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新生活

『なぁ、咲夜姉』

『(優ちゃんと登校、優ちゃんと登校)』

何やら俯きぶつぶつと言っている咲夜。声が小さすぎて聞こえない。


『おいっ、咲夜姉』

『ん?な、なに?優ちゃん。そんなに慌てて』

先程より大きな声で呼ぶとようやく気付いた。


『あのさ、めちゃくちゃ見られてるんだけど』

一度辺りを見回し状況を確認した。

男女様々な学生たちが学校に向かい歩いている。その大半の生徒に見られている。

そりゃそうだ。転校生が初日から美女を連れて登校なんて頭おかしすぎるんだから。


『そりゃそうよね。優ちゃんかっこいいもん、目立つに決まっているじゃない』

正反対の結論を出している。やっぱり咲夜姉は少しおかしい。

『いや、違うだろ。咲夜姉だよ、原因は。皆、咲夜姉を見てるんだよ』

『あら、そう。なんかごめんね?』

最後にウインクまで付けやがった。全く反省していない。おそらく今見ていた何人かは惚れたぞ。


『はぁ。それによく考えたら同じ制服着てる人について行けば迷うわけなくね?』

『あら、優ちゃん今気が付いたの?お馬鹿ね』

頭まで撫でてきやがった。完全に馬鹿にされている。昔からいつもこうだ。

歳が離れているから咲夜姉はずっと子供扱いしてくる。まぁ気が付かなかった俺が悪いか。

これ以上目立ちたくないので、不満を口には出さず早足で学校へと向かうのだった。


都立白峰高等学校。偏差値平均よりやや上。

生徒の自主性を重んじるをモットーにゆるい校則と可愛い制服が大人気。

今日から優が転入する学校にようやく着いた。

結局学校に着くまで咲夜は着いてきたのだ。


『それじゃあ優ちゃん学校頑張ってね。あとこれお弁当、お昼に食べてね』

『.....ありがとう』

笑顔でピンクの巾着袋を手渡してくる咲夜姉。

わざわば作ってくれたのに受け取らないわけにはいかないので、しぶしぶ受け取る。

『それじゃ行ってくるね、咲夜姉も気を付けて帰ってね』

そう言い、ちゃっかり校門まで着いてきた咲夜と別れ早足に職員室を目指し歩いていく。




『あの、すいません。佐藤先生を呼んでいただけませんか?』

『佐藤先生ね、ちょっと待ってて』

職員室へ着き、予め聞いていた担任の名前を若い男性教師に伝え呼んでもらう。

すると、若い女性教師がこちらへ向かって早足に歩いてきた。

『お待たせ〜中條くんよね?ナイスタイミングよ。私が中条くんの担任の佐藤りさ27歳です。これからよろしくね?』

ウインクしてきた。もしかしたら、咲夜と似た性格をしているのかもしれないな、と少し不安になる。

『はい。よろしくお願いします』


『それじゃ少し早いけど校舎の説明しながら教室へ向かいましょうか』

言い残し佐藤先生はさっさと前を歩き始めた。


『一年生の教室は四階だからね、覚えておいて』

『はい。その、他の教室まで教えていただいてありがとうございました』

何故か朝礼まで時間があるとのことで音楽室や体育館などの場所も説明してくれていた。


『良いのよ、それに私こそありがとう。ちょうどねうるさい教頭に呼ばれてたとこだったから助かっちゃったわ』

おそらくこの人ダメな人だ。そう直感で判断し曖昧な笑みで頷くことしか出来なかった。


その後これから優が通う教室へと案内してくれた。

『ここで少し待っていて、後で呼ぶから来てね。それと自己紹介もちゃんと考えておいてね』

そう言い残し教室へ入って行く佐藤先生。

中に居る生徒からは『佐藤ちゃんおはよ』と多く声をかけられていた。生徒と仲のいい先生なのだろう。


『それでは、皆お待ちかねの転校生を呼ぼうかしらね。中条くんどうぞ〜』

朝礼が始まってすぐに佐藤先生から呼ばれ、教室からは拍手や指笛が聞こえてくる。


ドアを開け緊張しながらもゆっくりと教室へ入る。

その時だった。


『あっ朝の』『綺麗なお姉さんを連れてた』『結構かっこいいかも』『あのお姉さんは誰なんだ、頼む是非、是非とも紹介してくれ』『樹うるさい』

さまざまな声と期待と羨望の目を向けられた。


(やっぱりか、最悪だ)

そしてようやく教壇の横へ辿り着く。

『それでは中条くん、自己紹介をお願いね?あと、お姉さんって何?気になるからそれもよろしくね』

佐藤先生が笑顔で言ってきた。

おそらくクラスメイトになる全員が期待している。


ゴクリと一度喉を鳴らし覚悟を決める。

『中条 優です。両親が海外転勤になってしまい親戚の家に預けられこの学校に転校してきました。これからよろしくお願いします。今朝のは親戚です』

両親の事は隠した。それと咲夜のことも本当にそれとなく触れた自己紹介が終わった。


『お姉さんを俺に紹介してくれーーーーーーぃ』


控えめの拍手を受けていた時だった。

髪の毛をつんつんにした、ガタイのいいイケメンが椅子の上に立ち急に叫び出した。

『うっさい。樹、黙りなさい』

『はい。すいません』

途端に切長の目をした茶髪の女の子に怒られ、しゅんとなりながら即座に席へ座っていた。

クラスメイトは大爆笑である。恐らくだがツンツンの彼がクラスのムードメーカーであり、女の子は頼れるお姉さんキャラなのだろう。

教室の雰囲気が一気に明るくなった。


『中条くんの席は、学級委員の柊さんの隣にしてあるからね。困ったらなんでも聞いてね』

クラスメイトが落ち着いたとこで佐藤先生が席を教えてくれたので言われた席へ向かい腰を下ろす。


右には黒髪ボブの大人しそうだが非常に整った顔立ちの清楚な美少女。

左にはツンツンくんを注意していた、茶髪ロングに整った顔立ち、おまけに男子なら誰でも憧れてしまう巨乳な美少女。両手に華。まさに神席である。


恐らく学級委員だと思われる清楚さんから声をかけてみる事にした。

『学級委員って君かな?多分色々聞くと思う。これからよろしくね』

『ええ、っと。はい。よろしくね。でも学級委員は反対側の柚葉ちゃんだよ』

『えっ?あ。ああごめん』

勝手に印象で決め付けてしまい恥をかいてしまった。そして振り向き茶髪美少女へ目を向ける。

『そう。私が学級委員長である柊柚葉です。よろしくね?優。困ったことがあったら頼ってね。それとその子は松原 夏菜。私の大親友よ』

『ああ、こちらこそよろしく。松原さんもよろしくね。間違えてごめん』

『はい。こそよろしく、優くん』

交互に美少女たちに挨拶をしたところで朝礼が終わり佐藤先生が廊下へ出て行った。ちなみに美少女2人に下の名前で呼ばれる気分は最高だ。

なんてくだらない事を考えていた罰だろう。


『『それでは僕らの自己紹介を始めまーす』』

佐藤先生が出ていってすぐに2人の男子が走って優の席へやってきた。

さっきのツンツンイケメンと眼鏡をかけたインテリイケメンの二人組だ。

ツンツンイケメンがニヤリと口角を上げ口を開く。

『俺はー、高橋 樹だー、よろしくな優。趣味はアニメ、マンガ、ラノベのラブコメを読む事だ。あとはアウトドアだ。これからよろしくなーーー』

非常にテンションが高い自己紹介だった。

恐らくラブコメに関してはボケだろう。突っ込む気はないけれど。

背の高くガタイがいい、おそらくスポーツマンであり、アウトドアがしっくりくる。

間髪を入れずにインテリイケメンが続く。

『僕はー、木下 隆弘だー。好きなのは彼女。趣味は彼女とのデートだ。これからよろしくな優』

インテリイケメンだと思ったが、こちらも非常に暑苦しい馬鹿だった。要するに彼女が好きなだけだ。


『うん。2人ともよろしくな』

温度差について行けず素っ気なく返してみたら

『樹。本当にうるさい。ヒロはそんなキャラじゃないでしょ。優が困ってるからやめなさい』

『『すいません』』

またも2人は柚葉によっておとなしくなり、ようやくこちらから話しかける気になれた。


『それで?3人は仲良しグループってところか?』

気になったのだが、この2人とはまだ話したことがないので、柚葉に聞くことにした。

『正確には夏菜を含めた4人グループってとかかしらね。私と樹が幼馴染。樹とヒロが中学からの親友で私と夏菜が親友って感じ?』

柚葉が分かりやすいよう交友関係を説明してくれる。

『そうだったんだ。うん。確かに仲良さそうだ』

『ふふ、ありがとう?』

(キーンコーンカーンコーン)

そこで授業のチャイムが鳴り教師が教室へ入ってきたところで、樹とヒロと呼ばれたイケメンたちは去っていった。めでたしめでたし。

なんてことはなく。休み時間のたびに優に話しかけてくるのだった。




その後淡々と授業を受け、昼休みになり先程の4人組とお昼ご飯を食べる流れになった。


『優って素っ気ないけど良いやつだよな』

『樹はうるさいけど良いやつだよな』

満面の笑みの樹と軽口をたたきあう。

全ての休み時間に話していたからだろう。樹とヒロとも打ち解けることが出来た。

『うん、2人は性格が正反対だけどお似合いって感じ?』

『やめてくれよ柚葉。流石にお似合いはしんどいわ』

ため息つきながらやれやれって言うと皆一斉に笑いだし、落ち着いたところで、お弁当を食べ始める。


(咲夜姉のお弁当どんなだろ、楽しみだな)

なんて考えながらお弁当箱を開けた時だった。

『えっ?』

『『『『えっ?』』』』

驚きのあまり驚いて固まってしまった。

その隙に4人も見てしまったのだろう。同じように固まってしまった。

そう。そこには様々なおかずが詰められ、ご飯の上に海苔でハートマークが作られた弁当があった。


『ゆ、優、それ、なんだよ...?』

樹だ。プルプル震えなている。いや、薄らとだが目に涙を溜めている。

『優くん、それなに?』

こちらは夏菜だ。目を細めニヤニヤとしている。

『いやー、おばさんお茶目なんだよ。きつもこんなことして、からかってくるんだぜ?』

『お前クッソ目泳いでるぞ?』

誤魔化そうとしたが速攻でバレてしまった。

そして更に追い討ちをかけてくる。

『......まさか朝のお姉さんの手作りハート弁当じゃないだろうな?』

するどい。流石ラブコメ信者だ。

自己紹介のあと改めて聞くと、樹はラブコメに憧れを抱きすぎている痛いイケメンだと分かった。

『おばさんと計画してたんじゃない?2人とも俺を揶揄うの好きだから』

それでも負けない。徹底抗戦の構えを取る。

そんな優に更に距離を詰める樹。

お互いの顔が吐息がかかるほどに近付いた時だった

『どうでもいい。俺にも食わせてくれ』

机に両手をつけ頭を下げている。


『『樹いい加減にしろ』なさい』

『ご、ごめんな優』

柚葉とヒロが樹の暴走を止めてくれた。

『ほら、唐揚げ一個あげるから落ち込むなよ』

『神。俺優好き』

非常に簡単な男である。それも彼の良いとこか。


こうして5人で和気藹々と食事をし昼休みを終えるのだった。この4人と居ると楽しい。素直にそう思えた。




『優、起きなさい?起きないとお姉ちゃん悪戯しちゃうよ?いいの?いいの?』

甘い声と同時に身体を揺すられ、微睡から目を覚ます。すると至近距離に柚葉の顔があった。

寝起きで後10センチ程でキスしてしまいそうな距離に美少女の顔。これぞ神席の力だ。


『あっ。やっと起きた。授業中寝たらダメよ』

『いや、それよりさっきの何?』

寝ていた事を棚に上げ、聞き返す。

『優の大好きなお姉さんの真似だけど?』

『やめてくれ』

不満を声と表情で表現したが柚葉はビクともしない。それどころか追い討ちをかけてくる。


『優お姉さん大好きでしょ?分かりやすいよ?』

『どこがだよ』

『秘密。見ていて凄い面白いもん』

聞き返しても教えてくれない、どころかかなり気になる返しをされてしまう。

『授業中寝てたら毎回やるからね』

楽しそうに笑う柚葉。

『勘弁してくれ』

これから授業中は絶対に寝ないと心に誓うのだった。



『優〜帰ろーぜ。マック寄って行かね?』

『ごめんな。明日以降にしてくれ』

全ての授業が終了し帰りのHRが終わったところで樹が声をかけてきた。

『なんかあるん?』

『今日はおばさんがご飯作って待ってくれてるんだ。明日以降なら行けるからまた誘ってくれ』

断るのは申し訳ないが、今日は咲夜が初登校記念パーティーとか言って一人ではしゃいでいたのだ。


『それじゃあ明日行こうぜ。みんなで』

樹の提案に全員で賛成した。

その後みんなで教室を後にしそれぞれ帰路に着くのだった。


(流石に初日から放課後遊ぶ友達が出来るなんて思ってなかったんだろうな)

帰ったら咲夜が驚くかな。なんて考えながらいつもより軽い足取りで帰路についた。





⚠︎最後まで読んでいただきありがとうございます。

良ければいいね、コメントよろしくお願いします。









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