4.勉強のお時間 その④【地学の2、セラワルドも広かった……】
「承ったである。ではこれからは、それがしが説明をするである」
今度は古武士さんが、そう云いながらアナワルド全図と似たような大きな茶色のベルピスを勉強机(居間の長テーブル)に、老師さんのアナワルド全図の上に被せてガバッと広げる。
「これはエスタ(エスタリオン神国)製の、セラワルド全図である。これもそうそう簡単に手に入るものでは無いであるが……。まぁイジュマー老のアナワルド全図には及ぶべくもないではあるな」
そのベルピスには逆三角形をした、セラワルド全体の地図が描かれている様だった。広げられた地図は、先ほどの比較的単純なアナワルド全図に比べると、いろいろな線と記号や色彩、それに文字からなるとても複雑な地図に視えます。情報量は間違いなくこちらが多いな。この地図でまず目立つのは逆三角形の中程から上が全てと、あちこちが薄い緑で塗られている事ですね。
「まずセラワルドとイラワルドの境界は、この“雲上山脈”である。そしてこの雲上山脈を囲む緑の部分こそがオズグムルツである」
なるほど逆三角形の底辺辺りにある、モヤモヤっとしてる所が雲上山脈か、この雲上山脈の向こう側がイラワルドってことですね。そしてその雲上山脈の周辺の緑色が森林なんだな。しかしこれはまた無茶苦茶に広い森だな~。森の部分が地図全体の半分近いじゃないか、それに逆三角の真ん中辺りにも、ちょこちょこ緑の部分があるし、これもきっと森なんだよな……。すると地図全体の2/3位が森って感じかな? う~ん自然豊かっていうか、未開の地って言うべきか……。しかもオズグムルツって名前の響きがなんかヤバそうだし。
「さてセラワルドは、大きく4つの地域に分けられるのである。まずはセラワルドのノラ方のほぼ全体を占めるのが、広大なオズグムルツである。これは判かりますな?」
うんうん、そりゃ見りゃ判かりますよ。馬鹿じゃないんだからさ。無言で頷くのをみて、説明を続ける古武士さん。
「次はウラ方、ここにあるのがエクスムア大草原である。我々の居る王国もここに含まれるである」
むむむ、逆三角形の真ん中から左側、古武士さんがごつい指で指差した所に“エクスムア大草原”と文字があり、青の点線で枠取りされているな。これがそのエクスムア大草原か。オズグムルツが全体の半分位とすると、エクスムア大草原てのは1割ちょいくらいの面積かな? それでも広いって云えば、かなり広いよね。
「このセラワルドの中央、幾つかのフォが走っている所が、セラムア平原である」
古武士さんが地図上の青の太線をごつい指でなぞって見せる。うんうん、これも判るぞ、その青い太線が川だな。確かにこの川の流域部に“セラムア平原”の文字もある。おお、この平原は結構広いな、全体の3割って感じかな? でもあちこちに森林の緑色があるから、意外に有効利用面積は狭いかもね……。
「そしてイラ方のリバフォ流域のサラ方面が、ダトムア大草原である」
ほうほう、ダトムア大草原はちょうど、セラムア平原を挟んでエクスムア大草原の対象位置にある感じだな。つまり大草原ってのは川がない地域で、川の流域が平原ってことか、そして残りは森林ってことですね。まぁ単純だけど大雑把にはそんなもんで理解可能だな。
「アドバン先生、この細い線はなんですか?」
そうそう地図上のあちこちを走る、この細めの黒線はなんだろう?
「よく見ましたな。この黒線がエスタ街道である。この街道はセラワルドの各国を繋ぎ、更にはアニウラワルドやイラワルドとも繋がっており、最も大事な幹線道路なのであるよ。エスタ街道は主にエスタリオン神国と各国の協同作業で整備を進めているのである。当然このエスタ街道以外にも色々な道はあるが、それらはこの地図には載っておらんのであるな」
ほうほう、エスタ街道ですか、つまり国際道路って事ですね。ローマ街道かアッピア街道的なアレですか? しかも国際協調による道路整備とは、なかなか進歩的だなぁ~。
「このエスタ街道で繋がっているのが、セラワルド10国である。確かにセラワルド10国と云うのであるが、実は始祖の地アニウラワルドとの接点である、ロキシア地峡に存在しているロキシア民国が、セラワルドの国であるか、アニウラワルドの国であるのか、しばしば問題となるのであるよ。
しかし国名とか歴史的経緯を考えるならセラワルドのウラノラの国と考えるのが妥当な処であるな」
むむむ? それって領土問題なんですか? ここにも帰属意識と歴史認識の違いってのがあるのかな? でもあくまでセラワルドってのは、大陸の一地域の名前だから、領土問題ではないのか。例えばトルコはアジアか? 東ヨーロッパか? って問題と一緒なのかな? まぁそれなら、そんなに深刻な話じゃないね。でもロキシア王国じゃなくて民国なんだ。
「ロキシア民国からサラ方にエスタ街道“神導の道”を進むと、我がセキニア王国に着くである。そして我が王都セキトでエスタ街道“神導の道”から、エスタ街道“草原の道”が分岐して行くのであるよ。この王都セキトからそのまま“神導の道”をイラ方に進み続けると、エクスムア大草原を抜け、セラムア平原にあるアイロス王国に着くのであるな。
このアイロス王国の王都ベルムトからは、更に“エスタ街道“盾の道”が別れているのである。この“盾の道”をイラ方へ向かえば、ガリオン士道国、ナミアン公国と続くである。“盾の道”を更にイラ方へ進むとセラムア平原を抜け、ダトムア大草原に出る事になり、ついにはセラワルドのアニイラの国ヴォツェック大公国に至るのであるな。
このオズグムルツ沿いに、“神導の道”と“盾の道”で繋がっている国々こそが、セラワルドの盾国である。我が王国と隣国のアイロス王国が、“守護二国”、ガリオン士道国、ナミアン公国、ヴォツェック大公国が、“神衛三国”と呼ばれているである」
セラワルドの盾国? “守護二国”、“神衛三国”ですか? それって一体なにに対する盾ですか? だって、そこら辺には危険そうな隣国なんかは一切存在しないよ? あるのは森だけですけど? それに自分的には中世って云えば王国と帝国に神国位しか思いつかなかったけど、士道国に、公国、大公国ですか、意外に複雑なんだな。
「まぁ色々と質問もあると思うであるが、それは歴史の時間で説明するである」
ちょっと不思議そうな顔をするのを見て、苦笑を浮かべながら古武士さんが、サラっと流しました。はい、わかりました。歴史の時間ですね。
「さてもう一本、我が王国の王都で分岐しているエスタ街道“草原の道”であるが、この“草原の道”は王都よりサラ方へエクスムア大草原のほぼ真ん中を進み、エクスムア大草原を抜けた所でリジェット魔道国に着くのであるな。
そしてこのリジェット魔道国の先にあるのがフェルキア族長国である。しかしリジェット魔道国から、フェルキア族長国に繋がるエスタ街道は、存在しないのであるよ。そうなのである、フェルキア族長国に繋がるエスタ街道は一本もないのであるよ。この理由には歴史的な問題が絡むので、後ほど歴史の時間で説明致すである。まぁフェルキア族長国は、セラワルドではちと異質な国と云う事である。
フェルキア族長国に向かうにはリジェット魔道国から、セラフォ沿いをサラ下して、フェルキア族長国に向かうのが便利であるな。ここら辺りのセラフォには伝馬船も通っているので、エスタ街道がなくても実際は問題は少ないである」
おお、今度は魔道国に族長国ですね。まぁ魔道国の方は、前に聞いていたからアレだけど、なんと族長国とはね。いや~、かなり不思議な感じだね。
「さてリジェット魔道国からエスタ街道“魔道の道”をノラ上すれば、セラワルドのセラたる、エスタリオン神国に至るである。このセラたるエスタリオン神国の神都ロキアからは、アイロス王国へと向かう“神導の道”が、ガリオン士道国へと向かうエスタ街道“森の道”が、直接伸びているのであるな。更に神都ロキアから、イラ方に伸びるエスタ街道“レブラの道”が、神聖ダイトニア皇国に至るである。
このように、エスタリオン神国の神都ロキアからは、4本のエスタ街道が伸びているのであるよ。さすがはセラワルドのセラと呼ばれるだけの国であるな」
今自分は、この古武士さんの話しを聞きながら、必死に地図上の各国の位置を目で追い掛けています。なるほどなるほど、地図上の黒い点線で囲まれて、薄いベージュで塗られたのが、国って事だな。むむむ、でもでも……?
「アドバン先生、なんでどの国にも入っていない土地が、こんなに沢山あるんですか?」ってかさ、全体的に国じゃない土地の方が、圧倒的に広いじゃん? ふつうこれじゃ切り取り自由て感じなんじゃん?
「それはであるな。まずセラワルドの全ての土地は、エスタの神のものである。そのエスタの神の土地をエスタリオン神国の教皇が、エスタの神から“借託”しているのであるな。その“借託”した土地の一部を、エスタリオン神国の教皇からの“神許”と神聖ダイトニア皇国の皇帝からの、“皇任”によって、各国の王等が“借領”しているである。
つまり形式上は国が支配していない土地は、全てエスタリオン神国のものと云う事である。だから各国は一切勝手には領土を広げる事ができないのであるな。ただしフェルキア族長国はこれらを一切認めていないである」
ほぉぉ、それはまた凄い。神による土地の供与ですか、王権の権威付けとしては、王様=神様って云うよりは合理的なのかも? それにしては、最高権威で一番偉いはずのエスタリオン神国ってのは小さいですね……。
「エスタリオン神国は、現世の権力を求めない潔癖な神国である。彼らは、エスタリオン教を布教するのに必要最低限な領地のみを支配したである。そしてセラワルドの全土の運営を、神聖ダイトニア皇国の皇帝へ委任したのであるよ」
「へぇ~、潔癖な神国に、セラワルド全土の運営をする、神聖ダイトニア皇国ですか……」
ほおお、現世の利益は求めないって事ですか? それで俗事の一切を皇国へ押し付けたと……。ん? それにしても、神聖ダイトニア皇国も小さいじゃん? そんなこちらの表情に気がついたのか、古武士さんが、ちょっと苦笑を浮かべた。
「ダイトニア皇国が現在に至るのには、なかなかに複雑な経緯があったのであるが、その経緯こそが歴史なのである。して国と国の間に空隙がある理由であるが、それは神国の“借領”についての3つのロキシア借領神託の方針によるものであるな。
ロキシア借領神託とは“森林帯は、獣多く森深く“借領”に適さず“、”大草原は、乾燥強く野草密、農に向かず、“借領”に適さず“、“国接すれば必ず紛す、“借領”は接しず事”である。この3つのロキシア借領神託の方針に従って“借領”が成され為に、国と国の間に多くの空隙が生まれたである。それにセラワルドの草原帯には広く遊牧の民が居るので、それへの配慮もあるのである。セラワルドの大地は広大であり、その全ての土地を国へ“借領”さしめる必要もないのであるよ」
つまり、セラワルドは広い様に見えて、実は国家を建設可能な地域は、意外に狭いって事ですね。それに遊牧民? 原住民との軋轢回避ですか? そうやって改めて地図を眺めると、森と草原を除くとなると、確かにもう大体埋まっているのか~。でも、その最後の理由“国接すれば必ず紛す”ってのは、また凄いねぇ! うんうん、なかなかだね、そのロキシア借領神託ってのは。しかもそれが守られてるのが、更に立派だな。
「それでは、セラワルドの各国の大まかな特徴を説明致すである? 宜しいかな?」
「はいっ!」
いよいよこれからが、ほんとの地理かな?
「セラワルドは大まかにいえば、温暖な気候である。そして平野の多くが緩やかな丘陵が続く非常に恵まれた土地である。しかしながら元来雨が少ない土地でもある。雨のほとんどは、オズグムルツの奥、雲上山脈の付近で降るのであるな」
うむうむ、確かにこの地形から見ると、気象的にはそうなるのが妥当ですね。それに確かに、サラキトアでもある時期以外はほとんど雨降らないしね。それに降る云ってもかなりの少雨だしね。
「したがって、雲上山脈から流れい出るフォの水が、まことに重要となるであるよ」
はい、それは自明の理ですね。
「このフォの恩恵を受けているのが、セラムア平原であり、この平原に居を構える国々であるな。なんといっても農は国の基礎、民の命であるからな。ダトムア大草原にあるヴォツェック大公国も、リバフォの流域に建国されておる」
確かに全ての国は川の流域に位置してるな~。でも我がセキニア王国には川がないぞ……? 思わず古武士さんの顔を見ると……。
「そうである。我がセキニア王国は、唯一国内にフォのない国である。本来ロキシア借領神託の方針に従うなら“借領”に適さずである。だがセキニア初代王にはなんらかの目論見があった様である。そして幸い我が王国は1000年の歴史を積上げているである」
なんだろう、その目論見ってのは? だってセキニア王国ってのは、サラキトア以外も基本少雨ってことでしょう。う~ん、でも、確かにサラキトアの周辺には川はないけど、畑には灌漑用の水路があって、そこには水が流れていたぞ? あれ、なんであんな水があるんだろう? そんな疑問も感じたけれど、古武士さんの説明が淡々と続いて行ってます~。
「セラムア平原のノラ方、オズグムルツと“盾の森”に挟まれているガリオン士道国、ナミアン公国は、両国共に“神衛三国”であるので強武の国であるな。更にオズグムルツに接しているので林産猟産鉱産が盛んである。だが農産についてはそれほど豊かではないので、穀物等は他国から交入しているのである。代わりに兵馬の派兵が特産物である。ガリオン士道国ならガリオン騎士団とサノア騎士団が有名であるな、ナミアン公国であれば、ナミア公国衛士団である」
盾の森? ああ、エスタリオン神国とガリオン士道国、ナミアン公国、神聖ダイトニア皇国に囲まれている森の事だな。兵馬の派兵? それって特産“ぶつ”じゃないよね。それにしても物騒な話しだな、国家として傭兵が生業なんか?
「兵馬の派兵以外にガリオン士道国、ナミアン公国で生産される獣皮や薬草、香草などには珍品が多いのである。それは開かれた森である盾の森の使用権利を両国が持っているのが大きいである」
開かれた森? ああ確かに盾の森には、赤い○の中に☓の記号がないな……。オズグムルツには、いくつもその記号があるからな、きっとそれって危険度マークなんだろうね。うんうん、なるほど見て一発で判るぜ。
「我が王国の盟邦たるアイロス王国も守護国であるので、もちろん兵馬は精強であるが、兵馬の派兵は行なっていないである。彼の国は農産が豊かであるので、穀物の交出が盛んであるな」
アイロス王国は確かに領地も広目だし場所がいいみたいだよね。そうそう農業があまり栄えてない国に近いのがいいよね。そしてアイロス王国は盟邦なんだ。まぁなんで盟邦なのかは、きっと別の機会に説明があるんだろうな。うん、ここは質問はやめて置こう。
「セラムア平原にあるエスタリオン神国は、当然エスタリオン教の聖地、国主はエスタリオン教皇である。兵馬はエスタ護神騎士団が有名であるが、あくまで教団の護衛騎士団であるな。当然兵馬の他国への派兵などは行ってないである。国の中心部にレブラレクがあり正に湿潤な大地である。しかしエスタリオン神国では農民の数が限られており、少量の高価な果物などの農産だけが行われているのであるよ」
ほうほう、この青い丸なとこは湖なんですね……。うんうん、レブラレクか~、結構大層な名前だな~。きっと綺麗なんだろうな。
「セラムア平原の海岸上に在る国が、リジェット魔道国、神聖ダイトニア皇国、フェルキア族長国である。それぞれの国は当然な事に海産が豊富で、内陸各国へその海産品を交出をしているである。
この内のリジェット魔道国は魔道の始祖リジェット・エレリーパティックが建国した国であり、魔道の総本山であるな。国主は魔道王である。そのリジェット魔道国は農産も豊かでその穀物を海運で交出しているのである。その他にも様々な収入があるようで魔道国は、かなり豊かな国であるな」
魔道王って……。魔王様とは違うよね。確かにマドウオウって云ったよね。
「次にダイフォの河口に位置する神聖ダイトニア皇国であるが、皇国は初代エスタリオン教皇よりセラワルド全土の運営を委任された国である。従って皇国はセラワルド全土に睨みを利かせる必要がある訳である。その為鍛え上げられた皇国の皇国竜騎士団は、鉄龍とも呼ばれその精強さで有名であるな。ダイトニア皇国は国土が小さいので農産は僅かであるが、各国からの任領金があるので、それで国家運営が成されているである」
うわっ、任領金ってなんだよ。それってのは完全に搾取っぽい響きだな……。
「さてフェルキア族長国であるが、彼の国は強武豊農、その土鬼兵は精鋭強兵の名を欲しいままにしているである。特に赤鬼騎兵の無慈悲さと、白蛇の槍と呼ばれる者共は、特に有名ですでに一種の伝説であるな」
赤鬼騎兵ってなんだよ、“アカオニ”かよ……。それに白蛇の槍ってのはなんだ?
「族長国は海産、農産が豊かであるので、共に盛んに交出をしておるが、基本フェルキア族長国は、各国と正式な国交がないのであるよ。それに諸族識鑑も行なっていないのであるので、普通のフェルム人はセラワルドでは信用されないである。従ってギルドにも参加できないのであるな。そこで確かリジェット魔道国の交易商ギルドが、フェルキアの全ての交易を代行しておるようである。
そのフェルキア族長国で最も有名な交出品が煙草の葉である。それがしは煙草は嗜まないであるが、フェルキアの煙草は、その香りの良さで、他品の追随を許さないと云われているである。ま、値段も他品の追随を許さない様である」
諸族識鑑? はて、それってなんだ? ほ~お、煙草があるのか~、でもでも周りで煙草吸ってる人はみかけないな~。こりゃきっと相当高価って事なんだろうな。
「ダトムア大草原にあるヴォツェック大公国は、リバフォの恵みがあるものの、領地の多くが、ダトムア大草原であり田畑が少なく、農産は少ないのである。しかし畜産が盛んで、多くの肉と皮を交出しているである。ヴォツェック大公国も“神衛三国”のひとつであるから、強武国であるな、神衛聖騎士団、神衛光騎士団が有名であるよ」
大公国は結構領土は広いのに、大草原にあるから田畑が少ないのか……。でもその環境条件から考えると、セキニア王国だって、そうなるよね? やっぱ不思議だ。
「さて我がセキニア王国であるが、我が王国は初代セキニア・アグヴェント創始王の政導により、強武豊農幸民を実践して来たのである。強武でいえば、セキニア聖騎士団、そして黒虎騎士団、白虎騎士団が有名であるな。農産でいえば、ロドオルソ州のビノが有名である。また海岸にある塩田での塩生産が豊富であり、各国に交出されているである。穀物の農産も豊かで主にロキシア民国に交出されているである」
へぇ~、そうなんだ~。川だってないし、領地のほとんどはエクスムア大草原なのに、なんで輸出できる位に、農業が豊かなのかな? う~んさっきの話と云い、これはマジ不思議で謎な話だな。
「そして我が王国で最も有名な特産品なのが、サラ、つまりサラセト、サラバム、サラッドの3サラであるな。これはセキニア・アグヴェント創始王の指示の下、始まった事業であり、約200年の期間を掛けて、この3サラが、サラニムから改種されたものなのであるよ」
おうおう、馬の品種改良ですよね。ええ、それは知ってますよ。死にそうに成った時に教えて貰ったからね。でも品種改良に200年も掛かってるのか~、凄いね。でも確かに馬の品種改良ってのは、草原向きな感じはするね。
「まぁ王国の細かい国状は追って、詳しく説明致すのである」
はいはい、判りましたよ。これも後でですね。ええ、わかりました~。
「最後にロキシア民国であるが、この国はオズグムルツに囲まれた国でな、一応領地はあるのであるが、実際には首都である交易都市ヘルメラがそのほとんどある。ロキシア民国はセラワルドとアニウラワルドの交易を独占しており、その莫大な利益で成り立っている国家であるな。その莫大な富は既に伝説レベルで、なんでも民国の館の大半は黄金で出来ておるらしいである。それがしも一度は行ってみたいものである。
この様に民国は商に特化しておるので、食料については我が王国から、武についてはガリオン士道国、ナミアン公国からの派兵団に頼っているのであるな。なぜ武が必要かと云うと、アニウラワルドの国々から、その溜め込んだ富を守る必要があるからである」
「わしは、数回民国に行った事があるんじゃが。館は皆普通の館じゃったぞ」
「なんでも上から泥を被せていると云う噂である」
「ほんですか!」
「あくまで噂である」
「泥などは雨で流れるじゃろう?」
「……で、あるな」
その老師さんの一言から、ちょっと盛り上がったんだけど、一瞬の内に老師さんにバッサリとされてしまった。ほんとに残念そうな表情を浮かべる古武士さん、ちょっと可哀想だな。でもでも、民国は商業都市国家か~、ふむふむ、アニウラワルドとの交易独占なんですね。それは儲かるんだろうな。でもこれって当然陸路だよね? 海運は出来ないのかな? それなら、ほら我がセキニア王国も結構好位置じゃん? ちらっと意気消沈気味な古武士さんを見たけど、さすがにこれは伝わらないね。
「はいっアドバン先生、船を使えば、セキニア王国もアニウラワルドとの交易ができるのではないでしょうか?」
「むむ、それはよき考えである。しかし航海術はリジェット魔道国のほぼ独占な技術である。しかもアニウラワルドに繋がるスムイーは、その名の通りスムのイーであり、ノラに進む程波が高く荒くなるのであるな。リジェットの船でもアニウラワルドへ行き着くのはかなりな難事である。実際に幾度が航海は試されておるが、常に失敗・難破しているのである。それにアニウラワルドの沿岸には漁村はあるが、交易可能な港は皆無との事である」
な~る、つまり海運は、内沿岸海運のみって事ですか。こりゃ大貿易時代は未だ遥か未来って事ですね。I See。んん? だけど、それじゃ……。
「じゃぁじゃぁ船ではアニウラワルドにも行けないのに、リジェットさんはどうやってアナワルドを回ったんですか?」
「飛んで行ったそうじゃ」
老師さんからのあっさりな一言。あぐっ、さすが魔道の始祖リジェット・エレリーパティック様、この距離を飛ぶんですねぇ~。自分も自由に空を飛んで見たいもんです。
ここで勉強机(居間の長テーブル)の上のベルピスの地図を大事そうに丸め出す、古武士さん。続いて老師さんもアナワルド全図をクルクルしています。
「さて、これで本日は終わりにするである。イジュマー老宜しいであるか?」
その言葉に無言で老師さんが頷く。気がつけば、居間は薄暗くなっています。ふぅ~、ほんとにあっと云う間だった。は~い、これで終了ですね。みなさまご苦労様でした。
「「「ガダスシアプ」」」
終わりも一番深くお辞儀をしますよ。ほんとうに、長い時間ありがとうございました~。
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