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お尋ね者たちの晩餐会  作者: 灰兎
22/27

青春サイダー

「…おとちー?おとかっちー?おーとちん!」


誰かに身体を揺らされて目を覚ます。


「ん…」


小さく伸びをしながら当たりを見渡す。


隣から声を掛けてくれたのはブレザーを着た少し幼い印象の兎夜さん。

首にはヘッドフォンがあり、兎のマークがある。


「次指されるよ。58ページの7行目から!」

「あ、ありがと」


国語の教科書と板書したノートが机の上にあり、今は国語の時間なのだと察する。

今音読をしているのは前の席のヒナちゃ。


「次、乙歌」


そう言うのはパスタ。

え、君…絶対どの世界線でも年下ポジじゃないの?

うわぁ…解釈不一致…。

と思いながら兎夜さんが教えてくれた7行目を音読する。


「次は_さん」


クラスの人数は24人くらいか。

今座っている場所は窓際の後ろから2番目の席で、真後ろは空席。

隣は兎夜さん。前は髪をポニーテールに縛ったヒナちゃ。

ほかのクラスメイクで今音読しているのは元の世界線で手を刃物に変えたやつか〜…とか、なんだか見たことあるような無いような顔。


「今日はここまで。学級委員号令」


やっぱり似合わないなぁ…。

パスタくんは年下で弟または後輩がしっくりくる。


「おとち!」

「あ、起立。礼!ありがとうございました」


アタイが学級委員かぁ…。

兎夜さんが教えてくれなかったら不自然だっただろう。

別世界とは言え、この世界のアタイにならないと帰りたい時に帰れさなそうだからね。


「今日疲れてる?」


休み時間に入り兎夜さんが笑う。


「昨日しろ先輩とお出掛けしたんだから、おとちゃんの寝不足も仕方ないよ!ドキドキしちゃうよね!」


前の席からヒナちゃは笑いながらそう言う。


「次は体育で終わったらお昼だからあとちょっと頑張ろ!」


ヒナちゃはアタイの左腕にしがみついて兎夜さんと話しながら移動する。


話によると、しろさんは先輩…。

これは解釈一致だなぁ。


「ヒナちは芝猫先輩といい感じだったじゃん」

「そ、そんな事ないよ?!まあ…確かに柴猫先輩はかっこいいけどさ…」


兎夜さんはヒナちゃに反撃の様に言う。

…芝猫先輩。

似合わないなぁ。


「そんな事言ったら雪白先輩とはどうなの?」

「ま、雪白は…ただの幼馴染だ!!」

「あれ?図星〜?」

「違うから!!家が隣同士なだけ!」


情報網が繋がってきた。

しろさん。芝猫。雪白ちゃんは先輩ポジらしい。


「じゃあ雪白先輩狙っちゃおうかな〜!」


間に割り込んできたのはフードを被ったペペ。

こいつからフードを取ったらアイデンティティが無くなってモブになるんだろうな。


「やらねぇよ!!」


兎夜さんが声を荒らげる。


「お!これは〜?」

「ち、ちがっ」

「へぇ〜!」

「ペペ!!この…後で覚えてろ!!」


廊下を走っていく2人を見てアオハルだなぁと思う。


その後体操着に着替えて自分が2年2組だと知る。

体育の授業はドッチボールで、兎夜さんとぺぺの白熱バトルが繰り広げられていた。


「喰らえ…ラビットサンダー!!」

「うおぉぉぉ危ねぇ…!!俺のターン!アザラシアタァァァァク!!」


なんでこんなダサい技名を…いや、男の子は何歳になっても厨二病。

元の世界線は敵同士で2人の会話自体無かったから新鮮で少し居心地がいい。


2人が熱血している間にヒナちゃにこの世界線の情報を一通り教えて貰った。


まずアタイ、ヒナちゃ、兎夜さん、不登校の柑奈さんの4人は同じクラス。

隣の2年1組はぺぺとブラックさんが居てみんな演劇部の2年生。

その中でアタイが副部長らしい。


3年生は有珠析さん、しろさん、柴猫、雪白ちゃん、翔海さん。

部長は有珠析さん。部長代理が雪白ちゃんで副部長はしろさん。


廃校が決まっている為1年生はいないらしい。


体育の授業が終わり、兎夜さんは2人分のお弁当箱を持っていそいそと何かの準備をしている。


「彼女さんのとこっすか〜?」


隣のクラスから遊びに来たブラックさんがからかう。


「彼女じゃない!」

「あ、そっか兎夜が通い妻っすね!」

「このー!!」


じゃれ合う2人を見ながらヒナちゃに視線を送る。


「雪白先輩は基本保健室にいるから兎夜くんが会いに行ってるの」


お弁当のサンドイッチを口に運びながら説明をしてくれた。


「おとちゃんも保健室行く?」

「おとち来たら雪白も喜ぶよ!」


普段からは絶対呼ばれない呼び名に違和感があるけどこの世界線の雪白ちゃんを見てみたい好奇心で頷く。


迷子になりそうな入り組んだ建物。

学校と言うより迷路。

2人に着いて行くと保健室の掛け看板が見えて安堵する。


「失礼しまーす」


兎夜さんはこなれ感を出してドアをノックして開ける。


「あ!とやちゃん」

「え?乙歌ちゃんもヒナちゃんもいるじゃん!」


雪白ちゃんとしろさんが居た。

雪白ちゃんは前の世界よりも大人っぽい見た目だ。

しろさんは短い髪に白い肌で細く長い手を小さく振る姿は…神々しかった。


「し、しろさ…あ、えっと…しろ先輩…?」


しろどもどろしながら名前を呼ぶと嬉しそうに笑う。


「ほらこれ…!」

「とやちゃんのお弁当いつも楽しみなの〜!ありがとね!」


お弁当を渡されて嘘か本当か分からない笑みで投げキスをする雪白ちゃんに対してまんざらでもない態度を取る兎夜さんは見ていて面白い。


「柑奈くんも一緒食べよ?」


隣にカーテンが掛かったベットに雪白ちゃんが声を掛けると元の世界線と見た目がほぼ同じだが、何故かオドオドしている柑奈さんが現れた。


「あ…えっと…」


不登校と聞いていたから会えるのはレアなのかなと思いながらみんなの顔を見る。


「おっと…君らねぇ。ここは部室じゃないぞ」


保健室のドアが開きパスタが入ってきた。


「たまたまですよ〜。パスタ先生ったら真面目〜」


雪白ちゃんはおちゃらけた雰囲気でパスタに絡む。

この世界線の雪白ちゃんはギャルっぽい。


「部長代理としてもだな…部室があるのに保健室を部室にするんじゃない」

「部長代理だからね!細かいことは部長によろ!」


ウインクと共にニカッと笑う雪白ちゃんは前の世界線の面影を感じる。


「で?その部長は?」


ため息混じりに保健室を見渡すパスタはやれやれと言わんばかりに柑奈さんのいるベッドの縁に座る。


「いつも通り…主役は遅れて登場するもんよ」


キラキラしたパーツでデコった携帯を覗きながら雪白ちゃんは笑う。


「いつも通り…ね」


それに乗っかるようにしろさんも口を膨らませて笑いを堪えている。


「これ先輩たちにしか分からないノリなんだよ」


兎夜さんは苦笑いでお弁当箱を開ける。


「そろそろ保健のサード先生に怒られても知らないからな」


パスタはそう言いながら兎夜さんのお弁当から卵焼きを摘み口に放り込む。


「ちょ?!パスタ先生?!!」

「賄賂ってことで」

「ならないですよ」

「にしても美味いな…」

「そりゃどうも」


日常を切り取った平和時間が流れていて心地良い。


みんなが学生になるとこうなるのかと少し楽しく思う。

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