表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/50

装備召喚③

 その二人の姿。

 それをアレクは、レベル9999の瞳をもって見定める。


 剣と盾の召喚。

 そんな言葉が意味することは、即ち。


「なるほどな。そういうことか」


 呟き、アレクは頷く。


 二人の装備しているモノ。

 それは紛れもなく伝説に語られる剣と盾。

 先ほどギルドハウスを揺らした原因。

 それも、あの二人が身につけている装備によるものだろう。


 納得する、アレク。


 そしてーー


 二人に合わせるように、アレクもまた歩みを進める。

 それに呼応し、街もまたちいさく揺れる。

 それはまるで、街全体がアレクの一歩に怯えているかのようでもあった。


 それに、エリスとアリスは気づく。


「あれ? 今、少し揺れたよね」


「うん。ゆれたゆれた」


「地震かな?」


「かな?」


 足を止め、問いかけあう二人。


「でも、この程度の揺れならわたしたちでも起こせるよね。お姉ちゃん」


「うん。楽勝楽勝」


 だがそこで。

 そんな二人の小生意気な余裕。

 それは木っ端微塵に吹き飛ばされた。


 めきっ


「「!?」」


 自分たちの足下。

 そこに走る地割れ。

 そして響く、圧倒的強者の声。


「お前らが剣と盾なら。俺は、拳〈けん〉と殺陣〈たて〉だ」


 めきっ。

 更に大きく広がる亀裂。

 その亀裂の発生源。

 それは紛れもなく、レベル9999のアレクその者だった。


「お、お姉ちゃん。あああ。あいつ、ヤバい」


「う、うん。ででで。でも。わたしたちが負けるはずなんてない」


 アレクの凄み。

 それにすっかり気圧され、怖気づくエリスとアリス。


 だが、二人は逃げない。


「そそそっ。剣、召喚〈ソードサモン〉!!」


「しししっ。盾、召喚〈シールドサモン〉!!」


 アイギスの盾。

 聖剣〈エクスカリバー〉。


 その伝説を召喚し、二人はアレクに相対する。

 その身。

 それを生まれたての子馬のように震わせながら。


「準備はできたか?」


 二人の視線の先。

 そこで声をあげ、屈伸をするアレク。


「殺陣だからな。一応、全力で手加減はしてやる」


 禁忌の力。

 その人々が化け物と恐れた存在。

 それに対し、「手加減はしてやる」と言い放つ更なる化け物。


「おっ、お姉ちゃん!!」


「うッ、うん!!」


 二人は全力で勇気を振り絞りーー


「こッ、この!! 化け物め!!」


「せッ、成敗してやる!!」


 そう声を張り上げ、エリスとアリスは装備の力を発揮。

 相手を石化し、そして聖なる光で葬り去る。


 そして眩い光を発し、二人がいつもの如く手を握り合った瞬間。


「街に被害がでちまうだろ。そんなもんを振り回したら」


 そんな声と共に。


 パリンッ


「「!!」」


 アイギスの盾と、聖剣〈エクスカリバー〉。

 その二つの伝説。

 それが瞬間移動の如く眼前に現れたアレクのオーラだけで、粉々に砕け散った。


 そして、その後に続くアレクの言葉。


「レベル9999ともなれば。装備なんてあってもなくても一緒だぞ」


装備召喚?

 そんな自信に溢れたアレクの声。

 しかし、エリスとアリスはなおも抵抗を試みた。


「ま、まだわたしたちは負けてない。そうだよね? おねえちゃん」


「そ、そうだよ。まだわたしたちは、負けてない」


 オーラで砕け散った伝説の装備。

 その現実は明らかに、二人が劣勢であることを示している。


 だが二人は、再び力を発揮。


「剣召喚!!」


「盾召喚!!」


 そして眩い光に包まれーー


 刹那。


 ブォンッ


 アレクの拳。


 それが前に突き出され、凄まじい突風が二人の間を吹き抜ける。

 それと同時に、二人はその場にへたり込んでしまう。


「お、おねえちゃん」


「……っ」


 互いを抱きしめ、生まれたての子馬のようにその身を震わせながら。


 そんな二人にアレクは声をかける。


「中々。便利な力だな」


 しゃがみ、二人に目線を合わせるアレク。

 その表情。

 それは、遥か高見から下々を見下ろす者のソレだった。


「その力は剣と盾ならどんなものでも召喚できるのか?」


 震えながら、頷く二人。

 その二人に、アレクは微笑む。


「今まで色んな力と闘ってきたが……お前らみたいな召喚系は初めてだ。この分だと、装備以外の召喚系の力持ちも現れそうだな」


 その言葉から滲む、余裕。

 それはまさしくレベル9999そのもの。


 そんなアレクの姿。

 それにエリスとアリスは、固唾を飲み応える。


「そ、その。あなたのお力はなんですか?」


「わたしたちの装備召喚。そ、それが全く通用しないなんて」


「俺の力? それはだなーー」


 二人の問いかけ。

 アレクはそれに、隠すことなく返答する。


「どんなモノでもレベル9999にする。勿論、今の俺のレベルも9999だぞ」


「れれれ。レベル9999?」


「お、おねえちゃん。わわわ。わたしたちのレベルいくつだっけ?」


 顔面蒼白になる、二人。


「わ、わたしのレベルは8で。あああ。貴女のレベルは6」


「そ、そうだよね。だったらはじめからーー」


 勝てるわけがない。

 いや、土俵にすら上がらない。


 土下座の姿勢。

 それを揃ってとる、エリスとアリス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ