ギルド④
バハムートの捕獲。
そのクエストを達成した、アレク。
クレア。マリア。ルリ。マリ。
その四人を引き連れ、アレクはギルド本部へと向かっていた。
その訳はーー
"「く、クエスト達成を確認しました」"
"「やったぜ。で、報酬はどこで受けとればいいんですか?」"
"「レベルの低いクエストでしたらわたしのギルドでお渡しできるのですが。れ、レベル90超えともなると、ギルド本部での受け渡しになっちゃいます。申し訳ございません」"
"「そうなんですね。なら、ギルド本部に行きましょうか」"
そんな会話があったからであった。
そして、数十分後。
街に到着したアレク一行は街の中央に存在する、国一のギルド。
本部ギルドの前でクエスト達成を報告したのであった。
「はい、これがバハムートです」
ズシンッ
「!?」
ギルド本部。
その入り口の前にバハムートを置き、アレクはギルドマスターに手のひらを差し出した。
「報酬をください。じゃないとこのバハムートを海にリバースしますよ」
「ほ、ほんとに捕獲したのか?」
「はい。見ての通り」
「……っ」
飄々とバハムートを指さす、アレク。
その姿にギルドマスターの男は息を飲む。
そしてこの男は、勇者の最弱認定を快く引き受けた張本人でもある。
だが、アレクはこの男をどうしようとも思ってなかった。
なぜなら勇者の手のひらでただ踊っていた人形に過ぎないのだから。
「わ、わかった。ちょっと待ってくれ」
慌ててギルドの中に引き下がる、男。
その背を見つめ、クレアは声を発した。
「どんな報酬が出てくるのかな?」
「えっ、クレアさんも分からないんですか?」
「は、はい」
「益々楽しみですね。もしたくさんお金がもらえたら、クレアさんのギルドに全額寄付します」
「そそそ、そんなこと申し訳ないですよ」
「いえいえ。その代わりと言ってはなんですが、クレアさんのギルドハウスを俺たちの活動拠点にさせてもらっても構いませんか? 宿屋だとなにかと不便で仕方ないんです。ははは」
「い、いえいえ。お金は結構ですのでご自由にお使いください」
そんなアレクとクレアの会話。
それに他の三人も興味を示す。
「ギルドハウス」
「宿屋より自由がききそう」
「わたくしは賛成ですわ。それがアレク様の御意思なのでしたら」
「よし、決まりだ。これからよろしくお願いしますね、クレアさん」
「こちらこそ。末永くよろしくお願いいたします」
五人で頷き。
ギルドマスターを待つ面々。
そして、ギルドマスターは帰ってきた。
本部ギルドの中から。勝ち誇った表情をたたえて。
「アレク殿。これが報酬です」
「は? なんだこれ」
渡された一枚の紙。
そこにはーー
"アレク、マリア、ルリ、マリ。この四人を名誉冒険家として無条件で本部ギルドへの登録を認める"
と、書かれていた。
「……」
無言になる、アレク。
「アレク殿は弱小ギルドには勿体無い。確認しましたら、既にギルド登録されていらっしゃる。ですので、その登録を削除しました。これで晴れて、わたくしのギルドにアレク殿をお迎えいたします。勿論、様々な恩恵と待遇をお約束いたします」
「そ、そんな」
泣きそうになる、クレア。
「それが一番の報酬です。本部ギルドに属せばアレク殿を"魔王の手先"と称する者は居なくなります。クレアのような下っ端ギルドマスターの元ではアレク殿は不釣り合い」
「……っ」
俯く、クレア。
そんなクレアを一瞥し、アレクは声を発した。
「あぁ、そうだな。レベル9999の俺には不釣り合いだ」
「ははは。よくわかっていらっしゃる。では、アレク殿ーー」
ビリッ
紙を破り捨て、アレクはギルドマスターの男の胸ぐらを掴む。
そして、耳元で呟いた。
「さっさと登録し直せ。さもないと、てめぇのギルドを弱小どころか更地にするぞ」
そのアレクの呟き。
それに男は顔面蒼白になる。
その肩に手を載せ、アレクは更に続けた。
「よし。わかったならはやく本当の報酬をもってこい」
「お、お、仰せのままに」
身体を震わせたまま、男はギルドの中に舞い戻っていく。
それを見送り、アレクはクレアに声をかけた。
「次はサラマンダーの討伐に出かけましょうか」
朗らかな笑顔をもって。
そんなアレクにクレアは仄かに頬を赤らめる。
そしてーー
「あ、アレクさん」
「はい」
「ありがとうございます。ほんとに」
クレアの心のこもった感謝。
それにアレクは、「こちらこそ」と優しく答え、ちいさく頷いたのであった。
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