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迷宮探索①

サラマンダーの討伐。

それを達成し、アレクはギルドハウスへと戻った。


「お帰りなさい、アレクさん」


クレアの出迎え。

それにアレクは笑顔で応える。


「すいません、ちょっと遅くなりました」


「いえいえ。大丈夫ですよーーって」


そこでクレアは気づく。

アレクの左腕。

そこに抱えられた女の姿に。


「あ、あのアレクさん。そのお方は?」


「カレンって名前の魔物奏者です」


「まものそうしゃ?」


小首を傾げる、クレア。

そんな二人の会話。

それに、マリアの声が割って入った。


「あらゆる魔物を操る力。ですわね」


「あぁ、そうだ。サラマンダーを操り野望丸出しで向かってきたから、返り討ちにした」


「ま、まぁ。そうなりますわね」


レベル9999。

それに対しレベル90台の魔物を仕向けたところで、結果は目に見えて明らか。


「だからーー」


アレクは更に言葉を続けようとする。


だがそれを。


「そう」


「全ての人間を奴隷にする。とか叫んでいたところを、アレクが拳で。こうドンッと」


アレクの後。

そこから室内に入り、ルリとマリは身振り手振りでアレクの行動を説明した。

アレクに代わって。勝ち誇った表情で。


その二人の説明。

それにクレアは、「す、すごいですね」といつものように感嘆を表す。

そしてアレクに恐る恐る声をかけた。


「アレクさん。そ、その」


「安心してください、クレアさん。この女は明日、外の討伐したサラマンダーと一緒に本部ギルドに引き渡しますので」


クレアの不安。

それを払しょくする、アレク。


「どちらにしてもクエストの報酬は本部ギルドでしか受け取れないですし。その時にこの女も引き取ってもらいましょう」


「そうですね。わたしもそれがいいと思います」


アレクの意思。

クレアはそれに同意する。


しかし、ルリとマリは不安げに顔を見合わせ声を響かせた。


「大丈夫かな?」


「うん。心配」


「心配? なにがだ」


アレクはルリとマリに問いかける。

そのアレクの問い。

それに、マリアが代わりに答えた。


「禁忌の力に対処できる者。それが、あの本部ギルドに存在するのでしょうか? もっといえば、アレク様以外に禁忌の力を抑えこむことができる者。それがこの世界に存在するのでしょうか?」


それに続く、ルリとマリ。


「そう。マリアの言う通り」


「この女が目を覚まして。目についた魔物を操る可能性も否定できない」


「た、確かに。こわいですね」


「それもそうだな」


三人のもっともな意見と、クレアの怯え声。

それにアレクは納得する。


そしてーー


「なら、方法はひとつだな」


そう声を溢し、ちいさく頷くアレク。


「この女をこのギルドの監視下に置こう。俺の目があれば、なにかあった時に対処できるしな」


「うん」


「それがいいと思う。またあんなことをしたら大変なことになる」


焼け落ちた村の姿。

それを思い出し、ルリとマリはアレクに同意。


「わたくしもそれがいいと思いますわ」


「わたしも賛成です」


マリアとクレアも頷く。


その意思を確認し、アレクはカレンをギルドの監視下に置くことを決意した。


 ~~~


 翌日の昼過ぎ。

 本部ギルドで報酬の寄付手続きを終え、アレクはギルドハウスへと戻ってきた。


 ギルドマスターの男。


 それに対しーー


 "「ちゃんと寄付しろよ。俺の名前じゃなくクレアさんの名前付けで。あの村に、全額」"


 敢えて怒気を込めた声。

 それで釘を刺して。


「これでクレアさんのギルドの好感度もあがるな。よかったよかった」


 そう内心で呟く、アレク。

 その表情はとても満足気だった。


 ガチャッ


「ただいま。今帰りました」


「あっ、アレクさん。おかえりなさい」


 アレクを出迎える、クレア。

 その顔にはいつもと変わらず柔らかな笑みがたたえられている。


「あれ、みんなはどこに?」


「はい。皆さん二階に居ますよ」


「二階? あぁ、そういうことですか」


「はい。そういうことです」


 不安げに、クレアは天井を仰ぎ見る。

 アレクもまた天井を見つめ、頷く。


 そしてーー


「ちょっと様子を見てきますね」


 そう声を残し、アレクは二階へと向かった。


 ~~~


「……っ」


 二階の一室。そこにあるベッドの上。

 そこで、カレンは罠にかかった獲物のように怯えきっていた。

 思い出されるアレクの拳。

 そして甦る圧倒的な力の差と、抗う意思さえもたせない全てを超越した者の眼差し。


 あ、あんな奴が居るなんて。


 毛布にくるまりーー


「いやだ。わ、わたし。まだ、しにたくない」


 カレンは震え、涙を堪える。


 そんなカレンの耳。

 そこに、扉が開かれる音がはいってくる。

 そして同時に声が響いた。


「ずっとこんな感じなのか?」


「うん」


「ずっとこんな感じ」


「レベル9999の拳。その威力を間近で感じたのなら、誰でもこうなりますわ」


 レベル9999。

 その単語に、カレンはビクッと身体を震わせる。


 れれれ、レベル9999?

 わ、わたしのレベルは確かーー


 24。


 そしてこの世界の魔物のレベル上限も100。


 だとするならば。


「いッ、いやぁ!! 許してッ、おおおッお願いします!!」


 パニックになり、カレンは叫ぶ。


「なっ、なんでも。なんでもします。だから、だから」


「あの。少し落ち着いてください」


「ひっ。こっ、ころさないで!!」


 そんな怯えまくる、カレン。

 その側に歩み寄り、アレクは声を落とす。


「一人でも村人を手にかけていたら。あの時、顔面に拳をあてています」


 ギルダーク。

 その男を葬った時のことを思い出す、アレク。


「禁忌の力を持つ貴女を野放しにしない為に監視下に置く。それだけです」


 そんなアレクの声。

 それにカレンは毛布から顔を覗かせる。

 涙に濡れたカレンの顔。

 そこには、あの偉そうな面影は欠片もない。


「かんし?」


「はい。監視です」


 少し落ち着いた、カレン。

 そのカレンにアレクは手のひらを差し出す。


 そしてーー


「ってことで。いきましょう」


「へ?」


「クエストです。確か、迷宮探索だったかな」


 アレクはカレンをクエストに連れていこうとする。


「め、迷宮探索?」


 状況が飲み込めない、カレン。

 そんなカレンにアレクは当然のように声をかける。


「貴女は今、このギルドの監視下なんで。はい」


 そのアレクの言葉。

 それにマリア、ルリ、マリは同意の意を示す。


「監視下ですので。仕方ないですわ」


「拒否権はない」


「その通り」


 そして、カレンもただ頷くことしかできなかった。

 戦々恐々といった表情で。ゴクリと唾を飲み込みながら。

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