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第37話 ~カンラガ山にて[2]~

第37話



(………………恥ずかしいけど………いい、かもっ……)


しかし、この時間はあっけなく終了してしまった。


それは………、クェトロボアの寝息が聞こえたからだ。


「グルルルルルル…………グゴァ……グルルルルルル……。」


「「!!」」


驚いてハルトの背中から手を話すと、ヒマリちゃんが岩影からヒョコッと顔を出した。


「お二人さん。悪いけどイチャイチャするのはそこまでにしてくれるかしら?」


(…………!?!?)


「……い、イチャイチャなんてしてないもん!」


「そうかしら?誰がどう見てもイチャイチャしてたと思うのだけれど。」


「………………。」


ハルトもなんか言ってよ、と、ハルトを見ると、ハルトは珍しく顔が赤かった。


(…………ハルト??まさか照れてるの!?反論してよぉぉ!!!)


そう内心でツッコミながら、冷静をよそおう。


「…………さーみんなー、たおしにいかなきゃー。」


「ルナ。冷静を装えてないわよ。棒読みすぎるわ。」


「………………。」


何も聞こえてないフリをしてみる。


「おいおい………皆、行くんだろ。来いよ。」


そっぽを向いて誤魔化していると、ヴォレスくんがそう言って歩き出した。


置いてかれてしまうのは嫌なので、急いでyesと答えてヴォレスくんの後に続く。


(うぅ…………クェトロボア……怖いなぁ。)


いつのまにか、倒すのが嫌という涙は忘れてしまっていた。


………というか、それよりもさっきのことが恥ずかしすぎたのだ。


もう、さっきのことで頭がいっぱいいっぱいなのだから。


(あぁぁぁ!!ハルトとぎゅーってしちゃったよぉ!!どどどどどうしよう!!)


そんなことを考えながら足を進めると、少し先にクェトロボアがいる位置まで来れた。


しかし、そのクェトロボアは………………。


「「「…………可愛い~♡♡」」」


女子3人でハモるほどに、めちゃめちゃ可愛かった。


(なんだっけ?うり坊って言うんだっけ??えっ、ほんとに可愛いー!!!)


そのクェトロボアは、体が大人のクェトロボアより三回りほど小さく、毛皮もそこまで厚くはなく、強いて言うなら“もふもふ”だった。


(…………可愛いー!!!もふもふしたい!!触りたいっ!!!!)


思わず手が動いてしまう。


起こしてしまう、と分かっていても、この可愛さには勝てない気がする。


(あぁぁぁ!!どうか私の理性よ保って!!)


しかし、その願いはあっけなく崩れた。


クェトロボアが……………………。


『ごろん………………。グルルルルルル……。』


寝返りしたのだ!!!!


(あっ、無理!!!無理無理無理!!無理だよこれは!!可愛すぎる!!!)


必死に押さえるが、手が動いてしまう。


「「「…………………」」」


どうやら、それは2人も同じだったようだ。


同じタイミングで、ヒマリちゃんとアリスちゃんとクェトロボアのしっぽに触れた。


しかし、その瞬間。


「グルルル………………ぐるる!?」


クェトロボアが起きてしまったのだ。


起きたクェトロボアは、私達の元に走ろうと立ち上がろうとしている。


咄嗟に私はみんなの前に出て、両手を広げた。


「………………ルナっ!!!やめろ!!!」


その手をハルトが押さえた。

ハルトの大きな手に優しく引っ張られる。

そのまま私はハルトに抱き締められる体制になってしまった。


「…………私は大丈夫だよ。みんな。」


どうにか恥ずかしさを隠す。


(私は大丈夫。大丈夫。)


心を落ち着かせたところで、クェトロボアの赤ちゃんがあと少しで起きそうになっている。


「…………スキル《動物会話》発動。」


この日までに血反吐を吐く思いをしてやっと手に入れたスキルを発動する。


息を吸ってから、クェトロボアに話しかける。


「“やめて。私の仲間を傷付けないで。私達は貴方を傷付けない!!”」


それに対しての反応は、大丈夫だったようだ。起き上がったけれど、危害を与えようとはしていない。


「“…………ママ、いない。パパ、いない……。おにいちゃんも、いない。ぼく、ひとり…………。さ、みしい。ママ、ど、こ?たすけ……て。”」


(この子、もしかして迷子?)


どうやらヒマリちゃん達にはクェトロボアの言っていることがなんなのか分からないらしい。

顔に「?」と書いてある。


「“分かった。一緒にあなたのパパとママ、探そう?”」


「“ほん、と?……い、いの?”」


「“もちろん!!”」


「“あ、りがと、う。”」


そう言ってこの子は「にぱー」と笑った。


(可愛い…………♡♡♡)


勿論、どうやって探せばいいかは見当がついている。


「みんな、私の手をにぎって。“貴方、私の手を握ってくれる?”」


みんなはすぐに手をにぎってくれた。このクェトロボアの子も、おずおずと握ってくれた。


「この子のパパとママの元に…………《転移》。」


「“えっ……?”」






































❦カンラガ山[上の辺り]❦


「“はぁ…………。あの子、どこにいるのかしら。………………こんな母親でごめなさい…………うぅ…………。 …………あぁ、無事かしら?……無事だとい…………!?”」


「………………!!」


(見つけた!!この子の、お母さん!!)



(そうだ、とりあえず、話さなきゃ。落ち着け私。)


息を吸ってから、口を開く。


「“つかぬことをお聞きしますが、あなた達はこの子の親御さんですか?”」


そう聞くと、明らかに2人の目の色が変わった。


「“……私はその子の母親。その子を使って何をするつもり!?場合によっちゃ許さないわ!!!!”」


(えっと…………??)


どう答えようか迷っていると、私の横にいた子がお母さんのもとへ向かった。


「“違うよお母さん。この人は僕を助けてくれたんだ。僕が凍えてお腹がすいて倒れて動けなくなったとき、助けてくれたんだよ!!”」


「“…………そうなの?……いや、この子は嘘をついたことがないわ。ええ、信じるわ。……そこの人間、感謝するわ。聞こえるかわからないけど。”」


「“どういたしまして!!”」


お礼を言った次の瞬間。


光の速さで白銀のフェンリルが飛んで来た。


「“モニカ!どうしてその子がここに!?”」


「“オレオ!!この人間が連れてきてくれたのよ。”」


この2人(いや、1フェンリルと1クェトロボア??)は夫婦かな?


でも、フェンリルとボアって結婚するのかな。


思ったことをそのまま口に出してみる。


「“すみません、貴女がこの子のお母様のモニカさん、貴方がお父様のオレオさん…………ということでしょうか?”」


「“えぇ、そうよ。”」



(へぇ、フェンリルとクェトロボアって結婚するんだ!!)


そう思っていると、白銀のフェンリルが口を開いた。


「“それにしても、どうして僕らと話が通じるのかな?君は調教師テイマーなのかな?” 」


「“違います、私はルナ。ただの人です!”」


「“君の魔力は凄く優しそうな匂いがするな。………………そうだ、僕らの子供の主人になってくれないかい?”」


「………………え??」

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