予告編
世界が赤く染まっている。
故郷は崩壊し、瓦礫と化していた。
彼の目に宿るのは、絶望だった。
絶望、悲哀、嘆き―――その感情を吐きだす出口は見つからない。
「ぁ、あ……ぁあぁ………」
彼は空を仰ぐ。
どす黒く汚れた空と、血のように赤い光が、滲んで見えた。
「ぅ、ぁぁぁああああああ―――――ッ!!!!!」
壊れた世界に、慟哭が響いた。
始まりは、ほんの小さな恩返しの筈だった。
「―――俺が行きます」
盗賊にさらわれた少女の救出、それだけの筈だったのに。
「……貴方は?」
「君を助けに来た、ただの傭兵だ」
けれども、小さな火種はやがて大きく燃え始める。
「頼む。どうか娘を、エンデを守ってくれ―――」
故郷を持たない傭兵と、故郷を失くした少女の、終わりなき逃亡の旅が始まった。
それが、やがて世界を巻きこむものになるとも知らず―――
二人の旅に導かれるかのように、様々な人間が姿を現す
「―――お願い!わたしの護衛をしてくださいっ!」
―――大切な人を捜す少女
「相っ変わらず辛気臭い表情してるよなぁ、お前。もっと笑っとけよ」
―――ただ其処に在る青年
「……どうでしょうね。私には、わかりません」
―――失ったものを取り戻したいと願う娘
「人間は愚かで醜く、諦めが悪い―――けれども、そうやって足掻く人間の姿が、何よりも貴いのです」
―――知識の探求のみを悦楽とする者
旅を続ける彼らの前に立ちはだかる、謎の集団。
「弱い子って苦手なんだよなぁ、俺。手加減し損ねちゃって、上司に怒られちゃうからさ」
「あぁ、もう!!弱い癖にこのあたしの前に立ち塞がるなんて―――ウッザイんだよっ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。わたしが全部悪いんです、ごめんなさいごめんなさいごめんんさい―――」
「ま、安心してくれよ。このオレの目から逃げられる奴なんて、どこにもいねぇんだからさ」
「―――私は、命令に従うまで」
「………これで、本当に……………あの方は、救われるのだろうか?」
「僕が悪いのか?―――否!悪いのは人だ!世界だ!僕の全てを受け入れられないモノなど、存在する価値などない!!」
彼等はただ、故郷を失くした少女を己の欲の為に求める
その果てに何が待ち受けているのかは、誰にもわからない
「―――恐怖せよ!僕を否定したこの国も、それを受け入れた他の国も、すべて僕が破壊し尽くす!!」
彼等はまだ知らない。
それがまだ始まりにすぎないことを。
まだ、誰も。
「いつだってそうだ!人々はいつも、僕の後ろにいるあの人を見ている!!」
「……あの方は偉大過ぎたのだ」
「これ以上、おにいちゃんを苛めるなら……わたし、あなたたちを許さないから!!」
「はぁ……金だけもらって後はとんずら―――なんて、出来たらよかったんだけどよ」
「……後は、貴殿の用意が整えば」
「逃がさないよ、ネズミくん」
「少しくらい痛めつけたって、文句言われないわよねェッ!!?」
「絶対、取り戻すわ………ッ!わたしの大事な兄さん達を、必ず!!」
「やる事何もねーなぁって思ってたけどよ………これは、見過ごせねぇ」
「やはり、『あの人』のせいで………いえ、これは、私のせいでもあるんでしょうね」
「んふふふっ。私は私の思うままに動く、ただそれだけですよ」
「私に出来ることは少ないから、出来ることは頑張ろうと思うんだ」
「―――彼女を守る。俺に出来るのは、それだけだ」
そうして、いずれ世界を巻きこむ物語が―――始まる。
Wichtige Sache
【第一部】Beschleunigen
はじめまして、Abendrotといいます。
遅筆ながらも頑張って更新しようと思いますので、つきあっていただければ幸いです。