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噂のお姉ちゃん

『咲夜姉おはよ〜』

『優ちゃんおはよう。朝ご飯できてるから先に顔を洗っておいで』

『はーい』

洗面所へ行き冷や水を顔にじゃぶじゃぶとかけ、脳を覚醒させていく。

きっちりと目が覚めたところで垂れてくる水滴をタオルで拭い、鏡に映る寝癖頭の冴えない男へ目を向ける。

(そろそろ髪切りに行かないとな)

ここ最近ずっとバタバタしていた為放置していた髪の毛を一束掴みいじり倒していた時だった。


『どうしたの優ちゃん。自分に見惚れちゃった?』

扉からひょっこり顔を覗かせている咲夜からあらぬ誤解を受けてしまった。

『そんなわけないじゃん。咲夜姉じゃあるまいし。そろそろ髪切りに行こうかなって思っただけだよ』

『そっか。私今日午前中しか大学ないし良ければ一緒に行ってもいい?』

嬉しい提案をされた。正直この街の美容室について何にも知らない優は咲夜の通っている美容室を教えてもらおうと思っていた。

『うん。丁度咲夜姉に美容室教えてもらおうと思ってたんだ。学校終わったら一緒に行こ』

『やった、優ちゃんと美容室。さあ、そうと決まれば早く朝ごはん食べて学校頑張ろう』

(咲夜姉は本当に可愛いよな)



『おはよう。柚葉、夏菜』

『優おはよ』『おはよう、優くん』

教室へ入り最初に目についた友人2人へ声をかける。樹とヒロはまだ来てないようだ。

『優が転向してきてもう1週間か。早いねぇ』

『本当皆のお陰ですごい早いよ。ありがとうね』

既に優が転校してきてから1週間経った。

学校ではほとんどの時間を5人で過ごし、たまに放課後も遊んでいる。彼らのおかげで楽しい高校生活を送れていた。


『優くん、この前は本当にありがとうね』

『全然、あれくらい大したことないから。また困ったことがあったら頼ってよ』

先日下校時に夏菜の自転車がパンクしてしまっていて、自転車通学である優が自宅まで送って行った。


『今度お礼させてね?』

小首を傾げ可愛らしく聞いてきた。すると柚葉が『それは2人きりで。とゆー事ですか?』と手をマイクに見立てニヤニヤとインタビューしている。

『揶揄わないでよ柚葉ちゃん。でもそうね、2人きりでカフェとか行きたいかな?』

これはずるい、耳まで真っ赤にしながら俯いている為、上目遣いになっている。

『うん。この辺のこと詳しくないから案内してくれると嬉しいな』

と答えたところで樹とヒロが登校してきた。

『よっす、何の話してたん?』

『それがねーなんと....』

『ちょっとやめてよ、柚葉ちゃん』

『気になるやん。なにがあったの?優』

と5人揃った所で騒がしくなる。もー何回か見た、いつもの光景だ。

『ほら佐藤ちゃん来たよ、樹とヒロまた後でな』

優が担任が来た事を知らせた事で樹とヒロは自らの席に戻り、朝礼が始まるのだった。




『優〜パース。俺に任せろーい』

樹が両手を挙げパスを寄越せとアピールしている。

俺は一つ頷きドリブルしていたボールを蹴る。

『ヒロ任せた』

『はいよーそれぃ』


『ゴーーーーーーール』

パスをもらえなかった樹が一番はしゃいでいる。

それを見ながらヒロとハイタッチする。

今は四限目の体育だ。男子はグラウンドでサッカー、女子は体育館でバレーボールをしている。

『それにしても俺らのクラス強いな、海斗たち頑張れよ〜』

樹が次の試合に出場するクラスメイトへ手を振ると皆が返してくれる。

優のクラスは全体的に仲が良い。

ムードメーカーである樹が誰とでも分け隔てなく話すタイプだからだと思う。


『海斗たちも大丈夫だな、2人とも女子の応援行かね?』

『別に良いけど、お前また怒られるぞ?たな先怖いってこの前言ってたじゃん』

そう、前回の体育で女子の応援をすると張り切って体育館へ行った樹は体育の田中先生(いかつい52歳)に、こってりと絞られ帰ってきたのだ。

『今日は大丈夫だって、作戦があるんだ』

『『そーか。行ってらっしゃい』』

『なんでだよーぅ』

なんて和気藹々と体育の時間は過ぎていくのだった。結局樹は一人で体育館へ行き足元にある小窓から覗いていたが途中大声を出してしまい、たな先に怒鳴られていた。




『優、今日暇〜?俺バイトないんだよね』

放課後になると樹に声をかけられる。

『ごめん、今日美容院予約しているんだよね』

そう、今日は朝約束したとおり、咲夜姉と17時に美容室の予約をしていた。

『1時間くらいなら付き合えるけど、それでもいいならどっか寄っていこ』

『よっしゃ、ゲーセン行こ』

咲夜には連絡を入れて美容室集合に代えてもらえば大丈夫だろう。


『樹と優どっかいくの?』

帰り支度をした柚葉と夏菜が声をかけてきた。

『優が1時間だけ暇ってゆーからさ、ゲーセンに付き合ってもらうんだ』

『欲しいフィギュアあるって言ってたもんね』

『そうなんだよ、ヒロの野郎は彼女と帰ってたからな。優と2人でゲーセンデートってわけよ』

なんか気持ち悪い事を言って目で合図を送ってきているがとりあえず無視しよう。

『私たちも行っていい?ね、夏菜』

女子2人は可愛く見つめ合い確認しあっている。

なんで男と女でこんなに差が出るのだろう。

『じゃ皆で行こうか』

優の一言でみんなカバンを持ちゲームセンターへと向かうのだった。




『優、目大きいよね。同じ加工なのにこの差は何?』

『普通だと思うけどな』

『いや化粧無しでそれは強いよ。女の敵って奴だね。優の彼女になる人は厳しいな』

『.....私も思う』

柚葉が怒涛の勢いで褒めてくる。が夏菜は何故か俯き頭を振っている。

『それにしてもプリクラって久しぶりだな』

父と母が亡くなる前もゲームセンターにはあまり来なかった。そのため久しく来ていなかった。プリクラの進化は凄まじいのである。

『私と夏菜は良く撮るよ、優も樹と毎週撮りに来れば良いんじゃない?』

『本気で無理。ごめんな樹』

『いや、何で俺が振られた感じになってるの?』

樹を軽くあしらい、プリントシールを受け取る。

そこには楽しそうに笑いあう4人の学生の姿。

(まさかこんなに楽しい生活が出来るなんてあの時は思ってもみなかったな)

ヒロを含めた4人と仲良くなれて本当に良かった。心からそう思う優だった。




『優そろそろ時間だよね?』

楽しさの余り時間を忘れていたが柚葉が教えてくれた。

『そーだな、それじゃ皆また.....』

『おーい、優ちゃーーーん』

『.........』

3人へ別れの挨拶を告げようとした時だった。

道路を挟んで向かいの信号待ちしている女性がぶんぶん手を振り回して叫んでいる。

『それじゃあ皆、また明日ね』

『『ちょっと待った』』

信号が変わったので、何食わぬ顔で渡ろうとしたが樹と柚葉に両腕を取られる。

『いや、美容室遅れちゃうから』

『優くん、あの人が噂のお姉さん?』

何故が2人よりも先に夏菜が聞いてきた。誤魔化せるわけもないので覚悟を決める。

『そうだよ、アレが親戚の姉さん。俺がこの辺詳しくないから一緒に美容室行くんだ』

『そうなの、噂以上に美人ね。あとこっちに向かって走ってきてるよ?』

『えっ???』

驚きのあまり振り返る。するともう目と鼻の先に咲夜姉が来ていたのだ。

『優ちゃん、なんで返事してくれないの?恥ずかしいのだけれど?』

またも見当違いなことを言っている美女。

『恥ずかしいのは俺だよ。街中で叫ばないでくれるかな?咲夜姉目立つんだからさ』

顔を赤くしながら反抗し、他の3人へ目を向けると口を開け固まってしまっている。

そして咲夜は優を無視して3人へ笑いかけている。

『あなた達は優ちゃんのお友達?』

『はい、優が転校してきた日からの大親友です』

ガチガチに固まりながらも懸命に返事をしている樹。よっぽど咲夜に会えたのが嬉しいのだろう。アイドルとそのファンみたいな構図になっている。

『いつも優ちゃんと仲良くしてくれてありがとう。それにこんな可愛い子が2人もお友達なんて流石優ちゃんね』

『余計なこと言わなくて良いからさ、早く美容室行こうよ。咲夜姉のせいで遅れそうなんだけど』

『あら、それもそうね。3人とも良ければ今度うちに遊びに来てね。学校での優ちゃんのこと聞きたいし』

『『『はい』』』

ウインクも付けられ3人の頬が紅潮している。

まあこんな美人なかなかいないからな。

樹が暴走しなかった事に安堵し、改めて3人へ別れの挨拶をする。


『それじゃ俺行くから、3人ともまた明日な。あと絶対家には呼ばないから、そのうち咲夜姉も連れてご飯でも食べに行こ』

『優ちゃん?うちでも良いじゃない』

『咲夜姉は少し黙ろうか』

怒りを抑え笑顔で告げると手で口を覆っている。

『優。つまりお姉さんと食事に行けるってことか』

『?そーだけど』

何をそんな真剣に聞いてくるのか不思議過ぎた。

『分かった。今日は引こう。また明日な優、ほら2人とも帰るぞ』

まだまだ聞きたいことがあっただろう2人を連れ帰路につく樹。

正直嬉しいが、あの樹がここまで聞き分けがいいと恐ろしすぎる。おそらく狙いがあるのだろう。

でも今はそれでいい。ようやく落ち着けたのだから。


『それじゃ咲夜姉行こうか。案内よろしくね』

『はい。優ちゃん手繋いで行こうね』

嬉しそうに手を取ってくる咲夜のされるがままになりながらも仲良く美容室へ向かって歩き始めた。


ちなみに2人ともカットだけなのに咲夜は優の2倍以上の時間がかかっていた。女性は大変なんだな。




⚠︎3話ここまで読んでいただきありがとうございます。

良ければいいね、コメントお願いします。



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