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お迎え

『優ちゃん、せっかく髪の毛切ってサッパリしたのにセットもしないで行くの?』

朝ごはんを食べ歯磨きをしているとひょっこりとコチラを覗いている咲夜姉が問いかけてきた。

『うん。切った後に美容師さんがやってくれたのは難しそうだし、どーやって良いか分からないからこのまま行くよ』

基本的に自分の身なりを気にしない優は髪の毛のセットが得意じゃない。上手くできないのだ。

素直に言うのも恥ずかしいのではぐらかすことにする。

『私お兄さんがやってくれてるの隣で見てたからできるかも』

多分できない。昔からこんな事を言い出す咲夜姉は毎回散々な結果を残してきていた。

『いや、いいよ。この髪型気に入ってるんだ』

朝の忙しい時間に咲夜姉に付き合って遅刻したくない。それとなく傷付けないよう断った。

が、こんなんで折れるなら、それはもう咲夜姉ではない。


『うーん。やっぱり私から見てセットした方がかっこいいと思うよ?お姉ちゃんに任せなさい』

大した結果を残さないのにこうなった咲夜姉を止める術を優は持っていない。

抵抗するだけ無駄と判断しされるがままになることにした。


『こんな感じでどうかな?優ちゃん』

胸を張り満足そうに笑う咲夜姉。

でも鏡に映る自分を見るとどこにそんな達成感があるのかさっぱり分からない。

『あのさ、左右で全然形が違うしワックスで持ち上げた筈なのに所々潰れてるのは何で?』

『お兄さんセットする時に程よく潰して程よく立ち上げるとか言ってたよね?』

言ってはいたが、実際に動かした髪の位置が違いすぎる。正解はハチ(側面の1番出っ張っている所)を潰し、トップを立ち上げナチュラルに流すだ。

前後左右どこから見ても菱形をイメージするのが手っ取り早いのだ。


改めて咲夜姉のセットした自分の頭を見る。

ハチを潰したはずのサイドは、刈り上げた少し上ハチの下が潰れている。立ち上げるはずのトップはそのままにバックが少し立ち上がっている。

(どこから見ても真四角やないかーーーーい)

『咲夜姉。ありがとう。もう時間だから学校行ってくるよ』

『あっ。もうそんな時間。お弁当用意してキッチンに置いてあるから持っていってね』

笑顔で送り出してくれる咲夜姉。

全ての不満を内に秘め諦める事でギリギリ登校時間に間に合うのだった。


もちろん髪は歩きながら適当に直し、小洒落た感じくらいにはなっただろう。めでたしめでたし。




『おはよう優』『おはよう優くん』

相変わらず登校すると柚葉と夏菜が先にいて挨拶をしてくれる。

『おはよう2人とも』

『ねー優、その髪型似合ってる。うん、かっこいいよ。夏菜もそー思うよね?』

ニヤニヤと褒めてくれる柚葉。

急に話を振られた夏菜は一瞬オドオドしてたがしっかりとこちらへ視線を向ける。

『うん、優くん凄いかっこいい。セット自分でしてきたの?』

『まーそんな感じだよ。慣れてないけどね』

もちろん咲夜に髪の毛で遊ばれたことは言わない。

『今度ヒロに教えてもらったら?自分の髪弄るの好きだし色々教えてくれるかもよ?』

『そーだな、聞いてみるよ』

たしかにヒロは髪型にこだわりが強そうだ。

逆に樹は短い髪をとりあえず立てておけのスタイルだから参考にならないだろう。


それから2人と少し雑談をしてたのだが、急に夏菜が俯きモジモジしている。

『夏菜。どうかした?体調でも悪いか?』

心配になり聞いてみたが首を左右にフリフリしている。

(仕草は可愛いけど、少し心配だな)

なんて考えた時だった。パッと顔を上げた夏菜に見つめられる。

『そのっ優くん。今日放課後カフェに行かない?あの、昨日言ってたやつでさ...その2人で』

後半になるに連れどんどんと声が小さくなり、2人での部分に至ってはもー辛うじて聞こえたレベルだった。

(そーだな。多分勇気を出して誘ってくれたんだし行こうかな)


(ブー、ブー、ブー、ブー)

夏菜に応えようとするが、スマホが着信を知らせていた。

『ごめん夏菜、電話来ちゃったから少し待っててくれるか?』

『うん。ごゆっくり』

笑顔で送り出してくれた夏菜だが相当緊張してたのだろう声が震えていた。

そんな事を考えながら移動し、通話画面を、タップする。

『もしもし、咲夜姉?どーしたの?』

『あ、優くん。ごめんね今日学校帰りすぐに帰って来れるかな?』

『何で?』

夏菜とカフェに行くつもりの優は、ちょっとやそっとの事では帰るつもりはない。だがどちらが優先か推し量るためにもしっかりと確認する。

『お母さんにね優くんが友達出来たって伝えたらパーティーしたいみたいで』

(.......,俺は幼稚園児かよ)

流石にこの用件なら夏菜を優先し、帰った後で幸恵さんと咲夜姉と晩御飯を食べても大丈夫だろうと思い。伝えようとしたがとんでもない事を言われてしまう。

『18時半から赤坂に集合だから優くんの学校が終わったらそのまま行きたいんだよね』

『....赤坂?なんで?』

おかしい。普通家で済ますイベントだよな?

それが何で外出イベントになるんだ。


『お母さんお気に入りのレストランみたいで予約あんまり取れないのに今日取れたって喜んでたの』

『そっか.....うん.....わかったよ』

咲夜姉の行動力は幸恵さん似である。

つまり咲夜姉よりぶっ飛んだ女性であるということだ。

『なんか用事あった?』

『ううん、とりあえず大丈夫』

ここで友達とカフェになんて言えるはずもなくただひたすらに心の中で夏菜に謝るのだった。


『優くんおかえり、電話大丈夫だった?』

『うん。大丈夫だったよ』

心配してくれている夏菜。正直申し訳なさすぎて顔も見れない。

柚葉はどうやら今席を外しているようだ。


『それで、夏菜、ごめん。急に予定入っちゃってカフェ行くの明日でもいいか?』

『うん。私は大丈夫。優くんがゆっくりできる日に行ける方が嬉しいかな』

何て心の優しい子だろう。可愛い上に気遣いもできる。クラスで人気な理由もよく分かる。

そう。何を隠そう柚葉と夏菜はタイプこそ違えど美少女。クラス、いや学年でも1.2を争うレベルの美少女なのだ。

『ありがとう。夏菜は優しいな』

『そんな事ないよっ』

それから2人で他愛もない話をし、樹とヒロ、どこかに行っていた柚葉が集まりわちゃわちゃと朝のホームルームまでの時間を過ごした。



『みんな俺今日急ぐからこれで、じゃーな』

教室で4人へ別れを告げ早足に下駄箱へ向かう。

ホームルームが少し押してしまい咲夜と待ち合わせの時間に少しギリギリになってしまいそうだ。

幸い駅までは走って5分とそんなに距離はない。


(なんか校門前凄い人だな)

下駄箱で靴に履き替え走り校門へ向かうと何故だが凄い人だかりが出来ている。

興味はあったがそれどころではないので、脇目もくれず通り抜けようとした時不意に名前を呼ばれた。


『優ちゃーーーん、遅かったからお迎えきたよ』


(........知らんぷりして走って逃げよう)


『コラッ優ちゃん無視するなーー泣くぞーー』

『咲夜ねえ本当に何してくれてんの?』

また色んな生徒に見られてしまっている。

元々サプライズが好きなのは知っている。が、度がすぎてはいないか?怒りを顔に滲ませ咲夜へと歩み寄る。


『おかえり、優ちゃん』

『...いや。まじで何してくれてんの?』

だめだ先ほども流された質問をもう一度してしまう。意味がわからないのだから仕方ない。

『どうせなら喜んで欲しくて、つい』

『いや、こんなに目立って喜べる要素ある?せめてもう少し学校から離れたところで待っててよ』

今もずっと沢山の視線を浴びている。

主に嫉妬。本当にタチが悪い。

『つまり、今度からは坂を下ったとこにある公園でなら待ってて良いってこと?』

『もうそれで良いから行こう』

咲夜の手を取り早足に歩き始める。

万が一夏菜に見られてしまったら申し訳ないからである。おそらくだがまだ見られていない。多分。


ある程度学校から離れたところで自分が早く歩きすぎていたと思い、咲夜を確認する。

(優ちゃんと下校、それも手を繋いで)

頬を朱に染めなにやらブツブツと繰り返している。優に聞かせるつもりもないのだろう全く聞き取れない。

『咲夜姉?さっきも言ったけどこれからは学校まで迎えに来ないで』

『うん。分かってる。ここの公園で待つ方がいいんだもんね』

はい。それ全然分かっていません。

だが今これすらも否定するとめんどくさいので今後徐々に遠くしていくと心に決めた。

でも本音を言うと咲夜姉みたいな美女に出待ちされるのは嬉しい。限度はあるが。


(なんだかんだ言っても好きなんだよな昨夜姉のこと)

優自身この好きが家族に対しての、なのか異性としてのなのか分かっていない。でも今はそれで良いんじゃないか。

だってこれから先も2人の共同生活はずっと続いて行くんだから。






ここまで読んでいただきありがとうございます。

良ければいいね、コメント、フォローお待ちしております。


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