変身①
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クリスとサーシャ。
その二人との激闘という名の親交。
それを深め、クレアのギルドはますます注目度があがっていった。
しかし、それを面白く思わない者たちがいるのもまた確か。
「クリス様。どうしたの? そんなあられもない姿になって。サーシャもずっとにやにやして……もしかして、負けちゃったの?」
天命執行。
そのメンバーの一人である#千変万化__メイリン__#は、クリスとサーシャに声をかける。
場所は、城内の一室。
天命執行に割り当てられた豪奢な部屋だった。
その部屋の窓際。
そこにおすわりし、猫に変身したメイリンは声をあげる。
三毛猫。
と言われる猫種族。
その可愛い姿に、クリスは微笑む。
そして。
「負けたものは仕方ないだろ。それにしても強かったな、あのアレクという男は」
アレクの姿。
それを思い出し、満足げに頷くクリス。
「あれが世界の上限を超えた者。はっはっはっ。思い出しただけでも震えが止まらないぞ」
そんなクリスに、サーシャも続く。
「メイリン。貴女も行ってみれば? 千変万化。どんなモノにでも変身できる貴女なら……もって数秒だと思うけど?」
その二人の言葉。
それにメイリンは、「にゃー」と下手くそな鳴き声を発し、毛繕いをする。
そして、キッと可愛く眼光鋭くし--
「クリス様はいい。だけど、サーシャ。貴女だけは許されない」
サーシャだけを睨む、メイリン。
「クリス様は美しい。だけど、サーシャ。貴女はそうじゃない。だから、許すわけにはいかない。そのわたしを見下した発言。わたしと同じ歳の癖して--ぶつぶつ」
理不尽極まりない言葉の数々。
それに、サーシャは--
「変身するならもっと毛並みのいい猫に変身したら? あっ、もしかして野良猫に変身したの?」
そう返し、メイリンの元へと歩み寄る。
そして。
「まっでも。わたしは野良猫も好きだから」
そう呟き、メイリンの眼前に佇むサーシャ。
そのサーシャの姿。
それを見上げ、メイリンはなおも煽る。
「にゃー? にゃぐる?(なにその目? わたしに勝てるとでも?)」
刹那。
ぎゅっ。
三毛猫。
その身体を抱きしめ。
「よくもまぁ、そんな姿で煽ってくれたわね」
そう呟き、慣れた手つきでくすぐるサーシャ。
それに、メイリンは焦る。
「やめっ。さ、サーシャ。やめなさい!!」
こちょこちょ。
「にゃっ!?」
こちょこちょ。
「!?!?」
こちょこちょ。
「戻るッ、戻るから!! もう許してぇ!!」
叫び。
メイリンは元の姿に戻る。
黒髪ショートカットの少女。
それがメイリンだった。
そして頬を紅潮させ、自分を抱きしめたままのサーシャを睨む。
「は、はやく離れなさい。顔、近いわよ」
だが、そこはサーシャ。
こちょこちょ。
「ひぃっ!? は、話がちが--ッ」
「やっぱり人間状態のほうが感度がいいわね、メイリン。ふふふ」
こちょこちょ。
「いやぁぁ!!」
押し倒され、くすぐり続けられるメイリン。
響く、泣きそうな笑い。
その光景。
それを見据え、クリスは頷く。
そして。
"「千変万化。そうだな。次はのこのお嬢さんを行かせてみせて。あの男の強さを共有することも……いいかも知れないな」"
そう胸中で呟き、メイリンの派遣を決めるクリスであった。
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