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装備召喚①

 ~~~



「一足。遅かった」


「そうだね、お姉ちゃん」


 幼い姉妹

 そんなまだあどけなさが残る二人。

 その二人は、盗賊団のアジトがあった場所。

 そこに佇んでいた。


「それにしても、跡形もなくなっているなんて。どんな人がクエストを受けたんだろ?」


 目の前の光景。

 それに感嘆し、少女〈エリス〉はちいさく笑う。


「すごいな。わたしたち以外にもこんなことができる人が居るなんて」


「すごい。わたしたちでさえ、ここまではできない」


 二人は頬を紅潮させ、興奮。

 その様は見た目相応の幼い反応だった。


「会ってみたいな」


「うん。会ってみたい」


 エリスとその姉〈アリス〉は同時に頷く。


「一体どんな人なんだろうね、お姉ちゃん」


「きっと。すごく強い人だよ」


「だね。ここまでのことをできる人だもん」


「もし、会えることができたらお兄ちゃんって呼びたいな。えへへへ」


 そんな二人の平和な雰囲気。

 しかしそれを打ち砕くは、周囲に現れた男たちの声だった。


「こんなところでなにやってんだ?」


「へへへ。こりゃ、上玉だ。奴隷として売り払ったら高く売れるぜ」


 盗賊団の残党。

 皆その手には武器を握り、そしてその表情は獲物を見つけた狩人のように興奮している。


「アジトがなくなっちまった以上。食い扶持は自分たちで稼がねぇといけねぇ。っつうわけで、大人しく俺たちに拐われろ」


「抵抗しなけりゃ痛くはしねぇ。まぁ、だが。少しは遊ばしてもらうがな」


 エリスとアリスの姿。

 それに舌舐めずりをし、武器である短刀を構える男たち。


 その数、およそ数十人。

 だが、エリスとアリスは動じない。


 それどころか。


「わぁーたいへんだね、お姉ちゃん」


 エリスは微笑み。


「大変。大変」


 アリスもまた、微笑む。


 そんな二人の余裕。

 それに男たちも笑い、そして。


「はははッ、おままごとでもしてるつもりか!? クソ餓鬼共!!」


「傷ものにしてやるぜ!! 多少値が下がっちまうが……んなことはどうでもいい!!」


「しつけはきっちりしてやらねぇとな!!」


 叫びと共に、男たちはエリスとアリスに向け疾走。


 四方八方から。

 一気加勢に、短刀を振り上げて。


 瞬間。


 エリスはアリスの手を。

 アリスはエリスの手を。


 それぞれ握りしめ、力を発動。


「盾召喚〈シールドサモン〉!!」


「剣召喚〈ソードサモン〉!!」


 幼い叫び。


 それが響きーー


「な…っに」


「ど、どうなってんだ?」


 男たちは勢いを無くし、その場で立ち尽くす。


 金色の光と銀色の光。

 それに包まれ、召喚されるは盾と剣。


 曰く。 

 それは禁忌の力ーー装備召喚。


「これがわたしたちに目覚めた力。どう? すごいでしょ?」


 エリスの手には伝説の盾〈アイギス〉が装備され。


「装備召喚。どんな装備でも、わたしたちは召喚することができる」


 アリスの手には聖剣〈エクスカリバー〉が装備されていた。


 後ずさる、男たち。


「ば、化け物め」


「う、うわぁぁぁ!!」


 叫び、慌てて逃げて行く盗賊の残党。

 それに向け、エリスは楽しそうにアイギスの盾を向ける。


 刹那。


「あがっ」


「ひ…ぃっ」


 一瞬にして、男たちは石化。

 そして物言わぬ石像と化してしまう。


 その石像たちに向け、アリスは容赦なく剣を振るう。


 聖剣〈エクスカリバー〉。


 その一振りはーー


「ばいばい。少しは楽しかったよ」


 天をも割る。


 圧倒的な閃光。

 それに包まれ、石像は粉々に粉砕。

 そして後に残ったのは広範囲に抉れた地面だけだった。


 その光景。

 それを見つめ、二人は装備を解除した。


「いこっか、お姉ちゃん。まだ見ぬ、お兄ちゃんを探す為に」


「うん。はやく会いたいな、お兄ちゃんに」


 装備召喚。

 その禁忌の力持ちの二人は、今まさにその一歩を踏み出したのであった。


 ~~~


 ギルドハウス。

 そこに、声が響く。


「お手。お手よお手」


「くうーん」


 ぺろぺろ


「い、いきなり舐めるなぁ」


「だってパンドラ。お手って言った」


「どどど。どうしてお手がぺろぺろになるのよ!? あ、あんたの中じゃぺろぺろがお手になっちゃうの?」


「うん、そうみたい」


「そうみたいって。はぁ……じゃ、ぺろぺろって言えばなにをしてくれるの?」


「お手をしてやるぞ」


 ドヤ顔をし、獣耳をぴくぴくさせる人狼少女。


「だからパンドラ。ぺろぺろって言ってみて」


「ぺ、ぺろぺろしなさい。ぺろぺろよぺろぺろ」


「パンドラぁ、好き」


 ぺろぺろ。

 ぺろぺろ。


「ひぃっ。どうしてそうなるのぉ」


「だってパンドラ。ぺろぺろって言った」


「あ、あんたねぇ。自分が数秒前に言ったこと覚えてる?」


「くうーん? 忘れた」


 とぼけ、首を傾げる人狼少女。

 そしてそれに呆れるパンドラ。


 そんな見慣れた光景。

 それを微笑ましく、アレクたちは見つめていた。


「そんなにうまいのか? パンドラは」


 人狼少女に問いかける、アレク。

 その眼差し。

 それは子どもの遊びを見守るように優しい。

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