6.勉強のお時間 その⑤【地学の3 セキニアだけでも充分に広い】
「「「ガダスシアプ」」」
そう挨拶は全ての基本ですからね。今日もまずはおふたりの先生と朝の挨拶を交わします。さぁ地理の勉強の続きの開始ですね。
「さて本日は、我が王国であるセキニア王国の地についての説明を致すである」
「はい。お願いします」
昨日に続いて古武士さんが、大きな茶色のベルピスを、勉強机(居間の長テーブル)の上にガバッと広げる。その茶色のベルピスには歪な菱型ぽい長四角な黒い点線に囲まれた地図が描かれている。地図の右斜め上、全体の1/3程が薄緑だな……。
「これが我が王国、セキニア王国全図である。この地図は許可を得た者のみが所持を許される物である。大きく云うと我が王国は、ノライラのほとんどがオズグムルツであり、後の残りがエクスムア大草原である。森と草原のみで出来た、国内にフォを持たない唯一の国であるな。まっ、厳密にはロキシア民国もそうであるが、アレは都市国家であるので、ちょっと別なのである。さて王国は王家直轄領である5つの州とザッハニー公伯領から出来ており、王国のセラにあるのが、王都セキトなのである」
まぁ、確かに国の地図ってのはこう云う時代なら、機密情報になるのかな? でも戦略的な意味なら、もう少し小さい地図の方が、価値がありそうだけどね。州? う~ん、これか、国内を黒い点線で区切った6つの地域がそれだな。それに”公伯”? 公爵じゃないんだ。公伯ね、おもしろいな。
「まず王国のセラにある丸形の州が、王都セキトを擁するセキア州である。王都セキトは当然王国の産と政の中心地である。王都セキトの周りには、大きな村や町が幾つもあり、農民と作民が多く住んで居るようである。セキア州は白虎騎士団により、巡視が行われており獣も少なく、村を囲むソンなどの防壁も必要ないのであるよ。つまり王国で最も安全な地域なのであるな。セキア州の主な農産は麦、野菜であり、そのほとんどは王都セキトへ送られるである。そしてセキア州には、あのスピシエデフルド・サラがあるのである」
やっぱ中央集権国家だから、王都周りが一番安全安心なんだね。そしてそ~いった所に人は集まり産業が栄える訳だよね。やっぱ治安ってのは大事なんだよ。それに地産地消ってのはいい事だよね。ん? スピシエデフルド・サラってのはなにかな?
「スピシエデフルド・サラ?」
「スピシエデフルド・サラとは、王立馬種育場の事である。つまりサラの改種を行っている場所である」
ほうほう、なるほど了解しました。
「王国のサライラに位置するロドオルソ州は、その中央にアイロス王国、エスタリオン神国へと向かうエスタ街道神導の道が走り、王国では王都があるセキア州、ザッハニー公伯領と共に、最も古くから栄えた土地であるな。この地では農産が盛んであり、特にコート郡では葡萄栽培が盛んであり、コートブルゴ、コートニュイ、コートボーヌ、コートシャヌイ等の村では、それぞれ有名なピノが生産されており、その州都たるオルソトは、“味覚の都”とも呼ばれているのである」
むむむ~、ワインが特産で味覚の都か~、それってなんだか、フランスでパリって感じですか?
「王国のイラに位置するのが、ザッハニー公伯領である。公伯領はザッハニー公伯家の自治領であり、ザッハニー公伯家はセキニア王家に対しほぼ対等で、司政、外功、軍事に渡って独自行動が許されているのであるよ。その権力の核心として公伯家には独自戦力たるザッハニー騎士団があるのである」
おお、公伯すっげぇ~。でもそれって国の中にもうひとつ国があるみたいなもんじゃないか? それって中央集権国家にとっては、まずいんじゃない? セキニアって封建制じゃないよね? だって国土のほとんどが直轄領なんだから、中央集権国家だよね? むむむ~、なんか不思議だ。
「はい。アドバン先生。そんなザッハニー公伯領ってのは、セキニア王国の治世の為には、難しい存在じゃないですか?」
思わず質問しちゃったけど、あれっ? 古武士さんが、なんか難しい顔をしてるぞ? なんか、まずったかな? これってタブーだったとか?
「ザッハニー公伯家とは、創始王セキニア・アグヴェントの偉大な右翼、戦友でかつ親友であった狂戦士クラウド・ザッハニー直系の家系での、“ザッハニーは、セキニアの盾であり剣なり、セキニア危機なりしは、命を賭けて戦うべし、しかして王が道を誤りしは、力を持って王を打ち倒すべし”と云うクラウド・ザッハニーの遺訓を守っている家なんじゃよ。ちなみにじゃ、その話を聞いた創始王セキニア・アグヴェントは、“クラウドの言や良し、ザッハニーはそうあれかし”と云ったそうじゃ」
はい、老師さんからによる解説でした。なんだそれ? そんな家訓の家を認めてるの? 潜在的革命勢力を公認しているって事? 自己破壊装置を組み込んだ国家体制なんか? それってまるで革命権を是認してるアメリカ独立宣言の前文じゃね? なんかセキニア・アグヴェントって過激だな~。でも中央集権制度に対するアンチテーゼを示す事が可能な、公伯家の存在か~。これはかなり面白い制度だな。
「で、あるな」
古武士さんの一言。
「そのザッハニー公伯領は、ウラから、ザハミタ郡、ザハニ郡、ザード郡となるのである。ザハミタ郡はその全てがオズグムルツの中である。当然その産業は、林産と猟産になるである。またドワーフによる鉱産も盛んであるな。公都たるザハトのあるザハニ郡は、農産と遊牧による畜産が盛んである。それに国境の街たるザハステ市がある。ここからは国外にむけて公伯王道が、オズグムルツに伸びておる。ここからも貴重な林産品と猟産品、鉱産品が手に入るようである」
う~~ん、王道を勝手に国外まで伸ばして、交易を実施するって、マジ国家そのもんだな。それに“手に入る”って、勝手に領土外、それも国外の開発とかしてそうだな。いいのかな?
「ザード郡は、お隣のコート郡に習い葡萄栽培が盛んで、有名なピノが生産されており、ザハステ市を通じて重要な交易品となっているのである。ただそれがしは、ザード郡のピノよりは、コートボーヌ産のピノが好みであるな」
やっぱアルコールってのは貴重な交出品になるんだね。まぁそこらへんはあっちの世界も同じだしね。ただし自分ワインの味はわかりません、まだお子様なもんで……。
「この3州に続いて発展したのが、リジェット魔道国へ繋がるエスタ街道草原の道が通るセイリア州である。セイリア州の国境の街であり海に面するセイイー市は、リジェット魔道国からの魔力品と、海岸地域に位置するリジェット魔道国では産出されないピノ、や鉱産品、木材との交易が盛んであるな」
まぁ、交易ってのは取れない物と取れる物の交換が基本だからね。でも魔力品ってなんだろう?
「あのアドバン先生、魔力品って云うのはなんでしょうか?」
「魔力品と云うのは、魔力によって動作する道具じゃな。魔力品で最も有名な物がラストンじゃ。その他にフィストン、カストン、ジェストンも有名じゃな。魔力品は各国で使用されておるからリジェットの大きな収益源なんじゃ」
“魔”とつけば、そこはやはり老師さんの出番なんだね。確かにラストン便利だね。それにフィストン、カストン、ジェストンか、それもまた便利そうだな。あれを独占してるならそりゃ儲かるだろうな。
「この次に発達したのが、ザッハニー公伯領と王都セキトを擁するセキア州の間にあるトファルナ州である。ここには王都セキトと公都ザハトを繋ぐ公伯王道が通っており、当然王都セキトとザッハニー公伯領が発達すると、自然と発達していったのである。州都ファルトは、王都セキトの華やかさと、公都ザハトの威厳の両方を兼ね備えた都市で、今では王国第3の都市で、セキニアの貴婦人と呼ばれているのであるよ。
その州都ファルトのあるトファ郡は、主に農産、遊牧が盛んであるな。トファルナ州のノラウラに位置するゾナンダ郡は、草原の地で元々遊牧のみの未開の地であったが、王都セキトを擁するセキア州の外側を周回する、セラ周道が整備された結果、セラ周道上にあるゾナステ市が、他のセラ周道上にある州都並の発展を遂げた事により入植が進み、豊かな農産を誇る地となったのである。
更にこのゾナンダ郡が発展した結果、ゾナンダ郡のイラ、トファルナ州のノラに位置するクラミタ郡、そこに広がるオズグムルツへの開発が始まったのである。クラミタ郡は、その全てがオズグムルツであり、永らく当然ながら未開の地であったが、トルフォレ王道の整備とトルフォレ市の構築により、クラミタ郡もまたザッハニー公伯領のザハミタ郡と同様に、林産と猟産、鉱産を名産として発達したのであるな。特に良い金や銀の鉱脈があるらしく、ドワーフによる鉱産が近年とみに有名である」
なるほどセラ周道に、トルフォレ王道かぁ~。道は血管、地域経済の活性化の起爆剤ですね。う~んセキニア王国の司政って、なかなか上手くいってるじゃん。特にこのセラ周道ってのが秀一だな~。各州都を繋いでいる放射線状の各街道とも相まって、かなり有効な環状線になってるよね。
「さて最後が、この地、リシュール州であるが、リシュール州のイラのナリア郡には、ロキシア民国と繋がるエスタ街道神導の道があり、国境の街たるナリステ市があるので、その周辺はそこそこ発展していたのであるが、交易地ではなくあくまで街道街であるので、盛んなのは運業である。それにリシュール州の州都リシュトも他の州都に比べると、かなり小さな都市で、海産で有名なリシュイー市と王都セキトの中継都市としてのみ機能しておったのであるな。元々この州都リシュトとは、王国に危機が迫り、王都を放棄した時の、退避場所として作られた都市なのである。そんな訳でリシュール州ではナリア郡以外の地は、永らく手付かずな地であったのである。
そんなリシュール州であったが、王国がウラサヘル沿いにサヘル王道を整備した結果大きく変化したである。元々リシュール州のサラウラに位置し海岸を有するスキア郡は、良質な海産品を産してはいたが、その量は多くはなく他にこれと云った産業もない地方なのである。しかしウラサヘルのサヘル王道が出来、この王道沿いに多くの村が出来た事で、海産品の量が飛躍的に伸び、更に入植者の増加によって塩田の開発も進んだのである。結果海産品と塩を王都セキトへ供給するだけではなく、サヘル王道を通じて、海産品と塩を他国にまで交出するようなり、リシュール州全体の発展の原動力となったのである」
ここでも発展の引き金に成ったのは道だったね。サヘル王道か、なるほどなかなか良いところに着眼したな。シ○シティー大好き派の自分にとって、こんな古武士さんの話は大好物なんですよ。
「そんなリシュール州の中で、最も開発が遅れていたのが、王国のアニウラの地、キトア郡である。乾燥と草原と丘陵のみの地で永らく(護民官)無任領地であったが、リシュール王道を州都リシュトの先へと延長しキトア郡を縦断させる王命が下った事により、ついに大掛かりな入植が開始されたのである。キトア郡の開発は穀物の農産が中心となると聞き及んでいるのである」
「坊主の親父が、キトア郡の初代ガディミリタじゃ。もしこれ以上キトア郡について聞きたいなら、坊主の親父に尋ねるのが一番じゃな」
これが老師さんによる、長い地学の授業の締めの一言だった。そうなのか、このキトア郡こそは、時代の最先端地域なのか、そんな所を任された親父殿って、やっぱ凄いんじゃん!
「ガダスシアプ」
「「ガダスシアプ」」
椅子から立ち上がってお辞儀をします。さぁ、これで二日に及んだ地学の授業が終わりました。さて地学の次はなんだろう?
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