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変身④

「ねぇ、みんなー見て見て」


「すっごく可愛い小鳥さんだよ」


エリスとアリス。

その二人の可愛い声。

それと共に、小鳥は皆にお披露目される。


ぱたぱたと。


二人の頭上を飛び回る、メイリン。


その様。


それを--


「……っ」


感動し見つめる、クレアに抱っこされたソシア。


頬を赤く染め


「ことりさん。ことりさん」


そうたどたどしく声をこぼし、ソシアはゆっくりと手を伸ばす。

そのソシアの手のひら。


そこに、メイリンはとまる。


そして。


"「仕方ないわね。少し、触れ合っておきましょうか。女性、子どもには優しく。男性には敬意をもって接する。それがわたしたちの天命執行のポリシーだもの」"


そう胸中で呟き、ソシアの手のひらの上で毛繕いをするメイリン。


その小鳥。

それをゆっくりと自分の側に近づけ、ソシアは指で撫でる。


小さな人差し指で--


幼く優しい笑顔。

それをその顔にたたえながら。


そんなソシアの姿。

薄い痣。

それが頬やおでこに残され、目の下にクマの滲む幼女の姿。


それに、メイリンは悟る。


"「痛々しいわね。全く、こんな小さな娘をぶつなんてどこの輩なの? 天命執行の名の下に成敗してやろうかしら」"


湧き上がる、怒り。

しかしそれを堪え、ソシアに身を預けるメイリン。


その一人と一匹の様。

それを、クレアは微笑ましく見守る。


「ふふふ。小鳥さん、ソシアさんのことがお気に召したようですね」


その言葉。

それに、小鳥は応えた。


「ぴよぴよ(そ、そういうのじゃないわよ。か、勘違いしないで)」


照れ臭そうに、ぱたぱたと翼をばたつかせて。


そんな和やかな光景。

それを、エリスとアリスも笑顔で見つめる。


「お姉ちゃん。わたし、とっても心が温かくなっちゃった」


「わたしもわたしも」


二人揃って微笑みあう、エリスとアリス。

そこに、割り込む声。


「仲間っ。仲間だ!! わたしと同じ獣!!」


その声の主。

それは、小鳥を見つめ喜ぶ人狼少女。


そしてその両脇。

そこには、ルリとマリも瞳を輝かせ小鳥を見つめていた。


"「これは、驚き。天才魔法使いのルリさんとマリさん。それに……人狼さんまで。なるほど、これは確かに一筋縄ではいきそうになりませんわね」"


頷き、面々を見つめるメイリン。


その仕草。

それに益々、人狼少女は嬉しくなる。


「どうしたの? 獣さん? お腹減ったの?」


駆け寄り。


「くんくん。獣さんの割にいい臭いがするね、あなた。まるで、香水をかけた女の人みたい」


小鳥。

その臭いをかぎ、人狼少女は微笑む。


それに、メイリンは焦る。


「ぴっよっ。ぴよ(す、少し。危ないですわね)」


人狼少女の鼻先。

そこをつつき、そっぽを向くメイリン。


それに人狼少女は、更に嬉しそうになってしまう。


「照れてるの? 小鳥さん」


にこにことし、ソシアと同じように人差し指で小鳥の背を撫でる人狼少女。


そして更に続ける。


「ほんとにいい匂い。ずっと嗅いでても飽きない」


「……っ」


「ねぇ、小鳥さん。あなたのお名前は?」


獣の言葉。

それが理解できる、人狼少女。


微笑み。

自らの獣耳。

それをぴくぴくとさせながら、人狼少女は首を傾げた。


だが、メイリンは応えない。

いや、応えるはずがない。


"「こ、ここはひとまず。退散といきましょう」"


そう結論し、メイリンはソシアの手のひらから飛び立つ。

胸中。

そこで冷や汗をかきながら。


その姿。

それに、ソシアは手を振った。


「ばいばい、ことりさん」


微笑む、ソシア。

その微笑み。

それにメイリンは心苦しくなる。


しかし、本来の自分のするべきことを蔑ろにするわけにはいかない。


メイリンのするべきこと。


それは--


"「アレク……天命執行の長にしてわたしのクリス様を完膚なきまでに打ち負かした男。その男にわたしの力がどこまで通じるのか。それをこの身もって知らなければなりません」"


アレクという名の男。

その最強をこの身で感じること。


だとすれば、はやく目的の人物を探さなければならない。


「あっ、小鳥さん」


ルリ。


「どこに行っちゃうの?」


マリ。


「追いかけっこ? なら、負けないよ」


そして、人狼少女。


天井付近。

そこで旋回し、一気に速度をあげるメイリン。

そして七人の視線から外れ、メイリンはカウンターの奥へと直進。


”「さて、と。次のカタチに変わりましょうか」”


視線の先。

そこに見える、戸棚。


その陰へと身をくらませ、千変万化の意思を表明しようとするメイリン。


"「小鼠。それとも、蜥蜴。ふふふ、一気にドラゴンに変身してみるのも面白そうですわね」"


刹那。


「ん? どうした、どうした。なんだか騒がしいな」


そんな声と共に、アレクが姿を現す。


"「……っ!? な、なに? このオーラ」"


そのアレクのオーラ。

それに全身の毛を逆立たせ、怯える小鳥。


そんなメイリンの気配。

それに気づかず、アレクは続けた。


「お。ソシアにクレアさん。それに、エリスとアリスにルリ、マリ。後は--」


「くうーん」


アレクの姿。

それに服従の姿勢をとる、人狼少女。


それを見つめ、アレクは一言。


「そういえば。人狼さんに名前。なかったですよね」


「名前。ですか? うーっと、ポチ子なんてどうでしょう?」


アレクの言葉。

それに笑顔で応え、人狼少女を見つめるクレア。


その嬉しそうなクレアの眼差し。

それを受け、人狼少女はクレアに抱きつく。


ぎゅっ。


優しく。

頬を赤らめて。


「ぐるるる。クレアっ!! もっとちゃんと考えて!!」


「すすす。すみません!!」


「ぽち子。ぽち子。かわいい」


焦るクレア。

それとは対照的に、楽しそうに笑うソシア。

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