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獅子王陛下の幼妻  作者: 小鳥遊彩
第一章
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11話 「ブラギルフィアは本当にあった」

 これは、私がある程度成長してから知ったことだけど、母は私ぐらいの年齢の頃に数年間行方不明になっていたことが時期があったみたい。


 祖父母は誘拐事件と見て、あらゆる手を尽くして娘の行方を捜索したものの、手がかりは皆無だった。

 ところが、娘はもう死んだものと半ば諦めた頃、ある日突然帰ってきた。

 

 しかも、彼女は妊娠していた。


 ブラギルフィアという国にいて、その国の王様の弟に見初められて恋仲になった。

 無邪気にそう話す母のことを、祖父母は「酷い目に遭って頭がおかしくなった」と捉えた。

 私が幼い頃、頻繁に医師が訪れて母の診察に当たっていたのは、そういうことだったのだ。



 ……無理もない話だ、と思う。

 母の行方不明事件及び無事に発見された一件は当時のニュースを相当に騒がせたらしく、今でもインターネットで検索すれば、それにまつわる情報がたくさん出てくる。

 もちろん、第三者の無責任な憶測や噂も多く含んでいる。


 バンビ一味が、私の父親のことをレイプ犯だと言ったのは、そういう噂を根拠にしてのことだろう。

 祖父母や、世間一般の人々がそんな風に捉えるのも、致し方ないとは思う。


 でも……それでも私は、それらの噂のほうが間違いだと思っている。

 母が無邪気に話してくれたことこそが、きっと真実なのだと、そう信じたかった。

 祖父母は母を隔離し、娘の私でさえ彼女から遠ざけようとしたけれど、私は母からその国の話を聞かせてもらうのが好きだった。


 母は、ブラギルフィアの王弟と恋をして男の子を授かった。

 そう、私の兄だ。

 兄が三歳になろうかという頃、彼女は二人目の子、つまり私を身籠もった。


 本来ならそのままブラギルフィアで私を出産する筈だったけれど、当時のブラギルフィアは情勢が不安定で、しかも様々な天災に見舞われていた。

 母の身を案じた父は、彼女だけを元の世界に還した。

 これが、母から聞いた事の顛末だ。


 母が言うには、私の父は女神の息子で、その娘である私は女神の孫ということになる。


(いつか一緒に帰りましょうね、ブラギルフィアに)


 母は何度かそう口にしたことがある。女神の孫にあたる私が成長すれば、私の能力でブラギルフィアに帰ることができると、彼女はそう信じていた。

 そして、母の言っていた通り、ブラギルフィアは本当にあった。




 俄には信じがたい話だけど、この世界には二百年ほど前まで、唯一の例外を除いて女性というものが存在していなかったらしい。

そして、その唯一の例外こそがこの姫神テオセベイアだ。

 先ずは、主神と呼ばれる存在がこの世界の土台を創り上げ、それから七柱の神を生み出した。

その七柱の神は、地表に恵みの雨で潤わせて、緑成す大地へと育てていった。

 地表には様々な生き物たちが生まれるようになり、いつしか神々に似た姿のものも登場するようになった。

 それが、所謂ヒトである。


 しかし、ヒトというのは他の生き物よりも知能が高い代償か、己が力と知恵を誇示して他者を支配したがり、常に同族同士の争いが絶えなかった。

 彼らを諫めようにも、神々の言葉は彼らに届かない。

 聞く耳を持たないのではなく、文字通り聞き取れないのだ。


 困った主神は、八柱目の神を生み出すことにした。

 これは、主神を含む七柱の神々とも地上に住まう人間とも異なる姿の持ち主で、神々はその姿を一目見た瞬間から「彼女」に心を奪われた。

 八柱目の神は、彼女の……末妹のためなら何でもしてあげたい、神々にそう思わせる不思議な魅力を持った存在だったのだ。

 末妹なら、人間たちの争いを止めることができるのではないか、そう考えた主神は彼女を地上へと遣わした。


 主神が考えた通り、人間たちは誰もが彼女に魅せられ、彼女が悲しむならと争うことを止めた。

 彼女……いつしか姫神テオセベイアと呼ばれるようになった者のため、地上をより良い場所にするべく人々は励んだ。

 学ぶことを得手とする者は、様々な知識を吸収して姫神のために役立て、力仕事を得手とする者は、土地を開拓し石を積み上げて美しい建物を築いた。


(美夜ちゃんは女神様の孫だもの)


 母の言葉が鮮明に蘇る。

 それを事実とするのなら、八柱目の神テオセベイアこそ私の祖母ということだ。


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