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お尋ね者たちの晩餐会  作者: 灰兎
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アンチョビパスタ

「〜♪」


ご機嫌に聞いた事のない曲の鼻歌を歌うパスタくんはどこからか買ってきたパンを齧る。


「ぺぺくんの分はテーブルにあるよ」


そう言って鼻歌を歌いながら部屋を出ていった。


拘束されて動けないぺぺを横目に置かれたパンを眺めながら自分はお絵描きをする。


「おい。サード…これはどういう状況だ?」


名前を呼ばれてハッとする。


「どういう…って?」

「だから!!あの日アイツ(パスタ)を連れ帰ってきて!!今!俺はこうして動けなくなっている!!この状況だよ!!」


弱い犬ほどよく吠える。


殺すのは勿体無いので医者に連れて行き、

紫髪の男と取引をしてコイツらを治してもらった。

パスタは吹き飛ばした腕をくっ付けて、ぺぺは(はらわた)が出た腹を縫った。

鏡合と紫紺の夢だとか言った名前の能力だったはずだが、人の治療に使っている…

なんでもできる能力なのに勿体無いと思った。


「サードちゃん。紅茶作ったんだ。飲むよね?」


部屋から出て行ったパスタが部屋に戻ってきた。


「あれ?ぺぺくんご飯テーブルにあるって言ったよね?お腹すいてないの?」


間髪入れずに話しながらぺぺに近付き、開きかけた口を手で覆って話せなくする。


「ちゃんと食べなきゃ死んじゃうんだよ。お腹の傷痛むの?お風呂入るの嫌がるし、いい子にしててねって言ってもいい子にならないし…」


湯気が出ている紅茶をペペの顔に掛けて笑う。


「それじゃあ。テーブルの上にお薬も置いておくからね」


創造という能力は人の知識でどうにでもなる。

それを盾やら物を作る様に動くなどバカだ。

そう教えた。

パスタは頭が良い。

ぺぺの能力『契約召喚』を理解して使えるように身体の中に能力を創造した。

正味言ってしまえば能力を奪われたが正しく、反逆しないようにぺぺは壁に拘束されて1歩も動けない。


この状況でテーブルに置いて取らせないようにしているのは能力がちゃんと使えないのを試しているのだろう。

傍から見たらただ趣味が悪い。


「ねぇサードちゃん!助けてくれてありがとう!」


パスタは満面の笑みで私の腕にしがみつく。


「代償を押し付けられるっていいね!これで何も忘れないし…全部思い出したよ!全部サードちゃんのおかげ!特殊捜査課(あんなところ)なんかにいたらきっと分からなかった!」


懐かれた事が不思議だ…

とは言え実際にパスタは能力使用の代償で記憶が無くなっていたことは事実で…。


手術が終わり目を覚ましたパスタに物事を説明すると冷静に受け止め、代償を押し付けられるように学びだした。

その結果は人が変わったように大人びた振る舞い…いや、私の前では知っている以前のパスタだ。


「あとねぇ…有珠析さんの実験みたいに上手くいくか分からないけど、ぼくも実験してみたいんだ!…まぁ、同意なんかなくても勝手にするけど」


好奇心に溢れた子犬の様な口振りが急に大人びるので少し寒気がする。


「…好きにしたらいい」


私はフードを被って部屋を出た。


ここはパスタが創造した家だ。

前までは自分と同じ大きさ以上は創造出来なかったはずだが、代償を押し付けたことで全てが創造できるようになった。


代償の請負(うけおい)は全てぺぺだ。

先程から声をあげないのもパスタが何かしたからだろう。


私からすればうるさい駄犬が吠えなくて助かるが…

廊下に響く断末魔の助けを求める音は耳障りだ。


「ファースト。セカンド。エイス…これはいつか寝首を搔かれるかもしれない」


3人に連絡を取りながら理解の早いパスタに少し恐怖すら感じる。

確かに目を覚ました時のパスタは警戒していた。

私の提案を飲み込み、すんなり受け入れ…その上で懐くとは肝が据わってるにも程がある。


「サードちゃん!帰っちゃったかと思ったからうるさくしちゃった!」


先程の断末魔がなんだったのか考えたくもない。


「廊下に居たんだね!あのねあのね!地下室作っといたの役に立ちそうだよ!」


ドアを開けてニコニコと笑うパスタは返り血で服が汚れていた。


「パスタ…?」


ガラガラと音が立つ代車にソレを乗せていた。


「運ぶのに邪魔だし!ぼくの代償の器だよ!逃げられないようにしちゃった!」


手足は無くなり、辛うじて頭部は付いているが目は縫われている。

首には声帯を切った跡があり話せないことが目に見えてわかる。


「腕とか足はなんかに使えそうだから急速冷凍!コールドスリープってやつにしたんだぁ!細胞は生きてるはずだよ!あとねあとね!体内に永久機関を入れることでさっき入れた栄養があるから一生口から食べなくても生きていけるようにしたの!話せないし、動けないけどぼくの実験は大成功!これが生きた人形ってやつ!」


そう言って地下室にソレを置きに行った。


「…支配者には素晴らしくピッタリな人材じゃねぇか」

「セカンド…!」


いつの間にか傍に立っていたセカンドは笑いながら言う。


「サードは天才だな!」

「あんまり私をおちょくると痛い目見るよ?」


軽く殴り掛かるがいつもみたいに反撃して来ない。


「君は?」


セカンドが声をかける方を見ると怒りの表情をするパスタが立っていた。


「おーおー怖い怖い」


セカンドは手を上に挙げて軽くお時期をする。


「初めましてナイトくん。俺はセカンド。サードと同じー」


パスタは契約召喚をしていて話途中だったセカンドをクジラに丸呑みさせる。


「セカンド…!!」


声を上げるがパスタは私の隣に駆け寄った。


「これでもう大丈夫!サードちゃんは誰にもあげないよ!ぼくとずっと一緒にいるの!助けてくれたんだもん!次はぼくが君を助ける番だよ!怖かったね!」


純粋無垢が世界を犯す。

彼から見たら私は救ってくれた神でそれ以外は敵とでも言いたげで、代償があるから成り立っていた能力に恐怖する。


「だからね!…邪魔しないで」


鈍い銃声と共に様子を見に来ただけのファーストの血が舞う。


「ファー…スト…?」

「これで2人きりだね」


息がしにくく嗚咽する中、あの日ぺぺの様子を見に行く前にエイスが見せたカードを思い出す。


触手がカードの縁を彩り、赤色の背景に真っ黒なハートが描いてある。

エイスはカードを逆さまにして言っていた。

『虐殺と言う純粋無垢な恋心』


「ぼくを追って特殊捜査課(あいつら)とRabbit bakery(あいつら)が来るかもしれない…早いうちに2人きりの世界にしないとね」


そう言う彼は私に縋り付く。

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