6.マグス(見守る者)達
~夢見る者ゼシュ・マグスからの視点~
わたしが、あの顕示夢を見てから、早5年。ついに今日サーピが、見出す者カスパからの手紙を届けて来たのだ。それによると、4人目の種伝者は、セキニアに顕現したらしい。しかもどうやら誰であるかを、ほぼ特定できたとの事だ。今はその種伝者の生活環境やら、種伝者を取り巻くいろいろな状況について、調査を行っているとの事だ。そして、育てる者パルザルをどうやって、種伝者へと接近させるのかを、パルザルと共に協議しているらしい。
さすが、見出す者だ。わたしのあの顕示夢の内容だけから、たったの5年で種伝者を見つけるとは素晴らしい。これは今までの顕現よりも、非常に条件が良い事になる。今までは我らマグスが種伝者に近かづいた時には、種伝者はみな大人になっていたのだ。だが今回の種伝者は、まだまだ子供だ。これこそはやはり吉兆であろう。ついに我らの夢が、導く者の夢が叶う時が来たのかも知れない。
これらの内容の全ては、きっとわたしを通じて、導く者ノーマー・マグスに伝わっているはずだ。我ら見守る者を生み出し者、そして導く者である、ノーマー・マグス。その姿を見た事は一度もないが、我らの記憶にはなぜか、彼の言葉、意思が残っているのだ。そう、彼の夢こそが、我らマグスの夢であり、わたしの夢なのだ。
「我ら見守る者、ノーマー・マグスの導きに従い、新たなる扉を押し開くなり」
そうだ、今度こそは扉を開くのだ……。
~孤高なる者カバック・マグスからの視点~
あれが、4人目の種伝者なのかぁ。ちっとあんまパットしないなぁ。今までの3人は見た目もなかなかなモンだっけどね。あれを最初に見た時は、マジほんとに種伝者なのか、疑わしく感じたし~。だって“あいつ”なんかは、あたいですら一目見ただけで、きたぁ~って感じだったからね。
でもサーピの連中が、サラニムを薬漬けにして、そんで上手くあっこに誘導したんで、なかなかいいモンが見れたね。まぁ確かに普通なら、あんな餓鬼が、ヘロ(麻薬のひとつ)でラリったサラニムに襲われりゃ、死んで当たり前なんだけど、そこはやっぱ種伝者だね。ちゃぁんとガディアがいるんじゃん。
まぁ確りガディアもいたし、やっぱあれが4人目の種伝者なんだろうねぇ。さっすがカパどん(カスパの事)の目には狂いなしってかぁ~。でもあのガディア、なかなかな使い手じゃん。しかもあたいと同族だし。これはちょっと嬉しくなるね。どこの里氏なんかな? ドルか? ミアか? ニアか? ちっと調べてみるか? まぁでも、きっとカパどん(カスパの事)と、パル爺(パルザルの事)、がもう知らべてんだろうな。うん、あとで聞けばいいかっ。
でも、なんだろうな。ゼェ~(ゼシュの事)に云わせっと種伝者の行動ってのは“全ては宿命であり必然”なんだよね? 確かに今だって、間一髪だったけど、ちゃんとかすり傷ひとつなく助かってるしね。こんなん見てると、あたいだってきっとそ~なんじゃんって思うんだけどさ。でもね、そんならなんで見守る者は種伝者を助け、導くとか云うのかな? どうせ宿命なんだから勝手にやらせとけば、いいって事じゃね。
あ~~、そっかそっか、そーすっと、あたいらの存在価値がないって事かぁ~。そりゃ確かにちょっと悲しいかな? ゼェ~(ゼシュの事)なんかは、導く者ノーマー一途って感じだからさ、“ノーマーの夢こそが、わたしの夢”位の事思ってるんだろうけど、あたいは、別にそんな事は思っちゃいないよ。そりゃあたいを生んでくれた事にゃ感謝してっけどね。それとこれとは別なもんさ。
まっゼェ~(ゼシュの事)とは違って、あたいには、あたいなりの他の目的もあっから、勝手にやらせて貰うよ。だってそうだろ? ほんとに“全ては宿命であり必然”だったらさ、あたいらも必要ないし、それよっか種伝者の方がなんか可哀想じゃん?
あいつらにだってよ自分の意志とか考えとか、夢だってあんだぜ? それがノーマーとかゼェ~(ゼシュの事)との考えとぜってぇ一致してるってだれが決めたんだ? ああ、間違いなく“あいつ”は、“新たなる扉”ってのに疑問をもっていたぜ? 確かにそもそも“新たなる扉”ってなんだよ? あたいも扉の開け方はしってんけどよ。開けるとなにが起こるかは、よ~しらんのよね。確かになんで、ず~っとそんな簡単な疑問すら持たなかったんかな? うん、変だよな。まっそれだって、“あいつ”に云われるまで気が付かなかったけどね。
“私は、そんな曖昧な事に利用されるの御免ですね。きちんと理由を提示して欲しいものですね”
っち、“あいつ”っていつでもなんか偉そうなんだよなっ。あん時もあたいはつい思わず頬を拳で撫でてたな……。これってどうも不安? 心配? になると出ちまう癖なんだよな。
“あなたには大変感謝してますよ。でもそれとこれとは違う事ですからね。無責任に扉を開ける訳にはいきませんからね。そもそも開けた扉の向こうには何があるんですかね”
ああ、あたいはなにも答えられなかったさ。だってよ今までそんな事思ったこともねぇし。そもそも開けるのが仕事だし、その先とかキョーミないかったし、しかも責任ってなに? 誰への責任? ぜ~ぜんそんな事とかしんねぇし。
“どうやら私もあなたも、単なる道具の様ですね。私は扉の鍵で、あなたたが鍵を扉に挿すんですね。それは悲しい事ですね。私には私の意志も考えも夢もありますからね。ただの扉の鍵なんて存在にはなりたくないですね”
道具? あたいが? うえっ、“あいつ”に云われるまでさ、そんな事考えもしなかったよな。
“どうやら、私が何故ここに存在しているのかって理由は、それに関連するようですね。でもね、カバックさん。我らは独立した存在なんです。自由意志で考え行動する存在なんです。他者の意志が我らの存在理由にはなり得ないのですよ。 我らは自らの思いで立つべき存在なんです”
正直、なにいってんだか全然チンプンカンプンだったなぁ。マジウザいって感じ……、でもなんとなく思いは伝わってきたかな……。
“カバックさん。私は待つ事にしますね。それが今の私の答えです。いつかまた新しい鍵たる者が顕現するのでしょうね。その時になにかが起こるか、起こらないのか……。そしてあなた方はまた見守るのでしょうね。カバックさんお願いがひとつあります。宜しいですか?”
“ああ、あたいとあんたの仲だ。いっこ位ならやってやってもいいぜ”
“願わくば再び顕現するであろう、その鍵たる者に、この言葉を伝えて下さい……。Je pense, donc je suis”
あの言葉ってのはなんなんだ? ぜ~ぜんイミフじゃん? あれも“あいつ”お得意の呪文だったんかな~?
“ええ、誰かはしりませんが、そう簡単にはあなたの思い道理には行かせんませんよ”
あいつの最後の言葉、あん時の“あいつ”の顔は、あたいを見ずに空を見ながら笑ってたな。誰に笑ってたんかな? そして最後に蓋が閉まる時に“あいつ”親指立てて、あたいに向けたな? ありゃなんの呪いなんだ? まぁよっくわからねぇけど、あたいはやるだけやるさ、それが、今もあの中で待ってるあいつとの約束だしね。
第Ⅰ章「最初の試練」 完
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