第7話:やだなあ、ただの冗談だよ? …冗談、だからね?
月曜・放課後
もにゅの餌が尽きかけていた。
俺「やばい、もう冷蔵庫にカロリーメイトしかないぞ……」
理沙「スライムって何食えばいいのよ……」
「それなら、私の家に来ない?」
――と、そこに天使の笑顔で割り込んできたのが、一ノ瀬 天音だった。
「昨日、もにゅちゃんが“甘いのが足りない”って言ってたから、いっぱい用意してあるよ~♪」
「ほ、ほんとか!? 天音女神かよ!」
「……ふーん。あんた、他の女の家にもホイホイ行くんだ」
理沙が睨んでくる。が、俺は空腹に勝てず天音の提案を受け入れることに。
天音の家・キッチン
「わあ……このプリン、手作りなんだ」
もにゅ、夢中で食べてる。
天音は台所で紅茶を淹れていて、エプロン姿がやけに様になっている。
……けど、冷蔵庫の中、妙に“スライム向け”っぽい高カロリー甘味しかないんだが。
「最近ね、いろんな資料見て、“もにゅちゃん専用ごはん”を研究してるの。ふふっ、佐原くんの役に立ちたくて」
「え、そ、そんなことまで……ありがと……」
「……」
理沙、横で完全に凍ってる。
というか、この空間、息苦しくなってきた。
天音の部屋
食後、天音に案内された部屋は――異様だった。
まず、棚にスライムグッズが並びまくっている。
もにゅのイメージで作ったと思われる手作りぬいぐるみ、スケッチ、アクセサリー。
さらに机の上には、「スライムとの共生生活計画(仮)」と書かれたファイル。
「ちょ、ちょっと待って、これ全部……!?」
「うん♡ ほら、もにゅちゃん可愛いし、“私だけの存在”にしたいなぁって」
部屋の奥には、
理沙とのツーショット写真を雑にハサミで切った残骸が落ちていた。
「……?」
俺が拾おうとすると、天音が笑顔で手を添えてきた。
「――見ちゃ、ダメだよ?」
その笑顔は、冷たい氷のようだった。
理沙 × 陽斗:帰り道
「……アンタ、あの子の本性に気づいてないの?」
「え、いや……天音、いい子だろ? いつも笑顔で――」
「……は。あの“作り笑顔”が本物に見えるとか、幸せな脳みそしてんね」
「なんだよ、言いすぎだろ」
「……あんた、壊されるわよ。全部」
天音:その夜、自室にて
もにゅの食べ残しを丁寧にラップして冷蔵庫へ。
部屋には、陽斗の写真がびっしり貼られたボード。
その一部、理沙の姿に×が引かれている。
「……ふふっ。だって、佐原くんは私が守らなきゃ。
もにゅちゃんも……理沙ちゃんも……邪魔、だもんね」
ぬいぐるみにキスをして、笑う天音。
その笑顔に、温度はなかった。