ギルド潰し④
そのクロエの言葉。
それをアレクは冷静に受け止める。
「そうか。もう中に入っちまったのか」
ギルドハウス。
その建物を仰ぎ見る、アレク。
だがその表情に焦りはない。
ぎりっ。
「はッ、離して!! 痛いッ、痛い!!」
じたばたもがき、アレクの手から逃れようとするクロエ。
「結界解いたでしょ!? ね、ねぇッ。ねぇってば!!」
「終わるまでこのまま見てろ」
「へ? み、見てろってなにを?」
「残り二人がどんな結末を迎えるか。あのギルドハウスには、俺以外にも強い方たちがたくさん居るからな」
「つ、強い方たち? あ、あなたが一番強いんじゃないの?」
「まぁ、見てろ。大人しく」
「み、見ます!! 大人しく見てます!!」
頭を掴まれたたまま、クロエは正座。
そしてそのまま、アレクの言う通り大人しく事のなりゆきを見守ることしかできなかった。
~~~
アレクが外に出て、数分後。
「はい。とうちゃーく」
「.....」
金髪女盗賊シルビア。
召喚師リリ。
その二人の女は、ギルドハウスへの侵入を果たしていた。
そんな二人の視線。
その先には、ルリとマリが居た。
「いらっしゃいませ」
「ご要件は?」
カウンター越し。
そこに並び笑顔を浮かべる二人。
その二人に、シルビアは声をかけた。
「なんの真似? もしかして舐めてる?」
テーブルと椅子。
それを蹴りあげる、シルビア。
「元勇者パーティーの魔法使いかなんだか知らないけどさ。舐めた真似してると、殺るぞ」
瞳孔を開き、シルビアは中指をたてる。
そのシルビアを制し、リリは二人に声をかけた。
「抵抗。しないでくれたらすぐに楽になる」
溢れる、魔力。
それに自身のローブを揺らし、リリは手のひらをかざす。
だが、ルリとマリは退かない。
「やれるものなら」
「やってみろ」
赤と青のオーラ。
それをたぎらせ、ルリとマリは敵意を剥き出しにする。
瞬間。
シルビアは力を発動。
「無音殺人〈サイレントキリング〉」
相手の五感。
それを超越し、死角へと瞬時に移動する特殊な力。
シルビアの革手袋のはめられた手。
そこには毒針が握られていた。
それに合わせ、リリもまた力を発動。
「液体生物〈ウーズ〉召喚」
リリの無機質な声。
それに合わせ、青白い光が室内に充満。
そして、数秒後。
ジュウゥゥ…
触れたモノを溶かす液体生物。
それが床を溶かしながら、現れる。
ウーズ。
それは、意思持つ深緑色の液体して術者のリリの命にのみ従う。
「殺ってやる」
「ウーズ。あいつらを。溶かして」
シルビアとリリの声。
それが響き、はじまる攻防戦。
だが、その攻防戦は長くは続かない。
「束縛」
「麻痺付与」
容赦なく。ルリとマリは二人に向け魔法を発動する。
刹那。
「ぃっ!?」
「……っ」
シルビアは身動きが取れなくなり、リリは強烈な痺れのおかげでその場に膝をつく。
そしてそれに合わせ、カウンターの奥から人狼少女とパンドラも参戦する。
「がるるる。悪いやつ」
「行きなさいッ、人狼さん!! おいしいわよ、きっと」
「ワオーン」
ガブッ
「ひぃ!?」
ズルッ
パンドラを倒し、恍惚とする少女。
「わわわ。わたしじゃなくてッ、あの二人!!」
「わおーん?」
「あなたワザとやってるでしょ!?」
「くうーん」
ぺろぺろ。
「な、舐めるなぁ!! わかったッ、わかったから!! あの二人を攻撃するの!!」
「ぐるるる。わかった」
「あ、あなた。フェンリル状態でも普通に喋れるのね」
「うん。喋れる。敵はあいつらだね、パンドラ」
「そ、そうよ」
「わかった!! あいつらを攻撃する!!」
パンドラから意識を逸らし、血気盛んにリリとシルビアに飛びかかる人狼少女。
そして。
「ぎゃあああッ、痛いッ、痛い痛い!!」
「ぐるるる」
人狼に噛み付かれ、シルビアは悲鳴をあげ倒れる。




