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レベル9999③

「ば、馬鹿な。こッ、こんな馬鹿げたことがあってたまるか!!」


血相をかえ吠える、ゴウメイ。

そして、鼻息を荒くしゴウメイは更に吠えた。


「カイトの仇は俺がとってやるッ、来いよッ、アレク!!」


「なら、遠慮なくいかせてもらうぞ」


こきり。

拳を鳴らし、アレク(レベル9999)はゴウメイへと意識を向ける。


ゴウメイのレベルは87。

マリアのレベルは85。

ルリ、マリのレベルは共に82。


到底、アレクのレベル9999には遠く及ばない。


「ご、ゴウメイ!! そんなことよりカイトを探して!! き、きっとまだどこかに居るはずよ!!」


粉になった、カイト。

それをかきあつめ、マリアは「はぁはぁ」と汗を滴らせる。


「そ、そうだ。ルリ、マリ。貴女たち、ふ、復元魔法。使えたわよね?」


既にマリアは正気ではない。

目の焦点は合っておらず、いつもの冷静さは影も形もない。


そんなマリアに応える、ルリとマリ。


「む、むりむり」


「か、カイトの髪の毛の一本もない」


「こ、粉があるじゃない。ほ、ほら、ここにーー」


マリアが懸命にかきあつめた、カイトだったモノの粉。

だがそれも、虚しく風に吹き飛ばされてしまう。


「あぁ、カイト。カイトぉ」


おろおろする、マリア。


それを横目に、アレクの第二戦がはじまる。


「ゴウメイ」


「……っ」


「どうした。ほら、カイトの仇をうつんだろ?」


じりじりと後ずさる、ゴウメイ。

その姿に、アレクは「目を瞑ってやるから、こいよ」そう、声をかけ瞼を閉じる。


レベル87。

それを相手にするのに、視界等不要。


そんなアレクの姿。

それに、ゴウメイは三度吠える。


「舐めやがってッ、舐めやがってッ、舐めやがってぇ!!」


ゴウメイの疾走と、叫び。

それを聞き流しながら、アレクは「蹴りも試してみるか」と呟き、足に力を込めた。


瞬間。


大量の亀裂。

それがアレクを中心にめきっと広がる。


だが、ゴウメイは止まらない。


「うおぉぉぉ!!」


飛びあがり、ゴウメイは全身全霊を込めた拳をアレクに叩き込もうとする。


しかしーー


「だめだ。レベル9999だと瞼を閉じても敵の攻撃がはっきり見えちまう」


そんなアレクの「しまった」という風な声と共に、アレクは蹴りを反射的に放ってしまう。


刹那。


「おごぉ!!」


蹴りの衝撃。

それがゴウメイの身を捉え、カイトと同じ運命をゴウメイにたどらせてしまった。


そして蹴りの衝撃は天を割り。

一閃の光となって、世界全体を眩く照らす。


パラパラと降り注ぐゴウメイだったモノの粉末。

それをその身に浴び、アレクは圧倒的強者のオーラを醸す。


「後、三人」


マリア。

ルリ。

マリ。


その三人を仰ぎ見、「魔法、うっていいぞ。今使える最強の魔法をお願いする」そう声を発するアレク。

そして、アレクは肩に降り注ぐゴウメイの粉末を手で払った。

パッパッと。

まるで埃を落とすかのように。


「いッ、いやぁ!!」


半狂乱になり、マリアは逃走を図る。

だが、アレクはマリアを逃がさない。


「よっと」


軽く跳躍する、アレク。


そして。


「ひぃっ」


「どこに行くんだ? マリア」


アレクは一瞬にしてマリアの行手に現れる。

そして震えるマリアの肩に手を載せ、声をかけた。


「俺もそこまで鬼じゃない。どうだ、マリア。俺の回復要員として手を組まないか? あんたのその回復力は今後、役に立つ」


回復魔法。

それに疎いアレク。

なので、アレクはマリアをこちらに引きこみたいと思っていた。


そのアレクの提案。

それに、マリアは光の如き速さで頷く。


「な、なるなる。なります。ならせてください」


「これからよろしく」


「は、はい。アレク。じゃなくてアレク様。マリアは貴方様の手となり足となり働かせていただきます」


差し出されたアレクの手のひら。

それを握り、マリアはアレクの仲間になることを誓った。



「まっ。なにはともあれ、後二人だな」


結果良ければ全て良し。

そう納得し、アレクは満足気に頷く。


「さて、と」


軽い調子で、アレクはマリアから意識を逸らす。

その表情は実に清々しい。


怯え、震え。

涙目になっている、ルリとマリ。


そんな二人に向け、アレクは声を投げかけた。


「見ての通り。ルリとマリ、お前たちはどうする? 怯えているお前ら二人に力を行使することは流石に良心が傷む」


敵意のない存在。

それに対し力を躊躇いなく行使するほど、アレクの良心は失われてはいない。


レベル9999。

その力は人知どころか全ての理を超越している。

躊躇いなく力を振るえば、それこそカイトと同じ。


ルリとマリは顔を見合わせ、頷き合う。


そしてーー


「あ、アレク。そ、そのごめんなさい」


「こ、これまでのことは謝る」


土下座をし、ルリとマリは地に額をこすりつける。


「わ、わたしたちもアレクとパーティーを組みたい」


「う、うん。なんでもする。だから、その。お願い」


そんな二人の懸命な手のひら返し。

アレクはそれを見つめ、頷く。


そして、声を発した。


「よし、これからよろしくな」


「ご慈悲を」


「ありがとうございます」


呆気なくアレクに許された二人。

その二人に向けて、アレクは更に言葉を続けた。


「ルリ、マリ。お前らは魔法のエキスパート。その辺りのフォローは頼んだぞ」


そして天に向け手のひらをかざす、アレク。

アレクが唯一使える魔法。

それは、火球(ファイアーボール)


「この程度の魔法しか使えねぇけど、な」


呟き、アレクは魔法を放つ。


火球(ファイアーボール)(レベル9999)。


そう、内心で詠唱しながら。


瞬間。


天に向かって打ち上がる巨大なファイアーボール。

それは太陽顔負けの大きさだった。


それに三人は目を点にしーー


レベル9999。


アレクの恐ろしさを、改めてその身に刻んだのであった。

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