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割り振り①

そして。


「ご、ごめんなさい」


「ももも。もう、粋がったりしません」


「だ、だから。そのぉ」


「あなたを最強のお兄ちゃんと。お、お呼びしてもいいですか?」


 先程の自信たっぷりな姿。

 それはもう一欠片もない。

 あるのは、親に叱られた時のような幼い涙目とか弱い二人の少女の姿だけ。


 そんな二人に、アレクは応える。


「お兄ちゃん? この俺が?」


 驚き、エリスとアリスを交互に見つめるアレク。

 そのアレクに二人は思いを語る。


「わ、わたしたち。ずっと二人だったんだ。孤児院で育ったから」


「うん。だから。その、ずっとお兄ちゃんに憧れていたんだ。お母さんもお父さんも。物心がついた時から側に居なかったし」


 正座をし、二人はアレクに潤んだ瞳を向ける。


 その二人の眼差し。

 それにアレクは、ちいさく頷く。


 そして。


「そうか。なら、一緒にくるか? 俺は少女の涙にめっぽう弱いからな」


 そう声を発し、二人の頭を撫でるアレク。


 その優しい手つき。

 それにエリスとアリスは、アレクに対し"お兄ちゃん"を感じるのであった。


 ~~~


 エリスとアリス。

 その二人を仲間にし、はや数日。

 案の定。ギルドハウスでは、例の如く明るい口論が繰り広げられていた。


 事の発端。

 それはーー


 "「そうだ。ギルドメンバーも増えてきたことですし、部屋の割り振りでもしませんか?」"


 そんなクレアの何気無い一言だった。


 ~~~


「わたしはね。そろそろこの物置にも飽きてきたわけよ」


 自分の宝箱。

 その蓋の上で仁王立ちをし、偉そうな言葉遣いをするパンドラ。


「わたしだってね、人並みの生活がしたいわけ。こんな埃っぽい場所じゃなくて。もっとこう。綺麗で広い場所で宝箱ライフを満喫したいわけよ。わかる? このわたしの気持ち」


 響く、パンドラの口上。

 それを三角座りをしながら、聞く人狼少女。

 そしてその両脇には元勇者パーティーのルリとマリも胡座をかいて座っていた。


 ぷにぷにと。


 人狼少女のほっぺたをつつきーー


「耳だけじゃなく」


「ここも柔らかい」


 そんなことを呟きながら。


 その、座する三人の少女。

 それにパンドラは更に言葉を投げかける。


「そこでだ、諸君。このわたしのことが可哀想だと思うのなら、協力してほしい」


 口調を変え、腕を組むパンドラ。

 その表情は実に誇らしげ。


 だが。


「がるるる。パンドラ、偉そう。気に食わない」


 パンドラの態度。

 それに人狼少女は、可愛く怒る。

 ふるふるとその身を震わせ、三角座りからお座りの格好に体勢を変更して。


「パンドラ。降りてこい。ぐるるる。許さない」


「そうだ。降りてこい」


「そうだ。そうだ。降りてこい」


「「「ぺろぺろしてやる」」」」


 なぜか怒り浸透の三人。

 その三人に、パンドラもまた逆切れ。


「なによッ、あなたたち!! このわたしに協力できないってわけ!? あーっ、そうですか!! あーっ、あーっ。そうですかそうですか!!」


 しかし、三人もまた退かない。


「ぺろぺろさせろ!!」


「それで協力してやる!!」


「わかったならはやく降りてこい!!」


 立ち上がり、興奮する三人。

 だがパンドラは居直り、開き直る。


「タダで舐められるモノと思ったら大間違いよッ、今までよくもタダで舐めてくれたわね!! これからはそれ相応の対価ってやつを払ってもらおうかしら!!」


 ふんぞり返る、パンドラ。

 だが、次の瞬間。


 ガシッ


「!?」


 パンドラの両足。

 それを左右から掴む、ルリとマリ。


 そして。


「降りろ」


「そろそろ3時のおやつの時間」


 そんな声を発し、無理やりパンドラを引き摺り下ろそうとする二人。


 それに焦る、パンドラ。


「おおおッ、おやつの時間!? なにそれ!! わたしに関係ないでしょッ、そんなの!!」


 叫び、パンドラは必死に踏ん張る。

 しかし、その抵抗も長くは続かない。

ずるっ


「ひぃぃぃ」


 宝箱の上。

 そこから引き摺り下ろされ、三人に取り囲まれるパンドラ。


 そして、人狼少女はパンドラを見下ろし一言。


「今日のおやつ。それはパンドラ味の飴」


 ぺろり。


 舌舐めずり。

 それを指し示したようにする、三人。

 その眼光。

 それはまるで、抵抗した獲物を取り押さえた狩人そのもの。


「おおお。落ち着きなさいッ、あなたたち!! わ

 、わたしはただ。へへへ。部屋割りのことを話し合いたかっただけなの!! え、偉そうにしたことは謝るわ!! だからーー」


 許して。


 そう言い終える前に、人狼少女はパンドラの上に跨る。


 そして。


「まずは、ちゅーから」


 そう呟き、先日のように唇をパンドラへと近づけていく人狼少女。


 だが、その時。


 ガチャッ


「おーい、お前ら。クレアさんが部屋割りを決めてくれたから降りてこい」


 そんな声と共に、アレクが姿を現した。


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