。どうやらお母様はこれを単なる授業とは考えてはいない様子です。お母様その慧眼と経営センスには正直感服致します……。


 さて女子の修行に代わる授業としては、機織り、刺繍以外に料理があります。ここではお母様オリジナルのピザのレシピ等があっさりと公開されています。まぁ前世でも料理のレシピは特許が取れなかったからね。そして若い子のアイディを使った新しい料理の研究が盛んに行われているらしい。


「ギル、ほんとうに子供の発想は凄いわね。きっとピザ以外の新料理が生まれるわ。これで女の子達の将来の可能性がどんどんと広がっていくわ」

本当に嬉しそうな表情を浮かべるお母様。これはどうも自分や親父殿、老師(イジュマー)さん、古武士(アドバン)さんの想像を超えて、マジ大きな変革の種になっていきそうだ。そうだね、やっぱりこの世界の主導権の実態は女性が担っているんだね。それを肌で実感しています。






 さて今自分達はそんな公童塾から離れ、ウルガム支道から枝分かれたしたミシュトア支道をゴトゴトと荷台の上で揺られながら早歩き位の速度で進んでいます。


「どうどうぉ~、さぁみんなさぁ、着いただぁよ」

ジャ○アン1号、もとい歯欠けのオバル事、ヴァリビル・オバルが手綱を引いて荷馬車(いや、これは大八車だな)を止める。自分達は1頭のポニ(群馬)に牽かれた、大八車の上に乗っているんだ。




 ポニ(群馬)ってのは、サラッド(家馬)をかなり小型にした馬で、体高(肩までの高さ)は140~160cm程で、体重は350~450kg位、前世のポニーと云うよりも、かなり小ぶりなサラブレットって感じかな。まぁサラッド(家馬)の2/3位ってイメージですね。あとねサラッド(家馬)は、ほとんどが栗毛なんだけど、ポニ(群馬)のほとんどは芦毛(灰色)なんだね。そしてその灰色や黒灰色の体毛は、年を重ねるにつれ、年々白くなっていくんだって。それとサラッド(家馬)には、サラニム(野馬)の痕跡である可愛い八重歯がありますけど、ポニ(群馬)にはそんなものありません。どうやら同じ馬なんだけど系統的には割りと離れてるのかな?


 えっとですね。サラッド(家馬)ってのは唯一王国が種育している馬なので、手に入れるには買うしか手がありません。そして当然ながらサラッド(家馬)は、とてもとても高価なんです。ええ、間違いなくこちらの世界の高級車です。したがって一般庶民(自分たちね)には、馬=ポニ(群馬)となる訳ですよ。ポニ(群馬)ってのは、サラニム(野馬)に比べてるとずっと気性が大人しいので、野生のポニ(群馬)を捕獲して馴らす事が全然可能なんだって。だから捕獲されたり飼育されたりしたポニ(群馬)を随分と安く買う事が出来るらしいです。集落には自分で捕獲したポニ(群馬)を使ってる人もいる位だね。つまりポニ(群馬)は小型大衆車? 軽自動車って感じかな? でも自動車税じゃなくて馬税ってのが、ほんとにあるらしいから、マジ自動車な感覚と一緒みたいだ。この軽自動車……、いやポニ(群馬)サラッド(家馬)に比べると6本の脚が短くて太いので、あまり速くは走れないですけど、体重が軽い事もあって餌が少なくて済むし、意外にスタミナと馬力があるらしいです。低燃費でパワーがあるって、ポニ(群馬)よ、お前はス○キキャリーか……。


 そんな愛されるスズキキャ○ー……いやポニ(群馬)は、普通に騎乗も可能ですが、どちらかというと、牽馬として利用する事が多いみたいですね。騎兵の乗馬としても利用される事もあるらしいけど、サラッド(家馬)サラバム(戦馬)に騎乗する騎士が重装備可能な事に比べると、ポニ(群馬)に騎乗する騎士は軽装備になるんで、かなり戦力としては劣る事になるみたいです。まぁだからこそサラッド(家馬)サラバム(戦馬)に価値が出るって事だね。うん、はやり適材適所(TPO)は大事だって事だな。




 そんなポニ(群馬)が牽いている大八車の上には、ヴァリとゼェタに、キャスとカリ姐ぇさん。そしてなんと自分の隣に、セシルがちょこんと座っています。ええ、今日はセキニア創国日なんですよ。そう今日はウズタン(10の月)の1の日、明日からは夏産物の収穫が始まり、それが終われば直ぐに冬小麦の種蒔となる月。一年でも一番忙しい月です。そんな月の初日に休日を設定するとは、さすが創始王だけの事はあるなって素直に感心してしまう。


 まぁそんな訳で今日は、自分にとっても多分みんなに取っても初めてのピクニックって事です。そんなみんなが乗った大八車が漸く停まったのが、集落から2時間程の距離にあるかなり大きな丘の裾野をちょっと登ったあたりだ。そしてほんとの目的地はここから支道を外れて歩く事、あと1時間位の所なんだ。自分自身は、オバル兄弟と何度か来た事があるんだけどね。うん、それだからこそ是非ともセシルを連れて来たかった処なんだ。


「こっからはよぉ、馬車からおってよぉ、あるくんだなぁ」

そ~いいながら、ヴァリが御者台からいち早く飛び降りる。そしてその後で大八車の後ろに回ると、荷台から降りようとするセシアの手を取って手伝ってくれる。おっ、なんだ凄い紳士だなヴァリ。でもね、ほんとはその役はこっちの役だよな? セシルの後に自分、そしてカリ姐ぇさん、キャス、ゼェタと次々に大八車の荷台を飛びおりる。


 乾いた道の上で、うっ~っと背伸びをしながら、ちょっとホッとする。今まで乗っていたこの大八車って奴は前世のリヤカーとは違って、両輪が車軸で繋がっているタイプなんだよね。つまり結構経の大きい車輪の車軸の上に、荷台の床がある訳です。したがってかなり重心が高い、それにサスペションに相当する機構は、全く存在してないので、まぁ揺れる事揺れる事。一応荷台の床にクッション代わりとして、麦藁を束ねたものをぎっしりと敷いているんだけど、まぁお尻が相当痛くなるよ。自分はまだ我慢できるけど、セシルの……が心配だな。機会があれば必ずこの大八車や馬車を改良してやるぞ……。セシルの後ろ姿の……を見ながら力強く拳を握り決心した。




 大八車を降りた6人はミシュトア支道から延びる脇道をズンズンと進んでいく。先頭にキャスとゼェタが立ち、その後ろに自分、セシル、カリ姐ぇさん、最後部にヴァリが引き綱をもって大八車を引いてくる。この脇道は支道とは違って、茶赤色の土と礫での簡易舗装はされていない。でもよくヒトや大八車(荷馬車?)が行き来してるから踏み固められていて、赤い土がむき出しで草は道の真中にちょろちょろと生えている程度だからかなり歩き易い。でも轍が少し深くて、凸凹も多いから最後尾の大八車は随分と弾んで大きな音を立てている。空荷だから仕方ないけど、さすがにこの道であの荷台には乗っていられないな。自分的には本当なら全行程を歩いた方がいいんだけど、カリ姐ぇさんにこの計画を話した時に、“ギル様、ちょっとは考えないとだよ。いい? セシルにはその距離の歩きは無理だよ”とやんわりとご指導頂きました。やっぱ頼りになるな~。


 みんなが歩く脇道の両側には初秋の草原が広がっている。自分の背丈程あるススキに似た野草がちらほらと黄金こがね色の種子を実らせている。まだ青い草と黄金の実が織り交ざる草原、そしてそこかしこに点在する小高い細い木が集まった小さなブッシュが、赤茶色に紅葉し始めている。空は突き抜ける様な青空、キラキラと輝く陽の日差し、そうウズタン(10の月)ってのは“初秋の月”とも呼ばれる月なんだ。そんな正に秋晴れの下、ほんとに実りの秋を実感できるなんとも温かな風景です。その青と黄金と赤茶が複雑に混じった草原の上を、サーッと秋風が流れて野草や紅葉を揺らしていく。ほんと平和でいい眺めだな~。でもね、再びひとりで草原に踏入って、あの茂み(ブッシュ)まで行こうとは二度と思わないですけどね……。








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