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Another World 【胎動編】 ~異世界転生をまじめに考えたらこうなった~  作者: KRN
第Ⅳ章「勉強・修行・出会い・改革 つまりは成長」
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2.出会い① キャスレット・ウォールド

 

 

「こいつがキャス、キャスレット・ウォールドだ。ギルお前より7歳年上だな。ウルガム自警団で一番若いが、これでも10人長のひとりだぞ」

親父殿がそう云いながら、居間でなんかモジモジと所在無げに立ってる、親父殿に比べるとひょろっとした感じの若いあんちゃんを紹介してくれた。ふむふむ7つ上ってことは12歳ってことかな? それにしちゃでかいぞ? 12歳っていうと……、まだ小6か中1だろ? このあんちゃんはどうみても、160センチは絶対超えてるね。


 ああ、確かにこっちの世界の奴はなんかみんな結構でかいけど……。それにしても成長早すぎだろ。そりゃ親父殿よりはかなり小さいけど、充分小さなおじさん並の身長はあるぞ? ただし身体の厚みっていうか、重みはまったく感じられない。華奢って云えば華奢、細身って云えば細身、まぁそこはまだ子供って感じだな。でも肩幅がアンバランスに感じる位にでかい、きっとまだまだこれから大きくなるんだろうな……。ちょっと羨ましい。


 髪の毛は、金髪っていうより濃い茶髪? 一瞬ヤンキーかと思ったけど、これが地毛なんだから仕方ないよね。手入れなんかしてないだろうザンバラ頭、その下の額はやっぱり広い、顔全体も余計な肉は付いていないで荒削りな感じ、かなり頬骨が目立つ、ただしその顔の中央の鼻がセラワルド人にしては珍しく幅広で大きい。本来肌は白いんだろうけど日焼けで結構浅黒い。薄い唇の間から覗く真っ白な歯が、なかなか印象的だな。全体的イメージとしては餓鬼大将的な感じじゃなくて、ちょっと崩れたデキスギ君な感じか? これでメガネして肌白ならインテリ系イケメンになりそうな感じだな。セラワルド人って結構イケメン率多しだな……。ええっと今日は、なんでもウルガム自警団の初外教の事前説明会らしいです。




「ガダスシアプ。おら、キャスだす。ギル若様よろしくだで」

おおお、見事に訛ってるじゃん。そして挨拶の5秒後に大慌てで頭下げたぁ~。うううっ、いい味だしてるねぇ。


「ガダスシアプ。キャスさんですね。僕はギルです……。あのぉ~その若様ってのは、止めてくださいよ」

「けんど……」

そうそう“若様”は、いくらなんでもないだろう。キャスさんが困った表情を親父殿に向ける。


「キャスよ。ギルでいいんだ。ギルで」

「団長様、わかっただ、んじゃギル様で……」

親父殿が、笑いながら自分の頭髪をワシャワシャとする。も~う、それあんまり好きくありませんっ! それにキャスさん“様”もいりませんて。でも既に親父殿は、キャスさんを老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんに紹介し始めてしまいました。なんか簡単だなっ!


「キャス、お前たちの先生のイジュマー殿とアドバン殿だ、ほら挨拶しろ」

「ガダスシアプ。おら、キャスだす。よろしくだ」

「ガダスシアプ。ナハトマ・イジュマーじゃ」

「ガダスシアプ。サローン・アドバンである」

おっ、自分にしたより丁寧にお辞儀してるな。そしてこーして見ると、両先生はそれなりに威厳あるな~。


「おい、リリュ、カリファ、ちょっとこっちに来てくれ」

そして、カリ姐ぇさんとお母様が、親父殿に呼ばれて奥から出てきて……。あららら、キャスさん……。その顔はなんだ? おいおいポーって口が開いてるぞ~。お~い、なに見とれてるんだ?


「ガダスシアプ。キャスレットさん。これからギルナスを宜しくお願いしますね」

「ガ、ガ、ガダスシアプ」

お母様が声を掛けるけど、カリ姐ぇさんはジット様子を見てるだけだ。まぁ我が家の警備主任としては当然な態度かな? そしてキャスさん完全に心ここに非ずって感じです。大丈夫かお前?






~キャスレット・ウォールからの視線~

 団長様の家は、平屋だけんど居間がひれぇなぁ。うおっ、なんかこっこがいっぞ? 誰だべ?


「キャスレット・ウォールドだ。ギルお前より7歳上だな。ウルガム自警団で一番若いが、これでも10人長のひとりだ」

団長様が、目の前の子供に向かっておらを紹介する。これが、団長様のこっこの、ギルナス様だべか? む~~あんま団長殿に似てねぇべ。なんでも団長様のずっと昔のじいさんの祖戻りだって話しを団長様がしてたべ。確かに髪がめずらしいくれぇ黒く濃いだな。んで瞳も青くねぇんだぁ、うす~い灰色? 額も狭いし鼻も丸くてあんま高くねぇ。顔付きはちょっと丸っこい感じだべ。唇は結構厚くて赤いだな。


 んんん~これはほんとに珍しいだ、近所じゃ見かけん様な感じのこっこだべ。身体はつきは5歳にしても小柄なんだけんど、こりゃどうしたって目立つべ……。団長様があまり外に出さないって云っていたのも、なんか判る気もすんなぁ~。んあっ、なんかこっちみてんべぇ~。ああ、こっこじゃなくて若様だべか……。


「ガダスシアプ。おら、キャスだす。ギル若様よろしくだで」

えっと? ここで頭さげんだかな?


「ガダスシアプ。キャスさんですね。僕はギルです……。あのぉ~その若様ってのは、止めてくださいよ」

見た目も声質も確かにこっこだども、なんか口調がこっこじゃねぇだ。なんだべこれ……? やっぱ団長様のこっこだからだべか?


「けんど……」

なんて云えばいいんだべ? やっぱし団長様のこっこだから若様だべ?


「キャスよ。ギルでいいんだ。ギルで」

団長様が笑いながら、こっ……、若様の頭をワシャワシャしてるだ……。


「わかっただ、んじゃギル様で……」

これならよかんべか? ん? なんか、わか……、ギル様がちょっとまだ不満気だべ……。


「キャス、お前たちの先生のイジュマー殿とアドバン殿だ、ほら挨拶しろ」

ほぉ、これが先生いうだか? ちっせぇのはホピッドだべ。キトアじゃまず見たことないべ。んでこっちのおやじさんは、またえれぇ怖そうだべ……。


「ガダスシアプ。おら、キャスだす。よろしくだ」

「ガダスシアプ。ナハトマ・イジュマーじゃ」

「ガダスシアプ。サローン・アドバンである」

先生? つまり団長様の仲間ってこったな。ここはちょっと丁寧にお辞儀さしとくべ。


「おい、リリュ、カリファ、ちょっとこっちに来てくれ」

リリュ? カリファ? まだ居るんか、誰だべな……。おら正直もう疲れちまっただよ……。


 んあっ! おらは見ただ。あれが団長様の奥様? いや奥方様……。でもでも違うべ、このひとはヒトじゃないべ。このひとが、きっとエスタの美の女神、エルスナ様だべ。間違いないだ……。


「ガダスシアプ。キャスレットさん。これからギルナスを宜しくお願いしますね」

「ガ、ガ、ガダスシアプ」

うああああ、この声……。今のお言葉おらの脳みそに、永遠に刻まれただ。このひとのこっこなら、やっぱし若様だべぇ。わかっただ、リリュ奥様おらの命に変えても若様にお仕えするだぁぁぁ。






~ギルナス・ヴェルウントからの視線~

「違うよキャスさん。上の桁の数字を1つ減らすんだよ」

キャスと初めて会って、あれからもう1年以上が経過しています。ええ、自分は6歳になりました! そして今日もウルガムの自警団のみなさんが、サラキトア塾所へ外教に来ています。


 各集落から自警団の人が、このサラキトアの塾所へやって来て勉強するのを、“外教”、老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんの両先生が、親父殿と共に各集落に行って勉強を指導するのを“内教”と呼んでいます。もともとキトア郡では集落の交流ってのはそんな盛んではなかったので、当初はいろいろギクシャクしてましたけど……。ええ、1年経ってそんな呼び方にしろ内容にしろ、もうすっかり馴染んできてるみたいです。




 実は塾所の開所前に老師(イジュマー)さんから、算学の勉強を数回受けてて、そこで微分の平均変化率や微分係数の話しとなった時点で、“坊主、もう算学は卒業じゃ。塾所ができたらわしの算学助教を努めるんじゃ”となっていました。でもでもまさか剣と魔法の世界で関数式について語るとは思ってもいませんでしたよ。でもねそのあとで、テゥス・オマジク(ことわりの書)中に、“極限の基本式”を見つけた時は、正直ぶったまげました。マジはんぱないなテゥス・オマジク(ことわりの書)……。


 と云う事で自分は、この外教での算学(四則演算)の助教を務めております。まぁ、ただいま絶賛6歳ですけど、この小さな頭の中には、一応数Ⅲレベル程度の数学知識が収まっているんでね。それに元々数学は嫌いじゃなかったし、しかも前世(此の頃では、元のあっちの世界の事を“前世”と躊躇なく思える様になりました)の通信制大学では、教職課程の単位も取っていたからね。でも実際に教えるとなると、これが思ったより難しいって事を思い知りました。まぁ知ってる事と教える事ってのは、ほんと別物なんだ。でも四則演算程度ならば……、と頑張っている次第です。




 そんな訳で今自分は、この7歳年上のあんちゃん事“キャスレット・ウォールド”、愛称キャスに3桁の引き算を教えているんですね。キャスは、一応1桁の引き算はできるんですけど、2桁以上の引き算で上桁から数字を借りてくる辺りが苦手です。特に上の桁が0で、その上の桁から数字を借りてくる場合(206-8とかだね)、なんかは完全にお手上げになるみたいです。キャス~~、なんでこんなが判らんのだぁ~。すでに半年近くほとんど前進してないぞ……。う~ん教える事ってほんとに難しいなぁ。手の指を折りながら苦悶するキャスを見て、心底そう感じる今日この頃です。




「若様、そうじゃねぇだべ。こうシュって感じだべ。シュだでシュッ? どっしてわかんねぇべか?」

確か初めて会った時に若様って呼ぶのを拒否して了解されたハズなんだけど、その後何故かキャスは自分を“若様”って呼ぶことに固執するんだよね。この件はもう面倒なんで放置中です。


 そんなキャスが、目の前で上半身を綺麗にひねりながら木剣を振っています。今は、レイジナ流カイト派の型“背敵払打”の練習中です。そして今度はキャスが自分の指導役ですね。キャスは、最近古武士(アドバン)さんから、レイジナ流カイト派の修技(士)を賜授(しじゅ)されたんですよ。一方の自分はと云うと、キャスより剣術修行を半年は早く始めたんですが、今だに倣技(士)すら賜授(しじゅ)されてません。未だにいわゆる白技(士)、つまり白帯、無位って奴ですね。


 ちなみにレイジナ流の階位は、師範-皆伝-教技-錬技-修技-倣技なんで、修技ってのは初段な感じですか? う~ん、キャスは才能あるってことだよね……。でもそのシュッってのはなに? 全然わかりませんけど……。知ってる事と教える事ってのは、ほんとに別物なんだと、改めてしみじみと噛み締めました。






「若様は、さすがだべぇ。算学もえれぇし、年史も地学も正道もすんげぇよなっ」

3日間の外教のメニューの全てが終わった夜、掃除を終えた道場で老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんを上座に、車座で座っているウルガムの自警団のみなさん。


 ん? うちの集落の自警団メンバも数人混ざっているな。そんな車座の中で、キャスさんが自分の頭を、ぶ厚い手でワシャワシャしながら楽しそうに声を上げている。だから! それあまり好きくありませんてっ!


「もうちっと、剣術の方が伸びっべばいう事なしだべ……」

だが突然ワシャワシャしてたキャスのでかい手がサッと引っ込む。ん? どうした?




「ガダスシアプ。みなさま、お疲れさまです。お待ちかの夕食ですよ」

集落の若い娘さん数人を引き連れて、道場の奥の台所から両手に大皿を持ち、首元から足元までを麻のエプロンで身を覆い、頭にもタオルを巻いたお母様が登場して来ました。う~ん、お母様、それじゃまるで給食のおばさんみたいですよ。ほんと完全武装な格好ですね。でもそれでも回りのお姉さんに比べると燦然と輝く様に綺麗です。そっか、サラキトアの自警団メンバの目的は、これか……。ええ、今日はウルガムの自警団の外教1週年記念日なんですね。


「「「「「「ガダスシアプ」」」」」」

おお、見事にハモったね~。


「まずは、茶小芋(小ジャガイモ)の丸揚げに、ジギン()の唐揚、それとキトアサラレクの香魚()の塩焼きですよ」

お母様がそう云うと、お母様の後ろに続いて居た集落の若いお姉さん達が、お母様の手にあったでっかい皿に小山の様に盛られた、皮ごとカリカリに揚げられた茶小芋(小ジャガイモ)の丸揚げと、香ばしい匂いを漂わせる大ぶりな切り身の鶏の唐揚げ、それにV形をした壺みたいなうつわに盛られた、串に刺さったちょっと焦げ目のある鮎の塩焼きを、老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんの前に器用に置いて行く。そして台所から姿を現して来た他のお姉さん達も、次々と皆の前に茶小芋(小ジャガイモ)の丸揚げの大皿とジギン()の唐揚の大皿、それに鮎の塩焼きが盛られた壺? を並べていく。しかし見事に野菜っけなしだな。まぁ若い男子向きって事かな……。でもこの唐揚げの香りが……、うぐぐぐぐぅぅ、美味そうだ、た、たまらん~~。あっ、お腹がギュゥギュゥ云い出したぞ~~。


 このジギン()の唐揚は、親父殿の曽祖父のリシン・ヴェルウントさん秘伝のレシピと調味料で作られているらしいです。老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さん、そしてあのアズナイル・ソルメタル様も絶賛した一品です!

「うっwwwww」

その料理を前にして声にならない歓声がみんなの口から漏れ出す。


 うがっ、その時台所から巨大な木の樽が歩いてきた! いやっ違う、カリ姐ぇさんがでかい木の樽を抱えているんだ。でもそれってでか過ぎですよカリ姐ぇさん、全然姿が樽に隠れてみえませんって……。いったいそれってどんだけの重さがあるんだろう?


「ほらっ、サッサとジョッキを配るんだよ」

これまた巨大なお盆の上に、10個以上の木のジョッキを載せたお姉さん達に、その巨大な樽が指示を出します。ササッと手早く車座に座ったみんなに、なみなみとエールが注がれた木のジョッキが行き渡ると、(もちろん自分は、未成年ですからチェード(赤木果水)が注がれた小さなコップを持っています。)古武士(アドバン)さんが、お母様に小声で話かける。


「ささっ、奥方様こちらにどうぞ、護民官殿がおられんので、今宵のエスコートマスター(饗主)は、奥方様である。フラージェ(乾杯)をお願いするである」

「わたしがですか?」

みんなの前に料理が行き渡るのを腰に手を当てながら確認していたお母様が、古武士(アドバン)さんの突然の言葉に、戸惑いの表情を浮かべる。うんうん、通常こういう席では女性は挨拶しないものだからね。


「じゃな。奥方、護民官がおらん以上そうなるのは道理じゃ」

老師(イジュマー)さんも続ける。そうです今日親父殿は、州都リシュトに季間報告へ行っていて、不在なんですね。


「でもまだ、次の料理がありますので、それに女性がこの様な場で挨拶なんかは……」

ああ、お母様がちょっと困っている。でもさすがに自分じゃ、まだまだ役不足だし……。


「いや、奥方様エスコートマスター(饗主)ならば、女性であってもなんら問題ないである。ささっ、フラージェ(乾杯)だけである」

すると、カリ姐ぇさんが、いつの間にか抱えていたエールの樽を脇に置いて、お母様の傍らにスッと寄り添うと、敬々しくそして手早くお母様の頭のタオルと全身を覆っていた麻のエプロンを取り去りました。


 その使い込まれた麻のエプロンの下から現れたお母様の出で立ちは、ピンクっぽい柔らかな感じの生地のワンピース姿で、そのワンピースの腰下部分はフレアのある膝下までのスカートになっていた。そしてワンピースの上には、襟の部分が柔らかいカーブを描いている腰上までの薄手の白のカーデイガンを羽織っている。それはもうキトア近辺では、絶対にお目に掛かれない高貴さと優雅さを醸しだす大人な女性の姿なんです。GOOD・JOB! カリ姐ぇさん!

 

「「「「「「………………」」」」」」

今度こそ完全に声のない、息を飲むようなざわめきが、老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんを含む車座に座る野郎共全員から漏れだす。どうだっ! この人こそが自分のお母様だぞ! 頭が高い~、控えおれ~。


 ちょっと困った感じなお母様、でもカリ姐ぇさんがサッと木のジョッキをお母様に手渡すと、覚悟を決めたのかお母様が挨拶を始めました。


「ガダスシアプ。皆様3日に及んだ、お勤めの修学ご苦労様でした。そして外教1週年おめでとうございます。主人のガディミリタ(領地護民武官)ナイアス・ヴェルウントに成り代わり、お祝い申し上げます。今後も正道と王国の安寧の為に尽力くださいませ。フラージェ(乾杯)

あうっ、立派ですぅ。お母様ぁ~。お母様の白い頬がほのかに上気してる……。これじゃまたお母様ファンが増加しちゃうよ~。おい、そこの奴拝むな!


「「「「「「フラージェ(乾杯)」」」」」」

乾杯の所作をして、ジョッキに色っぽいぷっくりとした唇をちょっとだけつける。そして老師(イジュマー)さんと古武士(アドバン)さんに目礼するとそそくさと、逃げるように台所に姿を消すお母様。


「「「「「「ふぅぅぅぅ」」」」」」

お母様の後ろ姿が台所へと消えると、周りのあちこちからため息が漏れる。


「綺麗だべぇ」

「夢みてぇだぁ」

「奥さんにほしぃべ」

「女神きた~」

「まっ、なかなかである」

「うむ、見事じゃな」

こ、こいつら、なんと不埒な事をいってるんだ! な、なんと古武士(アドバン)さんと老師(イジュマー)さんまでが、嬉しげに頷いているし! そして隣に座ってるキャスに至っては……。


「リリュ奥様、やっぱりエルスナ()の女神様だぁ……」

夢見る様な表情を浮かべてるキャス。それを見て思わず肘でそのキャスの横腹を突いてやった。


「女神様じゃないですよ。僕のお母様です」

「んあっ……。んなことはわかってんだべ。んでも、やっぱリリュ奥様は素敵だべ」

一気に木のジョッキのエールを喉へ流し込む、キャス。まぁお母様が褒められて悪い気はしないけどね。でもなんかちょっぴり心配でもある……。




「うあぁっ、うんめぇぇ、なんじゃこれ? これがほんにジギンの肉だべか!?」

周りから別の感嘆の声が上がり出す。そうそう、料理に驚いていればいいんだよ。それならいくらでも、OKさ。


「この丸っちぃのは、あんだべ?」

ひとりがナイフの先に茶小芋(小ジャガイモ)を突き刺してシゲシゲと疑いの目を向けている。


茶小芋(小ジャガイモ)ですよ。新茶小芋(小ジャガイモ)の丸揚げですね」

茶芋ジャガイモ! ありゃ毒があるだべ」

そこでちゃちゃっと解説をすると、驚いた声を上げて直ぐにナイフの先のジャガイモを皿に戻しちゃった。


「そんな事ないですよ。ちゃんと処理をすれば全然大丈夫なんです」

そう云いながら、まだ湯気が立っているホクホクの小ジャガイモの丸揚げを口に運ぶ。


「ほふっ、はふっ、ふはっ」

「当たりめぇだ。リリュ奥様の料理が毒なはずねぇべ」

あっうううう、口が火傷するぅ~。ハフハフしてるそんな自分を横目に、続いてキャスも小ジャガイモの丸揚げに手を伸ばす。


「あつっぅぅ! んだども、うんめぇぇぇ」

キャスもハフハフしながら、次々に小ジャガを口に運ぶ。キャスのそんな姿を見て、それまで胡散臭そうに小ジャガを眺めていた数人が、恐る恐る小ジャガに口をつけ始める。


「っ!!!」

口に小ジャガを運んだみんなが、驚きの表情をうかべて、次々と手を伸ばして行く。どうやら気に入って貰えたみたいですね。これでジャガイモへの偏見が少しでも消えるといいんだけどね……。




 次々と茶小芋(小ジャガイモ)の丸揚げとジギン()の唐揚の小山、それと壺に刺さった鮎の塩焼きがみんなの胃袋の中に消えていく。そして空いた木のジョッキを素早く回収すると巨大な木の樽から、次から次へと冷たいエールを注いで行く、カリ姐ぇさん以下のエール配膳隊。凄いです、どこかのビアホール見たい、プロ並ですよ……。


 どんどんと宴も進んで行くと、エール配膳隊のお姉さん達と、車座の野郎どもが打ち解けだして、なにやら楽しいそうにおしゃべりを初めてる。駄目だぞホステスさんには手を触れないで下さいね。しかもカリ姐ぇさんの回りには数人の野郎が群がってる。う~ん、集落では猫人を見たことないから珍しいのか? いやカリ姐ぇさん可愛いからな~。まっ36歳だけどね……。後で聞いた話しだけど、キトア郡では集落間の交流が少ないので、他の集落の異性と出会えるチャンスも当たり前に限られているんだって。そこで親父殿はこの塾所で積極的に宴会を行ってるらしい。これって合コンなんですか?


“なんとか嫁でもふっつけて重しを付けないと、長男以外の野郎共は直ぐフラフラと都会へと流れ出ちまうからな”

親父殿の独り言でした。なんとここでも嫁不足なんですか? でも女子の姿は結構多いけどね? しかしそんな事まで心配しなきゃならんのか~親父殿も大変だな~。




 そうこうしてると、なんか薄く延ばした長方形のパン生地の上にたっぷりなフロマ(チーズ)と香草を乗せ、こんがりと焼かれたいい匂いを漂わせる料理がまたお姉さん達によって運ばれて来ました。こ、これは、ピザですね! 四角いし、ちょっと生地の食感が違いますけど、凄いです。これはフロマ(チーズ)を活かす為の新作って奴ですか? いろいろ聞いてみたいけど、お母様はその後姿を現さないので聞くことができない。う~ん、どうやら台所で料理に集中してるみたいです。うん、ちょっと行ってみようかな?




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