17.勉強のお時間 その⑭【宗教と神話と伝説と】
「「「ガダスシアプ」」」
昨日の最後がなんか微妙な終わり方したんだけど、今朝は特に変な感じもなしで挨拶を交わしました。
「小僧、今日はちょっと感じを変えて、宗教とか神話とかそういう感じの話しをしてみようぞ」
「で、あるな。固い話しだけでは面白みがないである」
「宗教に神話ですか……」
でも正直そっち方面は、元日本人としては苦手かも知れないな。やっぱ、昨日の微妙な終わり方を気にしてるのかな? いきなりの方向変更ですね。自分は全然大丈夫ですよ。
「まずセラワルドで宗教と云えば、エスタリオン教じゃな。これは当然な事じゃが、この教えはエスタリオン神国の初代教皇ロキシア・エスタ・ヴォツェックが拓いた教えなんじゃな」
「えっ、昔からあった教えじゃないんですか?」
「まぁ3015年前からある訳じゃな」
「ええ、そりゃ昔って云えば、昔ですね……」
「エスタ教は、ロキシアが神導の旅の神託を受けた時から始まった訳じゃな。それから2年後にロキシアがラブラレクに着いた時には、その教義がほぼ完成したらしいのじゃ。ロキシアに云わせると、旅の途中で幾度もエスタの神からの天啓を受けたそうなんじゃ。じゃがわしはロキシアが自ら考えたと見ているんじゃ。まっ、そんな事を大きな声で云うとエスタ教から神罰問診を受けそうじゃがな」
巨大宗教の教義をひとりの人間が考えたんですか? それだと、いろいろと矛盾が起きそうですけど……。まぁ宗教だから多少の矛盾はOKですか?
「エスタ教は【空間と時と存在の神】である主神エスタリオンを崇める宗教で、その教義は、“ヒトと諸族が空間と時に存在せしめる事”なんじゃな。まぁ難しい事も色々云っておるようじゃが、どうもわし的に突き詰めて見ると“生きて子孫を残せ”と云う言葉に集約できそうじゃな」
「で、あるか?」
「そんな簡単なんですか?」
「ああ、エスタ教の教えでは、我々の命の中には必ずサノア神が宿っているらしいんじゃ。そしてその他の全ての女神は、そのサノア神を守る為に在ると云う事なんじゃな。じゃからどうもあの宗教は神国とか教団を守ると云うよりは、如何に命=サノア神を残して行くかを主眼に置いておる様な気がしてならんのじゃ。知らんかの“産めよ増やせ地に満たせ、新たな種を明日に繋げ”とはロキシアの言葉じゃぞ」
思わず、自分と古武士の目があっちゃいました。そんな宗教ってあるのか? しかもその言葉の前半はどっかで……。
「まっ、そんな事はエスタ教の司教枢機卿長か教皇当たりに確かめないと判らんがのう。さてエスタ教の内容を簡単に説明しようぞ、エスタ教は主神エスタリオン以下、99の女神から成っているんじゃ」
「全部女神様ですか?」
「唯一の男神こそがさっきのサノア神じゃよ、サノア神は我らの命の中にいるので、外の世界にはどこにも出て来ないんじゃな。表に出てくるのは全て女神だけじゃな」
「はぁ……」
神様が女神だけってのはなかなか珍しいな。そして多神教なんだな。多神教はあんまり排他的・攻撃的にならないからいいよね。でも一神教に比べると結束力に欠けるんだよな~。やっぱ、アッ○ーさんとかエ○バさんとかキ○ストさんとかは、なんか結束力強いからね。
「99の女神が居るんじゃが、これらの女神は全てサノア神とエスタリオンの子供で、またサノアの妻でもあるんじゃな。ただしエルナスはエスタの姉で、フォギネとナミアはエスタの妹じゃな。この3姉妹の女神はエスタ3柱と云って、ちょっと99の女神の中でも別格じゃな。あと実際は99の女神はどうやら、エスタの写身であり別名でもあるらしいのじゃ」
「で、あるか? それがしあまり詳しくなかったであるが、そんな教えになっているであるか」
んんん? 子供で妻で姉妹って……、それってど~なってるの? ってか神様だしなんでもありか……。しかもエイリアスとか……。つまり多神教ぽいけど、実質は一神教なんですか? うwwww、もう意味わからん~。
「どこの時代にも、どこの世界にも存在しないユニークな教えだと、リジェット・エメタリーパティックもテゥス・オマジクの中に書いてあるんじゃ。過去のどんな宗教とも繋がりのないユニークな教え、確かにエスタの天啓を受けたと考えられん事もないんじゃが、ロキシアの発想じゃったとしても、わしは驚かんのぉ」
「エスタ教が女神中心であるので、セラワルドでは女性の立場が良くなったと聞いているのである」
「じゃな」
なにっ、これで女性の地位が良いの? じゃ一体他の世界はどーなってるんだ?
「エスタ教は、大体こんもんじゃな。後有名な宗教としてはゾアス
火の宗教か~。やっぱり攻撃的な感じするよね。ちょっと怖いな……。きっとどこかの神殿か洞窟の奥底にゾアスの炎とかあるんだろな。イン○ィージョーンズ当たりが探検に行きそうだな。
「もうひとつのへリラ
じゃからへリラ
どうも一神教ってのは、他者の存在を許せない方向に向いがちだよね。そこらへんが元日本人としては、どうもピンと来ない感じなんだよね。なんと云ってもこっちは、八百万
「最後が光神教じゃが、光神教にはアムンとブラマと云う、光の最高神がおってな、世界はこのふたりの最高神によって、無から生まれたらしいのじゃな。そして全ての始まりは“光”からなんじゃな。じゃが光と同時に闇も生まれたんじゃ。光神教に拠ると、世界の真の姿とは、全てはこの光と闇の凌ぎ合いに帰結するらしいのじゃ。生と死、正義と悪、心と身体、火と水、愛と憎しみ……、これらも全ては光と闇の凌ぎ合いから生まれた結果なんじゃな。当然じゃが光神教は当然光の側にたって闇を滅する者と云う事じゃ。光神教にとっての命とは、光の示す仮初の一形態に過ぎんのじゃ。なんと云っても全ては光なんじゃからな。
じゃから光神教徒とっての死とは、単に光りへと還る事なのじゃな。一方光神教徒以外は死ぬと闇に戻るそうじゃ。そういう訳じゃから光神教では、亡骸にはあまり意味を感じないのじゃ。さすがに放置まではしないが埋葬の仕方には、全く拘りや興味がないようじゃな。そんな光神教にとっては仲間以外は全て敵じゃ、そして闘って相手を滅する事こそが教義の全てじゃから、恐ろしく攻撃的な宗教なんじゃよ。“良い異教徒とは死んだ異教徒だけ”と云うのが光神教の有名な言葉じゃな」
なんだそれ。確かに二元論ってのは判り易いんだけど、そこまで極端に走りますか? ちょっと近寄りたくないな光神教。それに最期の言葉……、宗教ってどこでもおんなじなんかっ。
「光神教はさすがに危険であるな。であるから表面的には栄えていない様に見えるであるが、影ではかなりの信者がいるとの話しである」
「うむ、その様じゃな。何と云っても闇を滅する為には全てが許されるらしいのじゃ。判り易いのじゃろうな。心がなんらかの憎しみに囚われると、光神教の教えが正しく見えるのじゃろうな」
「ご子息殿も、夢々近づく事はない様にである。あれは一種の狂信教であるよ」
うwww、光の宗教のハズなのに影とか憎しみとか、方向ズレてませんか? ええ、絶対近寄りませんって、そんなカルト宗教なんかに……。
「ちなみにエスタ教では生の中で命は繋がると云う考えじゃから、死とは生の交代とみなすんじゃな。じゃからエスタ教徒は、死んだ教徒の亡骸を自然に還すのじゃ。埋葬は主に土葬や水葬となる訳じゃ」
「エスタ教では火葬も教義的に問題ないらしいのである。それがしの最期は火葬を望むである」
「それに教義から見てもエスタ教は排他的、攻撃的にはなれんのじゃ。ただ教徒拡大、教義の布教には積極的じゃな」
「“広教教導”なのである」
エスタ教って、他に比べるとなんか穏健なんだな。セラワルドに生まれて良かったな。物心ついたら光神教徒でした~、とか悲惨だよね。
「きちんと教義が確立できてる大きな宗教はこの4つ位じゃな。まぁ小さい物は無数にあるようじゃが、基本この4つの傍流と考えて良いじゃろ。その中でも最大の教えはエスタ教じゃな」
「ちなみにそれがしは、正式に入信こそしておらんが、エスタ教徒だと思ってるである」
「まぁ、わしもサロン殿と同じじゃ。フェルム人を除けばほとんどのセラワルドの民は、似たような立場じゃな」
おおお、なんかちょっと疲れたぞ。やっぱ宗教ってどっか怖いな。きっと自分もその、入信こそしてないけどエスタ教徒って、奴のひとりなんだろうな。元日本人としてもなんとなく馴染むなそれ。でもフェルムの人達は違うのか……。そりゃエスタ教は民族の敵だから仕方ないか。
「これが所謂宗教の話なんじゃが、あとひとつ宗教と云うか、教えと云うか、そういうものがあるんじゃ。多分世界で最も広まっている教えじゃな。ほとんどのフェルム人もそれを信じているようじゃな。リジェットの魔道の旅の報告にも、ほとんど同じ内容の教えが、アナワルド
ほうほう全世界的な教えですか? えっとそれは一体どんなもんでしょうか?
「始祖崇拝であるな」
「ふむ、そうじゃ。始祖崇拝じゃ」
「始祖崇拝とは簡単には、祖先を敬い、老人を敬い、親を敬い、子を慈
それは最期の話しを除けばなんか普通かな。それが教え?
「この教えの根本にあるのが、“初めのヒト”たるファト・ウズマーの神話である」
「初めのヒト? ファト・ウズマー?」
「フェルムに伝わる“初めのヒト”の神話によると、遥かな昔、まだヒトも諸族も生まれる前に、あるスモン
だが僅かにこの種の峻別を乗り越えた種族こそが、スモン
「そうじゃ、それが“初めのヒト”ファト・ウズマーによる諸族創命の神話じゃ」
「このファト・ウズマーが残した10の言葉が、“始祖に連なる者を敬え。老いたる者を敬え。自らの親こそを敬え。多くの子を成せ。子は自分の写身
「うむ10教じゃな」
10教! 10戒じゃなくて 10教ですかっ。それにその諸族創命って、なんかなかなか奥深いぞ。ちゃんと人族と獣人族が分かれてるし……。単なるお伽話レベルじゃない匂いがするな。
「このファト・ウズマー10教の教えが、フェルムに伝わる始祖崇拝の神話・教えである」
「ふむ、ウズグムルツ
おお、まるで洪水伝説みたいなもんですかね? であれも多分実話が継承されたんじゃないかって話しなんだよね……。
「これより連なる伝説が、7賢者の伝説である。そう生命
「これこそ伝説じゃ」
「しかし実際7賢者の痕跡はあちこちに残っているのである」
「確かにいろいろと痕跡は残っておるんじゃが、それが即ち7賢人実在の証明にはならんじゃろ。わしが思うに、7賢者を名乗るなんらかの存在は実在したのじゃろう。ただしそれは7人の個人ではなくて、一種の家名・職名を綿々と名乗り続けた集団・一族・組織なんではないじゃろうか。しかもそれも絶えて久しいとわしは見ているのじゃがな」
で、でたな賢者。この分だときっと賢者の石とかもその内出てきそうだな。でも確かに不死者とかあり得ないだろうから、古武士
「それがしは、7賢人は実在するし、今もどこかに潜んでいると信じているのである」
「そもそも何故潜むのじゃ。あれだけ派手な事もしてるんじゃから、堂々と姿を現してくれば良いのじゃ」
「そ、それは……、導者の導きかと……」
「それにじゃ、まず不死者とかあり得んじゃろ? 諸族に限らず、あらゆる命は時来たれば、その灯
「で、であるからこそ賢者なのである」
「わしには、それを道理とは思えんのじゃ」
「それがしは、あくまで信じるのみなのである」
「それは勝手な事じゃが、押し付けは無しじゃぞ」
古武士
「なに云ってるんだか。賢者さんは普通にいるに決まってるじゃん」
うおっ、ここでカリ姐ぇさんが突然参戦してきたぞ。自信満々腰に手を当てて、ビッと胸を張ってるな。猫耳もすっげぇピンと立ってるし。
「なんたってカリファの里の真祖こそが孤者なんだよ!」
「おお、カリファ殿。左様であるか」
「猫娘よ。それをなんぞ証明できるのか?」
「しょ、証明? なんだよそれ?」
老師
「証明とは、はっきりとした証
「あっ、証
おお、再びググッと胸を張って勝ち誇った顔で老師
「まぁ猫娘の里に、なにかそれらしき者が居たとしても、その者が不死者である証明にはならんのじゃ」
「孤者は何千年に渡って何度も、里に顔を出してるんだよ」
「おお、カリファ殿。それは凄いである」
「猫娘、お主それを直に見たのか?」
「い、いや。里長
「それにしても、その者が同じ者だとすれば、はやり賢者は不死者と云う事になるである」
「まっ、それは初めて聞いた話しじゃな。うむ、確かに興味を持てる話しじゃ。猫娘お主どこの里の出身なんじゃ?」
「!!!!っ。そ、そ、そんな事云える訳ないじゃん。馬鹿っ!」
おっ、なんかカリ姐ぇさんの顔がちょっと赤い? ん? 猫耳がなんか凄く忙
「イジュマー老よ、今のはマズイであるよ」
「ん? 何故じゃ?」
「猫人のオナゴに、その出身の里族を尋ねるのは、求愛の言葉と同意語なのである」
「……なんでじゃ」
「猫人は同じ里族同士での婚姻は厳禁
「ふむ、種族が違ってもか?」
「風習とはそういうものなのである」
「むむむむ……」
ヤバっ。そんな大地雷が埋まっていたとはメモメモ……。一切の会話が途切れなんか気まずぞうに、頭を掻き出す老師
第Ⅲ章「勉強・勉強・勉強そして勉強」 完
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