表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏 風鈴 近所のお兄さん

作者: 剥離


ぬいぐるみを取り上げられた子どもが泣くのは別に愛ゆえではないのと同じく、けれど別れを告げられた男が使ったお金を返せと喚くよりは幾分か尊い事象として──私は小学校3年生の夏、お小遣いで買った100円の風鈴を道端に落として泣いた。それはもうこの世の終わりみたいに煩く喧しく、蝉の声すら掻き消しそうなくらい泣き喚いた。でも、今となって振り返ってみれば、風鈴を登下校のときに持ち歩いていた異常な自分が悪いんだし、当時は確かに感じたはずの絶望の重みだって、露ほども思い出せなくて。

「何があんなに悲しかったんだろうね、あのとき」

そのとき私を懸命に慰めてくれた近所のお兄さんに問うてみるも、相手も軽く目を細めるだけだった。お互い随分と冷めた大人になったものだ、これで地球温暖化に対抗できたりしないのかな、なんて思って重ねた唇の温度は全然あたたかくて環境に悪かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ