表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/50

ギルド③

 その三人の姿。

 それにクレアは息を飲む。

 それは、その三人が勇者とパーティーを組んでいた面々だったからだ。


 曰く。


「クエスト? わ、わーい嬉しいな」


「ち、近頃退屈だったから楽しみ」


 天才魔法使いの2人組。

 赤と青のオッドアイ。赤と青の髪の毛がトレードマークのルリとマリ。


「わ、わたくしはどこまでもアレク様とご一緒ですわ。う、うふふふ」


 マリア。

 あらゆる回復魔法に精通せし、この世の奇跡とも称される聖女。


 そんな三人が額に汗滲ませ、アレクに付き従っている。


 その現実。

 それにクレアは、「あ、アレクさん。半端じゃないです」そう声を漏らし、改めてアレクの凄さを実感するのであった。


「よし、集まったな。じゃあ、早速行こう」


 三人の前に立ち、アレクは声を発する。


「まずは、そうだな。肩慣らしでバハムートの捕獲でも行ってみるか」


「バハムート?」


「う、うへぇ」


 怖気づく、ルリとマリ。


「バハムートといえばレベル90超え。わたくしたちでは足手まといになりますわ」


 戦々恐々とする、マリア。


 だが、アレクは動じない。


「捕獲は俺一人でやる。三人は全力でギルドマスターをお守りして欲しい」


「は、はい。どうぞよろしくお願いします」


 アレクの側。

 そこでクレアは申し訳なさそうに頭を下げる。


「それなら、できる」


「お、お任せ」


 安堵する、ルリとマリ。


「水しぶきの一滴も寄せつけませんわ」


 クレアに微笑み、マリアは頷いてみせる。


 そんな四人の様子。

 それをアレクは見届け、声を発した。


「クレアさん。バハムートが潜む海はどこですか?」


「それが、その。わからないんです」


 そのクレアをフォローする、マリア。


「バハムートの住処は深海。言うなれば、海全てがバハムートの庭ですわ」


 マリアの言葉。

 それに頷く、クレア。


「そ、そうなんです。だからその、クエストレベルも高いんです」


「なるほどなるほど。なら、海の水を退かせば楽勝だな」


「退かす? う、海の水をですか?」


「はい。やってやりますよ」


 誇らしげな、アレク。

 そして驚き戸惑う、クレア。


「で、できそう」


「レベル9999のアレク様なら、やってのけそう」


「できますわ、きっと」


「よし。行くぞ、海に。確か、そんなに離れてなかったよな。四人を持って跳ぶのは流石に怪我させちまうし、歩いていくか」


 こうして、アレク一行は海に向け出発したのであった。


 そして、数十分後。


「こう見ると海って広い」


 見晴らしのいい崖。

 その上にアレクたちは佇んでいた。

 潮風。

 それに黒髪を揺らしながら。


「このどこかにバハムートが居るんですね、クレアさん」


「は、はい」


 アレクの背。

 それを数歩後ろから、クレアは声を発する。

 それに頷き、アレクは声を響かせた。


「よし。マリア、ルリ、マリ。クレアさんを水しぶきからお守りしてくれ。勿論、自分たちの身にも気を付けてな」


 それに呼応し、三人は魔力全出力で防御結界を展開。

 クレアを含め自分たちの身を守る。

 皆、その顔にはレベル9999の力に対する大粒の汗が滲んでいた。


 同時に大きく息を吸い込む、アレク。


 そして息を吐くのと合わせーー


「少し強くいくぞ」


 そう呟き、少しだけ力を込め拳を前に突き出した。


 刹那。


 ズガガガァンッ!!


 放たれた、途方もない衝撃波。


 それが、文字通り。


 海の水。

 それを水平線まで"後退"させた。


「ふぅ。これで探しやすくなりましたね」


 剥き出しになった海底。

 それを見下ろし、アレクは満足気に頷く。


「こ、これがレベル9999の。お、お力。ななな、なんですね」


 想像を遥かに超えたレベル9999の力。

 それにクレアは羨望とちょっぴりの畏怖を覚える。


 そんなクレアを仰ぎ見、グッドポーズを向けるアレク。

 爽やかな笑顔。

 それをたたえながら。


「クレアさん。もう少しでクエスト達成です」


「へ?」


 目を丸くする、クレア。


「レベル9999になったのは拳だけじゃなく。ここもレベル9999なんで」


 自分の目。

 それを指さし、アレクは前に向き直る。


 そしてーー


「マリア。バハムートって、どんなカタチなんだ?」


 そうマリアに問いかけ。

 視力が9999になった両目。

 それをもって、海底を見渡すアレク。


巨大龍魚(バハムート)。ドラゴンの翼に似た巨大なヒレ。それをもった規格外な大きさのお魚ですわ」


 響く、マリアの声。

 そしてその余韻が消え去る前に、アレクは声を発した。


「見つけた。それじゃ、ちょっと行ってくる」


 後ろ手。

 それを軽く振り、アレクは例のごとく跳躍。

 そして、秒の速さをもって標的へと向かっていった。


 残された、四人の女性陣。

 お互いに顔を見合わせ、「すごすぎて言葉がでない」という思いを共有し、頷き合うことしかできなかった。


 ~~~


「よう、バハムート」


「!?」


 突如として水が退き。

 眼前に現れた、男。

 その姿に横たわったバハムートは驚き戸惑う。


「まぁ、なんだ。水も退いたことだし俺と一緒にこないか?」


「ーーッ」


 咆哮をあげ、バハムートはアレクにのしかかろうとした。

 己の巨大な身体。

 それを跳ね上げて。


 だが、アレクはそれを受け止めた。


 ズシンッ


「よっと」


 片腕一本で。

 一滴の汗も流すこともなく。


 懸命に再び跳ね上がろうとする、バハムート。

 しかし、アレクの声とオーラがそれを遮った。


「次は拳で受け止めるぞ」


「……っ」


 バハムートにアレクの言葉は理解できない。

 だが、バハムートは感じた。

 抗いようのない力の差。

 それを、本能をもって。


 ピタリと動きを止め、バハムートはアレクへの抵抗を諦めた。

 それを感じ、アレクもまたオーラを抑える。


 そしてーー


「よし、戻るか」


 そう声を発し、アレクはバハムートを肩に担ぐ。

 軽々と。表情ひとつ変えることなく。


 めきっ。


 屈み、アレクは両足に力を込める。

 そして、跳躍。


 目的地は遥か彼方の四人の待つ崖上。


 そこに向け、アレクは行きと同じ秒の速さで戻っていった。


「クエスト達成。だな」


 そんな呟き。

 それを嬉しそうにこぼしながら。


 ~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ