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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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5.改革をしよう②【教育改革で親父殿包囲網】

 

 

 お母様と話しをしてから数日後、我が家の夕食に久しぶりに老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんが、お呼ばれされていました。そして落ち着きある感じの刺繍が施されたテーブルクロスが敷かれた長テーブルの上には、いくつかの大皿や取り皿、それにおおぶりな陶器のジョッキが並んでいます。そしてテーブルの端には少し汗をかいてる木製の小型の樽が置いてあります。しかしあのエールの樽ってどうやって冷やしてるのかな? いっつも不思議に思うんだよね……。


「ガダスシアプ。イジュマー様、アドバン様、本日の試食会へのご参加ありがとうございます。今までフロマ(チーズ)の薄焼きパンは、何回か食べて頂いておりますけど、本日のフロマ(チーズ)の薄焼きパンは新作品でございます。この料理はできれば将来キトアの名物にしたいと思っております。忌憚ないご意見をお願いします」

そう云うと深々と一礼するお母様。おお、これは珍しくかなりの意気込みが見てとれるな。どうやら今日のピザ料理には相当自信を持っているんだね。まぁ、これってお母様のオリジナル料理の中でもピカイチだからね。でもピザを創作しちゃうとか、絶対天才だよね。


「「「「ガダスシアプ」」」」

「奥方ずいぶん自信有り気じゃな」

「これは楽しみなのである」

「ええ、今回のピザには多少自信があります」

「ピザ? リリュ、それがあの料理の名前なのかい?」

「ピザであるか? 面白い名前である」

「うむ。ピザ……、語感的には悪くないのぉ」

「そうです。今回のフロマ(チーズ)の薄焼きパン料理は、ピザと名づけました。これはギルの発案です」

最期のお母様の言葉を聞いて老師(イジュマー)さんがなにか面白そうな表情でこちらをチラっと見たけど、そこは無視しました。まぁ、名前の方は案外好評だって事で……。そうそう、問題は中身だよね。さて今回のピザの改良点はソースなんです。今まではチーズだけの素焼きな感じだったので、かなり味は蛋白でした。フロマ(チーズ)でかなり緩和されてましたが、どうしてもパサパサ感が否めなかったんだ。そこでお母様にちょっとソースを塗ったらどうかと、提案していたんだよね。どうやらそのソースが完成したんだろうな。完成品はまだ見て無いので自分もすっごく楽しみです。


 すると芳ばしい香りを辺りに漂わせながら、カリ姐ぇさんが片手にまな板を掲げながら登場してきました。その片手に持ったまな板から、自分たちの目の前にある大皿へとピザをザッと移します。まずは目で楽しめって事ね。このピザ、形はまだ長方形なんだけど、薄い焦げ目があるトロリと融けたチーズの表面がまだプツプツって云ってるし、その熱々のチーズの下には赤目なソーズが少し透けて見える。ぷっくりと膨らんだふちにもちょい焦げがあって、香り見た目共にこれは正にピザそのもの! そして上に乗っている具材は肉の色も鮮やかな生ハム!


「おお、今日はソースが掛けられているのである」

「この赤いソースは早ポモド(トマト)のソースです」

古武士(アドバン)さんが目ざとくそういいながら、既に切り目が入ってるピザの一片を大皿から取り寄せる。すると~、融けたチーズがツーって伸びて……。うう、これは堪りません。ええ、そうなんです、こちらの世界にもトマトありました~。それも何種類も! まん丸の丸ポモド、縦長の長ポモド、それに春先にできるちょい小ぶりな早ポモド。でもトマトソースを推薦はしてないので、これもお母様オリジナルって事か……、凄過ぎですお母様。


「むむむ、これは……」

次にピザに手を伸ばした老師(イジュマー)さんが、そのトマトソースとフロマ(チーズ)と生ハムのピザを食べて絶句している。そうそうなぜか今まで具材が野菜(香草)中心だったので、“肉系もいいのでは?”とアドバイスした結果がこの一枚なんですね。お隣さんが、手作りしているピグゥ(家豚)の中脚の生ハムが、熱々のフロマ(チーズ)の上に何枚も乗って、ちょっと酸っぱ目のトマトソースと生ハムの塩味にチーズの濃厚な味が相まってなんとも云えない絶妙な味です。あっつっ~。


「奥方様、これは今までの食したものとは別物である。王都セキトでもこの様な美味なものはないのであるな。間違いなくキトアの名物になるである」

古武士(アドバン)さんがあっさりと太鼓判を押す。おいおい、口調はなんか偉そうだけど立派な髭にチーズとソースが付いてて、なんか台無しに成ってますよ。


「リリュこれは、凄い料理だぞ。“ピザ”かっ。これは間違いなく、大受けするぞ」

親父殿は、次に出てきたトマトソース+フロマ(チーズ)+香草のシンプルなピザ(マルゲリータだな)に食いついたなり目を白黒させながら興奮した声を上げてます。うん、確かにこれは革命レベルの料理です。




「こちらの緑のソースはソン()の新芽のソースです」

「わしは、ポモド(トマト)ソースよりも、こっちが好みじゃな」

老師(イジュマー)さんが、青っぽいソースにフロマ(チーズ)とトマトの細切れのピザ(ジェノベーゼかな?)に、ハフハフいいながらかぶりついてる。あ~あ、老師(イジュマー)さんも口の周りがソースだらけだ。まぁ結局全員が感嘆の声を上げながら3種のピザに舌鼓を打っています。そしてあっと云う間に並んだ大皿は空になりました。うんうん、あとは生地を丸く延ばす提案をすれば完璧だな……。そうそうそれにオリーブオイルが欲しいところかな? でもこれは無いものねだりか……。こっちにはオリーブないのかな~。海岸方面なんかに自生とかしてないかな。まぁ、こんな風にピザ試食会は大盛況の内に幕を閉じました。よ~しっ、トマトソースが出来た以上は、次はアレだな……。






「それで? 今日はピザの試食会だけなのか?」

「うむ、それではじゃな」

親父殿がジョッキのエールを美味そうに飲み干すとみんなを見回しながら誰ともなく聞いて来ました。むむむ、さすが親父殿わかってるね。そこで老師(イジュマー)さんが、古武士(アドバン)さんに目配せをする。


「護民官殿、先日それがしが提出した具案申告であるが、どうであるか?」

「はい。頂いたあのアドバン殿の具案申告には、確かにうなずける部分が多々あります。それに予備自警団というのは上に通り易いでしょうね。さすがに練られています」

「ならば王府護民部への直言、宜しいであるか?」

「う~ん。しかしですね。これって直言するとしても王府護民部か儀府なのか軍府なのか、臣民会議なのか悩む所ですね」

古武士(アドバン)さん、さすが直球ですね~。まっ話が早くていいな。でも親父殿の言葉で居間がちょっとした沈黙に包まれました。


「ふむ、民を助けると云う観点なら王府護民部じゃろ。しかし予備自警団じゃから、ミニトン(農民兵)の強化と云うなら軍部民兵部じゃな。教育と云う意味では儀府教務部じゃ。地域の問題と云うなら臣民会議じゃ。確かに迷う処じゃな」

「で、あるか……」

ぎゃ、縦割り行政の弊害ですか? なんか総合窓口とかないですか?


「それに2~3疑問点があります」

「なんであるか?」

すぐさま親父殿に聞き返す古武士(アドバン)さん。最初は反対気味だったのが、いつの間にか一番の急先鋒になっている。さすが老師(イジュマー)さん……、きっとあなたの計略ですよね。確かに先頭切っての突破役としては、古武士(アドバン)さんは適任ですよね。


「まず、予備自警団なのに、女子を参加させる事です。ちょっと無理はありませんか?」

うん、その質問は想定問答集にあります。さっ、模範解答をどうぞ古武士(アドバン)さん。


「名目は予備自警団ではあるが、主たる目的は集落の基礎的産力の向上であるので、女子への修学は必須である。王都では多くの女子が、童塾に通っておるのである。それと同じ事であるな」

「しかし武の修行を女子に科すのですか?」

はい、ソレ来ました。これも想定問答集にあります。お願いします古武士(アドバン)さん。


「女子には武の修行とは違う事をさせる積りである」

「違う事? さてどんな事でしょう?」

「女子には、武の修行の代わりに刺繍、料理、看護等を教えたいと考えています。もちろん本人が望むのであれば修行への参加も自由です」

「ま、中にはカリファみたいな逸材がいるかもだからね。カリファが教えてもいいさ」

お母様が最高のタイミングで合いの手を入れる。カリ姐ぇさんの言葉はちょい想定外だったけど……。


「リリュも賛成派なのか……」

「ええ、その通りよ。あなた、女にこそ読み書き算学は必須なのよ。家族の今日と明日を守るのはいつも女の仕事ですからね」

「女子だろうがなんだろうが読み書きに算学ができんと、何事にも苦労するんよ。カリファも無縛民の頃散々苦労したからね」

「カリファお前もか……」

お母様とカリ姐ぇさんがキッパリと断言する。ええ、これは想定内でした。




「よし具案申告の内容はよく判った。しかしこの具案申告最大の問題は、たぶん子供が集まらないって点だ。王都とは違って集落では子供だって重要な働き手だ。修学に出してタダ飯を食わる余裕なんかは、集落の家にはないと思う。親がそんな事絶対に許さないな。それに子供自身だってきっと参加しないぞ?」

うんうん、さすが親父殿まじめに検討してくれてたんだ。だからこそその問題点に気がついたんだよね。でもそれも想定問答集にあるんだよ。


「お主の心配は尤もじゃな。無論修学にだしてタダ飯食いになるなら、親は子供を出さんじゃろ。それにお主が云う通り童子わらし共という者は、勉強嫌いで中々参加せんもんじゃ。そこでじゃ、この童塾は昼から始めようと思っておるんじゃな」

「はぁ? 昼からですか?」

その老師(イジュマー)さんの言葉が質問の回答としては、今いちピンと来ない感じな親父殿だった。


「そうじゃ。童塾でまず昼飯を食わせるのじゃ」

「あっ! な、なるほど昼飯の提供ですか……」

これにはさすがの、親父殿も驚いた様だ。そうです、学校給食制です。ええ、前世の開発途上国で行われてる教育普及策と同じですね。しかしこれ思いつたのは自分じゃなくて、お母様でしたけどね。確かに記憶としてはあったんだけど、出てこなかったよ~。知識が身についてないんだね。


「子供は昼までは家の手伝いをして、童塾で昼飯を食べてから、16時位まで修学するである。当然繁忙期には休みにするである。親達にすれば一食浮くのであるから両手を上げて賛成するであるな。子供達も昼食に誘われて集まるのである」

「昼食の準備は、わたしとカリファと村の娘数人で大丈夫です」

「我らの奉給(給料)は今のままで結構である」

「イジュマー先生とアドバン先生の時間がない時は、僕が代理で読み書きと算学を教えます」

「わたしとカリファも読み書きと算学ならば手伝えます」

「うん。カリファ算学はちょっとアレだけど頑張るよ」

どうですかこの完璧な包囲網。ふふふふっ親父殿~、この四面楚歌な状況を突破できますか?


「ちょ、ちょっと待ってくれ。これをするのはサラキトアだけなんだよな?」

「試験導入である。まずはサラキトアのみの実施である。費用も最低限である」

「なんにせよ初めての事じゃ。効果と村民の反応が確認できてから、他の村へ広めるのじゃな」

慌てて確認する親父殿、はいそれも想定内です。


「護民官殿どうであるか?」

「どうじゃな?」

「あなた、どうですの?」

「ナイ様、どうなんかな?」

「父さま、如何でしょうか?」

5人が一斉に親父殿に問いかける。うん、よしっこれで詰んだハズだ……。


「ううう、ちょっと一晩考えさせてくれ。ご、ご馳走さまリリュ、ピザ美味かったよ。ガダスシアプ」

慌てて椅子から立ちあがって、そそくさと居間から姿を消した親父殿……。あっうwっww,逃げたよ~~。親父殿ぉ男らしくないぞ~。これはさすがに想定外でした。






~ナイアス・ヴェルウントからの視線~

 慌てて、居間から逃げ出してきたけど、なんだ、なんだ。なんだ。全員が賛成なんかぁ。まさかリリュやカリファまで巻き込んでいるとは思わなかった。しかも俺の疑問には全て答えが事前に用意されてるじゃないか……。首謀者はやっぱギルか……。ギルがなんかみんなで試食会とか云った時から、薄々予想はしてたがまさかこれ程とは……、これは俺の予想の斜め上を行ってる。正直ちょっと恐ろしかったぞギル……。さてあの場では全く有効に反論できなかった、……ってか元々俺も、別に反対じゃないんだよな。さてほんとに問題はないのか?


 まず場所は? 塾所の道場と2階の大広間があるから、“外教”でよその自警団連中が来ていても大丈夫だな。教師は? 読み書き算学に限るなら教師は確かにギルにリリュ、カリファが手伝うなら充分だろうな。集落連中の反応は? 確かに昼飯提供で多分いける。しかし昼飯提供のアイディアには驚いたな。これは画期的だな……。費用も少し掛かるけど効果は絶大だろうな。特にリリュが調理の指導役なら、間違いなく人は集まるだろうな。大人まで来ちまいそうだ……。調理役もリリュが云う通り数名でなんとかなるだろうな。


 さてそうなると残る問題は費用だな? 場所代は掛からない。20~30人分の子供の昼食の材料費か。あとは人件費……、調理者への奉給(給料)、それに武士殿(アドバン)とご老人イジュマーは、ああは云っていたがちょっとは払わないとな。教師助手にも払わないとな、ただしギルは首謀者なんだから無給でいいな。あと、武の修行での手伝い役が欲しいって所かな? カリファにやらせるとコレク(忍者)養成所になりそうだから、別の奴がいるな。うん、これならなんとかなりそうだな。しかしギルはなんで突然こんな事を云い出したんだ? そこの真意が、どうも今ひとつわからんな……。しかし理由はどうであれ、今まで考えもしなかったが、こいつは確かに面白いぞ。うん、面白い。






~ギルナス・ヴェルウントからの視線~

 翌朝ちょい畏まった感じの親父殿がお母様とカリ姐ぇさんと自分を居間に呼び集めた。みんなが揃うと親父殿が話し始めました。

「ゴホッ、ゴホッ。昨日の件についてだが、一晩考えた俺の結論を云う。いいかこれは最終結論だから、異論・反論は一切なしだ。いいなギル?」

「はい。判りました」

じっと正面から自分の顔を見つめる親父殿、さすが黒虎騎士団の百士長ハソチフですその目力には迫力が篭っています。


「まずアドバン殿からの具案申告は却下。王府、軍府、儀府への直言も一切許可しない」

うぎゃっ、完全敗訴ですか? なんで? なんで? どうして? 思わず口が開きかけたけど親父殿にきっちりと睨まれて、パクパクするだけで一言も発する事ができません……。


「代わりに、ガディミリタ(領地護民武官)の権限と予備予算で、このサラキトアに“公童塾”を試験的に開所する。その結果を持って来年には公式に俺から、王府護民武に具案申告か騎士建白を行う事にする」

おおおお、なんです? 逆転裁○ですかぁ~。そんな驚きで目を丸くしている自分を見ながら、ニヤリと笑みを浮かべる親父殿。うwww、やられた~。




「イジュマー殿、アドバン殿にはきちんとこの分の奉給(給料)は僅かだが払う。当然教師の助手や昼食の調理人にも奉給(給料)は払う。ただしギル、お前は未成年だから、奉給(給料)はなしだ。いいな? あと、武の修行の指導手伝いとして、キャスレット・ウォールドを府員補アルバイターとして現地臨時採用する」

はい。ここに目出度くサラキトア童塾開設が決定しました~♪ しかも“公童塾”? もしかしてセキニア初の無料公立学校誕生ですか? これって結構な歴史的な事件だったりする? でもなんで自分だけ無給ですか……。 まっ、いいかっ、でもでも、みなさん、おめでとうございま~す♪ 苦労の介がありましたね~。





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