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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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7.祝! 公童塾開塾① そしてあっさり学級崩壊?!

 

 

 親父殿が“公童塾”の開所宣言してから、それはもういろいろな事がありました。自分的には、まぁ場所もあるし、要員も確保済みな訳ですから、あとは集落への説明と塾生の募集だけかな、なんて軽く考えていましたけど、世の中はそんな甘くはなかったです。


 まずはキャスの確保から始まりました。元々キャスはウォールド家の三男坊なので、しがらみはあまりありません。しかも日頃から“おら騎士になるだ”と公言していたので、両親も“いつかは”とある程度の覚悟は出来てたハズなんです。でもそこはずっと一緒に暮らしていた家族なんだから、“ハイ、さようなら”って訳にも行かないよね。そこできちんと親父殿が塾所の府員補アルバイターとして採用したいとキャスのご両親に挨拶に行った訳です。ウルガムとサラキトアは馬なら数時間の距離ですから、州都や王都へ行くよりも安心だって事で、この話しにご両親はあっさりと頷いたらしいです。その数日後にはキャスはウルガムから引っ越して来て、現在は塾所の2階で老師(イジュマー)さん、古武士(アドバン)さんと共に暮らしています。きっといいようにこき使われているんだろうな。ご愁傷様です……。


 次の問題は、キャスのとは違い結構大変だったみたいです。それはお母様とカリ姐ぇさんと、村の娘さん数名にどうやって給食係と教務助手の奉給を支払うかって問題だったんです。現地での府員補アルバイター採用枠には年間上限があるらしくて、その手はキャス以外には使えない訳ですね。すると給食係と教務助手へ奉給を支払う方法としては、人足商か無縛人ギルドを通して仕事を依頼するしか方法がないって事になりました。ええ、なんと云っても今回公童塾に使うお金は、ガディミリタ(領地護民武官)の予備費、つまり公金ですから、その利用手続きは厳格なんだね。幸いお母様とカリ姐ぇさんは無縛人として登録済み(この時初めて知ったけどね)なんでいいとしても、給食係候補の4名のお姉さん達は当然、無縛人登録とかしてないから、全てを最初から始める必要がありました。


 そこである日古武士(アドバン)さん引率の下、お母様、カリ姐ぇさん、4名のお姉さん達一行が、州都リシュトへと旅だったのでした。州都リシュトまで約70キロ、徒歩での2日の道乗りを経て州都リシュトに無事到着した一行は、そこでまず公所に行って銘札を新しくします。次に人足商ギルドへ行き4名のお姉さん達の奉民登録を済ませました。無縛人の登録より奉民の方が断然ハードルが低いらしいね。そしてギルドで紹介された人足商に向い、その人足商で人足人登録をする訳です。次に古武士(アドバン)さんが、その人足商に人足の依頼(指名依頼)をして、やっと4名のお姉さん達との契約が無事成立となったんです。次に古武士(アドバン)さんが無縛人ギルドでお母様、カリ姐ぇさんへの指名依頼を行い、こちらも無事契約が成立と成ったそうです。ただ無縛人ギルドでは、お母様、カリ姐ぇさんが姿を見せた事でちょっとした混乱と事件があったみたいなんだけど……、でもそれはまた別の話し……。


 更に親父殿は3日程州都リシュトへ詰めて、お役所仕事的手続きをクリアしたみたいでした。まぁいくらガディミリタ(領地護民武官)所管の予備費だと云っても、そんな簡単に使えるもんじゃないんだろうな。それと府員補アルバイターの臨時採用の手続き……。ええ、集落に戻って来た親父殿の顔はマジげっそりしていましたから……。ここはもう親父殿に感謝、感謝です。


 そしていよいよ集落のみなさんへの公童塾の説明会が、親父殿、お母様、老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんの総掛りで行われました。古武士(アドバン)さんが正論で堂々たる説明して、お母様が女子への読み書き算学の必要性を切々と訴え、老師(イジュマー)さんが実利的な効用なんかの話しを淡々としました。しかしそこまでは、もうほとんど手応えゼロでしたね。まぁ予想はしてましたけどね。そこで真打ち登場です。最後に現れた親父殿が、公童塾への参加費が不要な上に、参加した子供へ昼飯を無料提供する事を説明すると、それまでほぼ無言・無関心な様子で静まり返っていた説明会場から初めて、“おおぉぉ”と云う歓声が上がりました。しかもその昼食を作るのがお母様だと説明すると、更に歓声が大きく成りました。まっ、そんなもんだよな……。当然自分はそんな説明会場の隅で座っていただけです。なんと云ってもまだ子供だからね~。でもこの説明会のプログラムは自分が作ったんだよ。




 こうして色々とありましたが、親父殿が家の居間で公童塾の開所宣言をしてから、たったの1カ月後にはサラキトア公童塾がほんとに開塾したのでした。やったついに“セシルの明るい未来化計画”の第一段階を突破しました~。一応今回の塾生の募集要件は、“サラキトア集落居住の年齢6歳~9歳の諸族”となりました。まぁ5歳だとあまりに幼いし、10歳だと既に一人前の働き手として本格的に農作業に加わり始める頃だし、自警団にも参加できるからね。まぁこんなもんか……。それに“諸族”と云っても、サラキトア集落の住民に、カリファさんと老師(イジュマー)さん以外には、ヒトしかいませんけどね。でもね、そこは正道を強く意識するお3人さん(親父殿、老師(イジュマー)さん、古武士(アドバン)さん)としては、絶対に譲れない一線だったみたいですね……。大人ってめんどくさいな。


 その結果として開塾の日に集まった塾生は、22人でした。集落には6歳~10歳の子供が26人居るので、出席率は84%です。素晴らしいって云うか、給食の威力ハンパないねぇ~。なお欠席の4名は病弱で寝込んでいる子です。悲しいかなこのセラワルドでは子供の病死率は非常に高いんだ。でも自分の目論見通り、この22人の中には最大目標のセシルも含まれていました。ただし塾所に現れたセシルの格好は、黒い分厚い綿の布で足下までを覆うローブ的服を着ていて、しかも頭にもフードを被り、顔もなにやら黒い布で覆っています。う~んまるで魔女的なアレだね。もう凄く浮いてます……。でもでもこれで無事“セシルの明るい未来化計画”の第二段階も突破できました。






 こんな訳でいよいよ公童塾での修学が開始されました。老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんは、本業つまり4集落の自警団への塾所での外教と、集落巡回であまり時間がない事と、最初は読み書きが中心と云うこともあり、当然ここは自分の出番となりました。塾所の1階、広い道場に集まった22人の子供達の前で、集落の首長さんからのありがた~い挨拶が終わると、続いて自分もちょっこと挨拶をしました。そしてついに記念すべきサラキトア公童塾修学の初日が始まったのです。初日の修学の先生役! その時の自分の心は緊張と晴れがましさで一杯でしたよ。




 こうしてなんとかここまで辿り着いたサラキトア公童塾修学の初日なんですけど、うん、やはりセシルは完全に孤立しています。まぁ、格好が格好だし……、それになんとセシルより歳下の子の多くが、セシルの事を全く知らないんです。おぉ、なんてこった! アバルマのおばさん、セシル隠し徹底しすぎですっ。そして同年齢や歳上の子はセシルの存在は知っているんですが、どうも病気が伝染ると思い込んでいるみたいですね。みなさん、雪肌せっき病、アルビノ、先天性色素欠乏症・白子症は、絶対に伝染りませんよっ! でもそんな事云っても無駄なんだよね。子供ってのは残酷だからね……。なのでそんな中で始まった文字、つまりアルファベットの勉強では、道場の床に置かれた7枚の砂板をそれぞれ3~4名の子供が囲んでいる中で、セシルの前の砂板の周りにはセシルひとりだけが、ぽつんと座ってるって情景が広がっていた……。


 そんなセシルの様子を気にしながらも自分は、その7枚の砂板を回って1文字1文字丁寧に字を書いて発音を教えてる訳です。そして次にその文字を消すと、各自に砂板上に今消した文字を書かせるんです。これの繰り返しです。まずは文字を覚えないとだからね。まぁ単調って云えば単調だね。でもこれが全ての基本さ。国語科教育法でも丹念に繰り返しが大事ってなってました。




 えっと、“砂板”とはですか? うん、自慢じゃないけど“砂板”、これは自分が考案したもんです。まずですねぇ、公童塾開所前に気が付いたんですが、公童塾にはほとんど使える教材ってものがないです。まず黒板がない。ってか、多分この世界そのものにまだ黒板は存在してないと思っています。そして当然ノートなんてものもありません。紙は貴重品で高いんだよ。自警団の修学では若干ですが紙を使っているみたいだけど、最も安いパピス(パピルス)だって、公童塾では使用できません。パピス(パピルス)だって基本ウラワルドからの交易品だからね。安い安いと云っても、それなりのお値段しますよ。当然ですけど、公童塾にはそんなお金ありませ~ん。


 そう云う事情で読み書きの修道で筆記練習をする方法が無いって事が判明したんですね。この時には、さすがに正直絶望的な気分になりました。筆記練習なしでどうやって“文字”を教えるんだ? “読み”はまだしも、“書き”ですよ“書き”! 筆記練習なしに“書き”?? おいおい、どうしろって云うんだよ……。古武士(アドバン)さんに相談したら“で、あるな”の一言で撃沈……。次に老師(イジュマー)さんに相談したら、“小僧、創意工夫と云う言葉を知っておるじゃろ?”と丸投げされました。うがっ! また胃がキリキリと……。


 そんなまたぞろ痛みだしたお腹を擦りながら、塾所の引き戸を開け広げた道場から、ぼ~っと駅広場を見て途方に暮れていたら、一陣の風が吹いてブワって土煙が舞い上がったんです。まぁサラキトアは基本雨が降らないから乾燥が酷いんだよね。そんな毎度の土煙が消えるとさっきまで駅広場にあった足跡やら轍の跡が消えてたんだ……。んっ!!! これだっ! これ! “ちーん”って音が頭の中で鳴ったのがはっきり聞こえたね。


 そこですぐにカリ姐ぇさんに相談すると、その日の夕方には画板程の大きさの薄い板が7枚届きました。カリ姐ぇさんありがとう~。やっぱり頼りになるな~。次にお母様の了解をもらって、もう使ってないあのベビーベッドを頂きました。そのベビーベッドの柵を分解してGETした丸い棒を画板の4隅にでんぷん糊で接着して、画板に枠を作ったんですね。つまり画板サイズの広さで深さ10センチ位のちょ~浅くて広い枡を作ったんですね。それでこの浅い枡の中に、細かく砕いた駅広場の乾いた赤土を入れるんですよ。解りますよね? この画板に撒いた赤土の上に指でなぞって文字を書く訳です。費用ゼロで何度も消して使える便利物、これが砂板です。あれ自慢になっちゃったかな?。




 そんな砂板の話し(自慢)はさておき、公童塾修学の初日から、あっさりと始まったセシルの孤立した状況がどうしたって気に掛かるけど……。さてどうしたもんかな? と思いながらも、淡々と授業を進めていたんだ。すると最初は静かだった道場が、なんだかちょっとづつと騒がしくなって来ました。そりゃね、みんな年齢が6歳から9歳だし、授業を受けた事そのものが初めてな訳だし、やってる事もかなり単調なもんだから直ぐに飽きて来るのも仕方ないのかな……。


「さぁ、みんな集中しようよ」

ええ、一応注意はしています。でもそんな注意してる先生役の自分がまだ6歳だからねぇ……。全く舐められているのか、抑えが丸っ切り 効きません。徐々に、みんなのおしゃべりの声が大きくなり、そして突如“キャハハハ”と巻き起こる笑い声。そしてついにひとりの子が立ち上がってブラブラと歩き出しました。


「静かに、静かに。それに今は立っちゃ駄目だよ」

慌てて歩き出したその子の側に駆け寄って、元の場所に連れ戻そうとしたけど、なんかグズり出す始末だ……。泣かれちゃマズイと思って宥めてたんだけど、この中断がよくなかったんだよね。別の子が今度は笑いながらゴロゴロと道場の床を寝転びだした。ひとりの子にかまけると他の子が構ってもらいたくて騒ぎだすか……。児童心理学で習った通りの展開だな……。


「キャハハハ、おらは立ってねぇよぉ~」

「それも駄目だよ。ほらちゃんと座って……」

たくっ、これだから餓鬼は嫌いなんだ……。グズってる子から、寝転んでる子の傍に移動する。すると、更に別の子が砂板の土を両手で掬って道場の床に撒き散らし出した……。その土がかかったのか横の子が悲鳴を上げながら広い道場を走り出す。これが切っ掛けとなって、残りの子ども達もてんでばらばらに動き出した……。あああ、これか? これが学級崩壊なのか……。騒然となった道場をただ呆然と眺める。




「静かに! 静かに! 立たない、立たない。走っちゃ駄目だよ。それに砂板の土で遊ばない~」

なんとか気を取り戻して懸命に大声で指示を出すんだけど、そんな自分の声に従う子供はほぼ皆無です。あうぅ、なんだよ~自分全然威厳ねぇ~。これって精神年齢26歳の自分には結構ショックだ。ってか注意してる声が、もろ子供声だし、こん中の男子じゃ一番背が小さいしな……。そりゃ威厳とかないよな……。なんて自嘲していたら。どんどんと道場の喧騒は激しくなっていきます。子供達の立てるけたたましい笑い声、走り回る足音、叫び声……、なんとかしようって気持ちだけが焦って声もでません。なんだよ大学の教職課程で習った教育心理学とか国語科教育法とか全然駄目じゃん。もう為す術なく無力感に包まれて、ただ立ち尽くしてました……。



「痛い、痛い、痛い」

「なぁんだよぉ、おめぇいっつもこんな髪さぁしねぇべぇ?」

「ほんだ、ほんだ。誰にみせんだべよ」

「なに様のつもりだべ」

女の子の高い嫌がる声、気がつくとかなり大柄な男子が、ひとりの女子の3つ網のお下げを引っ張っている。周りで囃し立てる子供に囲まれながら、ニヤニヤ笑いを浮かべ髪を引っ張り続ける大柄な男子の姿は、まさにジャ○アンか?


「駄目だよ~。そんな事しちゃ」

「あんだ? 調子さぁこいとると、かちこんどるぞ?」

それで自分の役はの○太君か? しかも注意する声が若干震えてるぞ。マジ情けないな……。ジャイ○ンの云う“かちこむ”の意味はさっぱり判りませんが、恫喝であることは、はっきり判ります。しかもジ○イアンの声はドスが効いてるし、自分に比べると身体もずいぶん大きくて、農作業で鍛えてるんだろう太い腕にも筋肉がはっきり見えます。多分サラキトアの餓鬼大将なんだろな。その表情と眼つき……、ええ迫力充分です。初めて生の暴力の雰囲気に接して、一瞬で心が冷たくなる感覚がはっきり判かりました。それにまた胃が痛くなってきた……。ん? 膝がガクガクしてる? あ、あれ? なんか涙が……。


「うほっぁ、なぁんだぁ? こいつ泣きだしよったぁ。まんだ、なぁんもしとらんだに?」

「ほんだや。なんやこいつ~」

「泣いたら、泣いたら~」

自分って1年間以上、剣術やら体術の修行をして来ましたが、心が駄目でした……。そうです前世でもこっちでも、喧嘩の経験0な自分は、一瞬で心が折れたみたいですね。いや、正直ここまで心が弱いとは、自分でも思いませんでした。うう、もっともっと子供同士のコミニケーション(喧嘩)の練習をしておくんだった……。ああ、後悔先に立たずです。


「黙ぁってすっこんどれ。そんだらぁ、なぁんもせんよって」

自分を睨みつけているジャ○アンと、その子分達とは別方向から似たような声が? おずおずとその声の方向を見ると、なんと! そこにはもうひとりジャ○アンが居たんですよっ。うおっ、マジ顔もそっくりだ……。ボサボサの薄汚れた金髪で額が広い、目は細くて瞳は冷たい光を放つ蒼色。鼻がグイと高くて頬骨が張り出して、大きな口に薄い唇、顎がいかつい……。顔の形は無骨な縦菱型な感じ、まさにセラワルド人の平均点だ。それもちょっと冷酷方向に偏った平均点ね……。


 ひとりでも充分なのに、双子ジャイア○の登場?? もう嫌です。はい、もう帰ります……。それまで押し黙っていた自分は、ヘナヘナとその場に蹲り膝を抱えると、その膝の間に顔を埋めて目を瞑りました。ええ、まったくもって完全に戦意喪失です。まぁ最初から戦意はないんですけど。両手で耳を塞いだからもう何も聞こえない、目も瞑ったからもう何見えない。胃のキリキリも無視してあとはもう時の流れに身を任せよう……。


 こうして記念すべきサラキトア公童塾修学の初日は最悪の幕開けとなりました……。




 


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