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diech.2

しばらく走ると高速を降りて住宅街に入って行き1軒の家の前でバイクを止めた。

「凛、ここはどこ?」

「埼玉だよ」

「そうじゃなくって」

その時、バイクの音に釣られて家の中から小学生くらいの男の子が出てきた。

「ああ、凛だ! ママ! 凛が来たよ」

男の子の声で中からママらしき女性が現れた。

「兄貴、いきなりどうしたの?」

「ちょっと野暮用があってな」

側に居る杏をみて女性が固まった。

「兄貴、もしかして……5分だけそこで待ってて! 絶対に入って来ちゃ駄目だからね」

そういい残して家の中に駆け込んだ。

家の中からはドタバタと数人の男女の声や怒鳴り声が聞えた。

「凛、ここって……」

「サインを届けに来たんだろ」

「サインを届ける人って……」

「俺の甥っ子だけど」

「それじゃ、今の人ってまさか……」

「妹だが」

「ここって凛の実家じゃないの?」

「そうなるかなぁ。相談役が直接手渡ししろって言っていただろ、それに面倒くさいって言ったのに『面倒くさい言うな、行くよ』と言ったのは杏だぞ」

「知ってたら言わなかったもん」

「知らないから命令されたんだよ。つまり両親にキチンと紹介しろと填められたんだ」

「そんな……」

杏が困惑した表情をしていた。

「最初からあの人はそのつもりだったんだよ、杏の着替えまで用意してな。心配するな俺の家族は普通の一般人だから。そろそろ良いかな、行くぞ」

「えっ、そう言う問題じゃないょ」


家に入ると凛に居間に連れて行かれる。

居間では出迎えてくれた妹と凛の両親がテーブルに座っていた。

「ほら、ぼーとしていないでこっちに来い」

「うん、はじめまして……」

凛に手を引かれ部屋に入る。

部屋に入ると凛は床に座り込んだ。

「ほら、杏もここに座れ」

凛が床を軽く叩いた。

「う、うん」

杏が凛の横に正座した。

「足は崩せ」

「でも」

「良いから」

「もう、凛の馬鹿」

そう言いながら杏が足を崩した。

「凛ちゃん、そんな所に座らなくても」

「お袋。床の方が楽なんだよ、足も伸ばせるし」

凛が足を伸ばし胡坐をかいた。

「凛、ちゃんとしないか」

「そうだな、親父。今、付き合っている夏海 杏だ。宜しくな」

「杏、親父とお袋と妹だ」

「宜しくね。そうそうお茶も出さないで駄目ねぇ」

母親が台所に向かった。

「兄貴はいつも突然来るんだから連絡ぐらい寄こしなさいよ。特に誰かを連れて来る時にはね。汚い所でゴメンなさいね」

「いいえ、とんでもないです。私こそ急にお邪魔しちゃって」

「でも、兄貴は何者なの? 彼女は本物なんでしょ?」

「本物も何も杏は杏だぞ」

「そうじゃなくて、な・つ・み・あん なんでしょアイドルの」


部屋の入り口から覗く3つの影が見えた。

「本物かな?」

「お前が聞いて来いよ」

「やだよ」

「サイン欲しいな」

などと小声で話しているが筒抜けだった。

「そこの、3人! ここに来て座れ」

「「「はーい」」」

凛が声を掛けて床を指差すと渋々3人が出てきて凛と杏の前に座った。

「ほら、杏。渡す物があって来たんだろ」

「えっ、うん」

杏がバッグから色紙を出した。

「ほら、1人ずつだぞ」

「ええっと。トモ君、リキ君に……」

「タカだ」

「タカ君。はい」

3人に色紙を渡した。

「すげー本物だ」

「ありがとう」

「ねぇねぇ、お姉ちゃんは凛のお嫁さんになるのか?」

「ええ、それは」

朋の質問に杏が固まった。

「まぁ、そのうちな」

杏がキョトンとしている。

「それじゃ、凛。また一緒にお姉ちゃんと遊びに来るんだな」

「ああ、約束するよ。今度は皆で遊ぼうな、今日は忙しいからお前達外で遊んで来い。遅くなるなよ」

「うん。友達に自慢しに行こうぜ」

「そうしよう」

「凛、いつ帰るんだ?」

「そうだなぁ、まだ決めてないんだ」

「そうか、夜ご飯は一緒に食べれるのか? 泊るのか?」

「そうだな」

「それじゃ、遊んでくる」

3人が嬉しそうに色紙を持って外に飛び出して行った。


「まったく、兄貴はいつもそうなんだから。前はいきなりこいつと結婚するからって大きな会社のお嬢さん連れて来るし。今度は娘みたいなアイドルですか、兄貴らしいと言えば兄貴らしいけどね」

「はい、何も無いけれど冷たい麦茶でもどうぞ」

母親がお茶を入れて運んできた。

「ありがとうございます」

「そう言えば凛ちゃん、テレビで何かの就任式に出てなかった? それと映画か何かの式にも、人違いだったのかしら」

「お母さん、それ何の事?」

「皐コーポレーションの代表取締役の就任式と映画化が決定された『彼はグランパ』の製作発表だろ」

「何で、兄貴がそんな場違いな所に出るのよ」

「そう言えば、凛ちゃんの前の奥さんってたしか、皐コーポレーションのご令嬢じゃなかったかしら」

「そうだ」

「グランパって今人気の小説でしょ前の作品もそこそこ人気があって」

「そうだな」

「もう、相変わらずはっきりしない男だね兄貴は」

「落ち着いて聞けよ」

「早くしなさいよ。買い物にも行かないといけないんだから」

「俺、皐コーポレーションの社長になったんだ。それと小説の原作者は俺だから」

3人が凛の顔を見て固まった。

「それと、もう1つ。杏のプロダクションの社長も兼任していて、こっちの仕事がメインになりそうだから。宜しくな」

「これが、皐コーポレーションの名刺」

「これが、仲村 歩の名刺」

「そんで、オフィス AQUAの名刺と」

3人の前に3枚の名刺を並べる。

「一般ピープルには理解の限度を超えてるよ……兄貴」

「俺だって一般人だったぞ昨日までは。まぁ、小説は趣味に毛が生えたもんだから誰にも言わなかったけどな。映画化なんて夢みたいだし、それに後の2つは成り行きでなったんだしょうがないだろ」

「それじゃ、彼女の事はどうなの?」

「中途半端な気持ちでこんな所に連れて来る訳が無いだろ」

「そうだよね、前の奥さんとこれで2人目だもんね。家に連れて来たの、それだけ本気だって言う事だよね」

杏がずーと凛のシャツを掴んでいた。

「杏? さっきから何もしゃべらないけれどどうしたんだ?」

「何でもない」

「顔真っ赤だぞ」

その時、お袋が一言だけ漏らした。

「凛ちゃん、私もう駄目みたい……」

母親の体から力が抜けて椅子にヘタリ込んだ。

「お袋、大丈夫か?」

「凛。少しすれば落ち着くよ。どうせお前の事だ、泊まる所も考えずにここに来たんだろう。2人で買い物にでも行って来い」

「そうするか。親父、お袋を頼んだぞ。杏行こう」

凛が立ち上がり部屋から出ようとする。

杏も慌てて凛の後を追いかけた。


バイクで駅前の商店街に向かった。

「凛、買い物って?」

「杏は今晩、どこで寝るつもりなんだ?」

「あ、分からない」

「たぶん実家でごろ寝する事になるだろう。杏の着替えは家にはないからな、親父なりに気を利かせたんだろう」

買い物を済ませバイクに戻ろうとすると杏が何かに気が付いた。

「西浦田駅? 凛さっきの大きな通りは何ていう通りなの」

「ああ、バイパスだ」

「それじゃ、この辺って」

「ああ、そうだ。河川敷に行ってみるか」

「うん、行ってみたい」

バイクで河川敷に向かい土手の上にバイクを止める。

凛は土手の上に腰を下ろしてバンダナを広げた。

「ほら、この上に座れ」

「うん、ありがとう」

日が少し傾いてきていて、川面を渡る風がとても心地よかった。

「こんな所だったんだ。ちゃんとモデルの場所があるんだね」

「空想の場所ばかりじゃ、リアルティーに欠けるだろう。それに考えるのが面倒だしな」

「それじゃ、グランパの場所は?」

「あれは、多摩川沿いかなぁ一応。最初は空想の世界でと思っていたんだが実際の場所に少し当て嵌めたんだ」

「そうなんだ、それじゃ実際は行った事無いんだ」

「そうなるかな」


2人で河川敷を眺めて話をしていると子ども達が言い争う声が聞えてきた。

見ると土手の下の公園で男の子2人が女の子達数人と言い争いをしてた。

「嘘つき!」

「嘘じゃないもん、これが証拠だって言ってるだろう」

「そんなサインが証拠にはならないでしょ」

「本当に夏海 杏が家に来てるんだよ」

「嘘ばっかり、前は本当は喧嘩に強いとかさぁ。言っちゃって」

「嘘じゃねえよ」

「それなら、かかって来なさいよ。ほら」

女の子が男の子を突き飛ばした。

「危ないだろ」

「ほら、やっぱり弱いんだ」

「男は女を打っちゃいけないんだ」

「力お兄ちゃん、もう帰ろうよ」

「昴は黙ってろ、嘘つき呼ばわりされて悔しくないのかよ」

「悔しいけどさぁ、女の子と喧嘩したら凛に怒られちゃうよ」

凛が土手に寝転んだ。

「ねぇ、凛。あれって」

「ああ、俺が教えたんだ。女の子には絶対に手をあげるなって」

「素敵な教えだね。でも、あれじゃ負けちゃうよ」

「しょうがないだろ、女の子には口では敵わないんだから。それに男の子同士でも喧嘩はしないように教えているからな」

「でも、どうしようもない時はどうするの?」

「この間、俺が店で不良を追い払った様な事を教えてあるよ」

「ええっ、あの子達にできる筈無いじゃん」

「それじゃ、見せてやるから。可愛い甥っ子達を助けてやってくれよ」

「うん、今そのつもりでいたんだ。行って来るね」

「宜しくな」

杏が立ち上がり土手を駆け下りていく、それを昴が見つけた。

「ああ、お姉ちゃんだぁ」

「ええ、本物の夏海 杏だぁ。嘘!」

女の子達が驚いた。

「ほら、嘘じゃないでしょ」

昴がちょっと自慢げに女の子達に言った。

「何を喧嘩してるのかなぁ。(りき)君に(たか)君」

「何しに来たんだよ。助けてくれなんて頼んだ覚えは無いぞ」

力がそっぽを向きながら杏に言った。

「そうだね、凛に頼まれたんだよ。力君と昴君の強い所を見せてくれるからって言われて来たんだよ」

「ありがとうな」

力が頭を掻きながらそっぽを向いたまま言った。

「そ、それじゃ、そのサインは自筆なの?」

女の子の代表格が聞いてきた。

「うん、私が力君達に書いたんだよ。それと女の子が男の子に暴力は感心しないなぁ」

「だって、本当は喧嘩が強いなんて言うから」

「本当か確かめて見てからの方が良いと思うけどなぁ」

「ごめんなさい」

「分かれば宜しい! 仲良くしなきゃ駄目だぞ。凛!」

杏が女の子達に言い聞かせてから凛を呼んだ。

凛が起き上がりズボンのポケットに手を突っ込んで土手を降りてきた。

「力、良く我慢したな」

「うるせえよ。当たり前の事をしただけだよ」

「プッ、うふふ」

杏が噴き出して笑った。

「何が可笑しいんだよ。お姉ちゃん」

「凛にそっくりだなって」

「よーし。久しぶりに俺が組み手の相手をしてやるどこからでも打ち込んで来い!」

「ふんだぁ、もう凛なんかに負けるもんか」

「それじゃ、俺の体に1発でも打ち込んだら欲しい物を何でも買ってやるよ」

「約束だぞ」

「ああ、かかって来い」

力がいきなり凛めがけて子どもの物とは思えないような鋭い蹴りを打ち込む。

それを凛は難なく受け止めた。

その後も上段、中段、下段の蹴りや突きが止まる事無く繰り出されるが凛は尽く受け止めていた。

「凄い、凛の言った通りだ。これじゃ男の子でも敵わないや」

杏が女の子達を見ると口をポカーンと開けて呆気に取られていた。

しばらくすると力の息が上がってきた。

「よし、昴も一緒にかかって来い」

「うん」

昴が眼をキラキラと輝かせながら凛に向かっていく。

凛は2人が同時に攻撃しても難なく受け止めていく、時間差で攻撃されてもまったく息も上げずに受けた。

しばらくすると攻撃し続けている力と昴が肩で息をするようになった。

「はい、今日はここまで」

凛が2人の攻撃を受け止めて言った。

「くそ、やっぱり凛には敵わねえや」

「ああ、楽しかった」

昴が満足そうに笑っていた。

「ねぇ、力。なんで杏が力達の家に居るのよ」

さっきまで喧嘩していた女の子が聞いてきた。

「凛が連れて来たんだよ。なんでなんて分からねえよ」

「お姉ちゃんは、凛のお嫁さんになるんだよねぇ」

昴が無邪気に言った。

「えっ? そ、それはどうかなぁ」

杏が突然そんな事を言われて戸惑っていた。

「力の叔父さんの友達なんじゃん。明日、友達に夏海 杏に会ってしゃべったって自慢しよう」

女の子が少し自慢げに言った。

「凛のお嫁さんじゃないの?」

昴が不思議そうに凛に聞いた。

「昴、お姉ちゃんが良いよって言えばかなぁ」

「えっ?」

杏が驚いて凛の顔を見ると素知らぬふりをして。

凛が力に千円を渡した。

「力、千円やるから皆でアイスでも買って先に帰れよ。お釣りはちゃんと持って来るんだぞ」

「凛の奢りだぁ。アイス買いに行こうぜ」

力が昴と走り出した。

それを女の子達が追いかけて行く。


凛はそれを優しく見ていた。

「ねぇ、凛」

「あっ、痛たたたた」

杏が凛の腕をつかむと凛が腕を押さえた。

「ええ、どうしたの?」

「あいつ等、加減て言うものを知らないから全力で打ち込みやがって」

凛がシャツの袖を捲くると2人の攻めを受けていた腕が赤く腫れあがっていた。

「うわぁ、痛そう」

「痛そうじゃなく痛いんだよ」

近くにあった水飲み場の水道で腕を冷やした。

「でも、あの子達も凄いけれど凛も凄いんだね。あんな攻撃受け止めて」

「喧嘩に明け暮れた頃があったからな」

「ふうん、雷神の頃かぁ。その頃の写真とか見て見たいなぁ」

「実家にあるはずだぞ」

「それじゃ、見せてね」

「探してくれ」

「ええ、面倒くさい」

「面倒くさい言うな」

「いつもの私の台詞だぞ。あっ、また凛に誤魔化されるところだった。私が良いよって言ったらお嫁さんにしてくれるの? 本当なの?」

「そんな事言ったか?」

凛が惚けてバイクに向かって歩き出した。

「言ったもん」

「さぁ、帰って飯だ。飯だ。杏、帰るぞ」

「もう、凛!」

「置いて行くぞ」

「馬鹿! 凛のいけず!」

杏が立ち止まり拳を握り締めて唇を噛み締めていた。

凛が振り向き杏に向かい歩いて来て、いきなり杏を肩に担ぎ上げた。

「何するんだよ!」

「帰るんだ。日が暮れてきたから」

「この、人攫い! ロクデナシ! 鬼畜!」

杏が大声を上げて騒ぐが凛は構わず土手を上がって行く。

「降ろせ! 降ろしてよ!」

凛が杏をバイクのシートに降ろして座らせた。

「中途半端な気持ちで連れて来た訳じゃないと言ったはずだぞ」

「でも、不安なの。怖いんだよ」

「どうして欲しいんだ?」

「それは……」

杏は戸惑っていた。

もう少し、もう一歩を踏み出したい。

でも、亜紗が言っていたあの言葉『凛にとって男女のそう言う事はとても大きな約束なんだと』そして凛のトラウマの約束。

確かな物が欲しいでもそれは凛にとっては大きな負担になってしまうのではないか?

その所為でまた、凛に何かあればその時は2度と戻らなくなってしまうかもしれない。

そんな事を考えていた。

「えっ!」

凛が優しくキスをしてきた。

「り、凛?」

そして、杏の目を真っ直ぐ見つめキスをする。

深く長く。何も言わず抱しめるでもなく。

「帰るぞ」

「うん」

それから凛と杏は何もしゃべらなかった。


凛の実家に着くと3人の甥っ子が待ち構えていた。

「凛! 遅いぞ」

「もう、お腹ぺこぺこだよ」

「お姉ちゃんも早く!」

「おっ、悪りぃ悪りぃ。俺も腹ぺこだぁ」

楽しく、そして賑やかに食事をした。杏はとても嬉しかった。

こんなに大勢で食事なんてした事が無かったから、凛は笑顔で陽気に話をしながら食事をしている。

家族の団欒をこんなに感じられるそれだけで幸せだった。

食事が終わり順番に風呂に入り凛の家族は2階の寝室に上がって行った。

凛と杏はダイニングの横の居間で寝る事になった。

「長い1日だったなぁ」

凛が横になり伸びをした。

「ぶかぶかだぁ」

「当たり前だ、俺のパジャマが良いなんて言うからだ」

杏が凛の胸を枕代わりにして横になった。

「だって、凛の匂いがするんだもん」

「防虫剤の匂いしかしないだろ」

「もう、意地悪」

凛は何か考え事をしている様だった。

開けっ放しなっている窓の網戸の外からは虫の鳴き声だけが聞えていた、心地よい風が部屋の中を通り抜けた。

「なぁ、杏。不安な気持ちにさせてしまって申し訳ないと思っている。少し時間をくれないか、俺自身もどうしたら良いのか分からないんだ。ちゃんと向き合っているつもりなんだが時々自分が自分で無いようで戸惑ってしまう時があるんだ。ヨンナーヨンナーで行かないか、俺は杏の事が好きだ。でも10年以上も人と深く係わるのを避けてきた、それは己の弱さからなんだけれど、杏の事を大事に思えば思うほど怖くって不安になってしまうんだ」

「ヨンナーヨンナーってゆっくりって事?」

「ああ、そうだ。少しずつだけどトラウマも無くなって来ていると思う。それに杏が側にいてくれれば大丈夫な気がするんだ。情けないな、いい歳した男が」

「そんな事ないと思う。凛でも不安になる事があるんだって思ったら何だか安心しちゃった」

「普通のおじさんだぞ」

「おじさんじゃないよ、凛は凛だもん。でも契約書なんて紙切れじゃなくって、もう少しだけ先に進みたいなぁ。少しだけで良いの確かなものが有ればそれだけで凛と繋がっていられる気がするの」

「La promessa e legame か……」


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