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第5話:べ、別に泊まりたかったわけじゃないんだからねッ!

 金曜の夕方。小雨が降り出した帰り道。


「……で、なにしてんの、お前」


「見てわかんない? 雨宿りしてんのよ」


 学校近くの商店街の軒下で、神田 理沙が傘も差さずにずぶ濡れで座っていた。制服のスカートは膝に貼りつき、ポニテはしなびて、顔もどこか疲れている。


「……帰んないの?」


「無理。スマホ水没したし、家の鍵も忘れた。しかも親、旅行中」


「詰んでるじゃねえか」


 とりあえず、俺のビニール傘に半分入れてやった。

 いつもツンツンしてる理沙が、今は妙におとなしい。俺の肩に少しだけ寄りかかる彼女は、いつもと違って……。


「うち、来る?」


 言ってから、自分でびっくりした。なに言ってんだ俺。


「……は? アンタ、なに考えてんのよ……」


「ち、ちがっ、いや、そーじゃなくてっ、雨だし!風邪引くし!泊まるわけじゃなくて、その……あのっ」


「……はぁ。もうどうでもいい。寒い。……行く」


 ツンから急なデレへ。

 そしてそのまま、俺の家へ――。


**

「狭い、男の部屋って感じ。なんか……生活感、あるようでないね」


 俺の部屋で制服のジャケットを脱いだ理沙は、借りたバスタオルで髪を拭きながら不満げに言った。


「文句言うなよ……。で、お前パジャマどうすんの?」


「……貸して」


「マジかよ」


 押し入れから部屋着を引っ張り出し、彼女に渡す。


「ちょ、これ大きいんだけど。ぶかぶか。てか、男子の服を着る女子って、普通に恥ずかしいんだけど……」


「俺の方が恥ずかしいわ」


 そして。


「モニュ~~~♪」


 ベッドの下から“あいつ”が出てきた。

 もにゅ、今日も元気です。


「あ、いたいた。今日ずっと姿見せなかったから心配して――」


「って、もにゅ!? いるの!? ここに!?」


 理沙が突然、叫んだ。


「……あ、うん。普通に同居してるから」


「……スライムと、同居?」


「そう」


「……へえぇぇ~~~~~(めちゃくちゃ睨んでくる)」


 理沙は怒っている。

 けど、理由が謎すぎる。


「もにゅ、こっち来なさい」


「モニュ?」


「はい、ごはん。私の持ってきた非常用クッキー!」


「モニュ~~♪」


「ほら見なさい。私のほうが慣れてるんだから」


「えっ、なんで急に張り合ってんの!?」


深夜。

「……あの、床でいいの? 私、ベッド使っても」


「いや、俺が使うから」


「ちょっと、なんでよ」


「男子が女子を床に寝かせるわけにいかんだろ!!」


「……べ、別に。私、別にアンタと寝たかったわけじゃないけど、そこまで拒否られると逆にムカつくんだけど!!」


「いやどうしろと!!?」


翌朝。

 起きたら、理沙がベッドの真ん中で、もにゅを抱いて寝ていた。


「……くかー……モニュ……」


「お前ら、どういう関係だよ……」

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