1.
「ジャンクフードが食べたいです…」
『 』
ヒソヒソ
「ご覧になって。また独り言を…」
「もしかしてあれが噂の?──わたくし初めて実物を見ましたわ。闇色の髪と瞳で、皆さんの仰る通り本当に薄気味悪いですわね。」
「確か──男爵が娼婦に産ませたのだったかしら?」
「あら、メイドを孕ませたって聞きましたわ。」
「わたくしは偶々見かけた美しい町娘を無理矢理…と聞きましたわ。」
「どの噂が本当だったとしても、ろくなものじゃありませんわね。なのにご自分がご立派な存在だとでも勘違いなさってるのかしら。図々しくも殿下の婚約者に収まったまま、辞退もなさらないなんて。」
「本当に図々しいったらありませんわね。」
「まぁ、どうしても結婚したい気持ちは分かりますけど。」
「第三殿下はあのように麗しいお方ですもの、わたくしなら、毎日お側で殿下のご尊顔を拝めたら、天にも登る気持ち──いいえ、天に召されてしまいますわ!」
「あら、いやだわ。天に召されるだなんて。天に召されてしまったら、後妻に盗られてしまいますわよ。そこはグッと地に留まりませんと!」
「うふふ、そうですわね。折角殿下のお側に居られる権利を勝ち取ったというのに、天に召されてる場合じゃありませんわね。わたくし────」
いやいや、貴女たち何も勝ち取ってませんよね。
いつの間にか話の内容が、他人の婚約者を褒め称える内容になり、姦しい貴族子女たちは去っていった。
一難去って…
「きゃあぁああーっ!」
突然大声をあけながら倒れた存在──ピンク髪の巨乳が、わざとらしい怯え顔でこっち見てきた。
「ひ、酷いですぅう。ううっ、ぐすんぐすん、えーんえーん(棒」
えーんえーんておま…
毎日のように同じ流れとセリフを発してるくせに、一向に向上が見られないとはこれ如何に。雑魚だからかな。
「どうした我が愛しき最愛ハニカ!」
出た。
艶やかな紫の髪と知性溢れてそうな瞳──あくまでそうなであって、悲しいかな、知性と無縁というのが現実。第三王子は絶対スタンバってましたよね?というタイミングで雑魚居る所どこでも沸いてくる。
雑魚を抱き起こし、見た目詐欺男こと第三王子が喚き出す。
「貴様ぁ!あれほど我が愛しき最愛ハニカに近づくなと言ったのに、何故近くに居るんだ!」
「怒鳴らなくても聞こえます。そちらの雑──お方が勝手に近づいて来たのに責められても困ります。」
危うく雑魚って言いそうに。
「ぐすんぐすん、えーんえーん(棒)ジュド様ぁ、ぐすん、ハニカはぁジュド様とぉ、お話しちゃダメなのですかぁ?」
「急にどうしたんだい。我が愛しき最愛ハニカ。今まで同様可愛い声でいっぱい囀ずって俺を癒してくれ。」
「えへへっ。ハニカいーっぱいいっぱいジュド様癒しちゃうぞぅ!」
「ああ、これからも頼むぞ、我が愛しき最愛ハニカ。」
「ハニカ任されましたぁあ!ねぇねぇ、ジュド様ぁ~、ハニカはぁジュド様のお側にずっとず~っと居ても?」
「我が愛しき最愛ハニカ、ずっとずっと俺の側に居てくれ。」
我が愛しき最愛って入れないと死んじゃう病なのかな。
「でもでもぉ、ぐすん、ハニカにはぁ、そんな資格ないって…えーんえーん(棒」
意味ありげにこっち見んな。
「き、貴様ぁあ!我が愛しき最愛ハニカに資格がないだと!?」
「そんなこと言ってな──」
「我が愛しき最愛ハニカに資格がないならば、俺から愛の一欠片すら恵まれない貴様はなんだ!」
いや聞けよ人の話。あとお前の愛とかいらん。
「貴様など資格以前の問題ではないか!そんな分際がハニカを侮辱するとはな!恥を知れ!ああ、ハニカ、可哀想に。俺がもっと早く駆けつけていれば、こんな惨めな思いをハニカにさせずにすんだのに。許してくれハニカ。」
「ジュド様ぁ…」
「我が愛しき最愛ハニカ…」
うん、やっぱり我が愛しき最愛を入れないと死んじゃう病だな。