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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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3.出会い② セシルナ・アバルマ

 

 

「あのぉ~、お母様はいますか?」

今道場奥の台所に恐る恐ると近づいています。実は台所には家でも滅多に入らないんだよね。そこはお母様とカリ姐ぇさんの聖域で、男性陣にとっては禁断な領域なんです。それは塾所においても同様で、お母様とカリ姐ぇさんとその配下のお姉さん部隊の、聖域であることに変わりはありません……。


「ギル様なにか御用ですか?」

そこには18歳位の台所部隊副隊長って感じなちゃきちゃき姉さんが、腕を組んで目の前に立ちはだかり、こちらを結構きつ目な感じで見下ろしながら聖域への侵入を防いでいます。あの~、そんな怖い目をしないで下さい……。


「カリファさんが、ちょっと誰かを呼んで来いって……」

空いた大皿を10枚ほど重ねて両手で持ちながら、おどおどと準備していた返事をします。でもなぜかその語尾がだんだん小さくなっていく。なぜだっ! なんにも悪い事してる訳じゃないし、これも嘘って訳じゃないんだが……。どうも女子に弱いって傾向を前世知識と一緒に受け継いだみたいだな。まぁ前世では完全に免疫なしで純粋培養だったからね。正直ボイスチャットで女子と話すだけで舞い上がっていたからな……。


「カリファ様が! 判かりましたすぐ行きます」

同じ“様”でも、なんか語感が天と地ほどの差が感じられる“様”だな……。両手をエプロンで拭きながら、なにやら盛り上がっているのが如実に伝わってくる道場へと一目散に足早に向かう、ちゃきちゃき姉さん。


 お~い、行っちゃうのかよ~。このついでに持ってきた、空いた大皿はどうしたらいいんですか? うんうん、これは不可抗力だよな。なんたってこの大皿を運ばないと行けないからね? いいですか~、だから仕方無しに入るんですよ~。なんて心の中で云い訳けをしながら、恐る恐るゆっくりと台所の中に踏み込んでいく。マジ塾所の台所は初侵入なんだ。ヤバちょっと緊張してきた。でもなぜか台所には人の気配がしない。あれ? お母様は居ないみたいだな? どこに行ったのかな? う~ん、はてどうしたもんかな?


「誰もいませんか~? 皿を下げてきたんですが~?」

「あ、あ、あ」

おっ、まだ誰かいるみたいだ。よかったよかった。広い台所の一番奥、壁に掛かっている燭台のラストン(光石)の灯りもほとんど届かない隅の隅。薄暗いじゃなくてほとんど見えない位暗い所から返事が戻ってきた……。


「空き皿ですけど~、どうしたらいいですか?」

ああ、確かに誰かいるね。目を凝らすとその暗い台所の隅に、かなり小柄な女子が立っているの判った。


「あ、あの、……、さ……ここ……」

えっ? なんだって? あ~聞き取りずらいな~。でもまぁ、きっと皿を持って来いって事だよね? そこで重なった大皿を両手で抱えたまま、その声の方向へと進んで行きます。


 う~んマジ暗いな……。奥の方に進むと少しだけ辺りが見えて来た、これって多分洗い物専用の流し台なんだろうな。大きな丸太を繰り抜いた感じの流しに、やけに粗く組まれた木の棚がある。ああ、なる程、水が下に落ちる様にわざとこんなに粗い組立なんだ。その木の棚には既に一杯皿が裏返しで置かれていて、その皿から水がポタポタと滴り、木の棚の下にある長ひょろい木桶にその水が溜まっている。きっとその溜まった水は再利用されるんだろうな……。水はいつでも貴重だからね。えっと、この丸太の流しに皿を入れればいいのかな? さてさっきの声の主さんはどこかな?


「あ、あの……あ……だ……」

お、居た居た。その丸太の流しのもっと奥の方の暗がりの中に声の主さんがいました。暗くて様子が見えにくいし、またなんか言葉を漏らしたけど、意味がやはり判らない……。

ここは台所だし、思い込みによる勝手な振る舞いはマズイよな。うんうん、何をするにもちゃんと許可得ないとな。そこでもう少し奥の方、その謎の声の主さんの方へと進む事にしました。


 ああ、なるほどこれじゃ顔が良く見えないはずだ。俯向いてて頭しか見えなかったのか、でもなんで一切こっちを見ようとしないんだ? まさか自分を怖がってるとか? むむむ、近づいて判って来たけど、身長は自分よりも少し高いな。ってことはきっと年上だ、7歳? 8歳? う~ん、でもこんな感じな女の子は知らないな~。老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんからの指導を受けて1年以上、ほぼ毎日外で修行してるんだ。もうかなり集落の人々とも知り合いになっている。当然子供達ともかなり顔見知りにはなってるんだ。同じ年頃の女子なら1~2度は見かけてるはずだし、一度見た顔は忘れないから……。だからこのサラキトア集落で全く見知らない子供なんかはいないはずだぞ? 特に女子は……。


「ここに入れていい?」

「あ……、は……」

またイミフな返答だな。でもちゃんと許可は貰ったって事で……。そこで大皿を片手で抱え直すと、丸太の流しの中に大皿を慎重に一枚づつ入れて行く。その間その子は、流しからちょい離れた場所で俯いたままで身動みじろぎひとつしない。あ~、できれば皿入れるの助けてくれないかな。そんな助けを求める心を込めて、ちらちらと横目でその子の方に視線を投げ掛けてみるが、全く効果はなさ気だな……。


 うんうん、髪をタオルで巻いていないから、どうやら調理担当ではないみたいだな。暗くてあまり良くみえないけど、銀髪か……、いやどっちかって云うとかなり白に近いな。お母様も銀髪に近いけどここまで白い髪ってのは、ちょっとめずらしいな。


 なんか不思議に興味が増してきたんで、大皿を流しに移しながら観察(盗み目)を続けます。白い髪の長さは肩に掛かるくらい。こんな目立つ子なんだから、集落の子なら知らないハズがないな。もしかしてキャス達と一種に来たウルガムの集落の子なんだろうか? 肌なんかも透き通る様に白い、これはちょっとセラワルド人ぽくないぞ。自分もセラワルド人の標準的容姿からは大きくズレているんで、ムクムクムクとこの子への興味が更に湧いてきた。


「どこの子なの?」

「……」

大皿を流しの中にゆっくり入れながら声を掛けてみた。しかし返事なし! しかもなんか今肩の辺りがビクッとしたぞっ! やっぱ怖がられてるかな?


「ウルガムから来たの?」

「……」

声をもう少し柔らか目な感じにしてみたけど。これならどうかな? うっ、また返事なしですっ! どうも一瞬で嫌われたみたいだな。




“!!!”

その時、雲間に隠れていた2つの月のどちらかが、顔を出したんだろう、開け放れた窓から白い月光が台所に差し込んできて、隣のその子の姿がはっきりと見えたんだ。その瞬間なんか全身を電撃が襲った……。


 柔らかい月光の中で白髪がキラキラと輝き、白い肌は透明感すら感じる、髪の毛は真ん中分けで、額は狭い。顔はほっそりな小顔で、セラワルド人特有の頬骨は全く感じられない。鼻は細くて小さい凄く慎ましやかな感じだ。顎がすごく細くて、口も小さく唇も薄い、でもその唇の色はまるで紅をさしたかのような鮮やかさだ! その唇の色と肌の白さとのアンバランスさが凄く印象的。自分とは全く違う意味で絶対セラワルド人じゃないって感じです。イメージとしては妖精的? もしかしたらエルフ的ななにか? まさか地上に舞い降りた月の女神ルン(小月の女神)ですか? そんな感じをさせる様な儚げな子だった……。はい、そうです正直見とれていました……。


「……?」

沈黙というか、大皿を流しに入れる動きが止まり、完全に凍りついているこちらの様子に疑問を感じたのか、その子がこちらの様子を伺って、ちょっと顔を上げながら小首を傾げた。うwwww、マズ、マズ、これはマジ可愛いぞ! そして不思議な感じだ~~~。でもなんでさっきから目を伏せてるの? ちょっとだけでもいいから目が見たいな。ああ、なんかマジ金縛りな感じで、全然動けないよ~。




「セシル? 大丈夫? えっ、そこに誰かいるの!」

その時静寂に包まれた台所に、自分の背中方向からお母様の声が唐突に響いた。んがっぁ! マジ飛び上がりそうな位驚いたよぉ。マジ皿を落としそうでした。で、でも自分なんにも悪いことしてないよね? 一瞬自分の行動を確認してからお母様に返事をしようとした時に、お母様の声がした方向、つまり自分の方に顔を向けたその子がずっと伏せていた目を開いた…………。


 その開いた瞳は、唇の紅よりももっと鮮明な紅色だった……。そう、その紅い瞳を見た刹那のとき、まるで心臓が停止したかの様な感覚が襲ってきたんだ。なんか全身の血の気がサーッと引いて、身体の全ての感覚が消え去って行くみたいだった。




“ギャシャン”

自分の足下で大皿が派手な音を立てて砕け散った。あうぅ~、やっちまったなぁ~~! いや、マジに指先の感覚が無くなっていたんですよ……。でもその皿の割れる音で、今完全に催眠術状態から醒めたように身体の感覚が戻ってきました。






「セシル。怖い事はないわよ。ギルナスよ。知っているでしょう? わたしの子供よ」

お母様に“わたしの子供”って云われると、いつも胸の中が暖かく感じられるのはなぜでしょう~? 精神年齢は20歳+6歳なのにね……。こっちに来てまさかのマザコン化か~?


「ガ、ガ、ガダスシアプ。セ、セ、セシルナ・ア、アバルマです」

消え入るようなか細くて震えた声、両腕を身体の前でモジモジ捻っていて、できれば身体も消え入りたいって様子がありありと伝わってくる。


「ガダスシアプ。セシルナ! よろしくね!」

「……」

今度は快活な感じを与えるように、元気な声を出して見ました。うwww、やっぱ無言ですっ! セシルナさ~ん、どうしろって云うんですか?


「ギル。セシルでいいのよ。セシルナってあんまり呼ばれ慣れていないから」

お母様の声にセシルナ……、いやセシルは僅かに頷いた。よかった言葉は通じるみたいだ。一瞬月の女神だから、言葉が通じないのかとマジに思ってしまったよ……。


「セシル! いい名前だね。僕はギルでいいよ。ほんとに宜しくね」

「は、はい……」

声質的には、やっぱ元気少年路線を維持してみました。ピョコンと頭を下げるセシル。これがセシルと自分が、始めてコミュニケーション出来た瞬間だった……。ああ、当初の目的だったあのピザみたいな料理のお話はどっかに飛んでいましたね。






 その夜ベッドで横になりながら考えて居たのはセシルの事ばかりだった。だって自然とセシルの顔が脳裏にくっきりと浮かんで来るんだ。あの白い銀髪、ほっそりとした小顔で狭い額、細い小さな鼻、すっきりした頬、そして抜けるような白い肌、鮮やかな紅の唇、そしてその唇よりも鮮明な燃えるような紅い瞳……。ん? 白い肌に赤い唇に赤い瞳だって? まてよ、まてよ、それって…………。そ、そうかっ、セシルはアルビノ(先天性色素欠乏症・白子症)だっ!





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