13.勉強のお時間 その⑪【セラワルド史の6 10国時代 歴史の時間終了!】
それでは最後の歴史の授業始めるよ~。
「さて魔禍に二重包囲された5国連合軍であるが、騎士や兵士は勇猛果敢に戦ってのではあるが徐々にその数を削られていくのである。魔獣はその恐るべき体力と、その優れた機動力で、5国連合軍の数的有利を覆していくのである。更に二重包囲された5国連合軍は、戦域が狭くて数の有利さを発揮できないのあるな。それに魔獣は数日であれば休息を全く必要としない事も、二重包囲下の5国連合軍に取って恐るべき事であったである」
「しかも昨日斃れた友が今日は魔獣となって襲ってくるのじゃ。ほんに悪夢じゃの……」
そりゃそうだろうな。内外を包囲されて24時間連続で攻撃され続けて、しかも仲間がどんどん魔獣に成って行くなんて状況、ふつうの人間ならとても耐えられないよね……。
「5国連合軍にしてみると、どこか一箇所が崩れると、寸断され忽ち総崩れになると云う様な危機的状況じゃな。まぁ5国連合軍が各国の精鋭軍であった事と、魔獣との戦い方、つまり常に個を多数で囲む戦法と、魔道部隊の有効利用で10日以上、5国連合軍は魔禍の二重包囲に耐えたのじゃよ。それは近隣に居る唯一のまとまった残存戦力たるエスタリオン神国のエスタ護神騎士団の救援と云う最後の期待があったからなのじゃな。しかしこれは、セラワルド史の十大不可思議と云われておるのじゃが、この状況下においてエスタの護神枢機卿長は護神騎士団への出撃を命じなかったのじゃ」
うえぇぇ、なんで、なんで? だって“守神戦”の神宣が下っているんでしょう? それって総力戦じゃないの?
「で、あるな。真に理解できない事であるが、結局この2度目の魔禍では、エスタ護神騎士団は一切動かなったのである。そしてこの時の護神枢機卿長は、2度目の魔禍の終結後に、謎の失踪を遂げたのである」
うww、それってまさかの暗殺? それとも誘拐ですか? おお、でたな闇の暗黒史。でもマジ一体どんな謎が隠されているんだろう。
「さてこの5国連合軍の存亡の危機の時に現れたのが、エスタ護神騎士団ではなく、セキニア・アグヴェントだったのじゃ」
ん? おっ、待ってましたセキニアさん。でも確か這々の体で神の森に逃げてたんだよね?
「神の森から現れたセキニア・アグヴェントの後ろには、なんと神の森に住んでおった諸族が追き従っておったのじゃな。彼らはセキニア・アグヴェント個人と、”信義の契”を結んでいたのじゃ。僅か10日の間に神の森の中で一体なにがあったのか? これもまたセラワルド史の十大不可思議のひとつなんじゃよ」
おおおお、大逆転じゃないですか~。やるなセキニア! でも十大不可思議って他にどんなのがあるんだろう?
「このセキニア・諸族連合軍の背後からの奇襲により、魔禍の包囲の一部が崩れさったである。この解囲された部分から奔流の様に湧きだした5国連合軍が、魔禍を徐々に更に外側から包み込んで行くのであるな。元より数では圧倒的に有利な5国連合軍であるから、これにより戦局は一変したである。自由に動ける戦域を手中にした5国連合軍は、その数を活かして交代で休憩を取りつつも、各戦線での数的優位を維持できたのであるな。こうして攻守は劇的に交代したのである。数日の激戦の後崩れ去った魔禍から、3人の魔人が、試練の森、恵みの森、神の森へとそれぞれ逃げこんだである。この3人の魔人を最後に撃ち取ったのが、セキニア・アグヴェントとセキニアの右翼、狂戦士クラウド・ザッハニー、セキニアの左翼、赤いロングソード緋煌の剣士アイロス・ベルムニトなのである。これにより終にエスタ暦1911年に2度目の魔禍が終結したのであるよ」
いや~マジ魔禍っての必ず大変な事になるんだね。それでアレでしょう? また国が増えるんでしょう?
「こうして魔禍そのものは終わった訳じゃが、2度目の魔禍が終結した後、最初の魔禍の時と同様に、やはりコスラが大流行したんじゃ。元々リジェット・エレリープティクの研究でも、魔禍とコスラの関連は疑われておったのじゃが、リジェットの研究を継いでいる者達によると、今では魔禍とコスラには、なんらかの関連があると断じておる位じゃな。そしてこの2度目の魔禍後のコスラの流行は、最初の魔禍の時の流行を遥かに大きく上回る勢いであったんじゃ。実際時のエスタリオン神国教皇もコスラに感染しておるんじゃな」
「あの~。コスラってなんですか?」
突然の聞きなれない単語の登場に思わずの質問です。
「コスラとは流行り病のひとつなんじゃが、さっきも云った通り、魔禍の後には何故か大流行するんじゃ。コスラに罹ると突然水のような下痢と嘔吐が1日20~30回以上も起こるのじゃ。腹痛・発熱はなく、むしろ体温は下がるのじゃよ。病が進行すると全身に痙攣、虚脱が起き、皮膚の乾燥、しわが寄り老人の様な顔になるんじゃ。コスラが老死病とも云われる所以じゃな。こうなるとほぼ確実に死亡する恐るべき病じゃよ」
老死病ぉ~~、でもそれってコレラですっ! 間違いないです! 適切な処置をしないと致死率は80%になりますよっ! あれか? もしかしてコレラ菌を魔獣が媒介してるとか、なのか?
「このコスラに立ち向かったのが、セキニア王である。これこそ創始王と呼ばれたセキニア王の最初の有名な創始であったのである」
えっと~、コレラの治療方法としては点滴での電解質と水分補給が最適なんですが? でもでも、そんな事は不可能だよね?
「セキニア王の指示の下、患者へ塩と砂糖を混ぜた水を飲ませる事と、患者の徹底隔離を行う事でコスラの大流行は徐々に収まっていったのである」
おおお、経口輸液治療ですねぇ~。ホントは点滴がいいんですが、まぁ、仕方ないですね。経口輸液だってかなりの有効策だしね。でもでもセキニアさん、確かに創始王って云われるだけあって、かなりの物知りだねぇ。
「この2度目の魔禍が終結した2年後、コスラの大流行もようやっと治まった頃、セキニア・アグヴェント、クラウド・ザッハニー、アイロス・ベルムニトの3人に対し、エスタリオン神国教皇から神許が下されるんじゃ。じゃがなんとクラウド・ザッハニーは、あっさりとこれを辞退したのじゃな。その結果、皇国から皇任の下ったセキニア王国とアイロス王国のみが創国された訳じゃな。この二国こそが“守護セカト国”と云う訳じゃな」
うむむむ、クラウド・ザッハニーさんはあくまで、セキニアさんに従ったってことか、なかなかやるね。それであのザッハニー公伯領が出来たんだな。なるほどそりゃ国家並みの自治領になる訳だね。
「セキニア王国の創国にあたっては、セキニア王の部下はもちろんであるが、コスラで助かった多くの民と、神の森の諸族の多くが、セキニア王国に移住したのである。諸族は元々森の民であるので、これは非常に珍しいことであるな。王国に比較的諸族が多いのは、これが理由である。この年にはフェルキア族長会議が、”逃避残族”の令を解除して、フェルキア族長国の復興も開始されたのである」
おお、セキニア王国って諸族が多いんだ。でも周りにはカリ姐ぇさんしか居なかったけど? ほうほう、フェルキアも復興すれば、これで国は全部で10国になるのかな?
「ここにセラワルドに10の国が成立し、10国時代が始まるのじゃな。その後王国の王都セキトとリジェットの魔道都市リジェを結ぶ、エスタ街道草原の道が完成し、更にはエスタ街道盾の道が、軍都ガリーからアイロス王国の王都ベルムトまで延長され、現在のセラワルドの形がほぼ完成する訳じゃな」
これで、今のセラワルド地図が、ほぼ出来上がったって訳ですよね。なるなる。
「セキニア・アグヴェントは、国家創設をすすめる一方で、王国の諸族を通じてエスタ暦1962年に、オズグムルツの諸族との間に”友愛の契”を結んだのである。それにリジェット魔道国と共にフェルキア族長国の復興にも多大な貢献をするのである」
「エスタ歴1977年フェルキア族長国の復興に協力したリジェット魔道国、セキニア王国に対してフェルキア族長会議が、”謝意の献”を宣示するのじゃ。これにより長年敵対関係にあったフェルムとロキルム(ロキアの人:非フェルム人)の関係が、大きく変化したのじゃな。その結果この後セラワルドには長い平和の時代が訪れる事になるのじゃ」
おおおお、ついに敵対者全てとの和平に成功ですね。まぁできれば神聖ダイトニア皇国当たりがチャチャッと動いて欲しかったけど、そこは長年の確執があるからムズかったのかな? やっぱり新鋭勢力だからこその結果かもね? それに魔道国は族長国の隣だしね。
「この平和な時代が始まった結果、いろいろと新しい動きが始まったのじゃ。まぁこれらの中には成功したものもあれば、失敗したものもあるんじゃ。成功したもので云うと、王国でのサラニムからの改種による、サラッド、サラバム、サラセトの誕生じゃな。それにエスタリオン神国司教枢機卿による”広教救民”の教宣から始まった布教活動での、セラワルド全土へのエスタ暦時計台の建設や、エスタ教の広教教導によるアニウラワルド、イラワルド、ノラワルドの国々でのエスタ教の国教化等じゃな。
失敗したものを云うと、リジェット魔法国が、新航路開発として数度に渡ってロキシア民国とアニウラワルドへ船団を派遣したんじゃが、その尽くが遭難した結果、ロキシア民国、アニウラワルドへの航路の開設を断念したんじゃ。ああ、勿論サラワルドへの航海もまた完全な失敗じゃったな。それにエスタ教の、ウラワルドへの布教活動も失敗の連続の様じゃな。
まぁこの様に平和の時代とも云われる10国時代が始まって、約600年の間、そんないろいろな新なる挑戦が成されていたのじゃが、エスタ暦2488年にエスタ教が、ノラワルドのファネルラド王国の国教となった出来事以降は、大きな新挑戦の成果は現れておらんのじゃ。それどころか、各国の内乱やら、神国と皇国の権力争い。ギルドの勢力拡大による不正・腐敗の蔓延。そしてガリオン士道国とナミアン公国の諍い、果ては草原の傭兵団の出現とかもう散々な有様じゃな。終いにはこの王国でも創国の大義は失われ、正道が蔑ろにされ一部の者だけが栄え、多くの民が苦しむ様な体たらくぶりなんじゃ。
どうやらこの500年、このセラワルドには腐臭を放つ腐った澱みが蔓延ってしまった様じゃな。そうじゃ、はっきり云って、今の世は平和の時代なんかではなく、停滞と腐敗と頽廃の時代なんじゃっ! 今こそ、今こそ新しい…………」
老師さんが、最後は激情に任せて吐き出すように叫んでますっ。そしてなんか中空を睨みながら口がパクパクしてるぞ。怖い怖い。ええっぇぇ。まさか最後のオチがそれなんですかぁ。しかも古武士さんもウンウンって頷いてるしぃ。えっとここで自分はなんて、なんて、つっこめばいいんですか?
「ガダスシアプ!」
最後にそう大きな声で一言云い残すと、老師さんは椅子から飛び降りて、さっさと奥の廊下へと消えて行ってしまった……。うwww。
「……ガダスシアプ。ご子息殿これで歴史の授業はお終いである」
「……ガ、ガダスシアプ」
古武士さんと思わず顔を見合わせちゃったよ。でもほんと云う言葉が見つからないってのは、この事だよね。
な~んて云う、まさかの凄い最後のオチでしたけど……。これでとうとう歴史の授業は終了しました~。キンコンカンコ~ン。みなさま、どうもお疲れ様でした。
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