第36話 ~カンラガ山にて[1]~
第36話
(うぅ……歩きにくいなぁ。)
そんなことを考えながら足を進める。
ここは、カンラガ山。
ここには、クエスト『カンラガ山にてクェトロボアを一体討伐せよ』を受けてきたから来ている。
クェトロボアはかなり強いモンスター。
また、素材が100%の確率で手にはいる。
何故なら、毛皮と牙があるから。
この毛皮と牙はクェトロボアの希少価値が高いため、一部の人には金貨を5000枚出しても惜しくないらしくて、かなり高額に取引されている。
クェトロボアはこのカンラガ山とあと3つの山にしか存在しない。よって、希少価値が高い。
希少価値が高いから見つけるのが困難な上に、クェトロボアは分厚い毛皮、大きな口と大きくて尖った牙、さらに俊足を持っているため、倒せる冒険者はほんの2割にも満たないらしい。
しかし私達はランクアップしてからクエストボード(※クエストが張り出されるボード)を見に行ったから、遅くなってしまってこのクエストしか無かったのだ。
いざとなれば“転移”があるから行こうという話でまとまったため、今ここにいる。
クェトロボアが存在するのは、雪山。
つまりこのカンラガ山も雪山。(例外はある。)
運良く雪は降っていないが、風が吹くと寒い。
____ヒュルルル~。
(うっ…………寒いっ!!もう無理!!)
そう思った私はみんなに声をかけた。
「ねーね、みんな、ちょっとこっち来れる?」
みんなは「いいよ」と言ってこっちに来てくれた。
(えーと…………こうかな?)
「天の白き光よ。今ここに我等を暖めたまえ!天白光!!」
この魔法は聖魔法で、体を暖められる。
「ルナ、感謝するわ。ありがと♡」
「ありがとう、ルナ。」
「…………ありがとう。」
「有難う御座います。ルナちゃん。」
「どーいたしましてっ!!」
(えへへ、みんなからありがとう、って言われると、なんだか心がぽかぽかするなぁ。)
そんなことを考えていた、その時。
「…………グルルルルルル…………グォォ……グルルルルルル……。」
そんな声が聞こえた。
「うそ!!これって、クェトロボアじゃん!!どどどどうし………もが、もがもが。」
慌てまくってしまった私の口を誰かに塞がれた。
「…………落ち着け、ルナ。このクェトロボアは多分寝ている。息を殺して静かに話そう。」
口を塞いだのはハルトだった。
冷静沈着だなぁ、みんな。
「そうね、ハルト。ルナ、いーい?とりあえず静かに、ね?」
「もががが…………。」
うぅ…………ハルト、離してよぉ。
「あ、悪い。」
ハルトがやっと手を離した。ふぅ。
「ヒマリちゃん、わかった。……それで、どーするの?」
「………………とりあえず、寝てる間に息の根を止めるしかないと思うわ……。」
「「「「「………………っ。」」」」」
多分、いま皆が考えているのは私と同じことだろう。
「………………かわいそう……。」
「おいルナ。……っ…………俺だって、辛いよ。でも………………やらなきゃ、いけないんだろ。」
「………………っ、ごめんなさい………………でも…………!!」
「うるさい!!俺達は……嫌でも、やらなきゃいけないんだよ!!そうだろ!?だって、俺達は世界最強を目指さなきゃいけないんだ!!そうなるには、多少の犠牲くらい払わなきゃいけないんだよ!!」
「………………っ…………!!…………ご、ごめんなさい………………っ。」
残酷だ。なんて残酷なんだろう。私達が望むのは世界を平和にすることなのに、そうするには犠牲を出さなくちゃいけないなんて。
犠牲を出したらみんなが平和になることなんて叶わない。“みんなが”平和にならないと私達の願いは叶わないのに…………!!それでもやらなきゃいけないなんて!!
(………………これは、私のワガママなのかな。)
悲しすぎて、頬に冷たい雫が垂れる。
「………………ちょっとヴォレス!!そんな言い方ないでしょ!!ルナが泣いちゃったじゃない!!」
ヒマリちゃんが私を庇ってくれた。
(………………優しいなぁ。嬉しくて……また泣いちゃいそう…………!!)
「わぁルナ!!どうしたのかしら!?あぁぁ泣かないでちゃうだい!!」
また泣き出しちゃった私を、ヒマリちゃんがもっと心配してくれる。
「…………ヴォレス。それは流石に無いんじゃないか?」
ハルトはヴォレスの手首を掴んでる。手首が赤くなってて、ヴォレスくん痛そう。
(あれ?なんか険悪な雰囲気……?)
「…………悪かったよ。ルナ。」
険悪な雰囲気、なんて全然なかった。
「ううん、だ、大丈夫っ、…………だ、よ。」
大丈夫、と言いたいのに、何故だか涙が止まらない。
涙を止めたくて、目をこする。
目をこすっていたら、その手を誰かに掴まれた。
「……………ルナ、無理しなくていい。」
手を掴んでたのはハルトだった…………と思ったら、目の前にハルトの顔があった。
(うわぁぁぁぁ!!近い!!近いです!!イケメンが目の前にいて死にそうです!!!)
頭が冷静さを失ってしまいそうになるが、とりあえず冷静を保つ。
「は、ははハルト、近いよ…………っ。」
「…………離れた方がいいか?」
「…………このままでいい。」
(あぁぁぁどうしよう!!!何言ってるの私っ!!!!)
顔がすごく熱い。
(あぁぁぁ恥ずかしい!!)
「………………アリス、ヴォレス、ちょっと来て~」
「「え?」」
「いいからいいから~」
そう言ってヒマリちゃんが2人を連れていってしまったのが視界の端に見えた。
(…………ってことは…………2人っきり!?)
「…………ルナ。」
「ひゃいっ!!!」
その瞬間、ぎゅっ、とハルトに抱き締められた。
(……………………ん?…………抱き締めら……!?!?えええぇぇぇ!?)
「ははひゃ……ひゃると!?」
「…………………ちょっとだけ、このままで。」
「へっ…………!?」
(恥ずかしい…………。でも…………ちょっとだけ、なら。)
いつもお読み頂き有難う御座います!
評価、ブックマーク、コメント是非宜しくお願い致します。
そして、誤字があったら教えて頂けると幸いです!
下の☆☆☆☆☆から、是非………お願いいたします!!
皆様の応援がとても励みになります!
りんご餅




