3.
あたしにはハニカになる前の記憶がある。それを思い出した時には、前と違い過ぎて混乱したけど、慣れきった頃には前世を思い出すことも減って、このまま全部忘れてくんだろうなぁって思ってたらジュドを見てハッとした。
あ、あたしってば王子様ってヤツが大好きだったって。
主人公が王子様とハッピーエンドになる話が好きで、いつか素敵な王子様と──なぁんて夢見てた。そんな夢見ちゃうあたしって可愛くない?可愛いよね!
そんな可愛い自分を思い出したら、やることは決まってる。王子様──ジュドを攻略するしかないよね!
ジュドが皆の前で陰気な地味女に、婚約破棄を突き付けてるのを見て、上手くいき過ぎな状況に大笑いしそうなのを堪え、誰にも見られないようにこっそり笑う。
どういう経緯でそうなったか知らないけど、王族の婚約者なんていう分相応な地位に図々しくいた女を、身の丈にあった底辺に戻せたうえ、大勢の前で恥をかかせてやることも出来て大満足!まぁ、歯応え無さ過ぎたのがちょっとだけ不満ではあるけど、ジュドがあたしだけの王子様になったことを思えばそれもどうでもよくなっちゃう。
「貴様は俺についてこい!」
いつも俯き加減な陰気女が、ジュドを真っ直ぐ見据えた。
陰気だとか不細工だとか、兎に角ジュドからは女に対して悪口しか出なかったし、排除する為の観察とか全く必要性感じなかったせいでマジマジ見たことなかったけど──………不細工?………ん?…あれ?……コイツ──他人の空似???
「お断りし──ッ」
「口答えするな!貴様に拒否権などあると思うな。」
もっとよく見ようと思ったのに、ジュドが殴ったせいで中断に。ま、いっか。
その後、胸倉を掴まれたまま会場から連行とか。扱い雑(笑)
締め付けられて苦しかったのか、なんか静か~とか思ってたら目的地に付いた頃見たら失神してた。
あらあら、こんな状況で暢気にお休みなんて神経太~い。さっすが身の程弁えず王子様の婚約者とかやってられただけあるわ~。
ショーンが防音と結界、それとドアを開けても空室に見える魔法を展開させ、ドアの外側に見張りのビルを置いた。
なんかすごい念入りじゃない?
「ここで何するんですかぁ?」
「親父が俺の意思を無視して破棄を取り消すとは思わないが、念には念を入れて不細工との決別式をするのさ。」
「ほぇえ~決別式ぃ??」
「今からサムたちとコイツは愛を育むのさ。王族に嫁ぐには処女じゃないとダメだから、サムたちに処女を捧げさせるんだ。こんなヤツを喜ばせることなどしたくないが、仮にも俺の婚約者だった女だから、一生男と無縁な不細工に、最後の慈悲で男の味を知る機会をプレゼントしてやろうってわけだ。」
そう言えば前に言ってたの思い出した。処女じゃないあたしはダメなのかって聞いたら、喪失相手が王族なら問題ないって言われたんだった。処女偽装でジュドが初めてじゃないのは秘密。
「コイツは男に抱かれるっていう最高のプレゼントを受け取り、俺は目の前で喪失を目撃する。ククッ、これで絶対誤魔化しも言い逃れも出来やしない。」
あたしの王子様中身外道過ぎ!最高!
「わぁあ~、一生使われない場所を使うチャンスあげるジュド様やっさしぃいい!」
「そうだろそうだろ。俺は優しいんだ。しかしサムたちの好みは特殊過ぎだろ。不細工を態々抱きたがるなんてな。」
いやいや、不細工とか思ってるの美的センスおかしい疑惑のジュドだけだよ。
元婚約者──名前忘れた──サムが俵担ぎでベッドまで運び、放り投げて覆い被さった。
「おいサム。さっさと済ませろよ。俺は一刻も早くハニカと二人きりになりたいんだ。」
「しょうがなく一番はお前に譲ってやるが、俺だって早くぶち込みたいだ。モタモタすんなよ。」
「二人ともぉ、初めての共同作業なんだからぁ、急かしたらサム君が可哀想~」
「失神したままぶち込むのはつまらんから、ちゃんと目覚めさせてからにしろよ。」
「わぁい、ジュド様やっぱりやっさしぃいい!初めてがぁ、知らないうちに終わっちゃってたら悲しいもんね!しっかりと繋がったことの感動を、サム君と分かち合わないとね!」
「ククッ、そうだろそうだろ。おい、早くソイツを起こせ。」
マジ外道!好き!
あの女が絶望に泣き叫ぶ様を見届けようとベッドを見たら──サムの背中からなんか生えた。