6.サローン・アドバンとナハトマ・イジュマー その②
~ギルナス・ヴェルウントからの視線~
今日はなんでも自分の家庭教師の面接らしい。長テーブルで相対する2人の大人。ひとりは自分よっか小さいんだよ、しかもあの顔……。こりゃ間違いなく人間じゃないな。でもふたりとも間違いなくかなり年齢が上の“大人”だ。あんまり親父殿以外の大人の男の人と話した事ないんだよね。時々視線がこっちを伺って来るぅ。うぁぁぁなんかこっちが緊張して来たぁ。
「ガダスシアプ。ナイアス・ヴェルウントです。アドバン殿、アズナイル・ソルメタルからは、どのような話を聞いておりますか?」
親父殿のその一言でいよいよ面接が開始されました。まずは白髪交じりの厳しい感じなヒトさんからですね。ちょっと厳つい感じがするヒトさんです。年齢は親父殿よりもかなり上ですね。痩せてるって感じゃなくて、無駄なお肉をザクザクッて削ぎ落とした感じかな。顎鬚がなんか渋さを増してるね。そうそう正に頑固親父、星○徹な感じかな? でもどーみても、白人さんなんでちょい違うか。
「ガダスシアプ。ソルメタル殿からは、それがしの仕事は、このキトアの若者に、武と文への道を示す事と聞いております。それとご子息への教育ですな」
えっ? ご子息って、自分の事ですか? それはちょっと照れますね~。しかもこの話し方、声はちょっと高目だけど、まぁ受けた感触としては古武士って感じかな。もしかしてちょい怖系かな? 理不尽系だったら嫌だな。
「武は、レイジア流カイト派の師範ですね。得意の武具はなにになりますか?」
おおお、師範ってか、きっとそれって凄いんだろうな。レイジア流とかは知らないけどね。確か親父殿はシンゲキ流だったな。
「ご存知だと思うが、レイジア流は、武具百般であるが、カイト派はソード系を得意とする。それがしはレイピア、ショートソードを最も得意と致す」
親父殿は確かシンゲキ流の皆伝だったよね。さてどっちが凄いんだろうかな……。チラッと親父殿を見たら、なんか頷かれた。
「わかりました。全く問題ありません、では文はなにを教えられますか?」
「エスタ語の読み書き、あと必要ならアニウラワルドのゲルビム語も少々、王国と各国の司政制度、王国の軍政、戦史、軍略ですな。それに社会常識一般、最後に正道ですな」
ん? アニウラワルドってなんだ? 司政ってのはやっぱ政治・行政ってことだよね。そこらへんの知識は今の所ゼロだから、これは助かるな。まぁ王国って事だから、当然独裁制なんだろうけどね。それでも詳しく知りたいな。
「軍略? どの軍略派になりますか?」
変なところにつっこむな親父殿?
「それがしは、セキニア派軍略を学んでおります」
しばしの沈黙。でもセキニア王国だから、セキニア派軍略って事なんでしょう? なんでここで沈黙?
「ヴェルウント殿、なにか?」
つっこんだ割りには、なんか寂しげな表情の親父殿にアドバンさんが逆つっこみを入れる。ほんとどうしたの? 親父殿?
「うむむむ。ヴェルウント……? おお、もしや貴殿の家は、賢者リシン・ヴェルウント殿の流れであるか?」
あれ? ほんとに親父殿黙っちゃったよ。お~い、大丈夫ですかぁ?
「まぁ、それはのちのち。それで内功術の指導はできますか?」
「当然な事である」
おお、よかった面接再開です。でも“内功術”?? これも全然わかりませんね? でもちょっと秘密ぽくていいな。
「ソルメタル殿の正道の真根則とは?」
「正道の根則にもいろいろあるようであるが、それがしの真根則は“諸族七民に隔たりなし”であるな」
セイドウ? なんだろう? 青銅? 違うな。制動? これも絶対違う? 聖堂? 嫌、違う。きっと誠道か正道か政道だな。でもよく分からんぞ。それに諸族七民? またまたわかりません。でも質問する親父殿の感じと、答えるアドバンさんの様子から、多分重要なことなんだって事は伝わってくるな。
「わかりました。アドバン殿少々お待ちください」
ほうほう、面接わりと簡単だな。きっとアズナイル様から送られてきた、あの書簡にきっと事細かく人物紹介とかいろいろ書いてあるんだろうな。だから、こんな簡単なんだろう……。さすがアズナイル様だな。
次は、アドバンさんのとなりの、小さな人だな……。この人は……間違いなく人間じゃないよな。肌の質感もなんか違うし、顔の造りもかなり違う。まぁよくわからないが、なんとなく老人的な感じは伝わってくる。
「ガダスシアプ。ナイアス・ヴェルウントです。イジュマー殿、アズナイル・ソルメタルからは、どのような話を聞いておりますか?」
よしっ、始まったぞ。
「ガダスシアプ。アドバン殿と同じじゃな。わしの仕事は、キトアの若者に、魔道と文の道を示す事と聞いておるぞ。それにお主の坊主への教育じゃな」
うおっ。来た! 魔道ですよ、魔道~。これってもしかして老師的なあれですか? そういえば感じもなんとなくスター〇〇ーズの○ーダみたいだ。まぁこっちの耳は普通だけどね。
「リジェット国立魔導院で魔術師と魔導師の師位ですか、凄いですね。当然魔力判定もできますね?」
きたきた、マジに魔法使いさんの登場です。凄いな~。これが魔法使いなのか、それならできればローブとか着てほしかったな~。でも魔術師で魔導師なのか? 魔法使いじゃないのか? ココら辺もいろいろ教えて欲しいな~。おお、で、で、でました魔力判定! きっと自分って凄い魔力とかあるんじゃないか? いや絶対だよな。じゃなきゃ、おもろくないぞ~。
「わしは魔導師じゃぞ? 判定など当然の事じゃ」
おおお~、はやく、はやく、魔力判定をしてくださ~~い。ComeOn、ComeOn。
「外功術はどの術系を使えますか?」
「光、火、風、冷、動、癒、操、の7系を発功できるぞ。ただし動系は役に立つものではないのう」
どうも7つの魔法が使えるって事なんかな? でも親父殿とアドゥバンさんの表情がこの一言で一瞬で変わったよ。これから見て、これってきっと大変な事なんだろうと察しはつくけど……、よくわかんないな。それに“コウカフウレイドウユソウ”ってなんなんだ?
「わかりました。全くなんの問題ありません、では文はなにを教えられますか?」
若干の間があって親父殿が質問を続ける。ほんとに驚いているみたいだな、声がほんの少しだけ裏返り気味だ。ほんとに“コウカフウレイドウユソウ”ってのは凄い事なんだな。
「そうじゃな、エスタ語にフェルム語、アニウラワルドのゲルビム語とイラワルドのフギ語、それに古獣語の会話、読み書き。当然魔導全般、算学、錬成学、地学、王国の歴史、それに古代近代の神話・歴史、あと正道じゃな」
おお、魔導に地学に、歴史かぁ~。そして神話とかすっげぇ興味湧くな~。これも家では全然わからない分野だぁ。それに言葉もいろいろあるんだ。ああ、早く知りたいな。
「算学はどれほどまででしょうか?」
「お主に判るかの? 加算、減算、乗算、除算、分数、負数、割合、項数式、因数、乗数、多元式、図形解析、確率解析、角法、指数法……」
ほぇ~~数学、結構進んでるじゃないか、数Ⅰレベルか? 嫌もうちょっとかな? これは意外だったな。文化レベルから見て、もっと遅れてるって思ったんだけど、でもコレはなんか楽しくなってきたぞ。実はちょっとだけ数学好きなんだよね。
「わかりましたっ」
おわっ。親父殿ぉぉもうちょっと内容を聞きたかったんだけど……。でも親父殿はなんかちょい嫌な表情だな。アドバンさんもなんか眉を顰めてるし。
「まぁ、一般に必要な部分のみを教えるがの、本来算学はもっと普及すべき知識なんじゃがな……」
そうそう、その通り、数学ってのは大事なんだよね。うんうん、自分としてもその意見には大賛成です。
「錬成学とは?」
おお、それそれ“錬成学”ね。親父殿も疑問持ったんだね。たしかに“錬成学”ってなんだろう? やっぱ錬金術ぽいもんかな? もしかして鋼の錬○術師とかいるんかな?
「ああ、今はやりの言葉じゃな。響きが気にいってのう。昔風にいうと、造金、造薬、造材とか云われておったものじゃよ」
「それが、錬成学ですか?」
う~~ん。造金、造薬、造材……。それなら、なんとなくイメージ湧くなぁ~。でもそれと錬成が結び着かないな。
「お主も学ぶ必要があるようじゃな。等しく万物は根源で繋がっておるのじゃ、金属も、生物も、土類、鉱物全てに、なんらかの関連があるんじゃ。それを多角的に究めるのが、錬成学じゃよ」
えっ、なに? なに言ってるの? それって物理科学って事ですか? もしかして分子とか原子とかそっちの事言ってるの? 凄いぞ錬成学! 算学にしろ錬成学にしろ、これは結構驚きの世界かもしんないな! もしかして見た目の文化レベルに騙されちゃったのか?
「まぁ。それほど気落ちする事もないぞ。わしは常に最新知識を吸収しておるからな」
うわっ、親父殿慰められてしまったよ……。ちょっとガクってなってる? いや大丈夫、大丈夫、気落ちしなくてもいいと思うよ。物理科学とかは、普通一般人には遠い世界なんだからさ。
「はぁ……。ではイジュマー殿の正道の真根則とは?」
「わしはホピットじゃぞ? そのわしにそれを聞くか? 正しく愚問じゃな。じゃが答えよう。真根則は、“諸族七民に隔たりなし”じゃよ」
やっぱセイドウってのは、かなり重要なんだ? う~んセイドウってはほんとになんだろう? そうしても気になるぞ。それに今ホピットっていったよね? キタァ~~、でました。猫人さんに続いてのファンタジー世界の住人が来ました。そっかそっか、これがホピットってか~~。もうちょい観察してみよう。
ふふっ、よしよしサローン・アドバンさんは、【古武士】、ナハトマ・イジュマーさんは、【老師】に決定だね。こりゃイメージぴったしだぞ。
これでお終いだなと思っていたら、突然親父殿が口を開いた。
「ギルどうだ。なにか聞くことか、云いたいことはあるか?」
うわっ。親父殿突然の無茶ブリですか? こんなガキに何をいいますか?
「なんでもいいぞ」
なんか変な微笑みが崩れてる的な表情を浮かべる親父殿。あのぉ、なんですかそれは? まぁせっかく聞かれたんで、今一番の疑問について聞いてみようかな。
「は、はい、それではひとつだけ教えて下さい。セイドウってなんですか?」
あれ? なんだ? みんな変な顔をしてるぞ? まずったか? もしかしてこれタブーなのか?
「う、うむ。それは難しい質問であるな」
古武士アドバン殿の一言。そうですか? そんなムズいですか? ごめんなさい。
「坊主、正道とは正しい道の事じゃよ。つまり何の為に生きるかと云うことじゃな」
なるほど! セイドウ=正道ってことか。なるなる。
「よいか。ありとあらゆる生き物にとっては、生きる事こそが最重要問題なんじゃ。自らが生きて子孫を残す、つまり種として生き残る事が目的なんじゃよ。その為に働き、喰らい、休み、育む訳じゃ。全ては生きる為じゃ。じゃが我ら“知を知る諸族”だけは、その最重要な生きる事に意味を求めたのじゃ。確かに生きることは重要じゃ、だが我らは、我らの存在とは、ただ生きる為だけではなく、この存在はなんらかの目的の為に生きているんじゃと考えた訳じゃよ。そしてその目的を考え、実践し、究めんとする事が正道じゃな」
むむむむ、これは……。確かに難しい概念だな。
「イジュマー殿いかにもである。それがしもその教えに賛成である。一言付け加えるならば、自己の信じるべき事の基準とでも言うべきか、物事を決断する場合の判断基準であるな。その基準を整理し明示し究める事が正道である」
うん。なるほどつまり正道=哲学って事ですね。やっぱどの世界でも知性って奴は“意味”を求めちゃうんだな。ちょっとめんどくせ~って感じはするけど、でもそんな正道ってのが、結構重要視されているってのは、正直びっくりだね。これも見た目の文化レベルからは想像付かないな。
「……つまり、なぜ僕は存在するか? ですか?」
存在の理由、確かこれが哲学の最大命題だったはずだよね。
「……じゃな」
「……である」
「ギ、ギル……」
あれ? なんかみんな引き気味だね。なんか間違ったかな?
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