乙女攻略2Dケーキ
私の名前は柑奈。
性別は想像にお任せします。
見た目は絶世の美少女。
え、美少女??
そっと目を開けると暑さと日差しが視界を晦ます。
「柑奈?顔色悪いけど大丈夫か?」
副所長ブラックさんの能力で別世界へと来たのはいいですが…。
「おーい?」
炎天下から逃げる木漏れ日の下。
蝉の鳴く声が響く体育館裏。
目の前にいるのは…どなたでしょう。
特徴的な白髪…。
これは…もしかして。
「えっと…雪白さん?」
困惑する私の顎を軽く掴み、強制的に視線を合わせられて雪白さんらしき人は笑う。
頭の上にハートマークの中に55と数字が浮かんでいる。
「俺は雪白。お前は柑奈。夏の暑さでついに頭やられたか?」
笑う口から鋭い犬歯が見えて少し鳥肌が立ち早くなる鼓動に息を飲む。
「朝練もそろそろ終わるってのに…」
「お嬢様をいじめるのは私が許しませんよ」
そう言って間に入るのはストレートの茶髪に赤い目が光る人。
夏だと言うのにブレザーを来て首元までしっかりと締めている姿は見ていて暑い。
ハートマークの数字は60。
「兎夜さん」
ふと口から声が漏れると兎夜さんはこちらを嬉しそうに見る。
「はーい。柑奈の王子様兎夜ですよ」
あ、はい。ありがとうございます。
絶対普段なら言わないですね!
これが別世界…!!
「王子様だぁ?寝言は寝て言えバカ兎夜!!柑奈は俺のだ」
「いじめて楽しんでるやつが何を…汚らわしい」
雪白さんと兎夜さんが言い争いをしている姿を横目に逃げる。
「いったた…」
体育館の角を抜けて飛び出すと人とぶつかってしまった。
「す、すいません…!」
咄嗟に謝りながら顔を見る。
ピンク髪のマッシュヘアに紫の目が鋭い。
ハートマークの数字は30。
「ヒ、ヒナさん?」
当てずっぽうで名前を言うが、なんで知ってるの?と言いたげな顔をされた。
「曲がり角からの運命の出会いだな」
ニシシと笑い声を上げながらヒナさんの肩を組むのは副所長…ブラックさん。
長い髪を1つに縛っていていつもより好青年感が溢れている。数字は40。
「柑奈ちゃんは大変だなぁ。早く逃げなくていいのか?」
後ろにいるよと指で合図をするので軽くお辞儀をして咄嗟に逃げる。
随分走ったせいか汗が吹き出す。
「疲れた…」
息切れをしながら教室に飛び込む。
情報収集がしたい。
まずはハートマークについて何かわかる事があれば…。
そう思いながら持っていたカバンを開ける。
刺繍の入ったハンカチ。
ティッシュ。
メモ帳?
「こーら…何してるのかな」
後ろから声を掛けられて肩が飛び跳ねる。
ゆっくり振り返ると、ミント色の短髪が特徴の芝猫さんが私に微笑んだ。
「空き教室を勝手に使うなんて…悪い子だね」
頭の上のハートマークは50から45へと変わった。
これはもしかして…いや、もしかすると。
好感度の数字…!!?
「今日の放課後、反省文を持っておいで」
そう言って去ってしまった芝猫さんに寒気がする。
気になる事がありすぎるので、とりあえず持っていたメモ帳を開くと、メモ帳ではなく日記だった。
先生の芝猫さん。
同じ部活の雪白さん。兎夜さん。
私はマネージャーらしい。
生徒会のヒナさん。ブラックさん。しろさん。
クラスメイトの乙歌さん。有珠析さん。
この人たちが攻略対象らしく、好感度をあげていかないといけない。
少しずつ上げている途中だと記されている。
さて…誰を攻略するべきか。
「せ~んせっ!!」
廊下を飛び出して芝猫さんに抱き着いてみる。
「あぶないですよ柑奈さん…怪我でもしたらどうするのですか?反省文追加です」
好感度は上がらない上にきちんと怒られてしまった。
次に行こう。
次はなんとなく落としやすそうな兎夜さん。
先程の感じだと誰よりも好感度が高いから多分簡単に落ちるはず。
「と~や~さん!」
後ろ姿を確認して抱き着いてみる。
「ひ、姫?!」
60から65へと変わった。
こいつチョロい…。
「び、びっくりするじゃないですか!」
「会いたかったから…姿見て嬉しくなっちゃって…つい?」
乙女ゲームをやり込んだこの私に不覚はない。
上目遣いで少し首を傾げて言うと一気に好感度が70へと変わった。
「~っ…!!!」
だんだん顔が赤くなっていく兎夜さんで遊んでもいいけれど…折角ならば他の人の反応も見てみたい。
「ヒナさん!…えっとブラックさん!」
校内を走り回り攻略対象の人たちの元へと走る。
「うわ…さっきの人だ」
「元気だねぇ」
明らか嫌な顔をするヒナさんとそれを見て笑う副所長は絶対に元の世界では見ない光景で少し楽しい。
「そろそろホームルームの時間だけど?」
ヒナさんの虫けらでも見るような顔初めて見た。
「それは貴女方もでしょう」
パッと見女の子にしか見えない前の世界よりも小柄な姿のしろさんが出てきた。
「ヒナさん。ブラックさん…それとあなたも…早く教室へ戻りなさい」
ニコニコとしているが目が笑っていないしろさんにゾッとする。
「し、失礼します!!」
この人達は攻略無理!と早々に諦める。
誰で遊ぼうかなぁと探検しているとチャイムがなった。
「教室…どこ…?!」
まず最初の難関にぶち当たりました。
私が真面目に授業を受けるとでも?
よし…サボってもっと探検しましょう。
「柑奈ちゃんもサボり?」
「優等生が珍し~」
目が潰れそうなほどイケメンになった乙歌さんと短髪オールバックの所長…有珠析さんが居た。
「ふ、2人は?」
声を掛けながら頭の上を見ると乙歌さんは58。所長は46だ。
「俺らが授業に出るほどバカじゃねぇから」
「いや逆な?!」
乙歌さんがボケて、それにツッコミをする所長…。
「じ、実はお2人を捕まえに来ました!私と教室へ_」
口を開くと2人は颯爽と走り去ってしまった。
どれだけ不真面目なのかわかる。
一通りの方々に会えたので誰か攻略して元の世界に戻りたいですね。
「おやおや…全くこんなところで何をしているのかな」
後ろから声を掛けられて驚いていると笑顔が怖い芝猫さんがいた。
「反省文追加と…特別指導が必要ですね」
赤色ハートマークが一気に揺れて紫色になったかと思うと数字が文字化けを起こした。
「最近、露骨に私を避けたと思ったら急に抱きついてみたりと誘っているのかな?そんな生徒には特別指導する以外にないですね。さあこちらへ」
周りにいたはずの乙歌さんも所長も見当たらず辺りが砂嵐のような風景へ変わる。
「せ、先生待って!!」
何があったらこうなるのは分からないけれど、このモードは死亡フラグだと思う。
「あの…芝猫さんすいません!!」
少し身長差のある芝猫さんの肩を掴み抱きしめる。
「な、なにを…」
困惑している雪白さんの唇を奪ってみると、徐々に砂嵐が消えてハートマークの色も戻ってきた。
「か、柑奈さん…?!」
先程までの数字がスロットのように変わっているのが見える。
「芝猫…先生」
数字が止まりきる前にまっすぐ目を見て言う。
「_。」
その瞬間ハートマークがはち切れ見えなくなった。
それと同時に身体が浮遊感に包まれる。
こんなあっさりと世界が終わるならもう少し他の人でも遊んでみたい気持ちと、あの闇堕ちモードに入られたら怖いの気持ちが絡み合う。
顔を赤らめている芝猫さんを見ながら目を閉じた。




